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高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
第9回:「神戸への道」エクステンデッド攻略 その4?赤単、ボロス、4色ビート
読み物
高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
2011.03.11
第9回:「神戸への道」エクステンデッド攻略 その4~赤単、ボロス、4色ビート
「神戸への道」と題してお送りしているエクステンデッド特集4回目。今回はプロツアー予選を中心に、日本各地の大会結果を見ていきます。
「赤単~勝負は4ターン目、環境の高速化」
12 《山》 4 《ぐらつく峰》 4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 -土地(24)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《運命の大立者》 4 《地獄火花の精霊》 4 《板金鎧の土百足》 4 《ボガートの突撃隊》 -クリーチャー(20)- |
4 《稲妻》 4 《噴出の稲妻》 4 《焼尽の猛火》 4 《炎の投げ槍》 -呪文(16)- |
4 《ゴブリンの奇襲隊》 3 《トンネルのイグナス》 4 《壊滅的な召喚》 4 《火山の流弾》 -サイドボード(15)- |
先週の記事でも述べたように、スタンダード同様、エクステンデッドでも《石鍛冶の神秘家》《饗宴と飢餓の剣》を巡ったメタゲームになっています。
しかしこの《石鍛冶の神秘家》にも欠点はあり、それは機能するまでに少々時間がかかるということ。綺麗に展開したとしても、装備品つきのクリーチャーが殴り始めるのは4ターン目で、合計6マナを必要とします。
そして他のデッキにおいても《霧縛りの徒党》《謎めいた命令》《復讐蔦》《血編み髪のエルフ》《審判の日》のように、ゲームの焦点となるカードは4マナが多いです。
そこで、相手が「4マナのターン」を迎える前に場の優位を築いてしまおう、そんな理念のもとデッキ構築された・・・のは定かではありませんが、他のデッキよりも1ターン早い動きをするのがこの「赤単」です。
ローウィン・アラーラ・ゼンディカーの時期はちょうど赤のクリーチャーの質が高まった頃であり、どの時代にも赤単は少なからず存在していました。この赤単はそんな中からもマナコスト・ダメージ効率の良いクリーチャーが厳選されています。
1マナクリーチャー8枚、2マナクリーチャー8枚、3マナクリーチャー4枚というようにマナカーブに沿った選択をしていますし、デッキ内の最大コストが3であることからもわかるように軽さを重視したデッキ構築ですね。相手の準備が整う前にライフを0にする、今も昔も変わらない赤単の戦法です。
タフネスが低いクリーチャーを主力にしたデッキが多く「火力が強い環境」というのも赤単に追い風ですね。ナヤ、バント、エルフ、どれにも火力は効果的ですし、特に《ミラディンの十字軍》を1マナで交換できるのは強い。
サイドボードも至ってシンプルで、《ゴブリンの奇襲隊》《壊滅的な召喚》がヴァラクート・赤単同系に強く、《火山の流弾》は各種石鍛冶デッキとフェアリー対策ですね。
赤単も赤緑ヴァラクートもだいたい5~6ターン目にはゲームに勝つデッキですが、妨害手段の有無(ヴァラクートには除去があるが、赤単は相手の動きに干渉できない)により、わずかに不利になります。そのためか、カシワさんのデッキでは多めにヴァラクート対策が取られていますね。ヴァラクートが赤単に入れてくるサイドカードは《火山の流弾》《金屑の嵐》《紅蓮地獄》といった全体除去なので、《ゴブリンの奇襲隊》+《壊滅的な召喚》コンボは軸をずらすためにも良い選択です。
赤単の宿命として「意識されると負ける」というのがあります。
というのも、赤単は一直線なデッキであり、ライフを得るカードやプロテクション(赤)を苦手とするからです。今のエクステンデッドにも《台所の嫌がらせ屋》《ブレンタンの炉の世話人》といった赤キラーはいますからね。
赤単を使う場合はこれら対策カードを「今は使われていない」と割り切るか、または《迫撃鞘》《伝染病の留め金》など「赤対策を対策」する必要があります。
「ドラン」
3 《平地》 2 《沼》 1 《森》 4 《つぶやき林》 1 《活発な野生林》 2 《反射池》 4 《湿地の干潟》 4 《霧深い雨林》 4 《新緑の地下墓地》 -土地(25)- 4 《壌土のライオン》 4 《ステップのオオヤマネコ》 4 《朽ちゆくヒル》 4 《クァーサルの群れ魔道士》 4 《潮の虚ろの漕ぎ手》 4 《包囲の搭、ドラン》 -クリーチャー(24)- |
4 《流刑への道》 4 《名も無き転置》 3 《不敬の命令》 -呪文(11)- |
2 《静寂の守り手、リンヴァーラ》 4 《叫び大口》 3 《悪斬の天使》 4 《思考囲い》 2 《遍歴の騎士、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
《金属モックス》や「発掘」「青黒DD」がいた去年に比べて今のエクステンデッドは遅く、《鮮烈な小川》《忍び寄るタール坑》といったタップインランドスタートや2マナスタートが許容されている環境です。そんな中、赤単同様に「他より1ターン早いデッキ構築」をしているのがこの「ドラン」。
白・黒・緑という組み合わせはできることが多いので、通常なら《石鍛冶の神秘家》や《大渦の脈動》といったユーティリティを求めてしまいそうなところですが、このデッキはあえてその部分を諦めて、徹底して軽さを追及した構築をしています。クリーチャーのマナ域は1マナ8枚・2マナ12枚・3マナ4枚。
《壌土のライオン》は《つぶやき林》が《森》なので最初から2/3であることがほとんど、その《つぶやき林》を持ってくるためにフェッチランドを多く採用しているため《ステップのオオヤマネコ》が機能し、さらにはこれらが《包囲の塔、ドラン》で1サイズアップします。
そして2マナ域は打点の高い《朽ちゆくヒル》、妨害要素として《クァーサルの群れ魔道士》《潮の虚ろの漕ぎ手》を採用し、個々のカードの強さを持ちながらシナジーもある美しいデッキ構築になっていますね。先週も述べたようにエンチャント・アーティファクトが強い環境なので、白緑ビートダウンなら《クァーサルの群れ魔道士》をメイン4枚はもはや定番。
除去も《つぶやき林》のアンタップインのための《名もなき転置》、軽さ重視の《流刑への道》ですね。今のエクステンデッドで5~6マナの重いカードを使うデッキは少ないので、《流刑への道》の「相手のマナを増やすデメリット」が薄く、環境的に強いカードです。
そして《不敬の命令》。かつては緑黒エルフの必殺技だったこの呪文、このデッキではどのモードでも使用できるユーティリティカードです。
-X/-Xの除去、最後の一押しであるX火力であり、フェアリー以外には黒いクリーチャーを使うデッキが存在しないことから、特にナヤ・バントに対しては畏怖によるフィニッシュブローにもなります。このデッキはコストが軽いクリーチャーで占められているためリアニメイトで撃つことも多く、装備品を割ってから《クァーサルの群れ魔道士》を回収したり、除去された《潮の虚ろの漕ぎ手》《包囲の搭、ドラン》を回収したりと、いつ引いても嬉しい便利なカード。
赤単・ドラン共に、こういう「早い」デッキが結果を残したことには理由があります。
今のエクステンデッド環境では緑ビート以外のデッキは《苦花》《石鍛冶の神秘家》《不屈の自然》などの2マナがファーストアクションとなることが多く、自分もフェアリーで後手《苦花》スタートは間違いなくキープします。
環境が2マナスタートなのに対して、ドラン・赤単は1マナスタート。極端に言ってしまえば、デッキ構築の段階で1ターンの優位を得ていると言えます。使用率の高い2マナ域である《苦花》《石鍛冶の神秘家》《不屈の自然》が、どれも後手では盤面に与える影響が少ないというのも、軽いデッキが勝ちはじめた理由に含まれますね。これら早いデッキを意識するなら、これからは《見栄え損ない》《稲妻》など軽除去を優先したデッキ構築をする必要が出てきますね。
「4色ビートダウン」
1 《島》 4 《鮮烈な草地》 4 《鮮烈な小川》 2 《鮮烈な林》 4 《反射池》 2 《剃刀境の茂み》 2 《銅線の地溝》 3 《秘教の門》 4 《変わり谷》 -土地(26)- 4 《貴族の教主》 4 《戦隊の鷹》 4 《クァーサルの群れ魔道士》 2 《石鍛冶の神秘家》 4 《ミラディンの十字軍》 4 《血編み髪のエルフ》 -クリーチャー(22)- |
4 《謎めいた命令》 1 《肉体と精神の剣》 1 《饗宴と飢餓の剣》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 1 《遍歴の騎士、エルズペス》 1 《復讐のアジャニ》 1 《ギデオン・ジュラ》 1 不明 -呪文(12)- |
2 《流刑への道》 4 《審判の日》 4 《神聖の力線》 4 《精神固めの宝珠》 1 《遍歴の騎士、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
各地の大会結果を見た中で、ひときわ異彩を放つのがこのリスト。
赤単やドランが4ターン目までに優位を築こうとするに対して、このデッキはむしろ4ターン目以降にカードパワーで優位を築きます。ヤマカワさんはいつも奇抜な構築をする方で、自分も過去に何度か対戦したことがあるのですが、クイッケントーストから《運命の大立者》が出てきたり、青白タップアウトからいきなり《失われたアラーラの君主》が出てきたりと、常識では考えられないようなデッキを作ってきます。
このデッキもその例に漏れず、あえて分類するとしたら「《謎めいた命令》と《変わり谷》を入れたナヤ」といったところでしょうか。実際に言葉にしてみると何を言っているかわかりませんが、各色の強いカードを詰め込んだ4色グッドスタッフです。
基本的な動きはナヤに近く、《クァーサルの群れ魔道士》《石鍛冶の神秘家》《ミラディンの十字軍》の定番クリーチャー達と各種装備品で攻めていきます。
フェアリーや青白石鍛冶がそうであるように《変わり谷》と《饗宴と飢餓の剣》の相性は良く、3ターン目にこの2枚が揃うだけで、相手の視点ではフルタップで動きにくい状況になります。このデッキが4色でありながらも《変わり谷》を採用しているのも《石鍛冶の神秘家》のアドバンテージを最大限活かすためですね。
継続して攻撃できるように《戦隊の鷹》も採用しており、1回鷹を全部持ってくれば《血編み髪のエルフ》でめくれることもありません。
このデッキが結果を残した理由として、初見での「わからん殺し」も大いにあると思います。たしかに対戦相手の場は《戦隊の鷹》《ミラディンの十字軍》なのに、そこから《謎めいた命令》《精神を刻む者、ジェイス》が出てくるのは想像しがたい。自分も対戦したときは困惑させられました。
もしも対戦したときは「ビートダウンデッキ」だと割り切るのが吉。土地の見た目はクイッケントーストですが、基本的にクリーチャーで攻撃するデッキなので、サイドボードは《火山の流弾》《蔓延》など、対ビートダウン用のプランで問題ないです。
そしてサイドボードで目を引くのが「4《神聖の力線》、4《精神固めの宝珠》」の文字。
タップインが多く初動が遅いデッキであり、妨害も《謎めいた命令》しかないのでヴァラクートは苦手。とはいえここまで徹底されるとヴァラクート側はなすすべがないですね。
もしもこのデッキが流行するようであれば、ヴァラクート側はサイドに《引き裂く突風》をとる必要が出てくるかもしれませんね。
4回に渡ってお送りしてきたエクステンデッド。グランプリ・神戸まで残り一週間、皆さんもグランプリトライアルやプロツアー予選、各種大会で練習に励んでいる頃だと思います。
個人的には、マジックのフォーマットで一番面白いのはエクステンデッドです。ブロックのローテーションが早いものの、それゆえに環境の移り変わりも速く、様々なデッキが生まれ、消え、また生まれていく。デッキの種類も多く、メタゲームの構図も面白いです。
カードの多さから敷居が高かったのも、もはや過去の話。使用エクスパンションが狭まったこともあり、「赤緑ヴァラクート」のように最近のデッキでも十分戦える環境になっています。
この連載でお伝えしているように、マジックにはフォーマットごとの面白さがあります。「スタンだけ」「レガシーだけ」ではなく、他のフォーマットでも遊んでみると、新たな発見がありますよ。
グランプリ本戦はエクステンデッドになりますが、会場ではほかのフォーマットのサイドイベントもあり、2日間楽しめます。
また、恒例のサイン会もあり、構築でもおなじみの《ボーラスの工作員、テゼレット》《ギデオン・ジュラ》などプレインズウォーカーのイラストを手がけている、アレクシー・ブリクロー(Aleksi Briclot)氏が来場するとのことで、お気に入りのカードにサインをもらうチャンスです。
(編注:地震に伴う日程変更の影響で、来場アーティストはスティーブ・アーガイル(Steve Argyle) 氏に変更となりました。詳しくは開催案内をご覧ください。)
お近くの方はぜひ足を運んで、さまざまな形でグランプリを楽しんでみてください。
では、また来週。
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