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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第6回:「なんでもあり」の『カルドハイム』期メタゲームを紐解く
皆さんこんにちは。スタンダード連載担当の原根(@jspd_)です。
前回から比較的短い間隔で今回の記事をお届けさせていただくこととなりました。というのも、スタンダード環境が動きに動いているからです。前回記事をまだご覧になられていない方はぜひそちらも合わせてご確認いただければ幸いです。
前回の記事では「スゥルタイ根本原理」のデッキパワーが頭ひとつ抜けていることをご紹介した上で、その対抗策として「白単」「赤単」といった高速のアグロデッキが台頭してきているというお話をしました。そしてこれ以降は各種単色アグロに対するメタデッキが登場し、さらにメタゲームが循環していくことが予想される……といった運びで記事を終えています。
その後のスタンダードはまさにそのような展開を迎えたわけですが、単にアグロデッキに強い「ラクドス・サクリファイス」のようなデッキが再登場しただけでなく、『カルドハイム』の新勢力を用いた新デッキが続々と登場し、トーナメントシーンの様相がガラリと塗り替わったのです。これだからスタンダードは面白い! 前回あたりから同じことを何度も言っている気がしますが、スタンダードの健全さは完全に取り戻されています。
それでは早速、順を追って直近のメタゲームの流れを追い掛けていきましょう。
『カルドハイム』リーグ・ウィークエンド
世界トッププロたちによって競われるリーグ・ウィークエンドがこの『カルドハイム』期にも開催されました。これまでのリーグ・ウィークエンドは競技プロたちが環境を見渡した上でじっくりとデッキを吟味していたため、強力なデッキにシェアが集中する傾向があったのですが、今回は散りに散ることとなりました。デッキシェアの内訳は以下の通りです。
リーグ・ウィークエンド第4週 MPL+ライバルズメタゲーム(全70名)
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
白単アグロ | 11 | 16% |
ナヤ・フューリー | 11 | 16% |
赤単アグロ | 8 | 11% |
グルール・アドベンチャー | 8 | 11% |
スゥルタイ根本原理 | 6 | 9% |
ティムール・アドベンチャー | 5 | 7% |
ジェスカイ・サイクリング | 5 | 7% |
ナヤ・アドベンチャー | 4 | 6% |
ディミーア・ローグ | 3 | 4% |
4色・ドゥーム | 3 | 4% |
ラクドス・サクリファイス | 2 | 3% |
アゾリウス・コントロール | 1 | 1% |
アブザン・ドゥーム | 1 | 1% |
スゥルタイ・ローグ | 1 | 1% |
ジャンド・サクリファイス | 1 | 1% |
これまで最大人気アーキタイプの使用率は40%近くを誇っていたのに対し、今回最も高かった使用率は16%に留まっています。トッププロが最善の選択肢を考慮してもこれだけ選択が分岐する、非常にバランスの取れた環境であるということがお分かりいただけるかと思います。その中でもいくつか人気を博しているデッキがありますので、前回記事以降台頭し始めたデッキを中心に紹介していきたいと思います。
「ナヤ・フューリー」
2 《山》 2 《森》 2 《平地》 4 《岩山被りの小道》 4 《針縁の小道》 4 《枝重なる小道》 2 《寓話の小道》 -土地(20)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《巨人落とし》 4 《群れの番人》 4 《砕骨の巨人》 4 《恋煩いの野獣》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(24)- |
4 《セジーリの防護》 4 《憤激解放》 3 《カズールの憤怒》 4 《スカルドの決戦》 1 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(16)- |
2 《ドラニスの判事》 2 《運命の神、クローティス》 3 《アゴナスの雄牛》 1 《トーモッドの墓所》 1 《レッドキャップの乱闘》 1 《巻き添え》 2 《火の予言》 2 《ガラスの棺》 1 《萎れ》 -サイドボード(15)- |
まず「白単アグロ」と並んで最大シェアを誇ったのが「ナヤ・フューリー」です。デッキ名であるフューリーの由来はキーカードである「憤激解放/Unleash Fury」「カズールの憤怒/Kazuul's Fury」という2種の呪文の共通語句から来ています。これらと《黄金架のドラゴン》の能力を組み合わせたコンボデッキです。
《黄金架のドラゴン》で攻撃を行えば宝物・トークンが生成され、ここから生み出される2マナはちょうど《憤激解放》のプレイに割り当てることができます。《黄金架のドラゴン》の能力は1ターンに何度も誘発しますから、《憤激解放》が1枚あれば8点、2枚あれば16点、3枚あれば32点のダメージを叩き出すことが可能です。また宝物・トークンに加えて1マナを捻出することができれば《カズールの憤怒》をプレイ可能であり、パワーが2倍になった状態のクリーチャーをダメージに変換できます。《憤激解放》を何枚も重ねるのは至難の業ですが、そのうち1枚が《カズールの憤怒》でも良ければコンボの成功率は格段に上がります。
コンボパーツを探しに行くためのドローソースとして《スカルドの決戦》を採用しています。そして同カードと相性の良い《群れの番人》も合わせて採用しており、《スカルドの決戦》を使い回すことでキーカードを探し出すことに貢献します。
さらに、《スカルドの決戦》は単なるドローソースというわけではなく、コンボを決める場面でも相性の良い1枚です。Ⅱ章・Ⅲ章の効果は「自分が呪文を唱えるたびに+1/+1カウンターを置く」というものですが、これを2種の「フューリー」の対象となるクリーチャーに置くことでダメージを増加させることができます。同効果適用中に《黄金架のドラゴン》をプレイできれば、《憤激解放》+《カズールの憤怒》(もしくは《憤激解放》の2枚目)で24点のダメージが入ります!
《カズールの憤怒》はクリーチャーをダメージに変換する呪文ですが、2枚目以降は必要ないことが多く、プレイタイミングも原則決着を付けられる場面以外にないことから、手札で余りがちなカードです。そのため、モードを持つ両面カードであることが非常に有用で、必要のないうちは土地としてセットしてしまえますから、使いどころが限定的な呪文であるにも関わらず多くの枚数を採用することが可能になっています。同じく《セジーリの防護》もコンボを手助けする呪文ですが、不要な状況では土地としての運用が可能で、大変使い勝手が良いです。ひとつ小テクを紹介しますと、上記《スカルドの決戦》の項で紹介した《群れの番人》ですが、モードを持つ両面カードともシナジーがあります。一度土地としてセットしたこれらのカードを手札に加えることで、呪文として再利用できます。
ここまでに紹介した動きはすべて白赤のカラーリングで行うことができますが、デッキ自体はナヤ、つまり緑を足したカラーリングで構築されています。緑の要素は一体何なのかというと、このスタンダード環境でもはや定番パッケージとなりつつあるアドベンチャー・ギミックが採用されています。もともとデッキのコンボパーツとして《群れの番人》が採用されていますから、《エッジウォールの亭主》は相性の良いカードです。
さらに、コンボパーツが綺麗に揃わない状況では20点以上のダメージをきっちり出すのは困難であるため、《恋煩いの野獣》や《砕骨の巨人》といった打撃力のあるクリーチャー陣でのビートダウンでライフを削っておけば、コンボに必要な条件は下がっていきます。またこれらのクリーチャーはもともとのパワーが高いため、場合によっては《黄金架のドラゴン》を引かずとも「フューリー」の対象として勝利することもあります。
「ティムール・アドベンチャー」
2 《森》 2 《島》 2 《山》 4 《ケトリアのトライオーム》 4 《樹皮路の小道》 4 《岩山被りの小道》 4 《河川滑りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(26)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《砕骨の巨人》 4 《厚かましい借り手》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《恋煩いの野獣》 4 《黄金架のドラゴン》 1 《星界の大蛇、コーマ》 -クリーチャー(25)- |
1 《棘平原の危険》 3 《襲来の予測》 3 《アールンドの天啓》 2 《グレートヘンジ》 -呪文(9)- |
1 《獲物貫き、オボシュ》
-相棒(1)- 2 《運命の神、クローティス》 3 《アゴナスの雄牛》 2 《厳格な放逐》 1 《レッドキャップの乱闘》 1 《魂標ランタン》 2 《神秘の論争》 2 《魂焦がし》 1 《影槍》 -サイドボード(14)- |
次にご紹介するこの「ティムール・アドベンチャー」も《黄金架のドラゴン》をフィーチャーしたデッキです。デッキのもうひとつの主役は《アールンドの天啓》で、盤面にクリーチャーを展開した状態でこれを唱え、複数ターンの波状攻撃により対戦相手を蹂躙します。《アールンドの天啓》は7マナと重い呪文ですが、《黄金架のドラゴン》のマナブースト能力と相性が良く、さらに《アールンドの天啓》によってもたらされた追加ターンが《黄金架のドラゴン》を再び攻撃に向かわせるなど、相乗効果があります。複数枚の《アールンドの天啓》が絡んだ場合の破壊力は凄まじいものです。
他にもドラゴンのマナ生成能力と相性の良いギミックは多く仕込まれており、《厚かましい借り手》や《砕骨の巨人》は効率良くこれらのマナを消費できます。また事前に《襲来の予測》を予顕した状態での《黄金架のドラゴン》のプレイは一際強力で、5ターン目にしてフィニッシャーの展開と相手への妨害を一度に達成してしまえます。
このデッキは採用するカードをCMC奇数に絞ることで《獲物貫き、オボシュ》を相棒としているのですが、《厚かましい借り手》と《砕骨の巨人》の出来事を用いることで2マナのアクションを担保しています。さらに『カルドハイム』から加わった予顕ギミックも2マナのアクションであり、先の展開に備えて《襲来の予測》や《アールンドの天啓》を用意しておくことができます。また相棒カードを手札に加えるため3マナの支払いは決して軽くないコストですが、《黄金架のドラゴン》の宝物生成能力はこことも相性が良く、デッキ全体が非常に美しくシナジーしています。
「ジェスカイ・サイクリング」
3 《ラウグリンのトライオーム》 4 《連門の小道》 4 《河川滑りの小道》 4 《針縁の小道》 2 《陽光昇りの小道》 1 《荒廃踏みの小道》 1 《清水の小道》 -土地(19)- 4 《繁栄の狐》 4 《ドラニスの癒し手》 4 《ドラニスの刺突者》 4 《雄々しい救出者》 -クリーチャー(16)- |
3 《踏み穴のクレーター》 4 《血の希求》 4 《驚くべき発育》 3 《型破りな協力》 2 《切り裂かれた帆》 3 《記憶漏出》 4 《天頂の閃光》 2 《願い与えの加護》 -呪文(25)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 2 《レッドキャップの乱闘》 2 《魂標ランタン》 2 《火の予言》 2 《ガラスの棺》 2 《否認》 1 《切り裂かれた帆》 2 《神秘の論争》 1 《空の粉砕》 -サイドボード(14)- |
1 《島》 1 《山》 1 《平地》 4 《ラウグリンのトライオーム》 1 《サヴァイのトライオーム》 4 《河川滑りの小道》 4 《連門の小道》 4 《針縁の小道》 -土地(20)- 4 《繁栄の狐》 4 《ドラニスの刺突者》 3 《ドラニスの癒し手》 3 《雄々しい救出者》 4 《アイレンクラッグの紅蓮術師》 1 《常智のリエール》 -クリーチャー(19)- |
4 《血の希求》 4 《型破りな協力》 4 《驚くべき発育》 3 《天頂の閃光》 4 《願い与えの加護》 2 《時の支配者、テフェリー》 -呪文(21)- |
1 《常智のリエール》 3 《レッドキャップの乱闘》 2 《魂標ランタン》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《ガラスの棺》 2 《切り裂かれた帆》 2 《神秘の論争》 1 《天頂の閃光》 -サイドボード(15)- |
3つ目に紹介するのが「ジェスカイ・サイクリング」です。『イコリア:巨獣の住処』の中心ギミックのひとつであるサイクリングをフィーチャーしたデッキ構造で、同セットがリリースされて以降存在するアーキタイプの一つです。このタイミングで浮上したキッカケには《連門の小道》の追加が挙げられるでしょう。これにより《型破りな協力》を早いターンでプレイしやすくなりました。
前回の記事でもお話ししましたが、特定のデッキタイプにとっては新たに呪文が追加されることよりもマナベースが強化されることの方が喜ばしいケースは多々あります。特にサイクリングデッキはデッキ内のほとんどのカードをサイクリング付きカードで占める必要があり、呪文を採用できる枠が限られていることから、このケースがより顕著に当てはまります。1ターン目は《繫栄の狐》のために{W}が必要で、2ターン目は《型破りな協力》のために{U}{R}が必要、さらに毎ターン可能な限りサイクリングにマナを費やしたいため《天啓の神殿》のようなタップイン土地は使いづらい、などさまざまな制約があり、アンタップイン多色土地の追加はデッキパワーを確実に引き上げる要因となっています。
また多くのサイクリングデッキはデッキに採用するパーマネントを2マナ以下に抑えることで《夢の巣のルールス》を相棒として採用していましたが、グジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalski選手はこれを撤廃し、《アイレンクラッグの紅蓮術師》や《常智のリエール》といったパーマネントを採用するチューンを施しています。特に《アイレンクラッグの紅蓮術師》はこのデッキが苦手としている高速のアグロデッキへの耐性を劇的に改善しており、これ以降はこのタイプが主流のリストとなっていくことになります。高いタフネスと繰り返し使える3点火力能力はアグロデッキにとって非常に厄介な存在です。
「ナヤ・クラリオン」
1 《山》 2 《森》 2 《平地》 4 《岩山被りの小道》 4 《針縁の小道》 4 《枝重なる小道》 4 《寓話の小道》 -土地(21)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《巨人落とし》 4 《ヤスペラの歩哨》 4 《クラリオンのスピリット》 2 《絡みつく花面晶体》 4 《砕骨の巨人》 4 《恋煩いの野獣》 2 《秘密を知るもの、トスキ》 -クリーチャー(28)- |
4 《カビーラの叩き伏せ》 4 《スカルドの決戦》 3 《フェリダーの撤退》 -呪文(11)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 2 《ドラニスの判事》 2 《傑士の神、レーデイン》 2 《水晶壊し》 2 《秘密を知るもの、トスキ》 2 《魂標ランタン》 4 《ガラスの棺》 -サイドボード(14)- |
このデッキは当該のリーグ・ウィークエンドには存在しなかったのですが、ちょうど時を同じくしてトーナメントシーンに現れ、以降活躍していくデッキですので合わせて紹介します。『カルドハイム』の新戦力である《クラリオンのスピリット》を主体としたデッキで、1ターンに2枚の呪文を唱えることでスピリット・トークンを生み出し、あふれ出したクリーチャーを《秘密を知るもの、トスキ》でドローに変えるのがコンセプトになります。
1ターンに2枚の呪文を唱える必要があるということで、あるひとつのギミックと非常に高相性です。それはズバリ、当事者(出来事持ち)カードです!……もはやありとあらゆるデッキで使い倒されているため見飽きてしまったかもしれませんが、ベースが強力過ぎるギミックのため『エルドレインの王権』がスタンダードで使用可能な残り半年間はまだまだ見掛けることになるでしょう。ともあれ、このデッキにおける当事者カードは上記の通りデッキとの相性が非常に良く、カード単体で2回の呪文を唱える要件をわかりやすく満たしてくれます。《エッジウォールの亭主》も本人のマナ・コストの軽さとドロー効果が高相性で言うことがありません。
前述の「ナヤ・フューリー」でもそうでしたが、《スカルドの決戦》も当事者カードと相性の良いカードです。Ⅱ章・Ⅲ章の効果は呪文を唱える度に誘発する効果のため、カード1枚で複数回効果を誘発させる当事者カードとは相性が良いのです。このデッキでも《秘密を知るもの、トスキ》に加える形でアドバンテージソース兼決定打として採用されています。
そして他のデッキではなかなか見掛けることのない《ヤスペラの歩哨》ですが、このデッキにおいては非常に優れたクリーチャーです。1ターン2回の呪文を唱えるに際し必要となるマナを能力によって生み出すことができ、自身もコストの軽いクリーチャーであるためそれに貢献します。また最序盤から3色のマナを要求するデッキであることから時折マナトラブルに見舞われることもありますが、任意の色マナを生み出す《ヤスペラの歩哨》はこの問題を解消してくれる役割も持ちます。このデッキにおいては縁の下の力持ち的なポジションを務めています。
均衡した環境、「なんでもあり」の世界
上記デッキ群が現れてからというもの、スタンダードのメタゲームは実に混沌としたものになりました。これまで極端なデッキ使用率を示してきたトッププロたちですら選択肢が大きく分散する環境です。その後の大会においても偏った使用率を見掛けることがなく、環境は均衡を保ち続けていました。この連載でも頻繁に取り上げているイベント「SCG TOUR ONLINE」が直近でも開催されていますので、2回分の結果をまとめてチェックしてみましょう。
3月8日開催「$5K Strixhaven Championship Qualifier」
優勝 | ジェスカイ・サイクリング |
準優勝 | ディミーア・ローグ |
3位 | ジェスカイ・サイクリング |
4位 | ナヤ・クラリオン |
5位 | 赤単アグロ |
6位 | 赤単アグロ |
7位 | ティムール・アドベンチャー |
8位 | スゥルタイ根本原理 |
9位 | グルール・アドベンチャー |
10位 | ナヤ・クラリオン |
11位 | 赤単アグロ |
12位 | ティムール・アドベンチャー |
3月14日開催「$5K Strixhaven Championship Qualifier」
優勝 | 白単アグロ |
準優勝 | スゥルタイ根本原理 |
3位 | ディミーア・ローグ |
4位 | 赤単アグロ |
5位 | ティムール・アドベンチャー |
6位 | スゥルタイ根本原理 |
7位 | 赤単アグロ |
8位 | ティムール・アドベンチャー |
9位 | 4色・予言された壊滅 |
10位 | ディミーア・ローグ |
11位 | 赤単アグロ |
12位 | スゥルタイ根本原理 |
ご覧の通り8種のデッキが入賞しており、ほとんどが複数の入賞を記録していることから、これが単発的なものではないことを表しています。これだけデッキの種類が多いと「特定のデッキを意識した選択」というものが難しく、どのデッキにも勝つチャンスがある状況です。
例えば「ディミーア・ローグ」は環境の均衡化に際して再び浮上しつつあるデッキです。「ディミーア・ローグ」は対戦相手の山札を積極的に切削していくデッキ構造を取る手前、墓地にカードが溜まれば溜まるほど威力の高まる《天頂の閃光》を持つ「ジェスカイ・サイクリング」に対し非常に分が悪いデッキなのです。それ以外にも「赤単アグロ」のようなデッキも苦手としています。しかしその他多くのデッキに対しては比較的有利に立ち回れるため、デッキ使用率が分散し、同デッキと対戦する確率が低下する現在のメタゲームにおいては有効な選択肢だとされています。メタゲームが広がった結果、さらにそれを拡大する現象が起きています。
5 《島》 5 《沼》 4 《ゼイゴスのトライオーム》 2 《欺瞞の神殿》 4 《清水の小道》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《遺跡ガニ》 4 《盗賊ギルドの処罰者》 2 《マーフォークの風泥棒》 4 《空飛ぶ思考盗み》 -クリーチャー(14)- |
4 《湖での水難》 4 《無情な行動》 2 《取り除き》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 2 《無礼の罰》 2 《息詰まる噴煙》 4 《物語への没入》 2 《アガディームの覚醒》 -呪文(22)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 4 《スカイクレイブの影》 2 《塵へのしがみつき》 2 《強迫》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 2 《神秘の論争》 2 《激しい恐怖》 -サイドボード(14)- |
また、環境初期「スゥルタイ根本原理」に対する対抗勢力だった「白単アグロ」は逆に意識される立場になり、しばらくは鳴りを潜めていましたが、最も直近のトーナメントである3月14日開催の「$5K Strixhaven Championship Qualifier」では見事トップに返り咲きました。同じく意識の対象であった「スゥルタイ根本原理」も同様に直近は安定した成績を残しており、メタゲームが分散した結果、意識されてポジションが低下していたデッキたちが力を発揮しやすいフィールドになってきています。
環境に存在するデッキが増えるとサイドボードにさまざまな観点でメタカードを用意する必要があります。「スゥルタイ根本原理」や「白単アグロ」が特に流行していた頃は《乱動する渦》や《赦免のアルコン》のような特化したメタカードが多く採用される傾向にあり、苦しめられていました。これらのカードの採用率や枚数が抑えられ始めたのもメタゲーム分散の影響によるものです。
このように、直近のスタンダードはアグロ・ミッドレンジ・コントロールまでが満遍なく存在する環境となり、多種多様なデッキが好成績を残しています。こういった状況下では、すべての対戦相手に対応することを考えるよりも、自身のデッキの持ち味を発揮して、力強く押し付けるデッキを選択することが有効です。ある種、のびのびとデッキ選択を行える状況とも言えますので、自分の得意技を磨いてぶつかってみるのも良いでしょう。
来週末の3月26・27・28日には『カルドハイム』チャンピオンシップが開催されます。僕自身も現在そこに向けて猛練習中ですが、この混沌とした環境にどうチャレンジしていこうか悩みながらも楽しんでいる最中です。非常にハイレベルなトーナメントですので、そこに臨む参加者たちがどのような選択を行うのかは注目すべきポイントです。当日はぜひ情報や公式放送をチェックしてみてください。
それではまた次回。
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