EVENT COVERAGE

ニューカペナ・チャンピオンシップ

観戦記事

ニューカペナ・チャンピオンシップ トップ8ラウンド ハイライト

Corbin Hosler

2022年5月22日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 「ニューカペナ・チャンピオンシップ」のトップ8ラウンドが幕を開けた時点で、2021-2022シーズン全体の物語はほとんど終わりを迎えていた。今大会2日目の激戦を経て、「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の残る席の大半はもう埋まったのだ。しかし、この大会の物語にはエンディングが必要だ。それから、世界選手権の最後の席が決まる瞬間も書き記さなければならないだろう。

 ここは、長きにわたる戦いの終着点。2日間全15回戦のスイス式ラウンドだけでなく、今シーズンのすべてがここに集約される。このトップ8ラウンドで上位6名に入ったプレイヤーは、その時点で今年を締めくくる世界選手権の舞台へ上がる32名の仲間入りだ。そしてこの8人の成績次第で、残る世界選手権の席のゆくえも決する。

New-Capenna-Championship-Bracket-Top-8-Double-Elimination-Bracket-01.jpg

勝者側ブラケット

 今大会のトップ8ラウンドも、期待を裏切らないものだった。まず決めるべきは、勝者側ブラケットから王者決定戦の舞台へ上がる者だ。また、準々決勝の4試合は「世界選手権予選」でもある。8名は、大きなものが懸かるこの試合にふさわしい見事なプレイを見せ、最後まで戦い抜いた――どの試合も3ゲーム目までもつれる熱戦だった。

//
ヤン・メルケル(写真1)、デイヴィッド・イングリス(写真2)

 

 最初に現れたのは、長年にわたり競技の舞台に立ち続けるヤン・メルケル/Jan Merkelだった。彼は今大会で躍進を果たした「ジェスカイ・ストーム」を使うデイヴィッド・イングリス/David Inglisにメタ外の「ジェスカイ日向」の力を示し、開幕の一番を勝ち取った。この勝利でメルケルは世界選手権へのチケットを手にし、今大会の勝者側ブラケットを先へ進むことになった。

Jan Merkel - 「ジェスカイ日向」
ニューカペナ・チャンピオンシップ トップ8 / スタンダード (2022年5月20~22日)[MO] [ARENA]
1 《
1 《
4 《嵐削りの海岸
4 《河川滑りの小道
2 《さびれた浜
3 《連門の小道
3 《日没の道
3 《針縁の小道
1 《ストーム・ジャイアントの聖堂
-土地(22)-

4 《暁冠の日向
4 《黄金架のドラゴン
-クリーチャー(8)-
3 《炎恵みの稲妻
1 《棘平原の危険
1 《電圧のうねり
4 《表現の反復
4 《ジュワー島の撹乱
2 《かき消し
2 《否認
1 《ドラゴンの火
4 《鏡割りの寓話
4 《マグマ・オパス
3 《渦巻く霧の行進
1 《髑髏砕きの一撃
-呪文(30)-
1 《怪しげな密航者
1 《船砕きの怪物
1 《炎恵みの稲妻
1 《呪文貫き
1 《電圧のうねり
2 《軽蔑的な一撃
2 《ドラゴンの火
2 《勇敢な姿勢
1 《地震波
1 《多元宇宙の警告
1 《記憶の氾濫
1 《勢団の銀行破り
-サイドボード(15)-

 これに続くは、2人のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーの邂逅だ。マイク・シグリスト/Mike Sigristは自身4度目のトップ8入賞。八十岡翔太はこれで10度目となり、歴代トップ8入賞回数ランキングで6位タイに順位を上げた。

//
マイク・シグリスト(写真1)、八十岡 翔太(写真2)

 

 シグリストの「グリクシス吸血鬼」と八十岡の「ジャンド・ミッドレンジ」による対戦は記憶に残る名勝負となり、ゲームを取り合った両者は最後まで一進一退の戦いを繰り広げた。2人のベテランによる戦いに終止符を打ったのは、キキジキの再来たる《キキジキの鏡像》だった。勝利を収めたシグリストの残り持ち時間は、わずか43秒だった。

 

//
吉越 久倫(写真1)、カール・サラップ(写真2)

 

 ブラケットの反対側では、吉越久倫がこの週末を通して誰もが予想し得なかった走りを続けていた。ほんの数年前にマジックに触れたこの日本人プレイヤーは、MTGアリーナの戦場でこれまでにない成功を収めた。同じく自身初のトップ8入賞を果たしたカール・サラップ/Karl Sarapを下した吉越は、世界選手権でも見事な走りを見せてくれることを見るものに確信させたのだった。

//
サイモン・ニールセン(写真1)、ザカリー・キューネ(写真2)

 

 準々決勝最後の試合は、サイモン・ニールセン/Simon Nielsenとザカリー・キューネ/Zachary Kiihneによる「エスパー・ミッドレンジ」の同系戦となった。消耗戦の果てにわずかに勝ったのは、ニールセンの方だった。

 

 勝者側ブラケットにはそれぞれ異なるデッキを操る4人が残った。さらに激化するミッドレンジ・デッキの決戦では、ニールセンが吉越に辛くも勝利し、メルケルは飛行戦力を見事に乗りこなし、シグリストを下した。

 

 こうして、勝者側ブラケット決勝の舞台にはヨーロッパ出身の達人2人が上がることになった。両者は「ニューカペナ・チャンピオンシップ」のスタンダード部門において特に優れた幅広い戦略を、3ゲームフルに使って存分に披露し合った。決着が3ゲーム目までもつれ込むのは、トップ8ラウンドが始まってからの連続7戦目。過酷を極める3ゲームの末に、王者決定戦へ一番乗りを果たしたのは、メルケルの「ジェスカイ日向」だった。

New-Capenna-Championship-Bracket-Top-8-Double-Elimination-Bracket-04.jpg

 戦いの舞台は、世界選手権の席を決める敗者側ブラケットへ移る。最初の試合はすでに他の方法で席を確保している2名によるもので、イングリスが八十岡を嵐のごとき勢いで打ち破り、駒を進めた。

 世界選手権へのチケットを最後の最後に掴んだのは、カール・サラップだった。自身初のトップ8入賞を果たした彼は、準々決勝ではあと一歩のところで勝利を逃した。しかし世界選手権出場の夢は、まだ彼の手に残っていた。再びすべてが懸かった3ゲームに挑むサラップに、「ジャンド」デッキが応えた。

 

 極限の緊張の中で戦い続けたサラップにとってそれは、信じられない出来事だった。この週末を迎えるにあたり彼が夢見ていたこと以上の偉業を、サラップは成し遂げたのだ。

 

「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」出場選手

 こうして、「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の出場選手が確定した。

#MTGWorldsへの出場を決めた精鋭たちに拍手を!
今年の秋に「世界王者」のタイトルを懸けて競い合うのは、以下の32名です。
2022年10月28~30日開催の至高のイベントをお見逃しなく。

 「ニューカペナ・チャンピオンシップ」では、以下の6名に世界選手権への参加権利が授与された。

  • ヤン・メルケル
  • マイク・シグリスト
  • サイモン・ニールセン
  • 吉越 久倫
  • デイヴィッド・イングリス
  • カール・サラップ

 だがすでに世界選手権への参加権利を有しているプレイヤーがいるため、ポイント・レースにおいて繰り下がりが発生した。その結果、リーグ所属選手からヤクブ・トート/Jakub Tóthが、チャレンジャーからルーカス・ホネイ/Lukas Honneyが最後の招待選手として追加された。

今日はすごく落ち込んでいたけど、@RLYKNGHTと話して自分が世界選手権に行けることを実感できた。最高の気分に戻れたよ。@IvanFloch_や@OndrejStraskyをはじめ、この夢を実現させてくれたみんなに感謝。

世界選手権へ、いくぞおおおおおおおお

敗者側ブラケット

 再びミッドレンジ・デッキ同士の戦いが繰り広げられ(実に9戦連続で第3ゲームが行われる展開になった)、吉越とシグリストが次なる戦いへ進出した。シグリストが操るバリュー重視の「グリクシス吸血鬼」はサラップの「ジャンド・ミッドレンジ」との戦いを生き抜き、吉越はイングリスの驚くべき「ストーム」デッキへ早い段階からプレッシャーを与えることに成功したのだ。

 こうして、大きく戦績の異なる2名が対峙することになった。プレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得の経験を持つシグリストは自身4度目のトップ8入賞を記録しており、一方の吉越は2020年にマジックを始めた新顔だ。だがこの両者には共通するものがある。両者とも今年の世界選手権への参加権利を持ち、そして両者とも「ニューカペナ・チャンピオンシップ」優勝のチャンスをまだ残しているのだ。

 シグリストと吉越の一戦は強烈なパンチの応酬となり、ゲームを取り合ったすえに凄まじいトップデッキが生まれた。大成功の週末となった吉越に訪れた最高の瞬間については、他の何よりも彼自身のリアクションが多くを物語っている。

 

 王者決定戦の舞台でメルケルと対峙する相手を決める戦いも、残るは1試合。吉越の誰もが予想し得なかった走りはまだ続くのか? それともニールセンがリベンジの機会を得るのか?

 現行スタンダードでよく見受けられる光景だが、勝敗を分けたのは《食肉鉤虐殺事件》だった。両者とも回避能力を持つ脅威で攻撃的にゲームを進められるデッキだったが、必要に応じて盤面をリセットできる力を持つのは、ニールセンの方だけだった。

 音楽に乗りながら今大会を戦い抜いてきたニールセンが、安定してボード・アドバンテージを積み上げ、吉越との決戦の2ゲームを制した。こうしてニールセンは、「ニューカペナ・チャンピオンシップ」の王者決定戦へ進出したのだった。

 

New-Capenna-Championship-Bracket-Top-8-Double-Elimination-Bracket-08.jpg

(Tr. Tetsuya Yabuki)

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

サイト内検索