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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:黒単ストーム~無駄を嘆く精神を添えて~(レガシー)
クールさを追求するあまり、大事なことを疎かにする。それはもうクールじゃないんだよなぁ。
はい、どうも岩SHOWです。独断で選んだこれぞクールだ、と思うデッキを選ぶ金曜日のこのコーナー。毎度作成する際には、クールとは何かを見失わないようにするため、クールな物や出来事を確認したりもしている。
クールとは派手さや目新しさのみではなく、地道な努力や当たり前のことをこなすことでも形成されている概念だ(よくわからん? 僕もそうだ)。一見クールな見た目ではなくても人や環境にやさしいもの、そういうものにこそ「クール」という誉め言葉をかけてあげたくなる。
もちろんビジュアルもクールかつ見えない部分もクールであれば完璧、パーフェクト・クールと胸を張って名乗れるものだ。マジックのデッキにおけるクールさも、無駄を生み出さないような努力や知恵を土台にしたものならより素敵だねと。
今日紹介するデッキは一見派手な傾奇者。でありながらそれを成立させるにはリサイクル的なカード1枚1枚を大事にする精神も持ち合わせている。どういうことかって? 見てもらうのが一番早いな! それではレガシーのとあるコンボデッキを見ていただこう!
-土地(0)- 2 《Shield Sphere》 1 《ナルコメーバ》 4 《悲嘆》 -クリーチャー(7)- |
4 《金属モックス》 4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 4 《暗黒の儀式》 4 《弱者選別》 4 《納墓》 4 《陰謀団の儀式》 4 《冥府の教示者》 4 《残酷な取り引き》 4 《冥府の契約》 4 《アガディームの覚醒》 2 《苦悶の触手》 1 《巣穴からの総出》 1 《ゴブリンの放火砲》 1 《炎の中の過去》 4 《永劫のこだま》 -呪文(53)- |
1 《Badlands》 4 《猿人の指導霊》 4 《陰謀団式療法》 3 《思考囲い》 3 《巣穴からの総出》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
SNSで「このデッキでMagic Onlineリーグ戦5-0したよ」報告をしていた、概ね黒単色で構成されたコンボデッキ。リストを見てわかる通り、土地の枚数は0。コストが{0}や実質マナ不要のカードを多く持つ、実にレガシーらしい構成だ。
《水蓮の花びら》《金属モックス》で黒マナを得て《暗黒の儀式》《陰謀団の儀式》などマナをさらに増やす呪文に繋げ、1ターンに多数の行動を重ねて《苦悶の触手》などのストーム呪文で勝利。
あるいは土地が0なことを活かして《ゴブリンの放火砲》を設置&ファイアして一撃必殺を決める。
レガシーの伝統的なコンボデッキ「むかつきストーム」と「ベルチャー」のハイブリッド的なものではあるが、ただそれだけがこのデッキのオリジナリティではない。詳しく掘り下げてみよう。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:0から4を生む
ストームデッキの肝は2つ。まずはマナ。これがなければ始まらない。
マナを得る呪文を唱えるにもマナが必要、ストームを繋げるためのドローやサーチもマナがなくては成り立たない。すでにそのマナ加速は上記でも紹介したが、このデッキのならではのクールな加速手段の話をしよう。それは……《悲嘆》だ。
ちょっと待ってくれよと、そういう声も聞こえなくもない。でも大丈夫、テキストを読み違えているわけではない。《悲嘆》は4マナのクリーチャー、しかしながら手札から黒いカードを追放すればマナを支払わずに想起で唱えられる。
このコストで唱えた場合はすぐに生け贄に捧げる能力が誘発し、そのまま墓地へ直行だ。ただ想起は、この墓地へ落ちるまでに一瞬のタイムラグが存在する点が特徴で、インスタントタイミングでつけ入る隙がある。それがこのデッキが《悲嘆》をマナ加速だと言い張っている理由だ。
《悲嘆》が戦場に出て、生け贄に捧げられるその前に。プレイヤー自身の手で生け贄に捧げてやるのだ、《弱者選別》で!
0マナで唱えた《悲嘆》を元手に、《弱者選別》で4マナ獲得! これはクールすぎる、1枚のカードを無駄なく髄までしゃぶりつくしている。もちろん《悲嘆》の能力で対戦相手の手札は確認済み、打ち消しの類を抜き去ってマナを爆発的に増やし、ここからコンボを決めてやろうではないか。
《弱者選別》は《悲嘆》のみをその餌にすると機能不全に陥りかねないので、他の生け贄をも用意している点もクール。コスト{0}の《Shield Sphere》、そして《ナルコメーバ》だ。
ナルコ? なんで? その答えは《納墓》。
ライブラリーから墓地に直接落ちたナルコは戦場に出る。これを生け贄にしちゃいましょうと、So cool meeen!
クールポイントその2:ドローカードの激シブチョイス
前項の《納墓》、これ1枚のナルコのためだけに採用されてるのと?いう疑問も湧くかもしれない。もちろん、それだけじゃないぞ。ストームデッキのもう1つの肝である、大事な大事なドローにこのカードは関わっている。カードを何でも墓地に置ける便利さを活かし、《永劫のこだま》を持ってくる。
《永劫のこだま》は墓地からならフラッシュバックでわずか3マナで唱えられる、驚異の7枚ドローだ。《納墓》で埋める以外には《ライオンの瞳のダイアモンド》で青マナを得ながらこだま含む手札を捨てて、そのマナで唱えるという方法も。レガシーではすっかりおなじみになったクールな手札リセットだな。
また、同じフラッシュバック呪文として《炎の中の過去》を埋めるというのもテクニックの1つだ。
《永劫のこだま》は対戦相手も手札を得るので《意志の力》などを引かれてしまう可能性もある。自分の墓地だけで十分にストームを稼いで勝てるのであれば、《炎の中の過去》の方がマナを食うが使い勝手が良い場面もある。クールに使い分けよう。
この手のストームデッキ、かつては《むかつき》で手札を大量に得たものだが、このリストでは別の黒のドローに注目しているのも独自性が高い。《残酷な取り引き》そして《冥府の契約》だ。
どちらも3マナで4枚ドロー、非常に効率に優れたドロー呪文であるが……ライフを半分失ってしまうというのが普通のデッキには正直なところしんどい。だがこのデッキは、動くと決めたらそのターンの内にノンストップで突っ走るコンボデッキだ。もうターンは返さないので攻撃でライフがとか、気にしなくて大丈夫。コンボが見事完走できれば勝ち、うまく繋がらずにストップしたら負け。分かりやすい。器用な生き方は狙わない、シンプルな精神がクールだ。
さらなるクールのために
土地を用いないことを売りにしているデッキなので、サイドボードのカードが限られる。このリストでもシンプルなものだ。対戦相手のコンボ妨害要素は《悲嘆》と《陰謀団式療法》で落とすという形で対処する姿勢で、これが現実的なところだろう。
ただ、どうしてもコンボが決まらない可能性がある仮想敵が現れた場合は、何か別の勝ち手段を考慮しても良いかもしれない。かつてのコンボデッキは、対戦相手がクリーチャー除去をすべてサイドボードと入れ替えるのを確信したうえで軽量で打点の高いクリーチャーと入れ替えて、意表をついて殴り勝つというアグレッシブサイドボーディングを行っていたりもした。《ファイレクシアの抹殺者》とか、クールだったねぇ。何か良いクリーチャー候補が見つかれば《暗黒の儀式》から叩きつけるのも大いにアリだね。
クールなまとめ
本来想起で生け贄になるはずの《悲嘆》を《弱者選別》の生け贄に回すことでマナになってもらおうという、デッキ内の無駄を省きつつコンボの爆発力を高める、クールなアイディア。派手なコンボフィニッシュの裏には、地道な積み重ねがつきもの。それを忘れてはクールの道は歩めない、と。それでは今週はここまで。Stay cool! Maximum effort!
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