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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

食物デッキの今を追う(スタンダード)

岩SHOW

 一時期は毎日のように目にした「タピオカ」の四文字もすっかり見かけなくなったもんだ。世の中の流行り廃りとはそういうものなのだろう。

 マジックのデッキ流行というものも似ているのかもしれない。ほら、ほんの少し前まで毎日のように向き合っていたアイツに遭うこと、少なくなったでしょう。あのデッキだよ、ほら、かわいい猫がかまどを前に生と死をさまよいライフをもぎ取る。パンくずを拾って手札を補充し、各種生け贄シナジーでゲームを制する……「フード」とか「サクリファイス」と呼ばれた、食物を中心とした黒緑、ないし赤を足したデッキのことだ。

 ミシックチャンピオンシップ王者にも輝き、ランク戦でも最も当たるデッキだったアイツは、『テーロス還魂記』後のスタンダードでめっきり見かけることがなくなってしまった。『エルドレインの王権』の食物を中心に組まれているデッキなので、新セットの恩恵は受けにくいからだ。それに比べて新カードで強化されたデッキや、全く新しいデッキがあるのだから、多くのプレイヤーがそちらに流れるのは必然と言える。

 ただ、リリースから少し時間が経って一時的な流行りが落ち着くと、既存のデッキが見直されることもあるものだ。今日は忘れた頃に使ってみると楽しく、勝てるかもしれない食物デッキを紹介だ。まずは黒緑2色の「ゴルガリ・フード」から!

Venom1 - 「ゴルガリ・フード」
Magic Online Standard League 5勝0敗 / スタンダード (2020年2月2日)[MO] [ARENA]
10 《
5 《
4 《寓話の小道
4 《草むした墓
2 《ロークスワイン城
-土地(25)-

4 《大釜の使い魔
4 《金のガチョウ
4 《真夜中の死神
4 《残忍な騎士
4 《意地悪な狼
3 《鎖を解かれしもの、ポルクラノス
-クリーチャー(23)-
4 《魔女のかまど
4 《パンくずの道標
2 《影槍
2 《ゴルガリの女王、ヴラスカ
-呪文(12)-
4 《恋煩いの野獣
2 《打ち壊すブロントドン
2 《害悪な掌握
4 《ドリルビット
3 《煤の儀式
-サイドボード(15)-
 

 《大釜の使い魔》を《魔女のかまど》で生け贄に捧げ、生成された食物を使い魔で生け贄に捧げ、戦場と墓地をグルグル回転させる。

 使い魔でブロックしてから生け贄に捧げることで相手の攻撃を受け流し、使い魔の能力でライフ1点を奪う。微々たる1点と言えど、積み重なれば勝負が決する。

 また、使い魔が生け贄に捧げられることで《真夜中の死神》でドローしたり、食物からは《パンくずの道標》でパーマネント・カードを手に入れたりとアドバンテージも得られるので、攻め手が尽きることはない。

 《金のガチョウ》や《意地悪な狼》でも食物を作ったり利用できるので、いろいろなカードが噛み合って無駄になりにくいのがデッキの強みだ。

 この2色型に採用された新カードは《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》!

 4マナ6/6とサイズに優れており、マナを支払えば格闘を行って除去もできる。ダメージを受けるたびに縮んでいくのが難点ではあるが、脱出で再利用できるので安心。しかも脱出後はサイズが驚異の12/12! このデッキの使い魔以外のカードは墓地と関係のないものばかりなので、ポルクラノスの脱出でカードを追放しても何かが破綻することはなく、無理なく運用できる。

 また、戦闘や格闘を重ねてサイズダウンしたポルクラノスをかまどにぶち込んで能動的に墓地に送ってやり、脱出で再出撃させることも可能だ。高い打点を弾き出しづらかったデッキにとって、頼りになる1枚となることだろう。

 ポルクラノスや狼はサイズアップを狙えるが、トランプルを持っていないのが弱点とも言えるので、《影槍》で補ってやるというのはなかなか良いアイディアに見える。《夢さらい》などの呪禁持ちにも触れられるようになるのも大きい。

telsacow - 「ジャンド・フード」
Magic Online Standard League 5勝0敗 / スタンダード (2020年2月2日)[MO] [ARENA]
3 《
1 《
1 《
4 《寓話の小道
4 《草むした墓
4 《疾病の神殿
4 《踏み鳴らされる地
2 《血の墓所
2 《悪意の神殿
1 《爆発域
-土地(26)-

4 《大釜の使い魔
4 《金のガチョウ
3 《僻境生まれの保護者
4 《波乱の悪魔
4 《フェイに呪われた王、コルヴォルド
-クリーチャー(19)-
4 《魔女のかまど
4 《苦悶の悔恨
4 《パンくずの道標
3 《呪われた狩人、ガラク
-呪文(15)-
3 《意地悪な狼
4 《自然への回帰
4 《食らいつくし
4 《パーフォロスの介入
-サイドボード(15)-
 

 お次は「ジャンド・フード」。赤を足したことで色マナのトラブルが発生する可能性は上がったが、リスクに見合うだけの大きなリターンが得られる多色カードが、生け贄シナジーをより強固なものにしている。

 ゴルガリ同様の猫かまどループを形成すれば、《波乱の悪魔》がビシビシと1点ダメージをマシンガンのごとくばら撒き、除去もライフ詰めも任せろと言わんばかりの大活躍。

 また生け贄の親玉とも言える《フェイに呪われた王、コルヴォルド》は打点もアドバンテージも兼ねた食物デッキにとってはパーフェクトな存在だ。

 このジャンド・タイプには《死の飢えのタイタン、クロクサ》が自動的に生け贄に捧げられるので噛み合っているかと、環境初期にトライする形も見られたが、運用が難しかったようで定着はしなかったようだ。

 ただ、クロクサとはベクトルを同じにしつつも、より手札破壊の制度を高めた《苦悶の悔恨》はこのデッキに合っているようで、ネット上でもこれを採用しているリストが比較的多く見られる。

 相手の手札を見てプランを把握するというのはこの手のデッキにおいては大事なこと。重要な生け贄シナジーを妨害する手段や、相手のハードな攻め手をこれで手札から抜き去り、盤面を形成していこう。もし手札に強いカードがないという時でも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を墓地から排除するという使い方もできて無駄にはならないはずだ。憂いを断った状態でコルヴォルドや《呪われた狩人、ガラク》の決め手を戦場に投下せよ。

 サイドボードにも積極的に新カードが採用されているのが面白い。《食らいつくし》と《パーフォロスの介入》はともに対クリーチャー&プレインズウォーカー用の除去として優秀だ。

 《パーフォロスの介入》はエレメンタル・トークンを生成してフィニッシュも兼ねられ、軽いコストで唱えて生け贄をとりあえず確保するという柔軟な使い方ができる点がなんともそそられるね。

 ブームは去ったかもしれないが、またブレイクする可能性は大いにある各種食物デッキ。タピオカだってあのブームは第二次だったのだから、世の中何があるかはわからない。再ブームを巻き起こすのはあなたのリストかもしれない!

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