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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤黒バーン(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤黒バーン(スタンダード)

by 岩SHOW

 最近では友好色と対抗色の概念もすっかり薄れてしまったように思う。マジックのカードの裏面に描かれている、マジックの5色のマナを表す五角形のデザイン。このデザイン上、隣り合う色同士は仲が良く、対角線上の2つの色は仲が悪いとされてきた。例えば白は、緑と青と仲良し、赤と黒と嫌い合う関係ということ。

 仲が良い=友好色はデッキを組む上で相性が良く、その2色デッキを成立させるサポート(多色土地)なども豊富。その逆で仲が悪い=対抗色は、お互いにその色に対する露骨な嫌がらせを行うカードが多数用意されていた(《白騎士》《非業の死》など)。この概念も『アポカリプス』にて強力な対抗色の多色カードが登場し、『ラヴニカ:ギルドの都』にて対抗色がガッチリと握手したギルドの登場、『アラーラ再誕』『タルキール覇王譚』にて対抗色を含む3色のデッキが推し進められる中で、形骸化したと言っても過言ではない。白は黒と組んでこそそのコントロール要素を活かせるし、今では赤の相棒は青であることが当たり前になってきた。

 そんな現代マジックにおいて、久しぶりに友好色を組ませ対抗色に敵意を剥き出しにしたデッキが活躍したので紹介させていただこう。グランプリ・北京2016での優勝も記憶に新しい菅谷裕信が、プロツアー『カラデシュ』地域予選にて使用し、プロツアー本戦出場権利を勝ち取った「赤黒バーン」だ。

菅谷 裕信 - 「赤黒バーン」
プロツアー『カラデシュ』地域予選in東京 権利獲得 / スタンダード (2016年8月21日)[MO] [ARENA]
9 《
5 《
4 《燻る湿地
4 《凶兆の廃墟
1 《ガイアー岬の療養所

-土地(23)-

3 《傲慢な新生子
4 《熱錬金術師
4 《騒乱の歓楽者

-クリーチャー(11)-
4 《集団的蛮行
4 《焼夷流
4 《苦しめる声
4 《血管の施し
4 《集団的抵抗
4 《癇しゃく
1 《極上の炎技
1 《コラガンの命令

-呪文(26)-
1 《ゴブリンの闇住まい
2 《焦熱の衝動
4 《自傷疵
3 《稲妻織り
2 《コラガンの命令
2 《穢れた療法
1 《護法の宝珠

-サイドボード(15)-

 赤黒はマニアが多い......青赤や青黒のように声は大きくはないが、密かに一定数のファンがいる、という印象を受ける。色的にはヒャッハー感溢れるラクドス教団の色だけあって、自身にもデメリットがあったりするもののとにかく攻撃的なカードを揃えてアグレッシブな攻めるデッキを作れたり、その逆で潤沢な除去・手札破壊を用いてガッチリコントロールするデッキも作れたりと、案外に万能な組み合わせ。前者の代表デッキは「ラクドス・アグロ」、後者は「Void」や「ターボジョークル」といったところか。今日紹介する「赤黒バーン」は柔軟な部分もあるが、基本的には前のめりなゴリゴリに攻めていくデッキだ。

 以前に紹介した「赤単錬金術師」と同じく、対戦相手本体に向けて《焼夷流》などの火力を撃ち込んでいきながら《熱錬金術師》をガコンガコンとアンタップしては本体にダメージを刻んでいく戦略を取る。《集団的抵抗》《極上の炎技》と優秀な火力は揃っており、真っすぐに20点を削ることに関しては得意とするデッキである。

 このデッキが単色でもなく青タッチでもなく、黒をその相棒とすることで得たカードは......メインデッキでは《集団的蛮行》《血管の施し》《コラガンの命令》。ここで中心になるのは《血管の施し》だ。

 マッドネスで用いることができれば、1マナで3点のライフをドレイン(吸い取る)ことができる、なかなかイカしたソーサリーだ。これをマッドネスで用いるために、手札を捨てることをコストとする《集団的蛮行》がセットで採用されている。

 これ自体も同じサイクルの《集団的抵抗》と同じくやれることの多い柔軟なカードだ。対戦相手のクリーチャーを除去したり手札を捨てさせたうえでライフを5点ドレイン!なんて動きをされたら、強力すぎて笑ってしまうかもしれない。《癇しゃく》と併せて、1マナ3点火力8枚体制というのがこの赤黒のセールスポイントである。《傲慢な新生子》《苦しめる声》《集団的抵抗》も絡めて上手くマッドネスしつつ、《熱錬金術師》をアンタップしていこう。

 赤と黒の友好色がうまく噛み合ったメインデッキに加えて、サイドボードでは対抗色に敵意を剥き出しに。《自傷疵》4枚には、緑と白のデッキを狩るという強い意志を感じる。

 その両方を用いる「バント・カンパニー」には鋭く刺さるカードで、本人も《集合した中隊》デッキを叩き潰すためにこのデッキおよびサイドボードをチョイスしたようだ。プロツアー地域予選というトーナメントにおいて、現環境で最強の名をほしいままにしている「バント・カンパニー」を持ち込むプレイヤーの比率は高くなる(皆勝ちたいからね)。そこを美味しくいただこうというコンセプトが成功して、本戦参加権利獲得に繋がったわけだ。

 《熱錬金術師》の登場で、トーナメントシーンにおける存在感を大きく増した赤いアグロデッキたち。《自傷疵》のように色対策カードでどうにかしてやろうと思っても、肝心の錬金術師には《正義のうねり》も《氷固め》もほぼ効果なしなのがニクいね。果たしてこのカードをキーにしたデッキがどれだけのバリエーションを見せるのか、その辺も今後の楽しみなポイントだ。

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