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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

グリクシス・デルバー(レガシー)

岩SHOW

 4月16日、定期的に行われる禁止改定の発表があった。今回はすべてのフォーマットで変更なし(※)、この結果に胸をなでおろすプレイヤーも少なくなかっただろう。ほとんどの環境が問題なく健全な状態にあると判断されたのだろう。実際そうだとは思うが、1枚だけもしかしたら……と思っていたカードがあった。《死儀礼のシャーマン》だ。

(※実はMagic Onlineオリジナルフォーマットの「1v1 Commander」は環境が大きく変わる変更を受けている! いつか紹介するとしよう)

 レガシー環境における《死儀礼のシャーマン》というカードは、プレイヤー間で度々「環境を支配しているんじゃないか?」と議論される。実際にトーナメントの結果を見ても、このカードを採用しているデッキが上位にゼロ、なんてことはここ数年あり得ないレベルの話。

 黒および緑のカードで、色とタイプを活かしてエルフ・デッキの核にもなっているが、現在最も一般的な使われ方は青と組むこと。《Underground Sea》と《Tropical Island》があれば、このカードを運用することは容易い。それらをサーチする《汚染された三角州》などのフェッチランドもあれば、1ターン目死儀礼を出しながら《目くらまし》を構えるという動きには何の苦労も必要ない。

 土地を切り詰めた青いデッキのマナ基盤を支え、唱え終わった呪文を2点ダメージに置き換え、ピンチにはライフ回復もできる……この完璧超人が今回の改定で禁止になるのでは?という風潮をいい意味で裏切って、死儀礼はレガシー環境に残り続けることとなった。

 というわけで、このカードを用いた青いデッキのことを改めて知っておかねばならない。それらの中でも最もメジャーで、かつ勝ち星を挙げまくっている「グリクシス・デルバー」を見てみよう!

Daniel Duterte - 「グリクシス・デルバー」
グランプリ・シアトル2018(レガシー) 優勝 / スタンダード (2018年4月6~7日)[MO] [ARENA]
3 《Underground Sea
2 《Volcanic Island
1 《Tropical Island
2 《汚染された三角州
2 《沸騰する小湖
2 《霧深い雨林
2 《溢れかえる岸辺
4 《不毛の大地
-土地(18)-

4 《死儀礼のシャーマン
4 《秘密を掘り下げる者
3 《若き紅蓮術士
2 《真の名の宿敵
2 《グルマグのアンコウ
-クリーチャー(15)-
4 《渦まく知識
4 《ギタクシア派の調査
4 《稲妻
4 《思案
2 《呪文貫き
1 《二股の稲妻
4 《目くらまし
4 《意志の力
-呪文(27)-
2 《外科的摘出
3 《陰謀団式療法
2 《紅蓮破
1 《狼狽の嵐
2 《悪魔の布告
1 《削剥
1 《古えの遺恨
1 《湿地での被災
1 《四肢切断
1 《最後の望み、リリアナ
-サイドボード(15)-
 

 3色デッキが土地18枚で、そのうち《不毛の大地》が4枚という構成でも安定して動けるのは、やはり死儀礼のサポートあってこそ。しかしながらいつでもこのカードを引けるわけではないので、なしでも動けるようには設計されている。《渦まく知識》《思案》という1マナドロー、《秘密を掘り下げる者》という1ターン目に出せるメインアタッカーがそれを可能にしているのだ。レガシーでは軽さが正義!

 デッキを構成するカードを改めて見返して思うのだが、このデッキの良いところはパッと見て役割が分からないカードがないという点。構成要素は大きく分けてクリーチャー・ドロー・打ち消し・火力。初めて使う人でも、クリーチャーを出して殴って、相手の動きは打ち消してクリーチャーは焼けば良いんだな、ということがわかる。狙いはシンプル、《死儀礼のシャーマン》はデッキの核ではあるが依存はしていない。だから、このデッキは現レガシーで最も使用される強力デッキの1つとなったのだ。

 デッキの動きは、先述の通り。軽いクリーチャーを出して、相手の動きを弾いていってさっさとゲームを終わらせる。短期決戦狙いのデッキだ。ドロー呪文があると言っても、それらは手札の枚数を増やしてくれるものではなく、アドバンテージを稼げる《コラガンの命令》のようなカードもない。ゲームが長引いて、相手がアドバンテージ勝負を仕掛けてきたら……打ち消すことができない限り、苦しい戦いを強いられることになるだろう。

 《秘密を掘り下げる者》を《昆虫の逸脱者》へと速やかに変身させ、3点3点と刻んでいく。同時に《若き紅蓮術士》も展開し、《目くらまし》《意志の力》で打ち消すと同時にトークンを得て、対戦相手にプレッシャーをかけていく。インスタントとソーサリーを連打し、フェッチランドと《不毛の大地》を生け贄にして墓地にカードが溜まったら《グルマグのアンコウ》の探査コストに充てて高速展開! 《稲妻》を本体に投げたり死儀礼の能力も使って、相手が態勢を整える前に一気にライフを削りきろう!

 強いデッキであり、シンプルなので初心者にも勧められるデッキではあるのだが……これで勝ち切るには熟練度が必要なことも確か。どんなデッキ相手にどの呪文を通してはまずいのか、《意志の力》で打ち消すべきものは何か? ある程度明確なプランがないと、安定して勝ち続けることは難しいだろう。同型対決、いわゆるミラーマッチも難しいとされ、強いのはわかっていてもあえてこのデッキを使用しないことを選ぶプレイヤーも。

 すべては練習、とにかく練習して経験を積むのみってことだ。そういう意味では、とても健康的なデッキと言える。リストは洗練されているので、奇抜なカードをぶち込んで自分なりに改造する……というよりは、どう立ち回るかを身に着けることに重点を置いてみよう!

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