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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

死者を狩るのは死者(スタンダード)

岩SHOW

 僕は大阪のちょっと都市から離れたところに住んでいる。周りには田んぼが結構あるので、この時期の湿度の高い夜などはカエルの大合唱を耳にすることもある。カエルと言えば、カエルの中には主食がカエルのものがいるのをご存じだろうか。南米の熱帯雨林には多種多様のカエルがあふれており、これらをメインターゲットとして狩りを行うものが出てくるというのも実に自然なことである。ヘビの中にもヘビを主食とするものは少なくない。ある種が繁栄した場合、それを喰らうものが現れる。

 この自然の摂理はマジックにも当てはまる。ある環境において強い動きを持ったデッキが数を増やすと、その強い動きを保持したまま同じことを狙うデッキに対して突き刺さる武器を備えた亜種がたびたび登場するものである。

 現スタンダードでも同様の経緯で同族喰らいのデッキが現れた。そのターゲットは「バント・シフト」。ついこの間このコラムでも取り上げたのだが、原稿提出して数日後に、我らがLSVことルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott Vargasがこのデッキでグランプリ優勝を果たしており、その報で先にこのデッキを知ったプレイヤーも多いことだろう。

 《風景の変容》と《死者の原野》でゾンビを二桁並べる! そのド派手なフィニッシュでメインから対抗手段を持たない多くのデッキに強く、デッキパワーはかなり高い。

 このコンボを搭載し、《成長のらせん》《灰からの成長》《迂回路》で土地を伸ばすという戦略はそのまま用いつつ、同じことを狙うデッキに対してのアンサーを備えたデッキ……そもそも「死者」で勝ちたいのであればこの色だろ!と言わんばかりのリストを、さあ見てみよう。

rex51515 - 「スゥルタイ・シフト」
スタンダード (2019年7月23日)[MO] [ARENA]
2 《
2 《
1 《
2 《草むした墓
1 《森林の墓地
1 《疾病の神殿
1 《ジャングルのうろ穴
1 《ゴルガリのギルド門
2 《繁殖池
1 《内陸の湾港
2 《神秘の神殿
1 《茨森の滝
1 《シミックのギルド門
1 《湿った墓
1 《陰鬱な僻地
1 《ディミーアのギルド門
1 《天才の記念像
4 《死者の原野
1 《爆発域

-土地(27)-

2 《樹上の草食獣
4 《エルフの再生者
2 《虐殺少女
4 《ハイドロイド混成体

-クリーチャー(12)-
4 《成長のらせん
3 《軍団の最期
2 《灰からの成長
4 《迂回路
4 《風景の変容
4 《戦争の犠牲

-呪文(21)-
3 《変容するケラトプス
3 《強迫
2 《夏の帳
3 《喪心
2 《否認
2 《夢を引き裂く者、アショク

-サイドボード(15)-
rex51515氏のTwitter より引用)

 その武器とは黒! 緑と青に、白ではなくゾンビにピッタリな黒を足した……というより黒もかなりメインカラーに据えた「スゥルタイ・シフト」だ。

 なぜ黒を入れると《死者の原野》デッキ相手に強くなるのか? それは同型デッキ戦においてよくあるシチュエーション、

「とりあえず土地8枚以上あるし、《風景の変容》で原野2枚とあと6種類以上の土地持ってきてゾンビ14体とか並べて相手も解答持ってなかったら勝ち!」

 を許さない最強の除去を持つからだ。それは《軍団の最期》!

 これでゾンビ・トークンを1体対象にすると、トークンはすべて同名の「ゾンビ」なのですべてシュワ~サラサラサラ……と消え果ててしまうのだ! たった2マナで何体ゾンビが出てこようが、指を鳴らすように容易く全消滅。

 これは何も守りの時だけでなく、上記の《風景の変容》ぶっ放しに対して「こっちもやってやるって!」と同じく変容で応えてブロッカーとしてのゾンビを展開してきた相手にも突き刺さる。《軍団の最期》は対戦相手のコントロールしているゾンビのみを取り除くので、こちらのゾンビの攻撃を止める肉壁のみが都合よく消滅してくれるのだ。

 この《軍団の最期》の良いところは、同型殺しの必殺技にして、他のクリーチャーデッキ相手にも優秀な除去として働くという点。手札の同名のカードまで吹き飛ばすし、ついでに手札の内容も把握できるので相手のプランも丸裸。急いでコンボすべきか、もっとゆったり最善を狙うべきか考えられるのは◎!

 もうひとつ、黒を緑と並ぶメインカラーにすることで使えるパワーカードが《戦争の犠牲》!

 ありとあらゆるパーマネントを吹き飛ばすこのカードで、相手の《死者の原野》とテフェリーを一緒に叩き割るのは実に気分が良い。《世界を揺るがす者、ニッサ》に対してもニッサ本人+クリーチャー化した土地+土地と、1枚で3枚確実に持って行けるので力比べに対して圧勝することができる! 《戦争の犠牲》、最高!

 これと《虐殺少女》と《ハイドロイド混成体》を組み合わせたデッキを『灯争大戦』発売前に考えていたが、まさか今こうしてそれらが集った完成度の高いデッキが出てくるとはね。嬉しくてたまりませんよハイ。

 個人的には《灰からの成長》を1枚《死の芽吹き》に置き換えた形で遊んでいるが、アグレッシブなデッキに対して耐性を上げつつ、デッキの目標「土地を7種類以上並べる」を後押ししてくれるので好感触だった。

 同族喰らいの土台はできたので、あとはその要素を強めるか、それとも他のデッキにも勝てるようにするか。微調整は皆に託された! 死者にあふれた原野を、さあ生き延びろ。

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