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週刊デッキ構築劇場

第52回:清水直樹のデッキ構築劇場・太陽の第二形態

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週刊デッキ構築劇場

2012.03.12

第52回:清水直樹のデッキ構築劇場・太陽の第二形態

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。


 みなさん、こんにちは!

 グランプリ・神戸が終わりましたね。決勝戦は大変見応えのある試合でした。
 個人的には、行広君もゾルゲ君(平賀優宏)も、よく知った仲ですからどちらを応援すればいいのやら、というような感じだったのですが、ゾルゲ君の放ったこのカードの一撃はリミテッドではありながら非常にAmbitiousなものでした!

 決勝戦では、《村の鐘鳴らし》がこのカードで仲間を次々に呼んでいた姿が印象的でした。
 通常さほどリミテッドで見向きされることがないようなカードなのですが、これを上手に使って優勝という最高の結果を導いたのですから、これほどデッキ構築劇場的にAmbitiousなことはありません。

 是非、ゾルゲ君にはこのカードを使ってスタンダードやモダンでもAmbitiousなデッキを作ってほしいと思います(笑)。

 ほら、モダンならこんな相方とかいますし。


 さて、今回の構築劇場ですが、件の《同族の呼び声》を使っていこうかな...
 とも迷ったのですが今回は是非ご紹介したいデッキが完成したのでこちらでいってみたいと思います。

 キーカードとなるのは、これです。

 またか!
 いやぁ、やはり青緑狂としてはこのカードはもう骨の髄までしゃぶりつくしたいところですよじゅるるるる...


 失礼しました。

 さて、前回は『Insect Instinct』を実際に構築してみたわけですが、あのデッキを持ってスタンダードの大会に出てみたところある発見ができました。

 とある対戦相手が、《太陽のタイタン》を戦場へ繰り出してきました。たまたま手札に《幻影の像》を持っていたので、ラッキー!と思いながらこれをコピー。そして、墓地を見ると《追跡者の本能》で肥えに肥えたクリーチャーたちが!

 あっという間に僕の場に3体の《太陽のタイタン》(いずれも正体は《幻影の像》ですが)が勢ぞろい。間もなくそのゲームには勝つことができました。

 これは...使える!
 《太陽のタイタン》が次々に《幻影の像》を釣ってくるさまは過去にもよく見られていましたが、《追跡者の本能》のおかげでその成功率を格段に上げることができます。
 これは何か強そうなデッキが作れそう!

 というわけでさぁ、デッキを作ろう!と思ったところで僕はこのデッキを思い出しました。

『太陽拳(2006)』[MO] [ARENA]
4 《平地
2 《
1 《
3 《神無き祭殿
2 《オルゾフの聖堂
2 《アゾリウスの大法官庁
2 《湿った墓
2 《コイロスの洞窟
1 《水辺の学舎、水面院
1 《海の中心、御心
1 《死の溜まる地、死蔵
1 《嘆きの井戸、未練
1 《地底の大河

-土地(23)-

1 《曇り鏡のメロク
2 《夜の星、黒瘴
2 《明けの星、陽星
3 《絶望の天使

-クリーチャー(8)-
4 《アゾリウスの印鑑
2 《ディミーアの印鑑
4 《差し戻し
4 《強迫的な研究
3 《屈辱
4 《神の怒り
3 《ゾンビ化
2 《ふるい分け
2 《地底街の手中
1 《迫害

-呪文(29)-


 もはやこのデッキも6年前のものですね...懐かしい。
 3ターン目の《強迫的な研究》から《絶望の天使》を落とし、《ゾンビ化》で釣りあげるというギミックを組み込んだ青白黒の重・コントロールデッキです。

 主に《絶望の天使》の頭部だけ見て、今以上に中二病をこじらせていた僕が「太陽拳!」とホザいていたこと、当時かなりこのデッキで勝てていたことや、Magic Onlineで「このデッキは『太陽拳(Solar Flare)』って言うんだよ」と吹聴してまわったことから、やがて海外でもこのデッキが「ソーラーフレア」と呼ばれるようになったのでした。

 イニストラードが発売されてからというもの、青白黒のコントロールが「太陽拳(ソーラー・フレア)」と呼ばれ続けていますが、それはこのデッキの名残です。もっとも、《太陽のタイタン》があるのでちょうどいい名前かなーとも思います。

 とはいえ当時の《アゾリウスの印鑑》ような強力なマナ加速はありませんし、《強迫的な研究》についても《禁忌の錬金術》とはだいぶ異なるものです。デッキの動きはかなり違ってきていますね。
 印鑑からの高速《迫害》一撃でゲームに勝ってしまうこともありましたし。

 しかし前述の、《太陽のタイタン》が大量の《幻影の像》を釣りあげてくる様はかつての「太陽拳(2006)」が持っていた爆発力に似たものを感じるのです。
 むしろ、それを上回ってしまうかもしれません。


 というわけで、今回のデッキです。

『Solar Mega Flare』[MO] [ARENA]
2 《平地
2 《
2 《
4 《内陸の湾港
4 《氷河の城砦
4 《剃刀境の茂み
2 《金属海の沿岸
2 《進化する未開地
1 《ムーアランドの憑依地
1 《幽霊街

-土地(24)-

4 《幻影の像
2 《瞬唱の魔道士
4 《刃の接合者
2 《悪鬼の狩人
2 《真面目な身代わり
4 《太陽のタイタン

-クリーチャー(18)-
4 《不屈の自然
4 《マナ漏出
4 《追跡者の本能
3 《漸増爆弾
2 《忘却の輪
1 《饗宴と飢餓の剣

-呪文(18)-
2 《シルヴォクの模造品
2 《聖トラフトの霊
4 《瞬間凍結
2 《天界の粛清
1 《漸増爆弾
2 《機を見た援軍
2 《腐食の突風

-サイドボード(15)-


 そうです、あの太陽拳が色を変え、パワーアップして帰ってきたのです。
 その名も、「百万倍太陽拳(ソーラー・メガ・フレア)」!!

 ...むしろあの頃の中二病がさらにこじれて帰ってきてしまったようです。

 早速、このデッキの内容を解説していきましょう。

 まずは《不屈の自然》や《真面目な身代わり》を使いながら、マナを6マナまで伸ばしていきます。
 時には《瞬唱の魔道士》で《不屈の自然》をフラッシュバックするのもよいでしょう。目指すはとにかく、《太陽のタイタン》の6マナです。

 もし《追跡者の本能》が手札にあれば積極的に使っていきましょう。手札にクリーチャーが入らない可能性もありますが、それ以上に《太陽のタイタン》が着地したときに選択肢を広げられるようにするほうが重要です。

 序盤の戦線は《刃の接合者》が支えます。最近流行の《地獄乗り》や、《絡み根の霊》に対して有効です!
 また《悪鬼の狩人》はこのデッキのためにあるようなカードで、《追跡者の本能》で手に入る上に《太陽のタイタン》で戻してくることも可能です。

 《瞬唱の魔道士》は『Insect-Instinct』では重要な役割を担っていましたが、このデッキではあまりフラッシュバックの選択肢が広くないので2枚に抑えてあります。
 正直言ってこのバランスは非常に難しいです。《追跡者の本能》のためにクリーチャーは沢山入れたいんですが、入れすぎると今度はフラッシュバックが弱くなってしまう...という感じです。まぁ、こういった悩みが一番デッキを作っていて楽しい瞬間なんですけどね!
 むしろ、このカードの活躍はサイドボードからでしょう。相手次第で《瞬間凍結》《天界の粛清》《機を見た援軍》が入ってくるので、メインのときより役割が大きくなってきます。

 《漸増爆弾》は、このデッキでは《太陽のタイタン》によるループにより《未練ある魂》のトークン戦術や《高原の狩りの達人》のような強力両面カードを封殺することが可能です。
 コントロールデッキではますます《漸増爆弾》が重要になっていると思いますので、コントロール好きの皆さんは是非検討してほしい1枚です。

 こっそりと1枚ずつ《ムーアランドの憑依地》と、《饗宴と飢餓の剣》も入っていますが、この2枚はコントロールデッキ相手に有効です。どちらも《太陽のタイタン》で釣りあげることができますから、《破滅の刃》などの除去呪文が多い相手でも安心です。

 序盤、中盤をうまくしのいでいけば、その頃には大体《太陽のタイタン》の準備は整っているでしょう。
 できるだけ《刃の接合者》の本体はチャンプブロックに回し、できるだけ相手の確定除去は《悪鬼の狩人》に使わせるのです。
 《漸増爆弾》を引いていたら、1対1交換でも構わないので積極的に爆破していきましょう。
 相手が伝説のクリーチャーを出してこようものなら、すぐに《幻影の像》で対処するといいと思います。

 そんなこんなで、運よく墓地に《幻影の像》がいれば「メガフレア」発生です。《追跡者の本能》を何枚撃ったかによって結果が変わってくると思いますが、この圧倒的な爆発力はとてもカード1枚でやってよいシロモノではありません。

 例えば《原始のタイタン》からの《墨蛾の生息地》《ケッシグの狼の地》という必勝パターンに対しても、《太陽のタイタン》→《幻影の像》→《幻影の像》(全部《太陽のタイタン》をコピー)+《幽霊街》と釣りあげてしまうと相手は何もできなくなります。
 相手に墓地対策がなければ、このパターンに入ってしまえばほぼ必勝といってよいでしょう。

 《太陽のタイタン》による地上の制圧力は非常に高い反面、空中から殴られてしまうと厳しいところもありますが、主な航空戦力は《昆虫の逸脱者》とスピリット・トークンだったりするので、《漸増爆弾》で対処できてしまいます。これこそ、「メガフレア」の隙のなさですね。


 さて、サイドボードを見てみます。

 《瞬間凍結》はプロツアー・闇の隆盛inホノルル以降大流行の《ケッシグの狼の地》、それと赤緑ビートダウンに対して有効ですね。
 《機を見た援軍》は相変わらずのビートダウンキラー。ピンチのときの、《瞬唱の魔道士》からのフラッシュバックは見逃せません。

 《聖トラフトの霊》は青黒コントロールのような、墓地対策として《虚無の呪文爆弾》を使ってくる相手にサイドインします。
 《天界の粛清》は、あのグランプリ・ボルチモアを制したゾンビ・ビートダウン相手に入れていきましょう。特に《ゲラルフの伝書使》は危険ですからね。

 《シルヴォクの模造品》はとても面白いカードで、《忘却の輪》で《太陽のタイタン》を対処してくるような白系のビートダウンに対してインします。
 《太陽のタイタン》との組み合わせで、相手のエンチャント・アーティファクトを根絶やしにすることができますよ!

 《腐食の突風》は、このデッキにとってやっかいな《ドラグスコルの隊長》を対処することができます。
 対象を取る除去呪文が多いので、《ドラグスコルの隊長》は2体出されてしまうと詰んでしまう可能性もあるのですが、このカードが入っていれば安心できます。

 どのスペルも枚数が中途半端なようにも思えるのですが、意外に《追跡者の本能》で墓地に落としつつ《瞬唱の魔道士》で使えたりするので、試してみると割と自由に好きな呪文を撃てる感覚です。是非試してみて下さい!


 相手からのサイドボードとして忘れてはならないのは、《墓掘りの檻》です。《太陽のタイタン》をキーにしていますから、かなりの痛手になります。

 しかし《漸増爆弾》を使えば対処することが容易なので、できるだけ《漸増爆弾》はどの相手にもサイドアウトしないほうが良いと思います。

 今回は採用していませんが、相手の墓地対策の対策としては《グール樹》なんかを入れてみても面白いかも!?



 というわけで、何度か今はこのデッキを使ってMagic Onlineの構築戦のイベントで遊んでいます。思ったより成績はいいので、もしかしたら津村大先生に取りあげてもらえるかもしれません。

 今は「メガフレア」ですが、もっと進化したら「ギガフレア」、果ては「ペタフレア」くらいまで進んじゃうかもしれません。皆さん、ヤケドしないように気を付けて下さいね!

 それでは、新しい春に向けて、Decks,be Amibtious!!

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