READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

Knights & God(スタンダード)

岩SHOW

 今回のプロツアーは、最新セットが発売されてから1か月経ってからの開催だった。いつもは2週間後なので、純粋に準備期間は倍。こうなるとどのようなことが起こるのか。

 最も大きいのは、カードやデッキの評価が共通認識になるということ。従来のプロツアーでは、まだまだ新セットがスタンダードにもたらすものが何なのかわかりきっていない中でデッキを構築し対戦することになる。発売前に噂されていたあのレア・デッキは本当に強いのか? 各々のプレイヤーが総力を結集し、短期間で築き上げたデッキを持ち込んでの答え合わせ……そういうドキドキ感があった。

 発売後1か月経って、その期間中にスタンダードのグランプリも開催され、本当に強いデッキ……今回の場合は赤黒が強いということが全プレイヤーの共通認識となった状態での本番。これはこれで、果たして最強と言われるデッキを使うのか、あるいはあえて別のデッキを使うのかというプレイヤーたちの選択が見られたり、本当に強いデッキ同士での対戦だからこそどこで差をつけるのか、という技術的な面を見る面白さがある。

 でも、毎度プロツアーで出てくる謎のデッキ・変なデッキがを見るのが好きなデッキマニアにとっては、そういうものがあまり出てこないのが少し寂しいね! とは言っても、「緑青カーン」のように独創的なリストを作り上げてくれるプレイヤー・チームがいるのは嬉しいね。

 今日紹介するのも、プロツアーで用いられた意欲的な構築のデッキだ。トップ8には残れなかったが、7名が使用し6名が2日目に進出していた。使用者の中にはプロツアー『イクサラン』トップ8入賞のオンラインからやってきた強豪、ピオトル・グロゴウスキ/Piotr Glogowskiの名もあった。彼が使用したリストを見てみようじゃないか、そのデッキは「エスパー・ベナリア」!

Piotr Glogowski - 「エスパー・ベナリア」
プロツアー『ドミナリア』 スタンダード部門 6勝4敗 (2018年6月1~3日)[MO] [ARENA]
3 《平地
2 《
4 《孤立した礼拝堂
4 《秘密の中庭
4 《灌漑農地
4 《氷河の城砦
4 《異臭の池
-土地(25)-

4 《善意の騎士
4 《悪意の騎士
1 《人質取り
3 《スカラベの神
2 《歩行バリスタ
-クリーチャー(14)-
4 《致命的な一押し
2 《喪心
4 《ベナリア史
4 《排斥
2 《キランの真意号
3 《試練に臨むギデオン
2 《ウルザの後継、カーン
-呪文(21)-
2 《陽光鞭の勇者
1 《黎明をもたらす者ライラ
2 《強迫
3 《否認
2 《アルゲールの断血
1 《喪心
1 《無情な略奪
2 《燻蒸
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー
-サイドボード(15)-
 

 メインデッキはほとんど《ベナリア史》を軸にした白黒の騎士ビートダウン。《善意の騎士》《悪意の騎士》と、白と黒に対する除去耐性を持った軽量の騎士を並べ、《ベナリア史》のⅢ章能力で強化して殴る!という、わかりやすくマジック初心者にもオススメしたいデッキのひとつだ。

 このデッキはエスパー(白青黒)ということで、青を足してある。その理由は……環境でも屈指のパワーカード、ゲーム終了を告げる者《スカラベの神》を使うためだ。

 なんとまあ貪欲なね。なぜ、騎士でもない神がこのデッキに足されたのか? それは「息切れに強い」ため。ビートダウンデッキは、序盤から手札をバンバン切って対戦相手にダメージを与えていく。この手のデッキの宿命として、相手に耐えられてしまった際にこちらは手札がほとんどなく、追撃できない=息切れしてしまうことが挙げられる。

 これは無視できない弱点で、だからこそ多くのデッキはこれを防ぐためにプレインズウォーカーを採用したりする。このデッキでも《試練に臨むギデオン》《ウルザの後継、カーン》を採用している。

 が、これでは足りない。ギデオンはアドバンテージに繋がるタイプのカードではなく、どちらかと言えばクリーチャー枠。カーンは、アーティファクトが少ないこのデッキではフルパワーというわけではない。なので、《スカラベの神》だ。墓地のクリーチャーをゾンビとして蘇らせ、ゾンビの数だけ相手のライフを失わせる。余りがちなマナを打点に変換でき、カード1枚で2枚以上の働きが見込め、自身も5/5で死亡しても手札に戻ってくる……非の打ちどころがない! 騎士たちが頑張った後に「親方、出番ですよ」と……良いデッキだなぁ。

 サイド後は《燻蒸》など、対戦相手に干渉する類のカードが多めに採られている。どういうことかわかるよね、そう、サイド後はコントロールデッキに切り替えることができる、可変式のデッキでもあるのだ。

 対戦相手が騎士に対抗するために入れたカードの狙いを外しつつ、より強固なデッキになると。こういう一見無茶に見える構築を支えているのが、現スタンダードにある土地の数々。白黒デッキとして無理なく動けて、ちゃんと青マナが得られる……もちろん、毎回完璧な動きができるわけではないが、そういう事故でゲームを落とすリスクより、スカラベで勝つリターンの方が大きいと踏んだわけだね。

 赤黒大隆盛という結果になったプロツアーだったが、プレイヤーたちが挑戦をやめたわけではなかった。そう考えながら今大会のデッキリストを眺めていると、何か得られるものがあるかもしれないよ。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索