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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ワールドゴージャー(レガシー)
一番好きなマジックのアートは?という質問に答えるのは難しい。あれが良いなというと同時に、同じ時代のあのカードも好きだなと思い出し、それが連鎖的に続いていく。本当に、良いアートが多いのだ。
僕がマジックにハマったきっかけも、そのかっこよくて味わい深いアートの世界に魅了されたからだ。好きなアーティストは?と聞かれるのも難しいが、何人か候補を挙げることはできる。
ウェイン・イングランド/Wayne England氏は『オデッセイ』や『オンスロート』のころに目立ってきたアーティストだ。彼の作品は、一目見て彼が描いたものとわかる独特なタッチが魅力だ。難しいことは言えないが、エッジの効いた、とでも言おうか。クッキリと輪郭が描かれ、鱗や爪、角など硬質な部分のテカりがその質感を連想させる感じが好きだね。
中でも《世界喰らいのドラゴン》は最高だった。
それまでのマジックのドラゴンのイメージとは大きく離れた、爬虫類としてのリアリティが強めなデザインは一度見たら忘れない。ルビーのような色合いの鱗に、淡いピンクの腹も美しい。
そして、カード自体のデザインも良い。6マナ7/7飛行・トランプルという規格外のスペックの持ち主! 今でも十分に強いサイズだが、当時はそれはもうずば抜けた戦闘力である。
他のクリーチャーの2段階くらい上を行くスペックだが、もちろんデメリットもとてつもない。戦場に出ると、自身のコントロールしているパーマネントを根こそぎすべて追放してしまうという、世界喰らいの名に恥じぬ大食いっぷりでプレイヤーを困らせる。
これが戦場を離れれば、食していた世界は吐き出されパーマネントは帰ってくるのだが……実はこれが厄介なもので。戦場に出てパーマネント追放能力が誘発、これがスタックに置かれて解決される前にドラゴン自身が除去されてしまうと、何も追放していないのにパーマネントが帰ってくる能力が誘発し、先に解決される。その後でパーマネントがすべて吹っ飛んで、これらを取り戻す方法はない。終わりだ!
というわけで、当時カッコイイからという理由だけで赤いデッキに入れていたが、ほとんどの場合このケースに陥って投了をしていた記憶がある(笑)。アホのような負け方だが、たまに生き延びて2パンくらいして勝つととてもつなく気持ちよかったものだ。
この大好きな《世界喰らいのドラゴン》が、ある恐ろしいデッキを生み出していたと知るのは後のことである。カード名からとって「ワールドゴージャー」と呼ばれたコンボデッキの動きは、以下の通りである。
- 世界喰らいを墓地に落とす。
- それを《動く死体》で対象に取り、戦場に戻す
- 世界喰らいが戦場に出たことで、能力が誘発。自身のパーマネントがすべて追放される。これにはもちろん《動く死体》も含まれる
- 《動く死体》が戦場を離れたことで、世界喰らいは生け贄に捧げられ墓地へ
- 世界喰らいが戦場を離れたので追放された《動く死体》が戻ってくる。2.に戻る
2.から5.の動きは無限に繰り返される。このループの中で、戦場と追放領域を出入りする土地はその都度アンタップ状態になる。つまり、合間にマナを出せば好きなだけマナを得ることができるというわけだ。
あとは大量に得たマナを、《ギトゥの火》や《天才のひらめき》など、インスタントタイミングで使用できるX呪文に注ぎ込んで一撃必殺!
そのコンボの特性上、世界喰らい以外に《動く死体》で対象に取れるクリーチャーがいない場合にはソーサリーを唱えるタイミングがやってこないため、インスタントを用いるというわけだ。《シヴのヘルカイト》のような別のフィニッシャーを釣ってループを止めて無限マナで勝つというルートもある。
勝ち手段はどうであれ、割とお手軽に無限マナを得られるということで、一時期のヴィンテージにおいて台頭することとなった。レガシーではフォーマット制定と同時に禁止カードとなっていたが、同フォーマットにはこのコンボに対抗する手段=《剣を鍬に》などのインスタント除去などが豊富にあるため、問題なしということで2015年に禁が解かれた。
この予測通りに、簡単に妨害されるために同コンボを主軸としたデッキが暴れるということはなかった……が、これをサブの勝ち手段に据えたデッキはたまぁ~に見ることがある。玄人好みのコンボであり、かつ個人的に大好きなカードが主役なので、そういうリストと出会う貴重な機会があると思わずニンマリ。
それじゃあ、そのリストを見てみよう!
2 《島》 2 《沼》 3 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 1 《Bayou》 4 《汚染された三角州》 2 《霧深い雨林》 3 《新緑の地下墓地》 -土地(18)- 4 《悪意の大梟》 3 《瞬唱の魔道士》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《世界喰らいのドラゴン》 1 《グリセルブランド》 1 《墓忍び》 -クリーチャー(11)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 3 《思考囲い》 4 《納墓》 1 《致命的な一押し》 4 《動く死体》 3 《突然の衰微》 2 《トーラックへの賛歌》 4 《意志の力》 1 《天才のひらめき》 1 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(31)- |
2 《真の名の宿敵》 1 《トレストの使者、レオヴォルド》 3 《根絶》 2 《狼狽の嵐》 2 《暗殺者の戦利品》 2 《湿地での被災》 1 《トーラックへの賛歌》 1 《梅澤の十手》 1 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
《トーラックへの賛歌》などの手札破壊を《瞬唱の魔道士》で連打、《悪意の大梟》でアドバンテージを取りつつ相手の攻撃を抑える、パーマネントには《突然の衰微》……
一見スゥルタイ(青黒緑)カラーのコントロールデッキだが、《納墓》と《動く死体》によるリアニメイトを勝ち手段として採用している。
多くの場合《グリセルブランド》を釣り上げてそのサイズと鬼のドロー能力、絆魂でゲームを支配して勝つのだろうが、相手が土地を全てタップしている、除去を《稲妻》《致命的な一押し》に頼っているなどという場合には、世界喰らいを一本釣りして瞬殺コンボを狙いにいく。無限マナからの《天才のひらめき》で相手にライブラリーの残り枚数より多いカードを引かせて勝利だ。
このデッキの良いところは、手札に《天才のひらめき》がなくても戦場に《悪意の大梟》がいればコンボを始動させれば勝てるという点。
梟が出入りしてその都度カードを引けるので、いずれはひらめきにたどり着けるというわけだ。これは楽しそう!
弱点を簡単に突かれる脆いコンボではあるが、きちんと事前準備してやれば勝利をもたらしてくれるのも事実。不利な状況から一気に逆転できるってのは魅力的だね。リスクなくして勝利なしの精神で、開き直れる猛者にはオススメしたい!
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