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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
カーンと憎しみの熊たち(レガシー)
「熊」というマジック用語がある。最近始めたプレイヤーには伝わらないことだろう。MTGアリーナのおかげで新規プレイヤーも増えている今、改めてこの言葉の意味を説明しよう。
熊とは、《灰色熊》というかつて基本セットに収録され続けていたクリーチャーが語源。このクリーチャーは緑で2マナ2/2で能力は何もなし。その2マナ2/2というスペックを表すのに、どの基本セットにもいつもいた熊を用いたというわけ。
2マナ2/2、あるいはパワー2のクリーチャーを熊と呼ぶのは日本だけには限らず、英語圏でもBearはお決まりのフレーズだったようだ。能力のあるものだと「熊に毛が生えた程度のやつ」とか言ったりしてね。
熊の中でも、時折やたらと強い能力を持ったレアが出現する。2マナでパワー2と最低限殴りにいけるスペックを活かして、それらの熊はアグレッシブなデッキにて大いに活躍してきた。中でも対戦相手の行動を阻害する能力を持った熊は特に強い。モダンやレガシーではそれらの熊を集めた白を中心としたビートダウンデッキが組まれることがよくある。相手の特定の行動に対して憎しみを込めたレベルで嫌がらせする熊たちが集結する様から「ヘイトベア」なんてデッキ名で呼ばれることもある。
今日紹介するのはレガシーの「ヘイトベア」である。しかも『灯争大戦』で登場した新プレインズウォーカーをガッツリと4枚採用したものだ。ギデオン?違うんだな~これが。熊たちと共に、対戦相手のあるカードに対して強烈なアンチカードとして働くあのお方だ。
もうわかったかな? それじゃあ、その全貌を明かそう。
9 《平地》 3 《カラカス》 4 《古えの墳墓》 4 《幽霊街》 4 《不毛の大地》 -土地(24)- 4 《ルーンの母》 4 《レオニンの裁き人》 4 《ファイレクシアの破棄者》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 2 《異端聖戦士、サリア》 2 《宮殿の看守》 -クリーチャー(20)- |
4 《霊気の薬瓶》 4 《剣を鍬に》 3 《密輸人の回転翼機》 1 《梅澤の十手》 4 《大いなる創造者、カーン》 -呪文(16)- |
1 《古えの居住地》 1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《歩行バリスタ》 1 《トーモッドの墓所》 2 《外科的摘出》 1 《真髄の針》 1 《梅澤の十手》 1 《議会の採決》 1 《世界のるつぼ》 2 《ハルマゲドン》 1 《戦の惨害》 1 《マイコシンスの格子》 1 《虚空の杯》 -サイドボード(15)- |
《スレイベンの守護者、サリア》《レオニンの裁き人》《ファイレクシアの破棄者》といった優秀な熊と、
熊ではないが妨害能力持ちアタッカーである《異端聖戦士、サリア》で相手の行動を邪魔しまくり、彼女らへの除去は《ルーンの母》で封じる。典型的なヘイトベアの形だ。
そこに加わった新戦力こそ……《大いなる創造者、カーン》!
典型的なアーティファクト中心のデッキで使いそうなデザインではあるが、これを白単のクリーチャーデッキと組ませるとは面白いアイディアだ。レガシーで起動型能力を持ったアーティファクトと言えば、大きく3つ。
- 《モックス・ダイアモンド》《厳かなモノリス》《ライオンの瞳のダイアモンド》や《霊気の薬瓶》など、マナ加速やクリーチャー展開を助けるもの
- 《梅澤の十手》《火と氷の剣》などの装備品
- 《丸砥石》《Candelabra of Tawnos》などのコンボパーツ
これらをカーン1枚でまとめて封じることで、ゲームが随分楽になる。熊たちと絡めることで、デッキの息の根を止めてやろうってわけだ。
もちろん、妨害能力だけでなくサイドボードからアーティファクトを持ってこれる能力も見込んでの採用だ。クリーチャーデッキ相手には《梅澤の十手》《歩行バリスタ》でなぎ倒す。土地を用いて何かしようというデッキには《世界のるつぼ》で《不毛の大地》と《幽霊街》を使いまわして完封。墓地利用デッキにはもちろん《トーモッドの墓所》……といった具合に、場面場面に応じてベストなカードが得られるようになっているぞ。
中でも最も使ってみたい1枚は《マイコシンスの格子》。
これが戦場に出るとすべてのパーマネントがアーティファクトになる。ってことは……相手のクリーチャーやプレインズウォーカーも能力を起動できなくなり、そして土地も完全に沈黙! 死のロック状態に持ち込んでしまえるってわけだ。
また、地味ながら[+1]能力の使い道も用意されているのがこのデッキの素敵要素。《密輸人の回転翼機》をこの能力でクリーチャー化させても、飛行を持っているし、攻撃 or ブロック時に誘発する能力が機能する。搭乗にクリーチャーを回さなくても戦闘に参加させられる、本当に地味なんだけども「おぉ~」となるシナジー、こういうの大好き。
サリアで非クリーチャー呪文のコストを増やしたり、アナザーサリアでクリーチャー展開を足止めし、《幽霊街》+《レオニンの裁き人》で土地基盤を破壊する。厄介な起動型能力は《ファイレクシアの破棄者》やカーンで止めて……という堅実な動きからマイコシンスをドーンという派手なトドメに繋げる、とても楽しそうなカーン入り「ヘイトベア」。デッキのアイディアはプレイヤーの数だけあるということを、今一度思い出させてくれた逸品だ。
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