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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ラクドス・サクリファイス(スタンダード)

岩SHOW

 マジックにおける黒と赤という色には共通する部分がある。

 破滅的で、目的のためなら多少の犠牲は厭わない粗暴な思想を持っている。この2色はカード裏面のシンボルを見てもわかる通り、隣り合う色なのでそのように似通った部分がある。味方の犠牲、あるいは自滅すらも問わず攻撃性に振った連中が手を組むとどうなるか、そりゃあもうデンジャラスなカードが誕生するってものだ。

 近年のこの2色を象徴するカードとして、まず挙がってくるのが《波乱の悪魔》。生け贄というアクションに反応し、それが行われるたびに1点ダメージを飛ばす。除去として使ってもよし、ライフを詰めてもよし。能動的に誘発させるために自身のパーマネントを生け贄に捧げる他に、対戦相手が生け贄に捧げても誘発するのが実にいやらしい。

 これと《大釜の使い魔》《魔女のかまど》を組み合わせるのは大変に強力だった。使い魔をかまどで生け贄に捧げて1点、出来た食物トークンを使い魔で生け贄に捧げて1点、使い魔が戦場に出て1点……たかが1点と侮ると、そのマシンガンのごとき連打であっという間にライフを削り溶かされる。

 スタンダードにおける強力なエンジンの1つであったが、《大釜の使い魔》がスタンダード環境を去ったことによりこのコンボは消滅。「ラクドスかまど」などと呼ばれたデッキは姿を消すことになった。

 しかしながら、それでラクドスは、赤黒の生け贄デッキは終わりなのかという決してそうではない。使い魔、かまど、悪魔の組み合わせだけが生け贄デッキの中核と思ったら大間違いだ。これらのカードに頼らずとも、十分に強力なデッキは作れる! スタンダードにおける新しいデッキの形に迫ろう。

Ryuji Murae - 「ラクドス・サクリファイス」
SCG Tour Online Championship Qualifier 準優勝 / スタンダード (2020年8月8日)[MO] [ARENA]
7 《
5 《
4 《血の墓所
1 《悪意の神殿
2 《ロークスワイン城
4 《寓話の小道

-土地(23)-

4 《魔王の器
3 《どぶ骨
1 《鋸刃蠍
4 《戦慄衆の解体者
4 《ぬかるみのトリトン
4 《忘れられた神々の僧侶
3 《死の飢えのタイタン、クロクサ
2 《悪魔の職工

-クリーチャー(25)-
4 《初子さらい
4 《村の儀式
1 《怪物の兵器化
3 《死住まいの呼び声

-呪文(12)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

3 《エンバレスの盾割り
3 《強迫
1 《死の重み
1 《レッドキャップの乱闘
2 《無情な行動
2 《害悪な掌握
1 《苦悶の悔恨
1 《壮大な破滅

-サイドボード(14)-
Ryuji Murae氏のTwitter より引用)

 

 新しい「ラクドス・サクリファイス」のサンプルに相応しいリストだ。

 まず、相棒に《夢の巣のルールス》を据えている。そのため3マナの《波乱の悪魔》を使うことはできないが、盤面を再形成する能力は大きく上昇している。

 ルールスと相性抜群のカードとして《魔王の器》は要注目。

 墓地から直接か、あるいは墓地から唱えるかして戦場に出た場合、この器は魔王ことデーモンに成り上がる。5/5飛行のおでましだ。ルールスから唱えるか、あるいは《死住まいの呼び声》で釣り上げるか。いずれかの手段で墓地を経由させて戦場に出し、巨大な航空戦力を格安のマナで手に入れて殴りかというのが魂胆だ。

 この《魔王の器》を墓地に送る手段として、そして他のカードとのシナジー(相互作用)にも期待して各種生け贄カードが採用され、1つのデッキへと仕上がっている。

 生け贄をコストとするカードの中で最も強力なのは《忘れられた神々の僧侶》だ。

 クリーチャー2体と要求する生け贄は多いが、カードを1枚引いてさらに対戦相手がクリーチャーを1体生け贄に捧げるので、トントンである。カードの枚数で損をしないのであれば、相手がライフを2点失い、こちらが{B}{B}を得るという部分は純粋にお得ってわけだ。マナを得ることで引いてきたカードをすぐさま唱えられる点が素晴らしい。

 真面目にこちらのクリーチャーを2体生け贄に捧げても良いのだが、《初子さらい》と組み合わさると強烈。

 相手のクリーチャーを奪って、こちらの《魔王の器》なんかと抱き合わせで生け贄にして、さらにクリーチャー生け贄を強要。盤面を一気に崩壊させてやるのだ。僧侶以外にも《悪魔の職工》《村の儀式》《怪物の兵器化》と生け贄手段は豊富にあるので、とにかく3マナ以下のクリーチャーはさらってきて生け贄に捧げる、理不尽な目に遭わせてやろう。

 また、自身で用意する生け贄も《魔王の器》をはじめとして「別に生け贄になっても困らない」という軽いクリーチャーばかり。特にそもそも勝手に生け贄に捧げられる《死の飢えのタイタン、クロクサ》は何の罪悪感もわかずにコストにできる。

 クロクサを戦場に出してその能力が誘発したら、それを解決する前に各種生け贄カードで処理してやろう。このクロクサは後に脱出させても良いし、ルールスから毎ターン2マナでジョリジョリと手札およびライフを削る飛び道具として投げつけ続けるのも地獄である。

 《戦慄衆の解体者》もこのデッキにおいては強い、かなり働き者な1枚だ。

 死亡時に自身のパワー分ダメージを飛ばし、プレイヤーかプレインズウォーカーを殴るとサイズアップする速攻持ち。2ターン目に走らせるとそのままどんどん大きくなって、除去しても大ダメージという強烈なプレッシャーをかけるアタッカーになる。中盤に引いてきても、生け贄に捧げればダメージは飛ばしてくれる。僧侶の能力で墓地送りにしたい相手の本命の横に立っているタフネス1をプチッと潰すだけでも十分な仕事だ。

 あるいは《死住まいの呼び声》で釣り上げ、接死カウンターを乗せてから生け贄に捧げてどんなクリーチャーでも問答無用で粉砕というのもえげつない。カード1枚1枚のポテンシャルをどこまで高められるか、シナジーをフル活用することが求められるデッキなのだ。

 この手のデッキ全般に言えることは、カードを組み合わせてガチャガチャと回している時はとにかく楽しいということ。これに尽きるね。使い魔とかまどでガチャガチャやるのが楽しかったという人は少々寂しい思いをしているかもしれないが、残ったカードでも十分にその欲求を満たすデッキを組むことはできるはずだ。

 スポットライトを浴びる新たな組み合わせを見つけ出し、スタンダードで勝利を重ねよう!

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