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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

予想外の……(モダン)

岩SHOW

 マジックというゲームの面白いところはどこだろう。それは……問いかけておいてなんだが、とてもじゃないがこんなコラムでは書ききれない。今日はその中からひとつ、読み・予測の話をしよう。

 ゲームに慣れてきたプレイヤーは、2~3ターンも進めば対戦相手が用いるデッキがどんなものか予測がつくことだろう。スタンダードをやっていて、《》→《ラノワールのエルフ》という動きだとまだ何か絞り切れはしないが、候補はいくつか浮かぶ。次の土地が《根縛りの岩山》だったら「あぁ『グルール』か。あるいは『ティムール』の可能性もあるな」くらいに予測がつくだろう。もしここでラノワールが攻撃しつつ、土地が2枚立てられた状態でターン終了を告げられたら、「クリーチャーで攻めるグルールなのに3マナで何も出してこないってことは《稲妻の一撃》を持っていそう、ここはこちらも簡単に除去されるのはもったいないので大事なクリーチャーは後に出そう」みたいな予測を立てられるだろう。

 これが当たって勝利できれば気持ちがいいし、外れるとくぅ~読み違えたかぁとマジックの奥深さを知れてそれもまた楽しい。すべてを読み切ることは不可能で、予想と全く違うことが起きるというのがマジックの醍醐味ってわけだ。

 時には、それを起こす側に回ってみるのはどうだろう。正統派デッキ同士の読み合いとは全く異なる、相手の「えぇ~?」というリアクションを楽しもう。ミシックチャンピオンシップⅣの全デッキリストを眺めていると、それを体現した作品が見つかったので、ここで取り上げさせてもらおう!

Erich Hellauer - 「予想外のエムラクール」
2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ) モダン部門2勝3敗 (2019年7月26~28日)[MO] [ARENA]
5 《
2 《
1 《
3 《踏み鳴らされる地
3 《燃えがらの林間地
2 《蒸気孔
1 《繁殖池
4 《樹木茂る山麓
2 《吹きさらしの荒野
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート

-土地(27)-

3 《桜族の長老
3 《ウッド・エルフ
4 《原始のタイタン
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール

-クリーチャー(14)-
2 《炎の斬りつけ
4 《遥か見
4 《明日への探索
1 《神々の憤怒
4 《予想外の結果
1 《風景の変容
3 《裂け目の突破

-呪文(19)-
2 《不屈の追跡者
1 《強情なベイロス
3 《外科的摘出
2 《夏の帳
2 《削剥
2 《神々の憤怒
2 《クローサの掌握
1 《引き裂く突風

-サイドボード(15)-

 デッキのキーカードがまず《予想外の結果》という、名は体を表す1枚なのが素敵。

 このデッキのベースになっているのは「タイタン・ブリーチ」。《原始のタイタン》と《裂け目の突破》からついたデッキ名であり、タイタンを裂け目で手札から投げつけることで《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と山タイプの土地を瞬時に複数枚戦場に出すことができ、ヴァラクートの能力を複数回誘発させて3点ダメージをズドドドドと叩き込める爽快感あふれるものだ。

 この「タイタン・ブリーチ」自体が一見、タイタンと《風景の変容》でヴァラクートを噴火させる「タイタン・シフト」に酷似しており、ゆえに虚を突けるデッキだったりもする。そこにさらに《予想外の結果》を乗せるのだから……相手の予想を裏切りまくること間違いなし!

 《予想外の結果》はライブラリーの一番上のカードを公開し、それが呪文であれば唱え、土地であれば戦場に出す。呪文を唱えるためのマナ・コストは払わなくて良いので、とにかく重たくて効果の大きい呪文を唱えたいところ。そこで白羽の矢が立つのが《引き裂かれし永劫、エムラクール》!

 15/15! 滅殺6! 殴ればゲームが終わる超スペックであり、しかも{15}という高コストを踏み倒しているがしっかりと「唱えている」ので追加ターンまで得られてしまう……つまり当たればその場で勝利! 4マナでこれほどまでの効果が得られるカードってのもないもんだ。

 もちろん、エムラクール以外がめくれることもある。それが《原始のタイタン》であればこれは文句がないだろう。ヴァラクートに繋げて山をかき集めて噴火勝ちを狙おう。

 ではそれ以外のカードがめくれた時は? このデッキではその問題を解決するために、意図しないタイミングで使用されても思い通りの効果が望めないカードの採用は最低限にとどめている。つまりはクリーチャー除去のことだ。代わりに他の呪文は土地をライブラリーから探して戦場に出すものばかり。つまり、4マナで最低限土地が伸び、運が良ければゲームに勝てる……そんなギャンブル心にあふれたやんちゃなデッキってわけだ。

 《桜族の長老》《遥か見》《明日への探索》《ウッド・エルフ》などを使って3ターン目に4マナを捻出して《予想外の結果》か、あるいは4ターン目に《裂け目の突破》からタイタン or エムラクールを投げつける、というのがこのデッキがたどりたいシナリオ。

 もちろん、1ターン目《明日への探索》→2ターン目《遥か見》→3ターン目《裂け目の突破》というブン回りも嬉しい。山タイプの土地が5枚ある状態でタイタンが出てヴァラクートを2枚戦場へ、さらに攻撃して山タイプを2枚持ってきてヴァラクートが計4回能力を誘発させて12点+タイタンの戦闘ダメージ6点で18点! 圧倒的破壊力ッッ!

 こんな感じで《予想外の結果》に頼らなくても勝てるデッキなので安心してほしい。真面目にタイタンを唱えても十分に強いからね。土地が計7枚以上ある状態で《風景の変容》からヴァラクート1枚+山タイプ6枚で18点という「タイタン・シフト」勝ち筋もちゃんと仕込んである。

 とにかく都合よく動いて、相手の予想を大きく覆す大惨事を巻き起こせた時は世界の覇者のごとき気分にさせてくれるデッキだろう。予想外の結果》を当てるためにライブラリーの上を操作するカードを仕込んでみるのも良いかもしれない(その分ハズレも増える矛盾を抱えることになるが)。(編集よりお詫び:《予想外の結果》は手順の最初でライブラリーを切り直すため、記載のような動きは意味をなしません。お詫びして訂正いたします。)

 僕も「タイタン・ブリーチ」が好きで使っていたのでよくわかるのだが、このデッキはせっかく《裂け目の突破》を撃てる状況になっても、手札から肝心の大型クリーチャーを《思考囲い》で捨てさせられてコンボが決められない、ということがよくある。また打ち消しを構えられるのもつらい。そこをカバーし得る《夏の帳》がこのリストのサイドにしっかり採用されている点は個人的に好感度がかなり高いね。

 スタンダードでも強い1枚だが、モダンでもかなりやれるカードだと思う。青と黒に苦しめられたら使ってみてほしい。さあ、準備が整ったら、相手の予想を粉砕しに行こう!

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