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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:疫病/The Plague(思い出話編)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:疫病/The Plague(思い出話編)
by 岩SHOW
今回のデイリー・デッキは、第365回目。書いちゃっていいのかわからないが、本来ならもっと早く終わる予定の企画だった。真の意味でのデイリー、1日1更新換算した場合の一周年をこうして迎えることができたのは、日々このコラムを読んでくれる皆様のおかげです。I love you guys!! ここまで支えてもらったお礼と言ってはなんだが、もっともっと頑張らなくちゃ。これまでのように、現在進行形で活躍しているデッキ・マジックの歴史にその名を刻みつけたデッキを紹介していくのはもちろんだが、もっといろんな企画をやれたら良いなと考えている。デッキ紹介に留まらない、何か新しいデイリー・デッキの形を模索したいなと。今日はそんなチャレンジの一環として、今までとは趣が異なるデッキ紹介を行いたいと思う。
あれは13歳のころ。中学1年生、小学生のころよりも自由度は上がって、しかしやらなくてはいけないことも増えた、何とも言えない時期である。高校生ではないのでアルバイトはできないが、小学生に比べて格段にお金が欲しくなる年頃。この時期にちょうど音楽にもハマりだしたし、ジーパンも欲しい。お年玉をしっかりと貯金し、家の仕事を手伝うことで得た駄賃で、なんとかやっていこうと。ゲームソフトも長く遊べるものを貸し借りしながら、それなりの楽しい日々を送っていた。
このころ、日本ではカードゲームが今まさに流行せんと、その夜明けを迎えているような時期だった。僕はいつものように在庫処分セールになっているプラモデルを物色しようと、町のおもちゃ屋に友人と繰り出していた。自分が小学生の頃に買ってもらえなかったものを、自分のお金で購入する喜びを味わいに......今考えると老後の趣味かよとも思えるような行為だが、これが運命的な出会いに結び付くのだからわからないものである。
むちゃくちゃ安くなっていたプラモを店主のおっちゃんに手渡して、レジを打ってもらっている際に、カウンターに見慣れないものが並んでいるのに気が付いた。それは、白い身体に黒い外骨格のような顔、白目と独特のポージングが印象的な《高みのドラゴン》が印刷された『エクソダス』のブースターパックだった。
それがマジックとの初遭遇だった。外国産のカードゲームだとおっちゃんは言う。これが妙に気になってしょうがなかった。これまで同じ店に何度も足を運んでいるのに、全く気が付かなかった。あるいはおっちゃんがこの日に限って目に付く場所に陳列を変えたのか、定かではないが、初めて目にしたそれが気になってしょうがない。
カードゲーム自体はそれまでにもやったことはあった。そして、自分の性にもあっていることはわかっていた。あのドラゴンのイラストだけで、実際にカードに触れずとも「自分はマジックをするべきだ」と奇妙な使命感に駆られていた。それにはまず仲間が必要不可欠。中学生活を送るうちに段々と馴染んできた友人、小学校の時からずっと仲の良かった友人らに、持ち掛けてみることにした。「マジックっていうカード、せぇへん?」と。
まずは実際にものを見てみないことには始まらない。僕らはそのおもちゃ屋に向かうことにした。いらっしゃいと迎えるおっちゃんの傍には、前回のあの白黒のドラゴンとは違うデザインの箱とパックが置かれていた。新商品、『ウルザズ・サーガ』だ。それぞれの箱のデザインは、僕らがそれまで目にしたそういったゲームとは全く異なるもので、各々の心を鷲掴みにした。そして、後日皆でお小遣いを手に、それぞれのデッキやパックを購入した。はじめは構築済みデッキがカードが揃っていて良いという話をおっちゃんから聞いたので、僕はその中でも最もグッときたデザインの箱を手に取った。「疫病/The Plague」だ。
12 《沼》 7 《平地》 3 《漂う牧草地》 2 《汚染されたぬかるみ》 -土地(24)- 3 《優雅の信奉者》 3 《卑しき死者》 3 《ガラクタの壁》 1 《肉裂き怪物》 1 《血の臣下》 1 《聖域の守護者》 1 《暗黙の付添人》 3 《優雅の声》 -クリーチャー(16)- |
1 《病めるもの》 2 《解呪》 2 《お粗末》 2 《黒の防御ルーン》 2 《抹殺》 1 《オパールの立身像》 1 《最下層民》 4 《黒死病》 1 《汚れ》 1 《崇拝》 2 《ウルザの鎧》 1 《堕落》 -呪文(20)- |
初めてにして、らしいデッキを選んだというべきか、テクニカルすぎるものに手を出してしまったというべきか。とにもかくにも、ルールはわからないがカードの見た目が最高にクールで、こんなにもカッコイイものを手に入れたという喜びは何にも勝るものだった。とにかく、ルールがわからないなりにカードのテキストと、小冊子をひたすらに読み込んだ。当時の小冊子は本当に小さなもので、しかしながらそこにはワクワク感が詰まっていた。ウルザと彼の関わるストーリーも簡単に解説されており、背景世界が存在するということ自体にテンションが跳ね上がった。そして、ウルザの宿敵・ファイレクシアの存在。疫病デッキにはファイレクシア産のカードが多数。これに心が躍らないわけがなかった。
そこからは友人らで、四苦八苦しながらルールを学びながら対戦。カードタイプを理解し、戦闘に関するルールを理解し、ターンの開始から終わりまで何をどの順序で行うのかを理解するのに、相当な時間を要した。何せ、『第5版』のスターターに付属していた、これまた極小のハンドブックしかそれを知る術はないからだ。多大なる時間をかけ、理解するまでの間、僕はひたすらにゲームに負け続けた。他のメンバーの選んだ「速攻」「眠りし者」はとにかくクリーチャーがデカい。それらに成す術もなくやられて、ただただ苦痛だった。
しかしルールを把握し、小冊子を読み込み、このデッキが《黒死病》による盤面のコントロールを狙っているということがしっかりと理解できた時、それまでのゲームと以降のゲームでは世界が変わった。
こちらはプロテクション(黒)を持つクリーチャーを展開し、同時に《最下層民》《ウルザの鎧》などのダメージを軽減するパーマネントを設置したうえで、《黒死病》の能力を毎ターン複数回起動。自分の戦場には被害がなく、相手のクリーチャーはバッサバッサと倒れていく。快感だった。荒廃の王、ヨーグモスの力を振るったような気持ちになれる。
これほどまでに、カードとカードの組み合わせでさまざまなことができ、デッキ構築の時点から楽しいゲームがあっただろうか。パックを購入し、使ってみたくなるカードをデッキに投入。不要だったり、自分のデッキと色が合わないものは友人とトレード。こうしてデッキをより自分好みに変えていって、そして迎えたある日。『ウルザズ・レガシー』の発売だ。続編が出た! その事実がまた胸を焦がす。金属とまじりあったような肉塊が描かれたデッキを手に取る。「ファイレクシア強襲」。これしかないだろう。
かくして少年はマジックという世界最高のゲームに出会い、そして19年後にはそれのおかげでご飯が食えているという......改めて、自分にとってマジックがいかに大事なものなのかということを、こうして振り返ることで再確認できたのでした。いや~、次の20年後には一体どのような気持ちで今この時を振り返るのだろうかね。それまで、僕もマジックもずっと元気で、変わらずあり続けたいと心から思う。皆にとっても、いつまでもあり続け、いつでも遊べる、そんなゲームになってくれたら良いね。マジック:ザ・ギャザリングは天下のものである!
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