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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤青バーン(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤青バーン(スタンダード)

by 岩SHOW

 マジックに関わる仕事をしていると、そりゃあもう多くの人と出会う。プレイヤーでもそうだとは思うのだが、仕事となると特にその人のことを知る必要が出てくる。こんな時に一番仕掛けやすい話題は、「どの辺からマジック始めましたか?」ということ。へぇ〜長いんですね、とか思ったよりキャリア短いんやね〜とか言いつつ、その人がどんな話題をそこから続けてくるのかが密かな楽しみだ。

 そんな時に大いに盛り上がるのが「初めて作ったデッキ」の話だ。パックを剥いて使ったシールドデッキのような集合体を超えて、ある程度カードが揃った時に構築フォーマットをきちんと意識して作り上げたデッキの話をするのが楽しい。僕の作ったのは......おっと、ここで書いちゃうともったいない。それはいつかもっと相応しい場所でお話しするとして、今回は僕以外の人の話を。

 後輩とこういう話をした時に「ドローバーンデッキを作りました」との返事が。ドローバーン、その名の通り、青い呪文でカードをドローし、引き込んだ赤いバーン呪文を相手プレイヤー本体へ投げつける......いわゆる「理論上最強のデッキ」ってやつだ。この発想は僕がマジックを始めた時に一緒に遊んでいた友人も持っていたもので、またそれから出会ったプレイヤーたちに聞いても同様のアプローチを好みとするプレイヤーは少なくなかった。

 青と赤の相反する力を1つにしたデッキはいつだって人気で、しかし形になるかどうかはカードプール次第といったところ。今回のプロツアー『異界月』にて、フィーチャーマッチでその姿を見かけることはなかったが、スタンダード構築ラウンドこっそりと9勝1敗という好成績を残しているデッキがあった。その構成こそ、まさしくドローバーン?青赤の時代が来るのか?「赤青バーン」デッキをご覧あれ。

Pedro Carvalho
プロツアー『異界月』 スタンダード部門9勝1敗 (2016年8月5〜7日)[MO] [ARENA]
9 《
3 《
4 《シヴの浅瀬
4 《さまよう噴気孔
3 《高地の湖
1 《ガイアー岬の療養所

-土地(24)-

4 《熱錬金術師
3 《氷の中の存在
2 《ヴリンの神童、ジェイス

-クリーチャー(9)-
3 《焦熱の衝動
2 《払拭
2 《稲妻の斧
4 《焼夷流
2 《苦しめる声
2 《非実体化
4 《集団的抵抗
4 《熱病の幻視
4 《癇しゃく

-呪文(27)-
2 《稲妻織り
3 《黄金夜の懲罰者
2 《騒乱の歓楽者
1 《払拭
1 《焦熱の衝動
1 《引き裂く流弾
2 《否認
2 《ナヒリの怒り
1 《呪文萎れ

-サイドボード(15)-

 火力を対戦相手やそのクリーチャーに投げつつ、《熱病の幻視》で追加ドローを得る。対戦相手にも追加ドローは与えてしまうが、その分相手がそれを使い切れなかったら本体に2点のダメージを与えることができ、昂揚絡みのゆっくりと動くデッキに対しては対処の難しいダメージ源として機能することだろう。

 このエンチャント自体は前環境からも存在するものだったが、しかしその時点では火力が少々足りない状況だった。『異界月』で待望の2マナ3点火力《焼夷流》と、追加の火力としての《集団的抵抗》を手に入れたことで満を持してこのデッキタイプが誕生したのだ。

 このデッキはドローして火力を投げる、というアクションを繰り返すのだが、それだけで対戦相手のライフを削り切ることができるほど軽量の火力が十分にあるというわけではない。そこで本体にダメージが入らない火力や、青のバウンス呪文を採用したりすると同時に、それらを唱えること=プレイヤーにダメージが当たるように変換するカードが採用されている。そのカードこそ、前環境からの呪文連打好きのベストフレンド《氷の中の存在》と期待のニューカマー《熱錬金術師》だ。

 《氷の中の存在》はインスタントとソーサリーを4回唱えると変身して7/8になり殴りかかる、すなわち呪文1つに2点弱のダメージを追加しているようなもの。《熱錬金術師》はわかりやすい。タップすることで対戦相手に1点ダメージを与え、インスタントかソーサリーを唱えればアンタップしてその能力をもう一度、ということで呪文に1点のダメージを追加するクリーチャーである。この両者と《熱病の幻視》を設置して、引いてきたインスタントorソーサリーを唱えていって勝つというわけだ。実に青と赤、イゼット団らしいデッキである。

 新カード《集団的抵抗》はこのデッキにおいていい味を出すことだろう。極力4マナでクリーチャーとプレイヤーの両方にダメージを与えるカードとして使いたいし、一見オマケであるプレイヤーの手札入れ替え能力もこのデッキではなかなか。手札をすべて捨てるというのは使いづらくも見えるが、《熱病の幻視》で引き込んだ手札が土地ばっかり、という事態にこれで入れ替えてやれば実に美味しい。《癇しゃく》を捨ててマッドネスすればなお美味しい。対戦相手が《ウルヴェンワルド横断》からサーチした《約束された終末、エムラクール》1枚だけ握りしめてターンを返して来たら喜んで撃ち込んでやろう。実にいい仕事をするカードなので、上手く使ってやってほしい。

 熱を扱うマシーンを使って錬金術師が氷を溶かし、怪物が暴れる......なんていう未来を熱病に罹った相手に見せつけてやろう。炎と氷の共演、《シヴの浅瀬》が使える今のうちにしっかり遊んでおいた方が良いかもしれないね!

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