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プロツアー『サンダー・ジャンクション』

観戦記事

プロツアー『サンダー・ジャンクション』決勝戦

Corbin Hosler

2024年4月29日

 

 世界中から集まった200人以上の参加者たち。個人とチームによる感動的なパフォーマンス、誰も予想しなかった圧倒的なドラフトデッキ、そしてスタンダードの驚きに満ちた物語が、この3日間18回戦のマジックを通して繰り広げられた。プロツアー『サンダー・ジャンクション』は、プロツアーがマジックのホームであるシアトルに戻ってきたことを祝う大会であり、そのすべてがここに結実する。

 高橋 優太 vs. 井川 良彦。ともにプロツアーのベテランであり、日本マジック界の重鎮でもある2人のトップ・フィニッシュは合計9回を数える。もちろん、高橋の持つ第27回マジック世界選手権のタイトルも含めて。両者はともに今大会でトップ8を席巻したMoriyama Japan(森山ジャパン)のチームメイトだ。

 友人同士がこの週末の最後に試合へと臨むことで、森山ジャパンは既にトロフィーを手にすることが確定している。高橋の「アゾリウス・コントロール」デッキか、井川の「ドメイン・ランプ」デッキか。

 たったひとつの問題は、どちらのプレイヤーがトロフィーを手にするのかということだ。

井川良彦

高橋優太

試合展開

 最初の6ターンはリソースの交換とセットランドの応酬で、除去とランプが、カウンター呪文と除去にぶつかる。以前の井川のラウンドでマーシャル・サトクリフ/Marshall Sutcliffeが的確に指摘していたが、対戦相手のデッキが手札を消費させる十分なプレッシャーを与えられなかった場合、ゲームは7ターン目もしくは7マナ目まで真の意味で始まらないのだ。つまり、井川が《偉大なる統一者、アトラクサ》を唱えられるようになる時だ。そして、《魂の洞窟》のおかげで怯えることなく唱えることができる。

 

 第1ゲームで起こったのは、まさにそれだった。井川はこのファイレクシアンをまさに時間通りに唱えると、最初の数ターンの慌ただしさは、雪崩れるように両者の相互作用と双方のカード・アドバンテージへと変化した。高橋は《記憶の氾濫》で弾を再装填し、井川はライブラリーを掘り進んだ呪文によって得た回答を使い切ろうとする。

 一進一退の攻防が続き、両プレイヤーの土地が10枚以上になった。マナとライフが膨れ上がり、ライブラリーの枚数が少なくなるにつれ、高橋は持ちこたえ、井川の脅威に耐えきろうとした。しかし、除去は多くのものに対して有効だが、直接のダメージ源に対してはあまり有効ではない。最後にバーンが炸裂し、井川が第1ゲームを制した。

 2ゲーム目も1ゲーム目と同じように思われた。どちらのプレイヤーも脅威を突きつけることができず、ゲームは再びロングゲームにもつれ込んだが、今回はアトラクサが現れることがなく、高橋は悠々とスコアを伸ばし、1ゲームずつのイーブンへと持ち込んだ。

 ともに1ゲームずつ取り合いサイドボード後の戦いとなり、井川は序盤に展開する再考のカードを2枚手にしていた。《豆の木をのぼれ》だ。このエンチャントは『エルドレインの森』で印刷されて以来、さまざまなフォーマットで無尽蔵のカード・アドバンテージの源となっており、高橋が1枚目を《否認》を消費した理由でもある。

 しかし、2枚目が続くターンに解決され戦場に定着すると、「何もない」ターンが続くたびに、実際には「ドメイン・ランプ」のプレイヤーが利益を得ることになる。そのため、高橋はこれを可能な限り迅速に《冥途灯りの行進》で取り除いたが、しかし《魂の洞窟》によってカウンター呪文の盾が向こうになった状態で《偉大なる統一者、アトラクサ》が降り立つと、井川の手札を補充した。

 あるいは、そうなっていたかもしれない。元世界王者が《ティシャーナの潮縛り》を用意していなければ。このプレイが高橋に勝利を届ける糸口になるかもしれなかった。もし次のターンに自ら攻撃に向かわんとする《偉大なる統一者、アトラクサ》自身を除去することができれば。一撃が振り落とされ、高橋のライフはわずか4まで落ち込んだ。井川の《怒りの大天使》に対する分岐点だった。

 英雄的なセーブにもかかわらず背水となってしまった高橋は、井川の致死的な盤面に対して打開策を見つけるためにもがいた。だが、それも実らず井川の盤面に屈し、勝負を決するゲームへと進むことになった。

 井川良彦は週末を通して圧倒的な強さを誇っていたが、プロツアー『サンダー・ジャンクション』でのタイトル獲得までいよいよあと1ゲームと迫った。

 4ゲーム目の序盤は幸先の良いものだった。井川は時間を稼ぐために《否認》を使い、《装飾庭園を踏み歩くもの》でマナを伸ばした。高橋は《太陽降下》で盤面を一掃したが、それは積極的なゲームプランに対する消極的なプレイであり、井川がフルパワーの《群れの渡り》を解決し、5体のビースト・トークンを戦場へと送り込む道を空けてしまった。

 高橋には策があった。《船砕きの怪物》をほぼタップアウトでプレイすることになりつつも《冥途灯りの行進》からカードを1枚ピッチするのだ。そうすればビーストの群れを凌ぎ切り、勝利への道が開けるかもしれない。

 まさに世界王者はそうしたのだ。そして、井川は即座に勝利を決める《力線の束縛》と《怒りの大天使》をチームメイトへと提示した。高橋はその場で投了し、すぐにチームメイトである井川良彦を抱擁し、決勝戦の勝利と、プロツアー『サンダー・ジャンクション』王者の称号をにした彼を祝福したのだった。

 勝利の後、井川はチーム全体を讃えた──彼らが井川の素晴らしい優勝を祝福するために彼をもみくちゃにした後に。

プロツアー『サンダー・ジャンクション』王者、井川良彦

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