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プロツアー「テーロス」

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プロツアー「テーロス」トップ5カード

Event Coverage Staff / Tr. Yusuke Yoshikawa

2013年10月13日


5位 《夜帷の死霊

 プロツアー「ギルド門侵犯」の期間中、《ボロスの反攻者》が新たな混成クリーチャーとして傑出していた一方、ディミーア代表選手の《夜帷の死霊》は完全に脇に追いやられ、混成クリーチャーの仲間の中でも影の薄い存在となっていた。しかし、プロツアー「テーロス」で《夜帷の死霊》が輝く時が来た。青と黒、双方への信心の高さから、《夜帷の死霊》は多くの信心デッキにとって自動的に選択される3マナ域となっていた。《海の神、タッサ》を容易にクリーチャー化させるというだけでなく、その誘発型能力もまた、この活躍に関係している。

 本質的に、対戦相手のライブラリーからカードを盗む効果は、限りない可能性を生み出す。例えば、準々決勝において、最終的に優勝を果たすジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniはあるゲームで《》と《ミジウムの迫撃砲》の両方を盗み、色の合わない呪文を唱えることでダメージレースを生き延びるいくばくかの余裕を得ることができた。世界ランキング25位のサム・ブラック/Sam Blackは、同20位の三原槙仁から《ニクスの祭殿、ニクソス》を奪い取り、そこから大量のマナを得ることができ、ゲームが終わってカードを返すときには丁重に感謝していたのだった。特に派手で巨大な効果を生み出していないときも、その能力は変わらず有用だ。例えばカイ・ブッディ/Kai Buddeは使っていない色の《平地》をオシップ・レベドウィッツ/Osyp Lebodowiczから拝借して、これまた『ラヴニカへの回帰』からの混成クリーチャーであり、今週末のトップ対戦卓でよく見られた《審判官の使い魔》を唱えていたこともあった。

 真に《夜帷の死霊》を頂点へと引き上げていたのは、ミラーマッチにおいて効果的だったことだ。土地のみならず、《波使い》へ捧げる信心となるカードも、さらに滅相もないことに《波使い》そのものも盗みとる能力により、ミラーマッチを打破する最重要カードのひとつとなったのだ。何人かの青単信心プレイヤーは、ミラーマッチを見越してトーナメントに《家畜化》を持ち込んでいた。このオーラの最高の用途のひとつは、対戦相手の《夜帷の死霊》を奪うことだ。対戦相手の信心を減らし《海の神、タッサ》を置物に戻すだけでなく、この1枚だけで自分の《海の神、タッサ》を顕現させることができるのだ。

 『テーロス』によってスタンダードにもたらされる最も興味深い変化のひとつは、かつて全くプレイに値しなかったラヴニカへの回帰・ブロックのカードが、『テーロス』後に居場所を見つけたことだ。そうしたカードは多くあるものの、この変遷を最も強調するカードは、《夜帷の死霊》を置いて他にはないだろう。



4位 《世界を喰らう者、ポルクラノス

 今週末に現れた様々なタイプの「コロッサル・グルール」のカードで最も強力なものといえば当然《獣の統率者、ガラク》ではあるが、《世界を喰らう者、ポルクラノス》ほどの衝撃を与えた、緑または赤のカードは他にない。特に日本のプロたちはこの伝説のクリーチャーの力を知り、絶妙に使いこなし、三原槙仁を準決勝まで押し上げた。このデッキは青単信心に対し相性が悪いものの、この獣はたった1回の起動で盤面の厄介なクリーチャー――しばしば《潮縛りの魔道士》を含む――をすべて吹き飛ばし、そうなればグルール・デッキがゲームを取るのは容易なことだった。

 三原のバージョンの「コロッサル・グルール」は《旅するサテュロス》と《ニクスの祭殿、ニクソス》のコンボを用いており、(ブライアン・キブラー/Brian Kiblerが紹介していたように)第4ターンに15マナ以上を出す場面も見られた。大量のマナによる巨大な怪物化能力の起動は、《世界を喰らう者、ポルクラノス》を真にその名が冠するとおりの「世界を喰らう者」とならしめ、対戦相手の戦線を一掃し破壊的な一撃を見舞わせることだろう。

 さらに、《ドムリ・ラーデ》の格闘能力を《世界を喰らう者、ポルクラノス》に使ったときのことも忘れることはできないだろう。ちょっとした怪物化の後なら、《嵐の息吹のドラゴン》、《冒涜の悪魔》、《慈善獣》といった、似たようなサイズにあるミッドレンジの必須クリーチャーを撃ち落とすことができてしまうのだ。

「コロッサル・グルール」をここまで成功に導いたのは、中盤で強く、終盤でさらに強力なその能力であった。《世界を喰らう者、ポルクラノス》は、この結果の最大の要因といえるだろう。



3位 《破滅の刃

「唯一後悔しているのは、《破滅の刃》を使わなかったことさ。」

 これはパトリック・チャピン/Patrick Chapinの言葉だが、《破滅の刃》が環境の黒いミッドレンジあるいはコントロールデッキにとっていかに重要だったかを強調している。環境は様々な種類の「信心」にあふれており、《破滅の刃》のような単体除去はそうしたデッキに信心をフル活用させないために重要なパーツだったのだ。《海の神、タッサ》はただのエンチャント。《ニクスの祭殿、ニクソス》は壊れカードにならない。《歓楽者ゼナゴス》も、十分なクリーチャーがいなければ爆発的なマナ生成はできない。《破滅の刃》があれば単純なことだ。

 何よりも、これがインスタントであるという事実は無視できない。戦闘の真っ最中にプレイヤーを信心から引きずり下ろすことができるのは実に強力だ。対戦相手が《変わり谷》を使っている?そこに《破滅の刃》を。《波使い》にはうんざり?そこに《破滅の刃》を。対戦相手が《世界を喰らう者、ポルクラノス》を起動して、クリーチャーが殺されそうになっている?そこに《破滅の刃》を。《破滅の刃》でなんでも倒せるとか冗談だろうって?そこに《破滅の刃》を。

 3つの異なるデッキが、それぞれの方法で《破滅の刃》からアドバンテージを引き出し、トップ8への道を切り開いた。ポール・リーツェル/Paul Rietzlのオルゾフ・ミッドレンジはこれを《英雄の破滅》(《破滅の刃》改として知られる)と組み合わせて、厄介この上ないプレインズウォーカーすら除去できるようにしていた。ギョーム・ワフォ=タパ/Guillaume Wafo-Tapaの実にワフォ=タパ的なエスパー・コントロールと、山本賢太郎の黒単信心デッキもまた同じ組み合わせを用いて、この週末を通して身の安全を保ち、プレインズウォーカーをまるでクリーチャーのように殺せるようになったという黒の新たな能力をフル活用して、トップ8の座を確保した。こうした成功を見ると思い出される、とある極悪な言葉といえば。そこに《破滅の刃》を。

 プレインズウォーカーは殺せない?そこに《英雄の破滅》を。どちらにしても、そいつは死んでいる。



2位 《ニクスの祭殿、ニクソス

 あるカードが、発売前に書かれた誇大広告の期待に沿うほどの活躍をするというのは稀なことで、期待を超えるとなればさらに稀である。《ニクスの祭殿、ニクソス》がプレビューされると、その潜在能力についての話題が飛び交い始めた。もはや複数のマナを出すことができる土地というのは通常存在せず、もしあったとしても、合理的に考えて法外なコストを要求されるものだ。《ニクスの祭殿、ニクソス》に関しては、かねてから存在する脅威である《至高の評決》があり、それがスタンダードで主要なカードとなることが予想されたことから、人々を悩ませることとなっていた。《ニクスの祭殿、ニクソス》は投資に見合うだけの見返りを得るために、盤面への多大な傾倒を要求する。《至高の評決》の世界では、それは危険な考えだった。

 時は流れて、このフォーマットの真の姿が像を結び始めた。ひとつ明確なことは、それが《至高の評決》の世界ではなかったということだ。《ニクスの祭殿、ニクソス》にとって、それ以上のことはなかった。プロツアー「テーロス」が始まるころには、《ニクスの祭殿、ニクソス》をめぐる期待は最高潮に達した。チーム「ChannelFireball」は彼らの「ニクソス・レッド」デッキを「アカデミー・レッド」だと呼んでいた。日の目を見た中で最高レベルにオーバーパワーのカード、《トレイリアのアカデミー》への逆行だと言うのだ。それほどの高いレベルの比較があってもなお、《ニクスの祭殿、ニクソス》が失敗することはたやすいことのように思われた。

 しかしそうではなかった。事実、《ニクスの祭殿、ニクソス》は繁栄し、このプロツアーでもいくつかの最高の瞬間に貢献していた。三原槙仁の「コロッサル・グルール」デッキが第4ターンに20マナを生み出したという話は容易に聞かれた。山本賢太郎の黒単信心デッキもこれを用いて、《群れネズミ》と《死者の神、エレボス》で完封することが複数回あった。「ChannelFireball」の赤デッキの改良前版を使っていたカミエル・コーネリセン/Kamiel Cornelissenさえも、これのおかげでトップ8の座を手にした。現時点で、そのパワーレベルは否定しようがない。ここに至っての真の疑問は、これがどれだけ進化するか、ということになった。これまでは入っていなかったような、どんなデッキに居場所を見つけていくのだろうか? プレイヤーは何をもってこれを止められるのだろうか? そもそも、頑張ってそれを止めなければならないのかどうか?

 それが果たしてきたことすべてを考えてもなお、《ニクスの祭殿、ニクソス》に関しては未だ答えのない問いが多くある。その問いへの答えは、来週以降もスタンダードが進化を続けることによってのみ、明かされていくことだろう。



1位 《海の神、タッサ

 《海の神、タッサ》は長い航海、内省、古の知識の神である。ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniはプロツアー王者となるための長い旅路において、かの神の内省と知識を必要としていた。幸いなことに、神は彼の側にあったようだ。

 新しいデッキ構築の楽しさ、そのほとんどはプロツアーの優勝にはつながらない。しかしこのプロツアー「テーロス」には、確かにそれが起こった! 「青単信心」は、スイスラウンドで今週末の大きな話題となるべき力を早くも証明し、トップ8に残った他のデッキ・アーキタイプをちっぽけなものとして見せ、そしてプレイオフを支配した。このデッキは、新しいスタンダードのカード・プールが発表された時点で見つけるのが難しいデッキではなかったのは確かだが、最適な形を見つけるのが難しかったことはやはり確かだ。最終的には、トップ8に2人のプレイヤーを送り込み、プレイオフを勝ち進んで決勝で相見えたことで、チーム「Revolution」のバージョンのデッキが最強だと示された。

 《海の神、タッサ》は実に多くの役割を果たす。実質的には常にクリーチャー化している軽い5/5として、《海の神、タッサ》はほとんどのデッキに追随を許さないダメージクロックをもたらす。信心が不足して《海の神、タッサ》が直接攻撃できないときでさえ、起動型能力が確実なダメージを与え続けられることを保証してくれる。多くのシーンで、戦線が膠着した後、《海の神、タッサ》はそれをこじ開け、最後の数点のダメージを与えて勝負を決めていた。ピエール・ダジョン/Pierre Dagenがサム・ブラックに対した準決勝の最終ゲームのように。

 信心をプレイするすべての理由の中に、《海の神、タッサ》がこのフォーマットで最高の助演俳優たちによって支えられてきたことがある。《夜帷の死霊》は環境の他の青いデッキにとって実に致命的だった。《潮縛りの魔道士》はこのプロツアーにおけるミッドレンジ・デッキの大部分を占めるグルールやナヤのデッキに対し驚異的な力を持っていた。《波使い》ももちろん見逃せない。《海の神、タッサ》のために働くすべての信心をもって、《波使い》はその素晴らしく爆発的な力を十分に吸い尽くし、たった4マナで10点を軽く超えるパワーをテーブルに並べることが可能だったのだ。

 万神殿のすべての神々の中で、《海の神、タッサ》が最も派手で、最も強大だということはない。しかし、このスタンダードでは最高の、最多の信心を得て、《海の神、タッサ》はすべてのレベルにおいて王者だということを証明したのである。

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