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ワールド・マジック・カップ2014

観戦記事

ステージ2第1回戦:メキシコ代表 vs. アメリカ代表

矢吹 哲也
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Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年12月6日


 アメリカとメキシコは長い国境で接していて、ふたつの国のプレイヤーたちは北アメリカで開催される大会でよく出会う。いわば、これらふたつの国は普段から競い合っているということだ。

 だから、地球の裏側でもこうして彼らが競い合うのは、何の不思議もない。

 この会場にはもう国境はない。両チームとも席につき、最後のグループ・ステージ第1回戦に臨む。そんな両チームだが、しかし置かれた状況は大きく違っていた。このグループで一番高いシードを持つメキシコ代表には、これからトップ8に入賞し日曜日の舞台へ進出する道は多くある。一方世界ランキング1位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldがキャプテンを務めるアメリカ代表は、この週末を通して低い順位で苦闘を続けてきた。グループ内シード4位のアメリカ代表が日曜日の舞台に進出するには、ほぼ3戦全勝が必要になるのだ。

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北アメリカの隣国同士が、予選リーグ・ステージ2の第1戦で激突する。

それぞれのデッキ

 A席では、エマニュエル・ラミレス・サンチェス/Emmanuel Ramirez Sanchezが現在のスタンダードで最も信頼されているアーキタイプ、すなわち「アブザン・ミッドレンジ」を手にしていた。テーブルを挟んで反対側に座るアメリカ代表のアンドリュー・ベックストーム/Andrew Baeckstromが振るうのは、その対極、不安定なものの爆発力がある「白青『英雄的』」だ

 彼らの隣では、メキシコ代表のマルセリーノ・フリーマン/Marcelino Freemanが「マルドゥ・ミッドレンジ」を駆使して、世界ランキングの頂点に立つターテンワルドを打ち倒そうとしている。彼が操るのは、《破滅喚起の巨人》や《女王スズメバチ》といった、その場の空気を一変させるカードを有する「黒緑『星座』」デッキだ。そして最後に、エイドリアン・ルーナ/Adrian Lunaの持つ「ティムール・ミッドレンジ」と、ニール・オリヴァー/Neal Oliverの「ジェスカイ・トークンズ」が対峙する。

ゲーム展開

 フリーマンが序盤から完璧な引きを見せ、あっという間にターテンワルドを下すと、メキシコに1ゲーム目の勝利を告げた。しかし残りの2試合は、長い均衡が続くことになる。

 オリヴァーは序盤から、彼のデッキ名の由来となる「トークン」を生み出す《急報》と《軍族童の突発》を放つことができた。しかしそれらはすぐに、ルーナが対抗して繰り出した《世界を喰らう者、ポルクラノス》や《嵐の息吹のドラゴン》を前に歯が立たなくなってしまう。《かき立てる炎》が《嵐の息吹のドラゴン》を除去し、《紅蓮の達人チャンドラ》がオリヴァーに再び道を示すが、《ゼナゴスの狂信者》が彼にプレッシャーを与え続け、ライフが刻々と《火口の爪》の圏内に近づいていく。

 そこへ《ジェスカイの魔除け》が駆けつけ、オリヴァーのトークンたちによる攻撃が6点に増えると同時に、失ったライフを取り戻すという大きな役目を果たした。これでライフを安全圏のふた桁に戻した彼は、火力の連打で《世界を喰らう者、ポルクラノス》を焼き払い、トークンたちでゲームを終わらせたのだった。

 このオリヴァーのゲームには以上のように一進一退の攻防があったが、それでもベックストームとサンチェスの戦いはそれを上回った。

 立ち上がりは、「英雄的」デッキの理想より遅いものだった。最初に盤面に現れたのはサンチェスが繰り出した《羊毛鬣のライオン》で、これがベックストームの《戦識の重装歩兵》とダメージを交換し合う。両者のライフが次第に減っていくと、両プレイヤーは別の方向へ進みだした。

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メキシコ代表が強烈なスタートを決めたが、他のふたつの試合は始まるなり拮抗しだした。

 サンチェスは「横」。《クルフィックスの狩猟者》と2枚目の《羊毛鬣のライオン》、そして《真面目な訪問者、ソリン》と広く展開し、大きなダメージを通していく。この攻撃でベックストームのライフは残り5点に落ち込み、サンチェスは17点まで回復した。

 一方のベックストームは「縦」。《イロアスの英雄》にエンチャントをつけていき、サイズを伸ばし続ける。《ヘリオッドの巡礼者》で《ヘリオッドの試練》を引き込むと、《イロアスの英雄》は《真面目な訪問者、ソリン》を倒せるほどのサイズになると同時に、ベックストームのライフを回復した。続くターン、《恩寵の重装歩兵》2体がチャンプ・ブロックに入り、そして《イロアスの英雄》は《層雲歩み》を身にまとった。現時点での両者のライフは12対5でメキシコ側有利だ。

 《ヘリオッドの巡礼者》から《ヘリオッドの試練》という動きは優秀で、ベックストームは次のターンにもう一度行うことにした。今や12/12まで強大になった《イロアスの英雄》の攻撃から生き残るために、サンチェスは《胆汁病》を使わざるを得ない。だがこれでベックストームのライフは再び14点まで回復する。サンチェスは迎えた次のターンにも《イロアスの英雄》に対処するすべは見つけられず、カードを片付けるしかなくなった。

 一方その頃、オリヴァーはマナの薄さに苦しむルーナを相手に優位に立っており、彼をトークンの群れで押し潰してアメリカ代表に勝利をもたらそう、という場面だった。そして再びターテンワルドとフリーマンに目を向けると、この勝負全体が決まり得る第3ゲームは膠着していた。

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アメリカ代表がトップ8に入賞するには3戦全勝が必要になる。だが世界ランキング1位のプレイヤーをキャプテンに据えたこのチームに、不可能はないだろう。

 この最終ゲームでは、両プレイヤーとも強力なスタートを切った。フリーマンは《道の探求者》から《軍族童の突発》。ターテンワルドは《森の女人像》から《クルフィックスの狩猟者》という最高のスタートだ。

 最初に大きくゲームが動いたのは、わずか数ターン後だった。ターテンワルドが《破滅喚起の巨人》を引き込み、フリーマンのトークンを一掃する。フリーマンは対応して《破滅喚起の巨人》へ除去を撃ち込み、《真面目な訪問者、ソリン》で盤面を作り直しにかかる。しかしターテンワルドは序盤の攻勢をしのぎ切り、魔法の時間の始まりである7マナに達した。

 すなわち《女王スズメバチ》。そして、続けて2枚目の《女王スズメバチ》。フリーマンの《軍族の解体者》がもはや哀れみを誘うほどの状況になった。戦場の支配権を完全に失ったフリーマンは直接ダメージの方針をとり、《かき立てる炎》でターテンワルドのライフを残り1点にすると、火力を引き込めば勝利のチャンスが生まれた。

 そのプランは悪くなかった。もしターテンワルドが《エレボスの鞭》を引き込めず、すぐさま危険域から脱することがなければ、うまくいっていたかもしれない。ハチの群れがフリーマンを襲い、アメリカ代表はトップ8入賞への最後の旅の第一歩を無事踏み出したのだった。

メキシコ代表 0-2 アメリカ代表
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RESULTS

対戦結果 順位
S2-3 S2-3
S2-2 S2-2
S2-1 S2-1
S1-3 S1-3
S1-2 S1-2
S1-1 S1-1
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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