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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Depth Still(レガシー)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Depth Still(レガシー)

by 岩SHOW

 マリット・レイジとは何者か。それは氷河期のテリシア大陸周辺の海底で眠りについていたとされる。それは《Brine Shaman》たちに崇拝されていた。それはクラーケンのような姿をした巨大なる女神であるという。それはかつてドミナリアに破壊と災いをもたらした。それはプレインズウォーカーではないが、次元間を移動する能力を持っている。そしてそれは......氷河期終結後、どこでどのようにしているのか、明らかにされていない。

 しかし、我々は知っている。地球のプレインズウォーカーたちの呼び声に応えて、彼女は次元を越えてやってくる。レガシーというフォーマットにおいて、《暗黒の深部》からマリット・レイジを降臨させるコンボは一定数のプレイヤーによって愛され続けている。お手軽に決まって、そして勝ち方として魅力的だ。20/20飛行・破壊不能という途方もないスペックのクリーチャーを呼び出して一撃で打ち倒すという冒涜的な行為は、人を虜にする。もちろん、完璧な勝ち方・コンボではないのだが、だがそこもまた良いというか。今日はそんな数多あるDepth系コンボデッキの中から、最新の意欲作を紹介しよう。「Depth Still」だ。

Graham King - 「Depth Still」
Chiba Legacy GPT at The Tabernacle at Ascot Vale トップ8 / レガシー (2016年11月5日)[MO] [ARENA]
2 《
1 《
3 《Underground Sea
4 《汚染された三角州
1 《トレイリア西部
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
4 《不毛の大地
4 《演劇の舞台
4 《暗黒の深部

-土地(25)-

4 《吸血鬼の呪詛術士

-クリーチャー(4)-
4 《モックス・ダイアモンド
4 《渦まく知識
4 《思案
3 《探検の地図
3 《思考囲い
2 《呪文貫き
4 《行き詰まり
2 《世界のるつぼ
1 《直観
4 《意志の力

-呪文(31)-
4 《真髄の針
3 《夜の戦慄
2 《狼狽の嵐
2 《外科的摘出
1 《毒の濁流
2 《この世界にあらず
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale

-サイドボード(15)-
mtgtop8.com より引用)

 青黒の2色でまとめられているのがなんともマリット・レイジ感があって美しい。最近ではこのDepthコンボは何かしら他の勝ち手段があるデッキへのハイブリッドという手法が取られることが多かったが、今回紹介するデッキはマリット・レイジ一本気。以前にも同じDepthコンボという一振りの太刀で勝負するデッキ「Hex Depth」を紹介したが、あのデッキは青黒緑と3色のデッキであり、《輪作》《森の占術》と緑の土地サーチ呪文を多用していた。今回はそれとは全く異なるアプローチのデッキとなる。

 そもそも、Depthコンボとは何か振り返っておこう。《暗黒の深部》は、本来10個の氷カウンターを合計30マナ支払って取り除くことでマリット・レイジ・トークンを生成するという気の長いカードである。これをズルして一瞬でカウンターを0にしちゃおうというわけだが、その方法は2つある。

 1つは《吸血鬼の呪詛術士》を用いるもの。どんなパーマネントの上からでもあらゆるカウンターをすべて追放する呪詛術士の能力を使って、氷カウンターを全部吹き飛ばすというわけだ。この方法だと、《暗黒の深部》《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》《吸血鬼の呪詛術士》と3枚揃えば3ターンキルが可能となる。『ゼンディカー』にてこの吸血鬼が登場したことで、《暗黒の深部》はコンボパーツとして注目を集めるようになる。

 もう1つはその後に生み出されたプランで、そしてこれが《暗黒の深部》の地位を確固たるものにしたと言えよう。《演劇の舞台》の能力で、これを《暗黒の深部》のコピーにしてしまうのだ。伝説のパーマネントが2枚並ぶことになるので、氷カウンターが10個乗ったホンモノの《暗黒の深部》を生け贄に捧げる。その後、《暗黒の深部》に化けた《演劇の舞台》にはカウンターが1つも置かれていないので(《暗黒の深部》の氷カウンターは戦場に出るに際し置かれるもの)、能力が誘発。これも生け贄に捧げて、無事マリット・レイジ降臨と相成るわけだ。こちらは真面目に土地を戦場に出す方法だと最速が4ターンキルだが、呪文を使用しないコンボなので打ち消しに強いという大きなメリットがある。

 このデッキは手札破壊・ドロー・打ち消しでこのコンボ成立をサポートする。両パーツを4枚ずつ採用し、《渦まく知識》で引き込める確率を高め、また《探検の地図》《トレイリア西部》というサーチも採用。ただそれだけだと青単にしている理由は弱いようにも思うが......ここでデッキ名ともなっているStillこと《行き詰まり》の登場だ。

 このエンチャント、2マナで設置したらその後動いたもの負けのカードというのは「ストーンフォージ・スティル」の回でも述べたところ。このデッキは先に述べた通り、呪文を使わずとも深部×舞台でコンボを決められる。なので、2ターン目におもむろに貼ってから3ターン目に堂々とコンボ、という動きが可能で......これにより出てきたマリット・レイジに対戦相手が《剣を鍬に》を撃ち込むと、とりあえず美味しく3枚ドローすることができる。そこに《意志の力》などがあれば打ち消して良いし、なくとも次のコンボのためのパーツを引ければ問題なしだ。

 《トレイリア西部》の変成能力も呪文ではないので、《行き詰まり》後に堂々と起動して必要な土地をサーチしに行ける。対戦相手が先に何かを展開していると《行き詰まり》を貼りづらいので、そこは《思考囲い》で落とすか《モックス・ダイアモンド》から1ターン目に置いて速度で上回るなりしよう。

 このデッキのもう1つのキーカードを挙げるならば《世界のるつぼ》だ。墓地から土地を戦場に出せるので、度々紹介している《トレイリア西部》を変成した後に戦場に出したり、《不毛の大地》を使いまわしたり。こちらのDepthコンボの弱点もその《不毛の大地》ではあるが、たとえ割られてしまってもこのアーティファクトがあれば2ターンに1回コンボを起動できるようになるので、相手が抵抗できなくなるまでとにかくマリット・レイジを連打するというのもアリだ。また、《直観》との相性も素晴らしい。手札に入らず墓地に落ちた土地も決して無駄にならない。

 大味なコンボをクールに・スタイリッシュにまとめあげた印象を受ける「Depth Still」。大技とドローが三度の飯より好きだという人にオススメだ。なんとなくスーツでバシッと決めて使いたいデッキである。青黒のデッキってそんな印象を受けるんやけども、僕だけかな?

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