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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ディミーア・デルバーズ:秘密を掘り下げ、切り削る(レガシー)
レガシーというフォーマットの話になると、「デルバー」というフレーズ抜きでは語れない。
デルバーとはアーキタイプの呼称であり、1枚のカードの俗称だ。《秘密を掘り下げる者》、このカードの掘り下げる者の部分が英語ではDelverとなることからそう呼ばれ、浸透するようになった。
秘密を掘り下げるという名の通りに、毎ターン、ライブラリーの一番上のカードをチラッと覗き見る。それがインスタントかソーサリーであれば公開し、これにて条件をクリアして第2面へと変身する。その《昆虫の逸脱者》となれば1/1のか細い身体から3/2飛行の超攻撃的形態に様変わり。最速で2ターン目にはこのカマキリ男が空から3点ダメージを刻みだす。
そのスピーディーさ、そして青というカラーであることから《意志の力》《目くらまし》といったマナ・コストを支払わずに唱えられる打ち消し呪文で除去から護ってやることができ、またこれらで相手のコンボを阻害しつつ速やかに殴り切るというプランも取れることから、コンボデッキ相手に相性良く立ち回れる。デルバー・デッキは強力なアーキタイプとしての地位を確立している。
もちろん、その時の流行り廃りで強さは変動し、数を増やしたり激減させることはあったが、デルバーを使うプレイヤーが完全に潰えたということは、2011年の初登場時以降ないのだ。歴史と実力を兼ね備えた、伝統的なカードでありデッキである。
デルバーの登場以降、1マナでパワーが3になるカード、とりわけ3/2のサイズになるものをデルバーと呼ぶノリも生まれた。その最新モデルが《盗賊ギルドの処罰者》。
1マナ1/1で瞬速持ち、本人か他のならず者が戦場に出た際に相手のライブラリーを2枚墓地に送る……『基本セット2021』から「切削する」と記されるようになった能力を持っている。こちらは相手の秘密を切り削る者ってところか。相手の墓地にあるカードの枚数が8枚以上になると3/2のデルバー・サイズになり、接死も持つ。瞬速と接死を活かして相手の攻撃クリーチャーをキャッチして道連れにする除去カードとしても使えるのがセールスポイント。
ならず者デッキや切削デッキで使うのが最もポテンシャルを発揮できるだろうが、とりあえずこれを2枚引いたらそれだけで6枚削れるので3/2になるのはもう目の前、と考えれば偏った構築でなくても運用は可能か。
そんなわけで今日は本家本元デルバーと、切削デルバーが共演するデッキをご紹介しよう。
2 《冠雪の島》 1 《冠雪の沼》 3 《Underground Sea》 4 《汚染された三角州》 3 《霧深い雨林》 1 《湿地の干潟》 1 《血染めのぬかるみ》 4 《不毛の大地》 -土地(19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《盗賊ギルドの処罰者》 2 《厚かましい借り手》 2 《疫病を仕組むもの》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 3 《思案》 4 《撹乱》 1 《呪文貫き》 4 《もみ消し》 2 《再活性》 4 《目くらまし》 2 《湖での水難》 1 《苦花》 4 《意志の力》 -呪文(29)- |
2 《悪意の大梟》 2 《疫病を仕組むもの》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 3 《外科的摘出》 1 《思考囲い》 2 《冬の宝珠》 1 《苦花》 1 《湖での水難》 1 《リリアナの勝利》 1 《無のロッド》 -サイドボード(15)- |
青黒2色のダブル・デルバー! レガシーというハイスピード、低コストであればあるほど正義とされる環境で、8枚の1マナパワー3で勝負しようという野心的なデッキだ。
デルバー・デッキを構成する上で不可欠とも言える低コストのドロー操作および打ち消し呪文はしっかりと備えている。《渦まく知識》《思案》は手札に必要なカードを引き込むのみならず、ライブラリーを並べ替えることで、掘り下げる者の変身条件を満たすため下準備が可能だ。
もともとインスタントとソーサリー率は高いデッキなのでナチュラルに変身が決まりやすいとは思うが、確実性を高めることは勝敗に直結する。アップキープにデルバー誘発、これに対して《渦まく知識》ってのはよく見る光景だ。
そしてこのデッキは、そのお約束に対するアンチテーゼでもある。《渦まく知識》で《意志の力》でも積んで、さあ公開しようとするタイミングで《盗賊ギルドの処罰者》を滑り込ませ、ライブラリーを切削。これで確実性は下がるし、もし変身されたとしても積んだカードが引けなくなることでプランも崩れる。こっちだけデルバーで空から殴れるという状況を作れれば、デルバー同型は制することができる、その理想を追い求めた形だな。
このデッキは打ち消し呪文の枠もなかなか独自のチョイスになっていて面白い。《意志の力》《目くらまし》はデルバーの必須カード、手札が減ったり土地が戻ったりとデメリットを背負ってでもマナ不要で唱えられる打ち消しというものは素晴らしく、これで足止めしている間に勝負を決める、テンポ戦術の必需品だ。
これに加えて《呪文貫き》で軽量呪文を潰しにかかるのはよく見るが、《撹乱》はなかなか珍しい。しかも4枚採用だ。
インスタントかソーサリーに対してしか意味はないカードだが、それを4枚も採用するということは、それだけ今のレガシーでその2つに対処することが重要という判断からだろう。確定の打ち消しでもないのだが、そこは後述するカードとの組み合わせで光らせるという考えだろう。1枚ドローが付いているのも、デルバーで殴って打ち消しで弾くというクロック・パーミッションと呼ばれる戦略を強く後押ししてくれる。手数で勝負するデッキにとって、手札を減らさずに行える軽量アクションというのはこの上なく有難いものなのだ。
テンポ戦術というものは、相手に強いカードを使わせないことを最上の展開とする。強いカードを使わせないために行うことの1つがマナ否定である。要するに土地破壊だ。《不毛の大地》と、古き時代のデルバー・デッキではお馴染みだった《もみ消し》を用いる。
《不毛の大地》はそのまま《Underground Sea》などの土地に投げつけ破壊する。《もみ消し》はそれ自身はマナを生み出さず、生け贄にすることで《Underground Sea》や基本土地に繋げる《汚染された三角州》などのフェッチランドと呼ばれる土地の起動に対して投げつけ、打ち消してやることで実質1マナの土地破壊として用いる。また、土地以外にも各種誘発型・起動型能力を打ち消せるので使い道がないというゲームはほぼないだろう。
これらのカードと組み合わせることで、《目くらまし》《呪文貫き》《撹乱》といった確定でない打ち消し呪文の効力を高め、賞味期限を延ばすのだ。
処罰者の切削を活かすカードとしては《湖での水難》はシブい活躍をしてくれそうだ。
クリーチャー除去であり、打ち消しであるのでこれもまた腐ってしまうマッチアップはないだろう。メインのクリーチャー対策はこれ2枚に《疫病を仕組むもの》2枚のみという構成からも、クリーチャー対策はあまり引きすぎると良い結果に繋がらず、非クリーチャー対策はいつでもウェルカムという設計思想がうかがえる。
同じく切削を活かすカードとして面白いのが《再活性》。
なんとなく投げつけた処罰者で、なんだかヤバいクリーチャーが墓地に落ちてしまったらこいつで奪い取ろう。《グリセルブランド》なんかをいただいて早期決着といきたいところだね。
名カードになぞらえて、そのカードくらい強く楽しいものであってほしいという思いを込めて、俗称で呼ばれる新しいカードたち。デルバーの系譜もいつまで続くのか、いつかこの呼称にとって代わって塗り替える新しいカードがやってくるのだろうか。そんなことに思いを馳せながらプレイすると、レガシーの奥ゆかしさをより一層味わえるんじゃないかな。他にもわからない俗称があったら聞いてみてね!
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