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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
キメラ(構築譚)
あ、そのカードがそんな仕事をしてそう勝つのか……対戦相手目線から見るとそんな光景が広がる、予想だにしない角度から勝利を手にするデッキを紹介する1週間、本日が最終日だ。ラストは個人的に「このデッキどうやって勝つん?」と頭上に「?」が浮かびまくった体験談で締めくくらせていただこう。
過去にもマジックの思い出話はいろいろとしてきたが、今回は20年前の世界選手権後のお話。2000年の世界選手権で上位に入賞したデッキの中から選ばれた4つは構築済みデッキとして製品化され販売された。これらのデッキに含まれるカードは裏面のデザインが特別仕様で枠の色も金色という、公式戦では使用できないものではあるものの、同様のデッキ同士で対戦する上では特に問題はなく、レア・カードを手に入れにくい中学生にとっては気軽に世界最高峰の舞台で争ったデッキをプレイできるというのはありがたいことだった。
同トーナメントの優勝者であるジョン・フィンケル/Jon Finkelの「ティンカー」デッキが一番人気であることは言うまでもなかったが、僕はそれと併せてニコラ・ラバール/Nicolas Labarreが使用したデッキも手に入れたのだった。
このラバールのデッキがその複雑怪奇な勝ち筋をたどるデッキである。「キメラ」と名付けられたこのデッキは、その名にふさわしくさまざまなカードが組み合わさることで形成されている。それではリストをご覧いただこう。
8 《森》 4 《低木林地》 3 《真鍮の都》 2 《スランの採石場》 2 《ファイレクシアの塔》 2 《高級市場》 -土地(21)- 4 《極楽鳥》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《ティタニアの僧侶》 4 《アカデミーの学長》 1 《セラのアバター》 -クリーチャー(17)- |
4 《悟りの教示者》 4 《菌獣の群落》 4 《アシュノッドの供犠台》 4 《繁殖力》 1 《研磨石》 1 《ヨーグモスの意志》 1 《再誕のパターン》 1 《蛇かご》 1 《押収》 1 《ヨーグモスの取り引き》 -呪文(22)- |
1 《弱者の石》 1 《絶対の法》 1 《防御の光網》 1 《浄化の印章》 1 《オーラの破れ目》 1 《魔力流出》 1 《レイモスの心臓》 3 《ハルマゲドン》 1 《日中の光》 1 《パララクスの波》 1 《ファイレクシアの処理装置》 1 《崇拝》 1 《猛火》 -サイドボード(15)- |
このデッキのキーカードは3つ。《菌獣の群落》《繁殖力》《アシュノッドの供犠台》だ。
この3枚が戦場に並ぶとコンボとなる。以下に手順をまとめよう。
- {1}を支払って《菌獣の群落》を起動し、苗木・トークンを得る
- 苗木を《アシュノッドの供犠台》で生け贄に捧げ、{C}{C}を加える
- 苗木が死亡したので《繁殖力》が誘発、カードを1枚引く
- 引いたカードを捨て、{C}を支払って《菌獣の群落》を起動する。
- 以下繰り返し。
このループを形成することで、好きなだけの{C}を生み出すことが可能となる。ライブラリーを引ききったらそこでループが終わってしまいそうだが、そこは《セラのアバター》で解決。
あらゆる領域から墓地に落ちた際にライブラリーに戻るという能力を持っているので、アバターを捨ててアバターを引くということを繰り返せば無限にマナを生産できる。
このマナを使って《蛇かご》か《研磨石》を起動し、大量の蛇で圧殺するかライブラリーを空にしてドローできなくさせて勝つのである。
何の説明もなしにこのデッキを渡されてこのコンボを決められるだろうか? 中学生の僕にはなかなか難しい問題であった。
このデッキの面白いところは、上記のパーマネント3種以外にも勝ち手段がある点。3種のパーツすべてにアクセス可能な《悟りの教示者》と、うち2種はエンチャントなので《アカデミーの学長》をサーチ手段として用いるのだが、これを利用して他のエンチャントでも勝ちに行くのだ。
相手が強力なパーマネントを出して来たら《押収》し、手札が切れたところから《ヨーグモスの取り引き》で猛チャージして《菌獣の群落》からトークン大量展開で殴り勝つのも良い。
一番わかりやすいのは《再誕のパターン》コース。
死亡するとエンチャントを持ってこられる《アカデミーの学長》を生け贄に捧げるために《高級市場》《ファイレクシアの塔》を用いるのだが、これを使って《再誕のパターン》を貼り付けたクリーチャーを墓地に落として、《再誕のパターン》の能力を誘発させて《セラのアバター》を戦場に降臨させるのだ。ライフに余裕がある状況下で除去が弱い相手には、これで虚を突くのだ。
苗木無限マナもアバター高速展開も、どちらも対戦相手の予想だにしない角度から一撃だったことだろう。この独創性迸るリストで世界選手権トップ8という偉業を成し遂げているのにはただひたすらに恐れ入るばかりだ。
さあ、今週紹介したデッキを見て奇襲的なデッキを組みたくなったのであれば、思いついたアイディアをどんなものでも良いから形にしてみよう。明日のビックリドッキリデッキを組み上げるのは君かもしれないのだから。
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