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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
緑単ストンピィ(スタンダード)
「ブーンズ」とか「5ブーンカード」と呼ばれるサイクルを知っているだろうか。
そもそも、始めたばかりの方たちのためにサイクルというものから説明した方が良いかもしれないね。マジックは色ごとに役割や得意不得意がある。白は回復する呪文や警戒を持つクリーチャーが多く、青はドロー呪文と飛行を持ったクリーチャーが多いとか、そういう話だ。
で、これら各色の特徴や役割を与えられた同様のコストやレアリティを持ったカードのグループが毎セットに存在している。これがサイクルだ。サイクルは大体はカード名を見ればわかるものが多く、『イコリア:巨獣の棲処』ではアンコモンに《暮れ牙の導師》などキーワード・カウンターを与える導師サイクル、神話レアの《願いの頂点、イルーナ》など3色の変容持ちである頂点捕食者サイクルなどがわかりやすいサイクルだ。
話は戻ってブーンズに。これはマジックの最初期のサイクルの1つである。最初の基本セットにて登場した《治癒の軟膏》《Ancestral Recall》《暗黒の儀式》《稲妻》《巨大化》の5枚がこのサイクルを形成する。ブーンとは加護のことであり、1マナで各色の得意とするもの3つ分の恩恵を受けられるというデザインになっている。
この中で唯一《Ancestral Recall》がレアであり、また再録されていないので日本語名も与えられていない。そりゃあ1マナで3枚ドローはいくらなんでもね……
まあ、このカードは置いておいて、《暗黒の儀式》や《稲妻》はそれを用いることができるフォーマットでは今でもバリバリに活躍する強力なカード。逆に昔から《治癒の軟膏》はカードパワーがガクッと落ちていることがネタにされがちであり、後世にはこれよりも使い勝手の良いカードが作られたり。
このブーンズの中で、強すぎず、かと言って弱すぎもせず、最もバランスの取れたデザインであるため再録回数が断トツで多いのが《巨大化》だ。1マナでクリーチャー1体に+3/+3修整、戦闘中に唱えてそれを有利にする「コンバットトリック」と呼ばれる呪文の中でも最も基本的なカードであり、使いやすい。
リミテッドでは大いに役に立つカードだが、現スタンダードではこの《巨大化》が構築シーンで用いられている光景を久しぶりに目にすることができる。
21 《森》
-土地(21)- 4 《ジンジャーブルート》 4 《生皮収集家》 4 《ヘンジの槌、ファレン卿》 4 《樹皮革のトロール》 4 《恋煩いの野獣》 4 《水晶壊し》 4 《探索する獣》 4 《石とぐろの海蛇》 -クリーチャー(32)- |
4 《巨大化》 3 《剛力化》 -呪文(7)- |
4 《クロールの銛撃ち》 3 《魂標ランタン》 4 《強行突破》 4 《強撃 // 脅威》 -サイドボード(15)- |
これは「緑単ストンピィ」と分類されるアグロデッキだ。単に緑単アグロと呼んでも何も問題はないのだが、緑のこういうデッキはストンピィと呼びたくなってしまう。過去のスタンダードにおいて《ラノワールのエルフ》などの軽量マナクリーチャーと1マナパワー2、2マナパワー3と打点に優れたクリーチャーたちがいる環境で作られることが多かったアーキタイプで、その名の由来は何かを踏みつけるストンプから。獣や象が対戦相手を踏み潰すというイメージからついたデッキ名ってわけだ。
ストンピィは《怨恨》《ガイアの揺籃の地》など優れたカードが存在した時期に頂点を極めた。その頃にも《巨大化》はもちろん使われており、ブロックされたクリーチャーをサイズアップして実質除去として用いたり、通ったクリーチャーに連打して大ダメージをねじ込んだりといった具合に使われていた。
で、このリストに話は戻って……ここでも《巨大化》が4積みされている、こういった構築を目にするのは久しぶりだ。狙うのはスピード勝負。ド短期決着で相手がやりたいことをやる前に叩き潰す! それだけである。サイズに優れたクリーチャーと《巨大化》《剛力化》のみというメインデッキの開き直りっぷりは美しくさえ見えてくる。
そしてクリーチャーのチョイスもまた、この《巨大化》系呪文を活かすためのものとなっている。注目すべきは《ヘンジの槌、ファレン卿》。
何らかのクリーチャーを1ターン目に、そしてこれを2ターン目に出して迎える3ターン目。2体で攻撃してファレン卿の能力解決前に《巨大化》《剛力化》をファレン卿に対して唱えれば、本人のパワーが9になり、一緒に殴っているクリーチャーにもそのパワー分の修整を与えて、サクッと3キルなんてことができてしまうのだ。
2ターン目にファレン卿を出して除去が来なければ勝つ。都合の良い展開かもしれないが、今のスタンダードでは案外、この2ターン目に出したクリーチャーってのはそのままスルーされることが多い。その隙を突いて勝ってやろうという、勝負に出たデッキといえよう。
同じ2マナ圏には《樹皮革のトロール》もおり、こちらは呪禁を得られるので安全に育てて大ダメージという動きを狙える。状況によってどのクリーチャーを巨大化させるかは臨機応変にやっていこう。
《探索する獣》は速攻を持っており、相手の全体除去で盤面がスッカラカンになってしまってもこれを走らせて攻めの手を緩めない。
この獣の軽量版、というのは言い過ぎかもしれないが、《ジンジャーブルート》も良い仕事をする。速攻持ち以外にブロックされなくなる能力のおかげで、これに対して《巨大化》&《剛力化》を全部ぶち込んで強引に一発かますという勝ち方を狙える。
いずれのプランも、相手に隙があれば絶対に逃さないという精神は共通している。
このリストはプレイヤーズツアー・オンライン2にて殿堂顕彰者であるズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitzが使用したものである。いつも奇抜なデッキを構築するズヴィらしいデッキだ。
『ウルザズ・レガシー』なんかの時代の懐かしさも感じられる前のめりにもほどがある「緑単ストンピィ」。今日は何も考えずにクリーチャーを突っ込ませたい、そんな日にこそオススメだ。
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