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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第5回:『カルドハイム』期スタンダードの「始まり」と「今」を追え
皆さんこんにちは。スタンダード連載担当の原根(@jspd_)です。
今回もスタンダードの徹底解説を行っていくわけですが、最大のトピックはもちろん、最新セットである『カルドハイム』リリースです!
待ちに待った新セットがついにリリースされました。前回の『ゼンディカーの夜明け』がリリースされたのは約4か月も前のこと。その前の『基本セット2021』や『イコリア:巨獣の棲処』は約2か月の間隔でリリースされていたため、待ち遠しく思っていました。
『カルドハイム』リリース前のスタンダードは上記の経緯で長くプレイされたこともあって、環境が煮詰まっており、停滞気味でした。環境を動かす要素を欲していた状況でしたが、今セットは十分期待に応えてくれるものであったと感じています。
リリース後のメタゲームの流れについて、順を追ってご紹介します。最後までどうぞお付き合いください。
トピック
- 『カルドハイム』注目の新戦力
- 2月7日開催「$5K Kaldheim Championship Qualifier」
- 2月13日開催「日本選手権2020ファイナル」
- 2月14日開催「$5K Kaldheim Championship Qualifier」
- やはりスタンダードのメタゲームは回り続ける
『カルドハイム』注目の新戦力
《黄金架のドラゴン》
『カルドハイム』屈指のパワーカードとしてまず注目を浴びたのが《黄金架のドラゴン》です。赤・5マナ・4/4・飛行・速攻・ドラゴンという性能は過去のスタンダードシーンを席捲した《栄光をもたらすもの》を彷彿とさせます。
攻撃時もしくは呪文の対象になった際に宝物・トークンを生み出す能力を持ち、これだけを見れば一種のマナ加速能力ですが、この能力は高マナ域のクリーチャーが抱える問題点を解消する、非常に有用な能力です。生み出される宝物・トークンはドラゴンのもう1つの能力により2マナを生み出すようになります。そのため2マナの呪文と相性が良く、この点に注目した世界屈指の強豪ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas選手により、ある1つのアーキタイプが提唱されました。それが「イゼット・テンポ」です。
8 《冠雪の島》 3 《冠雪の山》 3 《移り変わるフィヨルド》 4 《河川滑りの小道》 1 《不詳の安息地》 4 《寓話の小道》 -土地(23)- 4 《砕骨の巨人》 4 《厚かましい借り手》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(12)- |
4 《霜噛み》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《本質の散乱》 2 《否認》 4 《襲来の予測》 4 《多元宇宙の警告》 4 《サメ台風》 3 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(25)- |
2 《魂標ランタン》 1 《レッドキャップの乱闘》 2 《否認》 1 《切り裂かれた帆》 3 《神秘の論争》 2 《弱者粉砕》 2 《ツンドラの噴気孔》 2 《嵐の怒り》 -サイドボード(15)- |
高マナ域のクリーチャーというものは、字の通りプレイに際して多くのマナを要求するため、展開ターンに隙ができてしまうデメリットがあります。そのカードがより低いマナで除去されてしまったり、相手側にも高マナ域のカードをプレイされてしまったりするリスクをはらんでいます。打ち消し呪文を扱うコントロールデッキは、とりわけそうしたカードをプレイしづらくなっているわけですが、このドラゴンはその問題を完璧にカバーしてくれます。
直近のスタンダードシーンでは優良除去として《無情な行動》が使われる傾向があり、高マナ域のクリーチャーを抑止している要素のひとつです。ドラゴンもこのカードの対処範囲に収まってしまいますが、対象になった時点で宝物・トークンを生み出すため、5マナをフルタップで使用して唱えた場合でも打ち消し呪文を唱えることができます。
そのまま攻撃に転じれば再度宝物・トークンを生み出すため、自身を守りながら、返すターンの対戦相手の動きを妨害することも可能となり、一気に流れを引き寄せることができます。直近のスタンダードには2マナの打ち消し呪文が豊富に用意されており、新たに加わった《襲来の予測》も事前に予顕を行っていれば2マナで唱えることができます。
《スカルドの決戦》
《黄金架のドラゴン》同様リリース直後から高い人気を誇ったのが《スカルドの決戦》です。禁止カードである《僻境への脱出》を彷彿とさせる効果を持ち、4枚のカードを追加するだけでも十分過ぎるほどの威力を持ちますが、Ⅱ章・Ⅲ章の能力も非常に有用です。獲得したリソースをそのままダメージに変換できるためアグロデッキと相性が良く、ボロスやナヤのような攻撃的なデッキで積極的に採用されました。
2 《森》 2 《平地》 1 《山》 4 《枝重なる小道》 4 《岩山被りの小道》 4 《針縁の小道》 4 《寓話の小道》 -土地(21)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《巨人落とし》 2 《仮面の蛮人》 2 《漁る軟泥》 2 《群れの番人》 4 《砕骨の巨人》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《恋煩いの野獣》 -クリーチャー(26)- |
4 《スカルドの決戦》 2 《グレートヘンジ》 3 《エンバレスの宝剣》 3 《髑髏砕きの一撃》 1 《怪物の代言者、ビビアン》 -呪文(13)- |
2 《仮面の蛮人》 2 《運命の神、クローティス》 1 《傑士の神、レーデイン》 1 《探索する獣》 2 《アゴナスの雄牛》 4 《ガラスの棺》 2 《アクロス戦争》 1 《エルズペス、死に打ち勝つ》 -サイドボード(15)- |
特に《群れの番人》とは強力なシナジーを形成し、出来事能力によりⅠ章を使い回すことで凄まじいアドバンテージに繋げることができます。攻撃的なデッキにありながら、膨大なアドバンテージ力を獲得したのです。
モードを持つ両面カード土地
『ゼンディカーの夜明け』で登場したモードを持つ両面カード土地ですが、当時は全10種のカラーリングのうち6種しか収録されていませんでした。今回の『カルドハイム』で残り4種が収録された訳ですが、マナベースはスタンダードにおいて大変重要な要素で、構築可能なデッキの幅に大きな影響を与えます。特に《闇孔の小道》と《樹皮路の小道》の追加は、当該の2色を用いたスゥルタイカラーのマナベースを劇的に改善しており、前環境に存在した「ディミーア・コントロール」に緑を追加するアップデートを可能にしました。
《星界の大蛇、コーマ》という強力なフィニッシャーが追加された他、汎用性の高い除去カードである《古き神々への拘束》が追加され、ディミーアのカラーリングが抱えていた「エンチャントやアーティファクトに触りづらい」という問題点を解決しています。
《古き神々への拘束》はエンチャントであることから《空を放浪するもの、ヨーリオン》とも相性が良く、《海の神のお告げ》と合わせてコントロールの定番パッケージとして環境に定着していく事が予想されます。
トーナメントレベルの新アーキタイプ開発から既存デッキの強化まで、しっかりと期待に応え環境をアップデートした『カルドハイム』。久方ぶりのシーンの変化を皆歓迎しました。これら前提を踏まえ、直近で開催された3大会に焦点を当ててメタゲームを追っていきます。
2月7日開催「$5K Kaldheim Championship Qualifier」
8回の予選を開催し、各予選の成績優秀者が本戦に出場可能となる本大会。優勝者には『カルドハイム』チャンピオンシップの参加権利が与えられるということで、競技プレイヤーたちがこぞって参加する、レベルの高いトーナメントになっています。各予選に参加しているプレイヤーたちがそのまま本戦に参加するため、予選時点からある程度メタゲームが進行していきます。
新勢力の台頭 「イゼット・テンポ」「ナヤ・アドベンチャー」
最初に頭角を現したのは前評判通りのデッキたちでした。「イゼット・テンポ」、それに「ナヤ・アドベンチャー」です。またアドベンチャー・デッキは全てが《スカルドの決戦》をプレイしているわけではなく、従来通りグルールの2色だけでまとめたタイプも健在で、前環境の王者は今環境にも君臨しました。
8 《森》 4 《山》 4 《岩山被りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(20)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《山火事の精霊》 1 《エンバレスの盾割り》 1 《漁る軟泥》 4 《砕骨の巨人》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《恋煩いの野獣》 2 《探索する獣》 3 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(27)- |
2 《火の予言》 1 《アクロス戦争》 3 《グレートヘンジ》 4 《髑髏砕きの一撃》 3 《エンバレスの宝剣》 -呪文(13)- |
1 《漁る軟泥》 2 《灰のフェニックス》 3 《アゴナスの雄牛》 1 《巻き添え》 3 《萎れ》 2 《魂焦がし》 2 《アクロス戦争》 1 《怪物の代言者、ビビアン》 -サイドボード(15)- |
「ディミーア・ローグ」
前環境の生き残りという意味では「ディミーア・ローグ」もそのうちの1つです。もともと完成度の高いデッキであり、『カルドハイム』リリース後のスタンダードでも十分通用する力を有していました。またこのデッキは新勢力である「イゼット・テンポ」に相性が良いとされ、「イゼット・テンポ」は当時のトーナメントで高いシェアを誇るデッキであったことから、環境上のポジションの良さを示しており、徐々に数を増やしていきました。
5 《島》 3 《沼》 2 《ゼイゴスのトライオーム》 4 《欺瞞の神殿》 4 《清水の小道》 4 《寓話の小道》 -土地(22)- 4 《遺跡ガニ》 4 《盗賊ギルドの処罰者》 3 《マーフォークの風泥棒》 4 《空飛ぶ思考盗み》 -クリーチャー(15)- |
2 《血の長の渇き》 4 《湖での水難》 2 《無情な行動》 1 《取り除き》 1 《本質の散乱》 2 《心を一つに》 2 《襲来の予測》 1 《多元宇宙の警告》 4 《物語への没入》 3 《アガディームの覚醒》 1 《凪魔道士の威圧》 -呪文(23)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 3 《スカイクレイブの影》 2 《塵へのしがみつき》 3 《否認》 2 《神秘の論争》 2 《激しい恐怖》 2 《凪魔道士の威圧》 -サイドボード(14)- |
デッキの基盤は『ゼンディカーの夜明け』時点で完成していたため、『カルドハイム』からの新戦力は一部分に限られています。打ち消し・ドロー・除去といった汎用的なパーツの置き換えのみが行われており、またこれらのカードは単純に優れたポテンシャルを持つことから、その他のデッキにおいて今後も採用が見込まれるでしょう。
そして、「ディミーア・ローグ」が増えてきたとなれば、当然このデッキにも出番が回ってきます。
「ラクドス・サクリファイス」
「ディミーア・ローグ」は対戦相手のライブラリーを切削していくデッキであるため、デッキの軸を脱出に置いている「ラクドス・サクリファイス」は天敵とも言える存在です。またこのデッキは《初子さらい》と《村の儀式》に代表される除去能力の高さが売りのデッキでもあり、グルール系のアドベンチャーデッキにも強いデッキです。前環境終期の時点でも「グルール・アドベンチャー」と「ディミーア・ローグ」を相手に有利に立ち回り、その存在をアピールしていました。今環境でもグルールおよびローグが健在と知るや否や早速成果を上げ、その後急激に数を増しています。
6 《沼》 5 《山》 2 《悪意の神殿》 4 《荒廃踏みの小道》 3 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 3 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 3 《ぬかるみのトリトン》 2 《嘘の神、ヴァルキー》 4 《悲哀の徘徊者》 2 《砕骨の巨人》 2 《イマースタームの捕食者》 2 《悪ふざけの名人、ランクル》 1 《アゴナスの雄牛》 -クリーチャー(19)- |
4 《初子さらい》 3 《村の儀式》 2 《血の長の渇き》 2 《切り裂かれた帆》 2 《ティマレット、死者を呼び出す》 3 《アクロス戦争》 1 《死者を目覚めさせる者、リリアナ》 -呪文(17)- |
3 《スカイクレイブの影》 2 《アゴナスの雄牛》 3 《強迫》 2 《無情な行動》 2 《切り裂かれた帆》 2 《エルズペスの悪夢》 1 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
このデッキにおける『カルドハイム』のアップデートはこちらの3種。《嘘の神、ヴァルキー》は序盤にプレイすれば干渉手段となり、後半は《星界の騙し屋、ティボルト》として強力なフィニッシャーに変化します。
《イマースタームの捕食者》はサクリファイス・ギミックを強化する期待の新戦力で、《初子さらい》や《アクロス戦争》といったコントロール奪取系のカードがより一層使いやすくなりました。
そして個人的に何よりもの強化だと思っているのが《荒廃踏みの小道》の追加です。「ラクドス・サクリファイス」はマナ基盤が非常にタイトなデッキで、《死の飢えのタイタン、クロクサ》のことを考えれば4ターン目に{B}{B}{R}{R}の色マナを求められることもあるのですが、1マナ・2マナのカードも多くデッキに存在しており、タップイン2色土地を積極的に採用できるほどの余裕がありません。今回加わった《荒廃踏みの小道》はアンタップイン2色土地ということで、デッキが求めてやまなかった存在です。ちょっとしたカードが追加されるよりも、はるかにデッキの動きが良くなるアップデートと言えます。
「グルール・アドベンチャー」「ディミーア・ローグ」「ラクドス・サクリファイス」の三つ巴は前環境でも見られたメタゲームであり、「もしかしてまた……」と一時は不安をおぼえたのですが、『カルドハイム』からの新戦力がこの現状を見事に打ち破ってくれました。
「スゥルタイ・コントロール」
2 《沼》 2 《森》 2 《島》 4 《ゼイゴスのトライオーム》 2 《ケトリアのトライオーム》 4 《闇孔の小道》 4 《清水の小道》 4 《欺瞞の神殿》 1 《荒廃踏みの小道》 4 《樹皮路の小道》 1 《岩山被りの小道》 1 《河川滑りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(35)- 4 《嘘の神、ヴァルキー》 4 《ラノワールの幻想家》 2 《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》 3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 2 《星界の大蛇、コーマ》 -クリーチャー(15)- |
4 《無情な行動》 4 《海の神のお告げ》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《取り除き》 2 《本質の散乱》 2 《否認》 4 《エルズペスの悪夢》 4 《古き神々への拘束》 4 《絶滅の契機》 2 《サメ台風》 -呪文(30)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 2 《長老ガーガロス》 2 《塵へのしがみつき》 2 《否認》 4 《神秘の論争》 2 《影の評決》 2 《サメ台風》 -サイドボード(14)- |
冒頭でも少し紹介したように、モードを持つ両面カード土地がすべて出揃ったことでスゥルタイ・カラーのマナベースが劇的に改善されました。そこに《星界の大蛇、コーマ》というフィニッシャーと《古き神々への拘束》の除去能力を手に入れたことで、コントロール・デッキとしての質が一気に向上しています。「グルール・アドベンチャー」と「ディミーア・ローグ」に強かった「ラクドス・サクリファイス」はクリーチャーデッキに対して強い性質を持っていますが、この「スゥルタイ・コントロール」はより徹底したコントロールデッキであり、クリーチャー除去の影響をほとんど受けないため、「ラクドス・サクリファイス」に対し構造的な強さを持っています。
このリストではサイドボードのみでの採用となっていますが、《影の評決》は対「ラクドス・サクリファイス」における最終兵器とも言え、《死の飢えのタイタン、クロクサ》の脅威を完全に取り払ってしまえます。「グルール・アドベンチャー」や「ディミーア・ローグ」も3マナ以下のクリーチャーを主体としたデッキであるためこの全体除去呪文は現環境上非常に優れた性能を持ち、以降コントロールデッキの定番カードとして定着していきます。結果、「ラクドス・サクリファイス」は衰退を余儀なくされていきました。
「スゥルタイ・コントロール」はコントロールデッキかつ《空を放浪するもの、ヨーリオン》を用いる80枚デッキということもあり、構築にバリエーションがあります。以降さまざまなリストが生まれていくのですが、その派生としてひときわ変わったリストが突如として現れました。そして同デッキはこの「$5K Kaldheim Championship Qualifier」を制することになります。
「スゥルタイ根本原理」
4 《沼》 4 《森》 2 《島》 4 《ゼイゴスのトライオーム》 1 《ケトリアのトライオーム》 4 《闇孔の小道》 4 《清水の小道》 4 《樹皮路の小道》 3 《寓話の小道》 -土地(30)- 2 《絡みつく花面晶体》 2 《嘘の神、ヴァルキー》 1 《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》 -クリーチャー(5)- |
4 《無情な行動》 4 《海の神のお告げ》 3 《取り除き》 2 《ジュワー島の撹乱》 2 《精神迷わせの秘本》 4 《耕作》 3 《エルズペスの悪夢》 1 《バーラ・ゲドの復活》 4 《古き神々への拘束》 2 《エシカの戦車》 2 《絶滅の契機》 3 《影の評決》 2 《サメ台風》 4 《出現の根本原理》 2 《アールンドの天啓》 2 《海門修復》 1 《キオーラ、海神を打ち倒す》 -呪文(45)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 2 《秘密を知るもの、トスキ》 2 《星界の大蛇、コーマ》 2 《強迫》 1 《塵へのしがみつき》 3 《否認》 1 《取り除き》 2 《神秘の論争》 1 《影の評決》 -サイドボード(14)- |
それがこの《出現の根本原理》を使ったタイプのリストです。基本的にはコントロールデッキの動きをするのですが、勝利手段に《出現の根本原理》を据えているのが特徴的です。これまでの根本原理と言えば《発生の根本原理》が主役でしたが、ついにこの《出現の根本原理》も陽の目を浴びる日がやってきました。一見すると凄まじいことが書いてあるのですが、「単色のカード」という制約が思いのほか厳しく、《精霊龍、ウギン》のような無色のカードや、根本原理のような多色のカードは対象外であり、これまでは厳しいプレイ条件に見合った3択を示すのが難しい状況にありました。
『カルドハイム』は強力な単色カードが豊作でした。《アールンドの天啓》は《運命のきずな》以来となるスタンダードでプレイ可能な追加ターン呪文で、わかりやすく唱え甲斐のある単色の呪文です。そして《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》はカード単体では6マナ6/6速攻・トランプルのアタッカーなのですが、《出現の根本原理》からのプレイを前提とすれば強力なコンボがあります。《キオーラ、海神を打ち倒す》のような英雄譚と一緒に戦場に出ればⅠ章とⅡ章が一気に誘発する他、《星界の騙し屋、ティボルト》のようなプレインズウォーカーを選択すれば忠誠値が倍で戦場に出るため、一気に奥義を使用可能になります。
いま名前の挙がった《星界の騙し屋、ティボルト》自体は多色の呪文であるため本来は《出現の根本原理》で唱えることができませんが、このカードは第1面が《噓の神、ヴァルキー》という単色の呪文であるため、デッキ内では単色の呪文として選択しつつ、プレイする際に《星界の騙し屋、ティボルト》として唱えるという、嘘のようなプレイができてしまいます!
上記の通り、一気にサーチ対象のラインナップが強化されたことから、《出現の根本原理》はマナ・コストの大きさに見合った強力な呪文に昇華しました。結果、このイベントを制するに至っています。
2月13日開催「日本選手権2020ファイナル」
そしてつい先日、「日本選手権2020ファイナル」が開催されました。日本選手権秋・冬・直前予選を勝ち抜いた17名にマジック・プロリーグの3名とマジック・ライバルズリーグの6名を加えた、計26名、選りすぐりの面々により争われたトーナメントです。この大会が開催される頃には「スゥルタイ根本原理」は圧倒的トップメタとして広く認知され、このデッキを中心にメタゲームが形成されることになりました。
これまでにいくつかのデッキを紹介してきましたが、「スゥルタイ根本原理」は明確に頭ひとつ抜けたデッキです。スタンダードにおいて「7マナのソーサリー呪文を1枚解決すればほぼ勝利する」というのは破格の条件で、近年でもほとんど例がありません。そのため、その他のデッキもこのデッキを打ち倒すべく形を変化させていきました。
方法はいくつかありますが、マナ・コストの大きなソーサリー呪文を打ち破るセオリーは大きく分けて2つ、「打ち消してしまう」か「唱えられるよりも早く倒す」ことです。
対策パターンA:打ち消す 「イゼット・テンポ」「ディミーア・ローグ」
デッキの性質上、メインデッキに打ち消し呪文が多く搭載されている「イゼット・テンポ」「ディミーア・ローグ」はわかりやすく有効な対抗策です。隙なくクリーチャーを送り出し、相手にプレッシャーを掛けながらカウンター呪文で相手の重いアクションを捌きます。
7 《冠雪の島》 3 《冠雪の山》 3 《移り変わるフィヨルド》 4 《河川滑りの小道》 3 《不詳の安息地》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《砕骨の巨人》 4 《厚かましい借り手》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(12)- |
3 《霜噛み》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《本質の散乱》 2 《否認》 3 《襲来の予測》 1 《神秘の論争》 4 《多元宇宙の警告》 4 《サメ台風》 3 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(24)- |
1 《灰のフェニックス》 3 《アゴナスの雄牛》 1 《霜噛み》 3 《焦熱の竜火》 2 《精神迷わせの秘本》 2 《否認》 1 《神秘の論争》 2 《アショクの消去》 -サイドボード(15)- |
6 《島》 4 《沼》 4 《欺瞞の神殿》 4 《清水の小道》 4 《寓話の小道》 -土地(22)- 4 《遺跡ガニ》 4 《盗賊ギルドの処罰者》 3 《マーフォークの風泥棒》 4 《空飛ぶ思考盗み》 -クリーチャー(15)- |
4 《湖での水難》 4 《無情な行動》 1 《ジュワー島の撹乱》 3 《心を一つに》 1 《無礼の罰》 1 《神秘の論争》 3 《アガディームの覚醒》 2 《激しい恐怖》 4 《物語への没入》 -呪文(23)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 4 《スカイクレイブの影》 2 《塵へのしがみつき》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 2 《神秘の論争》 2 《激しい恐怖》 -サイドボード(14)- |
対策パターンB:唱えられるよりも早く倒す 「グルール・アドベンチャー」「赤単アグロ」「白系アグロ」
スピードもまた、重いアクションを咎めるのに有効な戦略です。ここでも再び「グルール・アドベンチャー」が登場しますが、このデッキも「スゥルタイ根本原理」に対抗するため従来の《グレートヘンジ》を使うタイプのものではなく、《黄金架のドラゴン》や《エンバレスの宝剣》を多めに使用するような攻撃的チューンがなされています。
そして攻撃的と言えば各種単色アグロです。現在は「赤単」と「白単」が筆頭で、今大会でも一定数使用者が存在しました。1ターン目から積極的にクリーチャーを展開し、相手がマナ加速やドロー呪文をプレイしている隙にライフを削り切ってしまおうという魂胆です。
さらに、これらのアグロデッキはモードを持つ両面カード土地を活用することで青をタッチし、対策パターンAの「打ち消す」を併用しているケースもあります。モードを持つ両面カード土地は少数の呪文をタッチするのに有効な手段であり、2色デッキであればそれぞれの色の両面土地8枚+《寓話の小道》4枚+《島》1枚で13枚の色マナ発生源を確保でき、これはタッチを行うのに十分な数値であるため、今後も実践される手段になりそうです。
2 《森》 2 《山》 2 《ケトリアのトライオーム》 4 《岩山被りの小道》 4 《樹皮路の小道》 4 《河川滑りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(22)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《山火事の精霊》 2 《漁る軟泥》 4 《砕骨の巨人》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《恋煩いの野獣》 2 《探索する獣》 3 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(27)- |
1 《蛇皮のヴェール》 1 《軽蔑的な一撃》 2 《アクロス戦争》 2 《変わり樹の共生》 2 《髑髏砕きの一撃》 3 《エンバレスの宝剣》 -呪文(11)- |
1 《漁る軟泥》 2 《運命の神、クローティス》 2 《アゴナスの雄牛》 1 《蛇皮のヴェール》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《焦熱の竜火》 2 《萎れ》 2 《魂焦がし》 1 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
19 《冠雪の山》 4 《不詳の安息地》 2 《エンバレス城》 -土地(25)- 4 《熱烈な勇者》 4 《リムロックの騎士》 4 《義賊》 2 《厚顔の無法者、マグダ》 4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》 4 《砕骨の巨人》 1 《灰のフェニックス》 3 《朱地洞の族長、トーブラン》 2 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(28)- |
2 《霜噛み》 2 《乱動の噴火》 3 《エンバレスの宝剣》 -呪文(7)- |
1 《灰のフェニックス》 2 《エンバレスの聖騎士》 3 《アゴナスの雄牛》 2 《霜噛み》 3 《乱動する渦》 2 《魂焦がし》 2 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
5 《平地》 3 《山》 4 《針縁の小道》 4 《連門の小道》 4 《河川滑りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《イオナの大司祭》 4 《堕ちたる者の案内者》 2 《巨人落とし》 4 《光輝王の野心家》 4 《歴戦の神聖刃》 2 《義賊》 4 《砕骨の巨人》 4 《スカイクレイブの亡霊》 1 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(29)- |
3 《スカイクレイブの大鎚》 4 《スカルドの決戦》 -呪文(7)- |
1 《島》 1 《巨人落とし》 2 《エンバレスの盾割り》 2 《義賊》 2 《アゴナスの雄牛》 4 《唱え損ね》 2 《ガラスの棺》 1 《太陽の宿敵、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
それでも王者は……
上記の通り、各デッキ工夫を凝らして「スゥルタイ根本原理」の打倒を掲げていました。しかしながら、今大会の優勝デッキは玉田遼一選手の駆る「スゥルタイ根本原理」でした。王者揺るがず!
玉田選手優勝おめでとうございます!
最終的には、トップ8のうち5名が「スゥルタイ根本原理」を使用していました。大会全体での使用者は10名であったため、トップ8率50%という恐ろしいパフォーマンスを叩き出しています。かく言う私原根も同デッキをプレイし、トップ4に入賞しました。使用者の観点で述べると、やはり同デッキのデッキパワーは頭ひとつ抜けています。大会中「ディミーア・ローグ」「イゼット・テンポ」「グルール・アドベンチャー」といった対策デッキとも対戦しましたが、それぞれ2勝1敗・1勝1敗・1勝0敗と、相手側がこちらを意識した選択になっているにも関わらず、それほど良いスコアが示されていません。
「スゥルタイ根本原理」の強さの一つは「7マナのソーサリー呪文を通すだけで勝ててしまうこと」ですが、もう1つの強みは「それだけに特化しているわけではない」点です。デッキ基盤が「スゥルタイ・コントロール」からの派生であるため、コントロール・デッキとして立ち回り、対戦相手を抑え込んで勝つパターンもあります。対戦相手によっては《出現の根本原理》をサイドボーディングですべて抜いてしまい、完全にコントロールデッキに変化することもあります。私もこの大会では3試合ほど《出現の根本原理》を全てサイドアウトしました。この柔軟性がデッキのもう一つの強みとなっているのです。
2月14日開催「$5K Kaldheim Championship Qualifier」
ここまで読み進めると「なんだスゥルタイ根本原理が最強じゃないか……」と思ってしまうかもしれないのですが、ここ最近のスタンダードはメタゲームの循環が非常によく機能しており、早くも「スゥルタイ根本原理」は攻略されつつあります。日本選手権2020ファイナルのすぐ後に開催された「$5K Kaldheim Championship Qualifier」の結果を見てみましょう。
優勝 | 白単アグロ |
準優勝 | 白単アグロ |
3位 | ジェスカイ・サイクリング |
4位 | スゥルタイ根本原理 |
5位 | スゥルタイ根本原理 |
6位 | スゥルタイ根本原理 |
7位 | ティムール・ミッドレンジ |
8位 | 白単アグロ |
9位 | 赤単アグロ |
10位 | 赤単アグロ |
11位 | エスパー・予言された壊滅 |
12位 | グルール・アドベンチャー |
見事「スゥルタイ根本原理」攻略に至った「白単アグロ」が圧巻のワンツーフィニッシュとなっています。他にも「赤単アグロ」が2名、トップ12にランクインしていますね。(※本大会はトップ12名による変則シングルエリミネーションです。)
18 《冠雪の平地》 1 《アーデンベイル城》 4 《不詳の安息地》 -土地(23)- 4 《命の恵みのアルセイド》 4 《無私の救助犬》 3 《堕ちたる者の案内者》 2 《巨人落とし》 4 《光輝王の野心家》 4 《歴戦の神聖刃》 4 《スカイクレイブの亡霊》 2 《傑士の神、レーデイン》 3 《戦闘の神、ハルヴァール》 1 《軍団の天使》 -クリーチャー(31)- |
2 《歩哨の目》 4 《スカイクレイブの大鎚》 -呪文(6)- |
2 《巨人落とし》 3 《ドラニスの判事》 1 《傑士の神、レーデイン》 3 《軍団の天使》 2 《魂標ランタン》 4 《ガラスの棺》 -サイドボード(15)- |
19 《冠雪の平地》 4 《不詳の安息地》 1 《アーデンベイル城》 -土地(24)- 4 《命の恵みのアルセイド》 4 《無私の救助犬》 4 《堕ちたる者の案内者》 2 《巨人落とし》 4 《光輝王の野心家》 4 《歴戦の神聖刃》 4 《スカイクレイブの亡霊》 2 《傑士の神、レーデイン》 4 《戦闘の神、ハルヴァール》 -クリーチャー(32)- |
4 《スカイクレイブの大鎚》
-呪文(4)- |
2 《巨人落とし》 1 《傑士の神、レーデイン》 4 《軍団の天使》 2 《魂標ランタン》 4 《ガラスの棺》 2 《葬送の長艇》 -サイドボード(15)- |
「白単アグロ」「赤単アグロ」
1ターン目から順次クリーチャーを繰り出しビートダウンを行う、古典的なアグロデッキです。『カルドハイム』からの新戦力は、主に以下の4種。
1つ目は《堕ちたる者の案内者》です。今回白系のアグロデッキが獲得した優秀な1マナクリーチャーであり、パワー2の数値は1ターン目に展開できるクリーチャーとして非常に嬉しく、能力も十分なものです。2マナのクリーチャーが手札に無い場合でも単体で2ターン目のアクションを担保でき、ゲーム中盤頃に対戦相手の全体除去を警戒したい場面でも、手札消費を抑えながら、マナを無駄にすることなくアクションが可能になります。また自身のマナ・コストが奇数、生み出されるトークンのマナコストが偶数ということもあり、《絶滅の契機》に耐性があるのも評価すべきポイントです。
2つ目は《戦闘の神、ハルヴァール》。マナ・カーブの頂点に据えられたフィニッシャーで、装備品が付いたクリーチャーに二段攻撃を与えます。二段攻撃は数あるキーワード能力の中でも一際強力なもので、同じアグロデッキである「赤単アグロ」が用いる《エンバレスの宝剣》でそれを実感している方も多いと思います。このデッキで使われている装備品は《スカイクレイブの大鎚》と、《戦闘の神、ハルヴァール》の第2面である《領界の剣》の2種。《スカイクレイブの大鎚》から《戦闘の神、ハルヴァール》の動きは非常に美しくも破壊的です。「スゥルタイ根本原理」側は《耕作》をプレイした返しのターンにゲームが終了してしまっている可能性があります。
3つ目の《傑士の神、レーデイン》はコントロール・デッキを意識する上で非常に有用なカードです。《出現の根本原理》そのものはもちろん、アグロデッキをプレイする上でネックとなる《絶滅の契機》や《影の評決》のプレイを遅らせることができ(しかも2ターン!)、相手側に求められる手札の要求値を一気に高めるカードです。相手側はまずこのカードを除去し、その上で全体除去をプレイしなければなりません。
4つ目は《不詳の安息地》。この後に出てくる「赤単アグロ」にも採用されているのですが、このカードは同じアグロデッキの中でも単色による構築を推奨する強い動機となっています。現在のコントロールデッキは《影の評決》を筆頭に全体除去を多用する傾向があるため、これらの影響を受けないダメージソースは非常に貴重な存在と言えます。また「白単アグロ」は速攻クリーチャーを持ちませんから、相手ライフを残りわずかまで追い込んだにもかかわらず最後の一押しに欠けるシチュエーションが頻発します。そういった場面にもこのミシュラランドは最適な存在なのです。
その他、サイドカードに《ドラニスの判事》があります。このカードには2つの役割があり、1つは《出現の根本原理》のメタとなること。そして2つ目は各種アドベンチャー・デッキの当事者カードを追放領域から唱えることを抑止できます。《スカルドの決戦》にも対応していますね。
そして、私も最初に見た時は驚いたのですが、《葬送の長艇》が使われています。このカード、リミテッドにおいてすら使われるか非常に怪しいレベルのカードなのですが、数ある候補を押し退けてサイドボードに採用されています。単純な2マナのアタッカーという観点であれば他に候補はいくらでも存在しますが、このカードには全体除去を回避する役割があり、その点では唯一無二の働きと言えます。これは現代に蘇った《キランの真意号》です。いいですね?
各採用カードを見るに、《絶滅の契機》や《影の評決》といった「スゥルタイ根本原理」が使用する全体除去を強く意識していることがわかります。《スカイクレイブの大鎚》は戦場に残り、《傑士の神、レーデイン》はそのプレイを遅らせ、《戦闘の神、ハルヴァール》と《軍団の天使》は《影の評決》を受けない4マナですし、《葬送の長艇》も戦場に残るダメージソースです。
同じくスピードで「スゥルタイ根本原理」に対抗しようとしているデッキに「赤単アグロ」があり、これも今大会でトップ12に2名を送り出しています。基本的な戦略は「白単アグロ」と同様で、1マナ域からテンポ良くクリーチャーを展開し、《エンバレスの宝剣》で押し込む構図です。
19 《冠雪の山》 1 《エンバレス城》 4 《不詳の安息地》 -土地(24)- 4 《熱烈な勇者》 4 《火刃の突撃者》 4 《リムロックの騎士》 4 《義賊》 4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》 4 《砕骨の巨人》 1 《灰のフェニックス》 2 《朱地洞の族長、トーブラン》 2 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(29)- |
3 《霜噛み》 4 《エンバレスの宝剣》 -呪文(7)- |
1 《灰のフェニックス》 1 《エンバレスの聖騎士》 3 《アゴナスの雄牛》 2 《レッドキャップの乱闘》 3 《焦熱の竜火》 2 《切り裂かれた帆》 2 《アクロス戦争》 1 《髑髏砕きの一撃》 -サイドボード(15)- |
この2つのデッキに関して、狙いそのものは共通していますが、現状で言えば「白単アグロ」の方がデッキとしての評価は高いものと私は考えています。その理由は以下の通りです。
まずはクリーチャーの性能です。「赤単アグロ」が採用している《火刃の突撃者》と《リムロックの騎士》は現存する赤い低マナ域のクリーチャーとしては優れた部類であるものの、クリーチャー全体の枠組みで考えれば見劣りしてしまいます。
「白単アグロ」の1マナ域はどれもコントロール側が嫌がるラインナップで揃えられており、2マナ域の《歴戦の神聖刃》は特に素晴らしい除去耐性を有しています。「赤単アグロ」のクリーチャーは《無情な行動》や《取り除き》など最序盤の干渉手段の影響を強く受けてしまうため、コントロール側の対応もしやすくなっています。
次に、全体除去への耐性です。「赤単アグロ」が持つ除去耐性は《鍛冶で鍛えられしアナックス》ですが、現在のコントロールデッキが使用している全体除去は《絶滅の契機》および《影の評決》であり、いずれも追放効果であることから、死亡時の誘発能力を上手く活かせません。現在のメタゲームでは《傑士の神、レーデイン》の能力のように「そもそも唱えさせないこと」が優れていると言えます。
また今回こうした結果を残したことから、今後しばらくはアグロデッキの流行が予想されますが、アグロ同士の対決になった際も《スカイクレイブの亡霊》の対クリーチャー性能は魅力的です。《領界の剣》による使い回しはアグロ対決にとって強みの1つに挙げられるでしょう。
もちろん、軽量火力呪文を持つという「赤単アグロ」ならではのメリットも存在するため、今後のメタゲーム次第でデッキの環境に対する優位性は変化し得ますが、少なくとも「スゥルタイ根本原理」を相手取る上では「白単アグロ」の方が優れた選択肢と言えるでしょう。
やはりスタンダードのメタゲームは回り続ける
何かのデッキが台頭すれば、それを意識したデッキが颯爽と現れメタゲームを塗り替えていく。直近のスタンダードシーンはそうした自浄作用がしっかりと機能しており素晴らしいですね。一時はそれが危ぶまれていましたが、今は安心して見ていられます。こうなってくるとメタゲームの読みやデッキのチューニングでいかに差を出していくかがポイントになってきますので、各人腕の見せ所です。
一度現状を整理しましょう。環境初頭、「グルール・アドベンチャー」「ディミーア・ローグ」「ラクドス・サクリフィアス」などさまざまなデッキが代わる代わる台頭してきましたが、その中でも「スゥルタイ根本原理」が群を抜いたデッキパワーを持つことがわかりました。それに対し「白単アグロ」というソリューションが提示された格好です。「スゥルタイ根本原理」は現状これに劣る格好ですが、高いデッキパワーを持つことは間違いないため、今後のメタゲーム次第で再度浮上する可能性は大いにあります。少なからず、直近は「白単アグロ」が逆に意識される立場に立たされるはずです。
高速のアグロデッキにはミッドレンジやボードコントロール系のデッキが一般的には有効です。例えば、今回もトップ12に入っている《予言された壊滅》デッキが挙げられ、これは今後活躍できる可能性があります。同日開催された「CFB Pro Showdown February 2021」というイベントにおいても、「白単アグロ」を4度下して全勝優勝していました。
4 《平地》 4 《島》 3 《沼》 4 《連門の小道》 2 《静寂の神殿》 4 《陽光昇りの小道》 3 《欺瞞の神殿》 4 《清水の小道》 4 《寓話の小道》 -土地(32)- 2 《太陽の恵みの執政官》 3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 -クリーチャー(5)- |
4 《無情な行動》 4 《海の神のお告げ》 3 《否認》 2 《ガラスの棺》 1 《取り除き》 1 《黄金の卵》 4 《エルズペスの悪夢》 2 《屋敷の踊り》 2 《太陽の神のお告げ》 2 《鴉の警告》 2 《裏切る恵み》 4 《予言された壊滅》 4 《絶滅の契機》 4 《エルズペス、死に打ち勝つ》 4 《エメリアの呼び声》 -呪文(43)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 2 《スカイクレイブの亡霊》 2 《塵へのしがみつき》 2 《強迫》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 2 《神秘の論争》 1 《ドゥームスカール》 1 《ヘリオッドの介入》 1 《屋敷の踊り》 -サイドボード(14)- |
今回は以上となります。ここ最近のスタンダードはメタの動きが激しく、「寝て起きたら環境が変わっていました!」ということも珍しくない状況です。上記の「日本選手権2020ファイナル」と「$5K Kaldheim Championship Qualifier」もたった1日しか間がないため、まさにそのような状況だと言えます。置いてきぼりを食らわないよう、しっかりと最新情報をキャッチしていきましょう!
現状を整理し、環境に対し正しい理解を持つことが勝利の秘訣になります。本連載では今後もそのお手伝いをできればと思います。
それではまた次回。
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