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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ターボ・ステイシス(とフェイズ・ゼロ)(スタンダード・『第5版』~『ウェザーライト』)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ターボ・ステイシス(とフェイズ・ゼロ)(スタンダード・『第5版』~『ウェザーライト』)
by 岩SHOW
『「フェイズ・ゼロ」でも紹介したら?』
ここ最近、マジック関係の話をしていて、こんなクレイジーなフレーズを聞いたのも久しぶりだ。
先日、東京に行った際にプロツアー実況・解説仲間である「世界のKJ」鍛冶友浩さんと「浅原連合代表」浅原晃さんと食事をしていた際に、飛び出たものだ。
お二人は僕にとって、実況・解説者としても、本コラムのような記事を執筆するライターとしても大先輩で......「昔○○書いてた時は...」なんて話題になったので、ここしかないッ!と「デイリー・デッキに書くネタないですかね......?」とお好み焼きを切り分けながら尋ねてみた(大阪出身なのでお好み焼きは自分で焼くお店が好きだ)。
我らが鬼才・浅原氏の口から出たのが冒頭のセリフである。
「フェイズ・ゼロ」とは、一言でまとめるなら "This is not Magic:The Gathering."
今でもヴィンテージでブイブイ言わせている、無限ターンコンボの中核である《Time Vault》。このカードテキストにはかつて、「ターンの間」という一文が記されていた。これが事の始まりである。
現在もモダンで優秀なマナクリーチャーとして活躍する《根の壁》。この壁は、1ターンに1度マナを生み出す能力を起動することができる。「ターンの間」というフレーズに気付いたあるプレイヤーはこう閃いた。
「ターンの間とは、ターンではない。このターンの間であれば、《根の壁》の能力は無限に起動することが可能である!」
...ahh...what?
この思想をデッキにしたのが「フェイズ・ゼロ」。マジックのターンにおけるすべてのフェイズよりも前にある、いわば0個めのフェイズであるのがその名の由来。無限マナを火力にして投げる。コンボで狙うこと自体はシンプルなものである。
ただし、マジックのルール的には「こんなものがあり得てたまるか」と物言いが入り、すかさずルールは改定されこの挙動は不可能となった。
このルールの穴を拡大解釈してブラックホールにまで拡げたこのデッキの是非はともかくとして、キーパーツに《停滞》を採用しているのは天才のそれとしか言いようがなく、これに気付いた製作者に僕は尊敬の念を抱いている。
どういうことかと言うと、ターンの間に無限マナを得ても、フェイズをまたげば(当時は)マナ・プールに残ったマナでマナ・バーンを受けてしまう。ターンの頭にやってくるアンタップ・フェイズではプレイヤーは行動できない。ならば、マナ・バーンを受ける事実を消し去るのみ。《停滞》でアンタップ・フェイズをすっ飛ばし、いきなりアップキープを迎えることで万事解決。こんな発想、普通ないってぇ!
「フェイズ・ゼロ」のデッキリストは、上記のような理由からちゃんとしたものは残っていない。なので代わりと言ってはなんだが、同デッキのキーパーツであるこの《停滞》を中核に据えたデッキを紹介しよう。「ターボ・ステイシス」だ!
13 《島》 4 《アダーカー荒原》 4 《地底の大河》 4 《真鍮の都》 -土地(25)- -クリーチャー(0)- |
1 《Zuran Orb》 3 《Despotic Scepter》 1 《フェルドンの杖》 1 《象牙の塔》 1 《土地税》 4 《秘儀の否定》 4 《ブーメラン》 4 《吠えたける鉱山》 4 《リム=ドゥールの櫃》 4 《停滞》 2 《回想》 2 《宿命》 4 《Force of Will》 -呪文(35)- |
2 《大気の壁》 1 《Lodestone Bauble》 2 《青霊破》 2 《水流破》 1 《黒の万力》 1 《剣を鍬に》 2 《解呪》 3 《枯渇》 1 《宿命》 -サイドボード(15)- |
このデッキの動きは以下の通り。
- 相手の動きは打ち消し呪文で捌く。
- 《吠えたける鉱山》を置く。
- 相手が土地をすべてタップした状態になるorこちらが《宿命》を置いたら、《停滞》でアンタップ無き世界へ突入!ロック(封じ込め)開始!
- 《吠えたける鉱山》によってカードを2~3枚引けば、1枚は《島》(または青マナが出る土地)を引くことができる。{U}を支払い、維持を続ける。
- 《停滞》を維持できなくなったら、《Despotic Scepter》で相手のターンに破壊して、自分は一度土地をアンタップした上で再び《停滞》を唱えてロックに持ち込む。
- この工程をひたすら繰り返す。自分のライブラリーは《フェルドンの杖》で修復する。相手はそのうち、ライブラリーからカードが引けなくなって敗北。
今の時代には考えられない、相手を完全に封じ込めての勝利には、美学すら感じる。
特に《停滞》の維持方法。《極楽鳥》に《賦活》をつけるとかのコンボチックな方法ではなく、「2枚引いてりゃ1枚は《島》」とかいうザックリとした理論なのがたまらない。
実際に回してみると、全く土地を引かずに一体何がしたいのかわからない、なんて展開もあることだろう。このデッキでアメリカ選手権1996でTOP4の結果を残したMatt Place、そして同一のリストで世界選手権1996のTOP8という快挙を成し遂げたTommi Hoviには、唯々畏敬の念を抱くのみである。
最近はとんと聞かなくなったが、「ターボ◯◯」というデッキ名は一時期のマジックシーンではよく見るものだった。カードを大量に引いたり、手札を高速で展開するデッキによくこのターボの称号がつけられたもの。このデッキも《吠えたける鉱山》でドローを掘り進める様がいわゆるターボ要素なのだが、「加速する停滞」とかいう矛盾したデッキ名はなかなか味があるものだ。
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