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戦略記事

Beyond the Basics -上級者への道-

はったりとばったり

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はったりとばったり

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2017年10月11日

 

 あなたは『イクサラン』のリミテッドでメリダと対戦中だ。ゲームは中盤に入っている。何体かのクリーチャーはすでに相打ちになっていて、いろいろなやり取りがあった。その結果今に至る。お互いのライフは10点だ。

 あなたがコントロールしているのは、今唱えた《縄張り持ちの槌頭》だけだ。同じく戦場に何も出していなかった相手にターンを渡すと、彼女は《巣荒らし》を唱えて――そのまま攻撃してきた。メリダの手札は2枚だ。

 あなたはブロックするだろうか?

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 さて、どう思うだろうか? ああ、もちろん自分のデッキについてより詳しい情報が欲しいとは思うが――今の話だけで考えたなら、ブロックするだろうか?

 とりあえずの答えは決まったかな? いいね! では、先に進もう。

 こういう状況に出会うことは、マジックの対戦では何度も体験することだ。リミテッドでも、スタンダードでも、モダンでも、そして時には統率者戦でもね。そのたびに単純な疑問に答えを出さなければならないだろう――相手は「あれ」を持っているんだろうか?

 メリダは小さなクリーチャーでこちらの大きなクリーチャーに向かって攻撃してきた。それは、彼女が間違って攻撃してしまったか(基本的には、相手が間違ったとは判断すべきではないが)、何かしらの作戦があるかのどちらかだろう。なぜそうするんだろうか?

 ああ、ここで何をすべきかを理解するには、対戦相手がなぜここで攻撃してきたのかを理解しなければならない。(「マジックにおける最も大切な疑問」を忘れないでくれ!)

 メリダがここで攻撃してくる理由は、主に3つ考えられる。

1.コンバット・トリック

 時には、最も単純に考えた答えが正しいものだ。対戦相手はこちらのより大きいクリーチャーに向かって攻撃してきている。なぜそうするんだろうか? ああ、もちろん、戦闘中にこちらのクリーチャーを処理できるからだ!

 この状況では2つの可能性が考えられることに注目すべきだ。それは純粋なコンバット・トリック(訳注1)か、あるいは火力呪文となる。前者は《巣荒らし》のサイズを大きくするなどして、一方的に勝たせる狙い。後者は戦闘ダメージと合わせて《縄張り持ちの槌頭》を倒すのが狙いだ。

(訳注1:コンバット・トリック/戦闘フェイズ中に、クリーチャーを支援する呪文や能力)

 つまりこの攻撃を仕掛けてきたのだから、手だてがあるのは間違いない、よね?

2.はったり

 ......もちろん、まさしくその思考の流れこそが、ブロックしないようこちらを誘導させるための罠だ!

 2点のダメージを受けるということは、今のライフの5分の1を持っていかれることであり、この攻撃は2点のダメージを通せるとメリダが考えたなら行うであろうことだ。どのみち《縄張り持ちの槌頭》の能力のせいで《巣荒らし》はブロックに回れないのだから、2点を通せるか試さない理由はあるだろうか?

3.能力

 はったりか否か以外にも、さらに考慮すべき問題がある。メリダは何か別の能力を利用するために攻撃してきたのではないだろうか?

 例えば......強襲とか?

 これはこの中でも重要な部分で、そもそもこの話題を取り上げた理由の1つでもある。

 コンバット・トリックは無いかもしれない。そして、はったりでもないかもしれない。それはメリダが握っている強襲カードから恩恵を受けるためかもしれないんだ。クリーチャーを失ってもここで強襲を有効化するだけの価値がそれにはある――そして、もしブロックしなければ、彼女にとってはよりよい結果となるだろう!

 強襲は『イクサラン』であれば納得のいくものだが、あくまで一例にすぎない。《漁る軟泥》の強化から陰鬱条件達成まで、さまざまな能力に応じたさまざまな理由が考えられるだろう。

それぞれの状況について判断する

 この攻撃をしてくる理由、その可能性については理解できたので、次はそれぞれの状況でどうなるかを考えてみよう。

 ブロックする場合、起こりそうな結果は3つだ。1つ目、《縄張り持ちの槌頭》は《巣荒らし》を打ち倒し、こちらに損害はない。(わーい!) 2つ目、《縄張り持ちの槌頭》は、相手のクリーチャーと除去呪文の2枚と相打ちとなる。(悪くないね!) 3つ目、コンバット・トリックを使われて、《縄張り持ちの槌頭》は一方的に倒される。(ひどい!)

 ブロックしない場合、確実に2点のダメージを受ける。実質的には、クリーチャーを失うリスクを負わないためにライフを消費する形だ。

 2点のダメージを受けること自体は、それほど悪いわけでもない。しかしそうすることへの反論もある。とても重要で、このような状況においては考えの中心となる問題点だ。もし相手がコンバット・トリックを持っていたなら、それは残ってしまう。

 
確実な一撃》 アート:Izzy

 理屈の上では持っていると考えられるコンバット・トリックは、ブロックしなかったときに魔法のように消えてしまう、ということはない。それはまだあるんだ。次のターンにメリダがまた攻撃してきたとき、ブロックするだろうか? またコンバット・トリックの心配をしなければならないだろうか? 今それを使わせないつもりなら、この後どうするつもりなのか?

 この後こちらも攻撃するから、と主張することも可能だが、ブロックしない時点でライフを削り取る競争に後れを取っている。そしてコンバット・トリックや火力呪文は、ライフ競争においても長期にわたって優位を与えるだろう。

 この攻撃で強襲を狙っているとすれば、ブロックと関係なく目的は達成されている。ここで強襲について考慮しなければならない点があるとすれば、特定の状況に適した強襲カードが問題となる場合だ。

 そして状況について言えば......

状況の流れを考慮する

 把握するべき状況の流れには、重要なものとして2つの流れがある。フォーマットから来るものと今の対戦から来るものだ。

 まずはフォーマットから見ていこう。これがスタンダードで、メリダが使っているデッキの内容について詳しく知っているなら、その知識をもとに考えられるすべてを考慮しよう。今の例は『イクサラン』のリミテッドなので、『イクサラン』のカード――主にコモンとアンコモンについて考える必要がある。

 彼女は青、赤、そして黒マナを利用できる。何が考えられるだろうか?

 《卑怯な行為》はきついが、《恐竜暴走》は相打ちなのでまだマシだ。《高くつく略奪》はブロックするべき理由になるかもしれない――どのみち生け贄にするクリーチャーで2点ダメージを与えられればお得だと考えている!

 同様に考慮しておくべき強力なカードがある。

 攻撃によって強襲は達成されるので、ほとんどの場合そもそも考慮しても仕方がない。......しかしこのカードは別だ。ブロックしなければ2点ダメージを本体に打ち込んでくるし、ブロックしたなら《縄張り持ちの槌頭》は打ち負かされる。

 そして、これはこの対戦の流れにもうまく繋がっている。

 ここに至るまでに、《風雲艦隊の放火魔》や《卑怯な行為》をプレイする機会がメリダにはあっただろうか? ここまでにそれらを利用する好機があったにもかかわらず、それらを使われていなかったのであれば、おそらくどちらも持っていないだろう。逆に、ゲーム中コンバット・トリックを使う機会に恵まれていなかったとしたら、今それらが手札にある可能性は高い。

 これが2ゲーム目や3ゲーム目だとすれば、そこまでにどんなコンバット・トリックを使ってきただろうか? それはここで有益な情報だ。

 土地は出してきていただろうか? もし土地を出してきていないなら、手札のカードはおそらく呪文の可能性が高い――前のターンにクリーチャーを出していないなら、多分そうだろう。

 行動の変化もまた、新しいカードの効果を利用するためと判断できる理由だ。ほとんど同じ状況で、《巣荒らし》が《縄張り持ちの槌頭》を何ターンか睨んでいたのに、急に攻撃に転じてきた、としよう。それはおそらく、彼女の考えを変える何かを引いたからではないだろうか。(あるいは、もしかしたら、あなたがそう考えるのが狙いだ!)

 こちらの視点から考えられるもう1つの疑問は、危険にさらされているのかもしれない自分のクリーチャーに、どれだけの価値があるかだ。

 もしこれが《再誕の司教》だったなら、できれば生き残らせたいと考えるだろう。そして可能ならば、ブロックに回してリスクを負いたくもない。自分が赤白デッキで、《自暴自棄の漂流者》を何らかの理由でコントロールしている時は、あまり気にせずブロックに回すだろう。この判断は状況に応じて変化する。

 ほかに考えられる重要な要素は、ここまで自分がとってきた行動にあるかもしれない。1ゲーム目で、ブロックをためらったことはあるだろうか? だとすれば、それを覚えているメリダがそれを利用しようと攻撃してきたのかもしれない。

 デッキには他にどんなカードがあるだろうか? もしもっと大きなクリーチャーがデッキに眠っているなら、巨大な恐竜を引き当てるまで生き残るために、ブロックに向かわせてもいいだろう。

 それでは、こちらの手札が実際には2枚ある、として次にいこう。

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 1段階深い考えに進もう。おそらくメリダはこちらに手札が2枚あることには気がついている。彼女はコンバット・トリックを使うつもりかもしれない。こちらに除去呪文があるなら、問題なく一蹴できる。あるいは、彼女はこちらにコンバット・トリックが無いと推察して攻撃してきたのかもしれない。あなたはここまでにどれだけの情報を提示しているだろうか?

 こういった異なる要素すべてを考慮に入れて、策を練るんだ。

結論に達する

 一例として挙げたこの状況1つ取っても、考えるべきことは数多い。しかし彼女の攻撃の意図を把握しどうするか判断し終わるまでを、10秒以内には行なっていなければならないだろう。

 では、あなたはどうだろうか? この記事を読み始めた時の結論と、今とでは違うだろうか?

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 私なら、ここはブロックするかな。

 ああ、ちょっと奇妙な状況だ。メリダがこの攻撃を良い結果で終わらせるための何かを持っている可能性は、高いと思う。クリーチャーを無駄に失ってもよい状況ではないだろう。何も持っていないなら、このターンは出さずに、こちらが攻撃した返しのターンに突然2/1を出して攻撃してくるのではないだろうか?

 しかしながら、私は彼女のコンバット・トリックを今のうちに引き出しておきたい。自分のデッキにはまだまだクリーチャーが残っているはずだ。どれを引いても、《巣荒らし》は倒せるだろう。ここで今コンバット・トリックを消費してくれるなら十分嬉しい。なぜなら、それが《卑怯な行為》、《確実な一撃》、あるいは他のどんなものであっても、それを次のクリーチャーに使われることがないからだ。(特に、大型クリーチャーがまだ残っているならね!)

 もし《風雲艦隊の紅蓮術士》を持たれていたのであれば、《縄張り持ちの槌頭》を失うのは相当厳しい。それでも、計4点のライフを失って3/2と2/1に並ばれる状況にはならず、ブロッカーを引くための猶予が2ターン与えられる。

 これは一度の攻撃のために多くの思考を求めている――しかし一度の攻撃が対戦の勝ち負けを決めることもあるんだ。

 ここで説明した一連の思考の流れは、同様のどんな状況であっても、どんなフォーマットであっても当てはめることができる。対戦相手の行動を見極め、自分の立場から評価し、その前後関係から判断する。これは、あなたが力強い判断を下すために必要な情報を把握できるようにしてくれるだろう。

 「単純な」疑問はこれで終わりだ!

 どう感じたかな? ブロックするかしないか、どちらの主張にも良いところがあるだろう。ブロックに賛成? それとも反対かな? どちらか教えてくれ! いつでもTwitterTumblrで伝えてくれていいし、BeyondBasicsMagic@Gmail.comに(すまないが英語で)メールしてくれてもいいよ。

 また来週の「Beyond the Basics -上級者への道-」で会おう。『イクサラン』で楽しい時間を過ごしてくれ。お楽しみに!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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