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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

一見弱いオーラでも…(スタンダード)

岩SHOW

 弱そうに見えるカードというものはある。それが本当に弱いのか、あるいは活かし方で強さを発揮するのかは試してみないとわからない。

 自分では弱いと思い込んでいたものを、対戦相手が華麗に使いこなしてゲームを優位に進めてきて、カード評価が覆るということはマジックに置ける日常茶飯事。勝手に弱いと決めつけていたカードばかりが飛び出してくるので、これは大したデッキじゃないなと油断していると足元をすくわれる。マジックは奥が深い。三本の矢じゃないけれども、1枚1枚はか弱そうに見える60枚でも束になれば勝利をかっさらう強いデッキへと化けるのだ。

 最近のスタンダードではそれを体現したデッキが存在感を日に日に増し、ちょっとしたブームになっている。

Joe Lockhart - 「白単オーラ」
スタンダード (2020年5月20日)[MO] [ARENA]
22 《平地

-土地(22)-

4 《命の恵みのアルセイド
4 《ジンジャーブルート
3 《癒し手の鷹
3 《石とぐろの海蛇

-クリーチャー(14)-
4 《まばゆい神盾
4 《歩哨の目
4 《堅実な立ち位置
4 《ケイラメトラの恩恵
4 《神々の思し召し
4 《きらきらするすべて

-呪文(24)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

2 《浄光の使徒
1 《ドラニスの判事
1 《魂標ランタン
4 《平和な心
3 《存在の破棄
1 《解呪
2 《敬虔な命令

-サイドボード(14)-
Joe Lockhart氏のTwitter より引用)

 

 白単のアグロデッキ。キーとなるのはエンチャント。自身のエンチャントとアーティファクトの数だけクリーチャーを強化する《きらきらするすべて》をはじめとし、修整値は大きくないもののクリーチャーをサイズアップさせる白の軽いオーラをしこたま詰め込む。

 さらにクリーチャーも《命の恵みのアルセイド》《ジンジャーブルート》など、大半を軽くてエンチャントかアーティファクトであるクリーチャーに寄せることで、《きらきらするすべて》の爆発力を大幅に増加させることを狙ったデッキだ。

 この手の「オーラで軽量クリーチャーを強化する」というデッキは、そのクリーチャーをピンポイントで除去されてしまうとカードを一気に複数枚失ってしまうのが大きな弱点だった。その穴を《夢の巣のルールス》の墓地から唱えられる能力で埋めてやろうという形で誕生したわけである。

 除去を恐れずに積極的にオーラを貼っていけるようになったのは、思い切りを大事にするアグロにとっては大きな変化である。またルールスだけではなく《ケイラメトラの恩恵》《神々の思し召し》と破壊不能やプロテクションを与えるインスタントが環境に揃っていることも、デッキを成立させた無視できない要因だろう。

 絆魂を持つクリーチャーにオーラをベタ貼りして毎ターン大幅に回復したり、速攻持ち以外には止められない能力を持った《ジンジャーブルート》で一点突破を狙うかして、殴り合いを制する。

 《まばゆい神盾》でタップして道をこじ開けるのも手だ。この神盾で上昇したタフネスを《歩哨の目》+《堅実な立ち位置》で打点に変換できたなら強い。

 これらのカードはリミテッドでも弱く見えたものだが、それらが手を取り合うことで強力なデッキを生み出すとは思いもしなかったなぁ。

 このタイプのオーラ・デッキにはいくつかのバリエーションがある。先日開催されたアリーナ・オープンでも活躍したようだ。

Patrick Dickmann - 「ボロス・オーラ」
スタンダード (2020年5月24日)[MO] [ARENA]
11 《平地
3 《
4 《聖なる鋳造所
4 《凱旋の神殿

-土地(22)-

4 《命の恵みのアルセイド
4 《ジンジャーブルート
4 《第10管区の軍団兵
3 《障害の幻霊
4 《石とぐろの海蛇

-クリーチャー(19)-
4 《まばゆい神盾
1 《歩哨の目
4 《ケイラメトラの恩恵
2 《神々の思し召し
4 《きらきらするすべて
3 《天使の贈り物
1 《栄光の好機

-呪文(19)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

3 《静寂をもたらすもの
4 《平和な心
3 《敬虔な命令
3 《解呪
1 《栄光の好機

-サイドボード(14)-

 

 赤を散らしたボロス型。《第10管区の軍団兵》というデッキに噛み合ったクリーチャーが加入するのは色を足すだけの価値がある。

 オーラなどの対象になるたびに+1/+1カウンターを得て、占術で無駄なドローを極力避けられるようになる。打点と継戦能力の両面で活躍するエースとなるだろう。これとの相性の良さから、《天使の贈り物》というこれまた一見構築では力不足に見えかねないカードが採用されているのがシブいね。

 オーラを貼ったクリーチャーを手札に戻してテンポを大きくロスさせる《時を解す者、テフェリー》など、各種プレインズウォーカーへの対抗手段として《障害の幻霊》が採用されているのもポイント。

 これと《栄光の好機》が《銅纏いののけ者、ルーカ》などでの相手の逆転を未然に防ぐというわけである。《栄光の好機》、カッコイイじゃないか……。

Edinson Rojas Cieza - 「セレズニア・オーラ」
FNM Standard (Bof3) - Viernes 22 de Mayo / スタンダード (2020年5月23日)[MO] [ARENA]
7 《平地
2 《
4 《寺院の庭
4 《豊潤の神殿
2 《アーデンベイル城
2 《寓話の小道

-土地(21)-

4 《命の恵みのアルセイド
4 《ジンジャーブルート
3 《癒し手の鷹
2 《石とぐろの海蛇

-クリーチャー(13)-
4 《まばゆい神盾
4 《歩哨の目
4 《堅実な立ち位置
4 《ケイラメトラの恩恵
2 《神々の思し召し
4 《きらきらするすべて
4 《成長の季節

-呪文(26)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

2 《巨人落とし
2 《静寂をもたらすもの
2 《魂標ランタン
3 《希望の光
4 《敬虔な命令
1 《戦茨の恩恵

-サイドボード(14)-
mtgmelee より引用)

 

 こちらは緑を散らしたセレズニア型。ほとんど白単の作りではあるが、《成長の季節》を足すことでオーラやインスタントを唱えるたびにドローを得て、手札切れを防ぎながら戦える。ルールスとの組み合わせでアドバンテージ二段構えだ。

 クリーチャーを唱えると占術ができるのも良い仕事をしてくれるはずだ。もとの白単がデッキとして十分に強いので、このようなチョイ足しが肯定されるのである。

 一見弱いものが合わさってひとつの強力なクリーチャーを作り出す、物語性があるという点でも回していて楽しいデッキだ。コモンとアンコモンが主体なので組みやすいという点も初心者向けで良いんじゃないかな。それでいて突き詰める奥深さは他のデッキに引けを取らない、良いデッキだと思う。オーラを束ねて勝利を射貫こう。

 ……と、上記でまとめたかったのだが、無視できない大きな変化がもたらされた。今回紹介したリストは6月1日以前のものである。6月1日の告知にて、相棒のルールは大きく変更された。以前のようにゲーム外から直接唱えるのではなく、一度{3}を支払って手札に加えるプロセスを挟む必要が出た。

 今回紹介したリストはいずれも短期決戦仕様で土地の枚数は少なめなので、ルールスを手札に加えてから唱えるというのを同じターンに行うことは少し難しい。つまり、変化は免れないのだ。

 相棒として使うのは難しくなったので、メインデッキに採用するというパターンはあるかもしれない。以前のようにゲーム外から降って湧いたアドバンテージというわけではなくなるが、盤面を立て直す保険であり、絆魂を持ったアタッカーとしては運用できる。

 また相棒にしないことは、逆に考えれば3マナ以上のパーマネントをオーラ戦略デッキに採用するという選択肢が浮上したということでもある。赤や緑を足したものは《贖いし者、フェザー》や《セテッサの勇者》などを用いたデッキとして再構築される可能性もある。

 今こそ、自分なりのリストを組んでみよう。

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