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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

Abyss Control(スタンダード)

岩SHOW

 『基本セット2021』でどのカードに一番注目しているか? 新セットが出るたびにこのようなことを聴かれることがある。いつもこの質問に答えるのは難しいと感じている、一番というものはなかなか決められるものではないからだ。

 ただ、今回はスパッと答えが出た。《深淵への覗き込み》、これでしょう。

 イラストが久々にヤバすぎて、嗚呼、これぞ僕を引き込んだマジックの魅力だなと。最近はグロテスクなイラストは控えめの傾向にあったので、『ウルザズ・サーガ』あたりのヤバいイラストにもまれて育った世代としては少々の物足りなさを感じていたが、このカードのイラストはそれを一気に吹き飛ばしてくれるすさまじいものだ。

 ちょっとどう……文字に起こして良いのやら。これぞまさに正気を失うという状況か。と思いきやフレイバーテキストではまだまだこんなものは序の口だという。そう述べるのはブレイズ、陰謀団に所属し狂気の召喚者としてオタリア大陸で暗躍した《陰謀団の先手ブレイズ》その人だ。まさか2020年にこの名前と再会するとは、時系列や舞台にとらわれない基本セットならではのサプライズだ。

 イラスト、フレイバーともに禍々しいカードに惹かれてマジックにのめり込んでいった世代としてはド真ん中ストライクなのだが、肝心の性能はどうだろう。これがまたなかなかにすごいのだ。7マナで対象のプレイヤーは自分のライブラリーの半分の枚数カードを引き、ライフも半分になる。と、とんでもないな……。

 自分に向けて撃ち込めば、ライフ半分を犠牲に10枚どころではなく20枚以上のカードを引くのも夢じゃない、化け物ドローとして使える。相手に撃ち込めば、ライフを一気に半分ゴリッと削り落とせる火力になる。またカードを引くのは強制なので、《地獄界の夢》と組み合わせればライフが半分になった上に大量ドローからの大ダメージで、よっぽどライフを得ていない限りは一撃で敗北に至らしめる必殺コンボとなる。こ、これは決めてみたいよな……

 ってなわけで黒単色のデッキを組むことを決意した。単色なのは、何せキーカードが両方とも{B}{B}{B}を要求する黒の濃いものだからだ。単色となるとコンボ特化デッキよりも、ベースはコントロールにして決めての1つとしてコンボを採用すれば良いか。そんな考えから組んでみたのがこのデッキだ!

岩SHOW - 「Abyss Control」
スタンダード (2020年7月)[MO] [ARENA]
20 《
3 《ロークスワイン城
2 《光輝の泉
2 《爆発域
-土地(27)-

3 《ヤロクの沼潜み
1 《残忍な騎士
4 《真面目な身代わり
1 《悪意に満ちた者、ケアヴェク
-クリーチャー(9)-
4 《取り除き
2 《闇の掌握
1 《精神迷わせの秘本
2 《不気味な教示者
1 《地獄界の夢
3 《絶滅の契機
1 《煤の儀式
2 《深淵への覗き込み
3 《大いなる創造者、カーン
3 《人知を超えるもの、ウギン
2 《精霊龍、ウギン
-呪文(24)-
1 《石とぐろの海蛇
1 《灯狩人のマスティコア
1 《隕石ゴーレム
2 《魂標ランタン
1 《墓掘りの檻
2 《魔術遠眼鏡
1 《精神迷わせの秘本
1 《眠らせる矢
1 《火想者の器
1 《ボーラスの城塞
1 《王神の立像
1 《彩色の宇宙儀
1 《影槍
-サイドボード(15)-

 適当に組んだものでプレイしていると感触がなかなか良かったので、微調整していって締め切り前にはこの形にたどり着いた。

 基本的には除去コントロールだ。黒単らしく、クリーチャーの生存は徹底的に許さない。ひとまずはメイン1本勝負のランク戦、いわゆるBO1で使おうと組んでみた。BO1はアグロが多いので、これぐらいはクリーチャー除去を徹底したい。

 その除去の中でも新しく加わった《取り除き》は3マナ以下であればプレインズウォーカーも破壊してしまえる万能呪文だ。

 《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》を処理できるので、クリーチャーをあまり出してこないデッキ相手にも腐りにくいのが嬉しいインスタントだ。これと《絶滅の契機》などで盤面を可能な限りに更地にして、ライフを護る。

 《真面目な身代わり》の加入もこのデッキを組む気を起こさせてくれた大きな要因だ。

 緑を使わないデッキで使用できるマナを増やすというのはなかなかに難しいことだが、このゴーレムは色を問わずどんなデッキでもマナ加速としての役割を担ってくれる。しかもブロックに回せるクリーチャーであり、死亡したらドローのおまけ付き。素晴らしいッ。除去って身代わりにその名の通りの仕事をさせつつ、使用できるマナを伸ばしてきたるべき大技へと繋ぐのだ。

 このような盤面をコントロールするデッキにおいて活躍するのはプレインズウォーカーである。そんなわけで身代わりと同じくどんなデッキにも採用出来る無色の面々を取り揃えてみた。

 《大いなる創造者、カーン》はサイドボードに並べたアーティファクトからその場に応じたウェポンをサーチしてくる、武器庫のようなカードだ。

 1枚ずつ解説するとキリがないので軽く触れる程度にするが……パーマネント対策には《魔術遠眼鏡》《隕石ゴーレム》、余裕が出てきたところでアドバンテージ勝負がしたければ《ボーラスの城塞》、とりあえずマナを確保したい場合には《火想者の器》《彩色の宇宙儀》などなど、どれを持ってくるか考えるだけでも楽しい。

 それらの中でメインにも採用している新カードが《精神迷わせの秘本》。

 占術かドローで土地や除去を引き込むのを助けつつ、コストが軽いのでコントロールする動きを阻害せずに使えるのが偉い。4回使用するとカウンターが溜まって追放されてしまうが、4点の回復は対アグロには美味しい。そして、追放されてしまってもカーンの能力でまた手札に加えることができる。手札の内容と質での勝負になった際に、使い減りしない資源として循環してくれるってわけなのだ。

 無色のプレインズウォーカーといえば、ウギンも忘れちゃいけない。《人知を超えるもの、ウギン》、そして再録の《精霊龍、ウギン》!

 どちらも黒単色では不可能なエンチャントへの対処を可能にしてくれる点が素晴らしい。色付きであればアーティファクトもいけるね。戦場に出ればまさしく支配する力を持ったカードで、これらでパーマネントを除去したうえで無事にターンが返ってきたら、スピリットを増産するなり3点飛ばしまくるなり、暴れ回ってやろう。人知ウギンで精霊龍ウギンのコストが軽くなるのは、地味に嬉しい。

 コントロールしきった状況下で《深淵への覗き込み》《地獄界の夢》が揃ったらコンボを決めて勝利だ。ただ、プレインズウォーカーでも十分に勝利までいけるので枚数はどちらも少なめである。特に自分に撃ってドローとして使える《深淵への覗き込み》はともかく、コンボ以外では役目の弱い《地獄界の夢》は1枚に留めている。こんなの都合よく引けるのかというところだが、そこはほら、これまた新戦力である《不気味な教示者》でサーチしてやろう。

 除去を持ってきたり、最悪の場合は土地になったりと、いろいろといぶし銀の役回りをこなしてくれるだろう。3点のライフ損失だけは気を付けて。

 もとはコンボをしたいというところから始まって、結果的には新カードをふんだんに取り入れたコントロールデッキとして完成することとなった。自分で作ったデッキなので当然かもしれないが、とても自分の好みに合っていて回していて楽しいものに仕上がってくれた。サイドボードのチョイスなどまだまだいじれるところはあるので、飽きるまでプレイしてみようかなという所存。

 皆にも、気になったカードを活かせないか?から自分で考えてデッキを作る経験をしてほしいね。結果的に勝てるか勝てないかは別として、その過程での創意工夫こそがマジックを楽しむ上で重要なものだからだ。趣味をとことん突き詰めたデッキを作って、見せてくれよな!

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