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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

イゼット・フェニックス(ヒストリック)

岩SHOW

 1マナドローすごい! 本当にすごいんだ! ……こんな風にはしゃいでしまうというものだよ。

 1マナドローとは、要するにマナ総量が1で「カードを引く」と書かれた呪文のことである。マジックというゲームにおいて、カードを引くという行為は強力なアクションだ。その一文が添えてあるか否かでカードの評価はガラリと変わる。それが1マナでできるということには大きな意味があるのだ。

 そのドローは、たとえ手札の枚数が増えずとも価値がある。1マナドローの最高峰《Ancestral Recall》は1マナで手札が差し引き2枚も増える例外中の例外なので置いておくとして、たとえば《思案》。

 これを唱えても手札が増えるわけではないが、ライブラリーを操作したうえでカードを1枚引く、ゲームの流れを変えかねないアクションが1マナで起こせるがために大変強力な呪文だ(逆にこれにドローが付いていなかったら1マナとはいえ、とてつもなく弱い呪文になってしまう)。

 手札が増えずとも何らかの小さな効果に1枚ドローがつくことで手札消費がなくなり、かつ、たったの1マナ。これ単体で評価するよりも、デッキレベルで考えるとわかりやすいかもしれない。

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』で登場した能力、魔技。インスタントやソーサリーを唱えるかコピーするたびに誘発する能力だ。1マナでドロー付きのインスタントかソーサリーは、この能力を1ターンに何度も誘発させ得るポテンシャルがある。というわけで軽いドロー呪文を詰め込んだデッキというのは、カードプールが広いフォーマットで組まれ多くのプレイヤーに親しまれている。

 最近、この1マナドローがグッと増えたフォーマットがヒストリックだ。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のオマケと呼ぶには超豪華な番外カード「ミスティカルアーカイブ」。これに収録されたカードは一部を除いてヒストリックで使用可能で、これにより1マナドローの傑作である《渦まく知識》がMTGアリーナでプレイ可能となった。

 1マナで3枚引いて2枚戻す、手札の枚数は増えないがその内容を大きく入れ替えることで選択肢を増やす。レガシーにおいてはまさしく象徴とも呼べる1枚で、これがプレイしたいからレガシーをやっているというプレイヤーに挙手してもらったら、その数は万を超えることだろう。

 そしてもう1枚、手札が増えないどころかむしろ減る、そんな1マナドローもやってきた。え、そんなカード使っても損するだけじゃないかって? ところがどっこい、これもまた時代を築いた名カードなのよ。

Arne Huschenbeth - 「イゼット・フェニックス」
ヒストリック (~『ストリクスヘイヴン:魔法学院』)[MO] [ARENA]
2 《
2 《
4 《蒸気孔
4 《硫黄の滝
4 《尖塔断の運河
4 《寓話の小道
-土地(20)-

4 《スプライトのドラゴン
4 《弧光のフェニックス
4 《嵐翼の精体
-クリーチャー(12)-
4 《渦まく知識
4 《選択
2 《呪文貫き
4 《信仰無き物あさり
4 《ショック
2 《稲妻の斧
2 《火柱
4 《巧みな軍略
2 《約束の終焉
-呪文(28)-
1 《厚かましい借り手
1 《弾けるドレイク
2 《魂標ランタン
1 《稲妻の斧
1 《火柱
1 《呪文貫き
2 《削剥
1 《否認
2 《神秘の論争
1 《プリズマリの命令
2 《覆いを割く者、ナーセット
-サイドボード(15)-

 

 そんなわけで今日紹介するのはヒストリックの「イゼット・フェニックス」。

 墓地にある状態でそのターンにインスタント&ソーサリーが3回以上唱えられると戦場に戻る能力を持った《弧光のフェニックス》。これを蘇らせるには1マナドローは最適なチョイス。《渦まく知識》《選択》と連打することで3/2飛行・速攻をマナを払わずに展開して殴っていくわけだが、その復活用ドロー呪文の枠で重要な役割を担うのが手札の減るドロー《信仰無き物あさり》である。

 1マナで2枚引いて2枚捨てる。差し引き0で、この呪文自体をカウントすれば手札3枚使ってカードを2枚引いていることになり、枚数という観点では損をしている。ただこのソーサリーは、その捨てるという部分にこそ価値がある。そう、フェニックスを能動的に墓地に落とす手段となるのだ。物あさり+《巧みな軍略》でフェニックスを墓地に落としつつドローの連打で復活させて強襲! コンボ的な要素を持ったアグロデッキだ。

 《渦まく知識》は手札を大幅に入れ替えてくれるので頼りになるが、たとえば固め引いてしまった土地などがライブラリーの上に戻って結局無駄なドローになってしまうという状況はちと辛い。それを解消するのが《寓話の小道》。

 ライブラリーに不要なカードを積み終わってから《寓話の小道》を起動することでシャッフルし、ライブラリーの上に来るカードをリフレッシュさせることが可能だ。

 あるいは《巧みな軍略》との組み合わせも面白い。

 手札のフェニックスをライブラリーに置いて、《巧みな軍略》でそれを墓地に落としつつ他のカードを手に入れる動きはなかなかにイカす。《渦まく知識》と《信仰無き物あさり》の組み合わせも、もちろんライブラリーをゴリッと掘り進めるので、《弧光のフェニックス》が手札でだぶついてしまうというトラブルは起こりにくいはずだ。

 フェニックスのみに依存すると墓地対策に苦戦するし、そもそも引けないと話にならないので他の勝ち手段も必要になってくる。このリストでは1マナドローと相性抜群の《スプライトのドラゴン》と《嵐翼の精体》がいるので安心だ。

 ドローして精体のコストを軽減、ドローして精体とドラゴンのサイズをアップ。これらであっという間に勝負を決めてしまおう。どちらもモダンなどでも活躍しているクリーチャーなので実力は折り紙付き。フェニックスなしでも十分に勝てるもので、むしろフェニックスがこれらを主役にしたアグロデッキに粘り強さとブン回りを付与するサポート側であるとさえ言えるね。

 《渦まく知識》も《信仰無き物あさり》も、モダンでさえ使用が許されていないレガシー級のカードだ。これらが加わったことでヒストリックはどうなっていくのか。エキサイティングなものになることは間違いない。様相を大きく変えるであろうこのフォーマットのデッキ変遷、注視していきたいね。

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