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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Star Spangled Slaughter(スタンダード・『インベイジョン』~『トーメント』)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Star Spangled Slaughter(スタンダード・『インベイジョン』~『トーメント』)

by 岩SHOW

 昨日は環境から去りゆく(皆さんがこれを読む頃にはもう去った)「アブザン・アグロ」の話をしたが、この『タルキール覇王譚』~『ゲートウォッチの誓い』までの期間には他にも「スタンダードの顔」と呼ぶべきデッキが存在した。「アブザン・アグロ」と同じくらいその名を聞いた......人によっては環境最強にも掲げていたデッキ、「ジェスカイ」とその派生形「ダーク・ジェスカイ」。

 青白赤の3色によって形成される氏族・ジェスカイ道。果敢というキーワード能力を引っ提げて、テンポよくアグレッシブに攻めるカンフー集団がやってきた時の衝撃と言ったらなかったなぁ。《僧院の速槍》《僧院の導師》と言った名カードは環境を越えて大暴れ。スタンダードでもこれらのカードは活躍したが...ジェスカイの象徴とも言える1枚は《カマキリの乗り手》ではないか。やはり氏族の3色をマナコストに持つこのカードこそ、THEジェスカイ!

 3マナ3/3飛行・速攻・警戒というシンプルにして強力なスペックのこのカードには、同じ色で元となったカードが存在する。4マナ3/4で同一の能力を持った《稲妻の天使》だ。カマキリと比べると1マナでタフネス1しか上がっていないというのは見劣りするが、『アポカリプス』でデビューした当時はそのカードパワーに世界が驚いたものだ。今日は、この《稲妻の天使》が戦場を走り抜ける、ジェスカイカラーのデッキのご先祖様を紹介しよう。その名も「Star-Spangled Slaughter」だ!

Peter Jesuale - 「Star Spangled Slaughter」
アメリカ選手権2002 トップ8 / スタンダード (2002年5月31日~6月2日)[MO] [ARENA]
3 《平地
3 《
6 《
4 《沿岸の塔
2 《アダーカー荒原
1 《広漠なるスカイクラウド
3 《戦場の鍛冶場
3 《シヴの浅瀬
1 《真鍮の都

-土地(26)-

4 《ゴブリンの軍団兵
4 《翻弄する魔道士
4 《火炎舌のカヴー
4 《稲妻の天使

-クリーチャー(16)-
4 《火 // 氷
4 《排撃
4 《ウルザの激怒
1 《ゴブリンの塹壕
3 《嘘か真か
3 《予言の稲妻

-呪文(19)-
1 《名誉の神盾
4 《反論
3 《サーボの網
2 《対抗呪文
2 《解呪
1 《冬眠
2 《抹消

-サイドボード(15)-

 アメリカ選手権2002でPeter JesualeがTOP8に勝ち残ったスタンダードのデッキである。『第7版』と『インベイジョン』~『トーメント』までが使用可能だったこのスタンダードにおいて、《広漠なるスカイクラウド》《名誉の神盾》の2種類しか『オデッセイ』のカードを使っておらず、『トーメント』に至っては採用枚数0枚というこのリスト。TOP8は青緑マッドネス系(※1)に「激動サイカトグ」(※2)だらけだったので、この爽やかなカラーのデッキは目を引くものだった。

(※1:《日を浴びるルートワラ》《尊大なワーム》《堂々巡り》といった青緑の優秀なマッドネス呪文と、それをマッドネスで唱えることをサポートする《野生の雑種犬》《マーフォークの物あさり》などを中心に構成されたビートダウンデッキ「青緑マッドネス」。そこに火力の赤か、クリーチャーの白を足して強化したものが当時流行っていた。)

(※2:《激動》で盤面を吹き飛ばし、膨れ上がった手札と墓地を《サイカトグ》に食わせてスマッシュ!するコントロールデッキ。打ち消しにバウンスに......とにかく強力な呪文に支えられていた、王者のデッキであった。)

 「Star-Spangled Slaughter」というデッキ名、殺戮の星条旗とでも訳そうか。アメリカの星条旗を形成する3色によるビートダウンデッキという意味だが、これは元々インベイジョン・ブロック構築のデッキだった。『アポカリプス』参入後、《稲妻の天使》を筆頭に《火 // 氷》《ゴブリンの軍団兵》といったビートダウン向けのカードが大幅強化、《戦場の鍛冶場》《シヴの浅瀬》というマナサポートを得て誕生したデッキで、それまでの構えて戦う色・青白のイメージを一変させた。このブロック構築のデッキをそのままスタンダードに持ち込んで、《アダーカー荒原》などの基本セットのカードで細かい強化をしてやったところ......十分戦えるものだった、と。

 誰もが《サイカトグ》と《野生の雑種犬》という次世代マシンに乗り換える中、《稲妻の天使》というワームや犬には止められず、速攻のおかげでバウンスにも耐性のあるクリーチャーで攻めるという姿勢が、なんだか古強者といった趣でカッコイイ。

 サイドボードの《反論》4枚に時代を感じる。上記のデッキらが活躍し、TOP8には青くないデッキが居なかったこのトーナメントで勝ち抜くには当然の備えであった。この頃はメインからも2枚ほど採用するデッキもあったほどで......それらを全く青くないデッキで狩ってやろう!と勇んでトーナメントに参戦しては、この《稲妻の天使》や《サイカトグ》に踏み潰されたものだ。

......ここまで書いて、このデッキが活躍したのが2002年、14年も前だということにやっと気付いたぞ! ヒェ~ッ、そりゃ三十路にもなりますわなぁ......若い子も「昔のスタンダード再現大会」とかそういった機会があれば、ぜひ参加してマジックのいろんな側面を楽しんでみてほしい。

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