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プロツアー『機械兵団の進軍』
プロツアー・機械兵団の進軍 決勝戦
2023年5月7日
マジック:ザ・ギャザリングは30歳を迎えようとしておりそれとともに、プロツアーの歴史もそれとほぼ同じくらいまで遡る。その間、今週末ミネアポリスで開催されているプロツアー・機械兵団の進軍で決勝戦に進出したばかりのネイサン・ストイア/Nathan Steuerのようなことを成し遂げたプレイヤーはほとんどいない。
マジックの歴史上、連続した3回のプレミア・イベントで日曜日のプレイオフに進出したプレイヤーは3人しかいない。スコット・ジョーンズ/ Scott Johns(プロツアー・ロサンゼルス1996、プロツアー・コロンバス1996、世界選手権1996)、ジョン・フィンケル/Jon Finkel(プロツアー・ニューヨーク1998、世界選手権1998、プロツアー・シカゴ1998)、そして2016年のルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas(『ゲートウォッチの誓い』、『イニストラードを覆う影』、『異界月』)だ。そして今、ストイアもまたそのうちの一人となり、その権威ある名簿に名を連ねるだけでなく、彼自身の歴史を刻もうとしている。この過程の中で、3つのうち2つを制覇するという歴史だ。
ネイサン・ストイア
それは驚くべき物語とはいえ、道中にひとつの問題を抱えていた。つまり、驚くべき挑戦者が対戦相手だということだ。ケイン・リアンハルト/Cain Rianhardは自身が大躍進を遂げる中で、10年越しのプロツアードリームを実現していたのだ。リアンハルトは昨年のMagic Online Champions Showcaseでの力強いパフォーマンスをもって本プロツアーへの出場権を獲得し、プロツアー決勝戦に向けて十二分の準備が整っていることを証明できるだけのトーナメント経験(グランプリ・プロビデンス2018トップ8に加えてSCGツアーなどで何年も戦ってきた)をもってここまでたどり着いた。
ケイン・リアンハルト
ドラマ性と記憶に残る瞬間に満ちた緊迫したトップ8はここへと繋がった。つまり、プロツアー・機械兵団の進軍の舞台は250名以上のプレイヤーからこのふたりまで絞られ、そのうちのひとりだけがプロツアー王者になることができるのだ。
ゲーム展開
両者が自分のデッキを深く掘っていくことになると思われたこの試合、「ラクドス・ミッドレンジ」と「ラクドス・リアニメイト」デッキの対戦の基本的な動きは以下のようなものだった。つまり、両者ともに豊富な除去を抱えており、ストイアはクリーチャー群がより価値を持っており、その一方でリアンハルトは最高級のリアニメイトの対象を持っている。ともに長期的なアドバンテージをひねり出そうとするため、どのゲームも序盤の数ターンは中盤にビッグターンで主導権を握るための準備をすることになった。
第1ゲームでは、まさにそのような滑り出しとなった。何ターンも《勢団の銀行破り》と《鏡割りの寓話》で準備を整えた後、リアンハルトは大物を次々と送り出すことができた。これによりストイアが握る除去を消費させることはできたが、残されたのは変身したストイアの《鏡割りの寓話》とリアンハルトを倒すまで残り10点のきれいな盤面だった。
リアンハルトの手札はストイアの干渉に対処できる態勢は整っていたが、リソースの大部分をすでに除去されたクリーチャーの展開に費やしたため、ゲームはストイアに傾いた。カギとなるドローステップでストイアがいまだ手に持つ豊富なカードに対しての回答策を生み出すことができなかった時をもって、ストイアは十分な数のクリーチャーの群れを送り出し、リアンハルトの残るライフを全て削り切り、決勝戦の第1ゲームを手にしたのだった。
第2ゲームも同じような展開となった。そして、最終的に盤面を彩ったのは伝説のクリーチャーたちの戦いとなった。ストイアには《黙示録、シェオルドレッド》が、リアンハルト側には《原初の征服者、エターリ》が。両者はお互いにライフを半分ほどにまで減らし、《黙示録、シェオルドレッド》が得た小さなアドバンテージの数々がリアンハルトの爆発的なプレイへと後れを取らずついていく。その間、リアンハルトは冷静にストイアの3枚の《絶望招来》から戦場の宝物・トークンなど余剰パーマネントを駆使して盤面を巧みに守っていた。
このことが、ストイアを困難な状況へと追い詰めた。リアンハルトのライフ総量である8点のダメージを通す手段を見つけなければいけなかった。長い沈黙の後、彼は勝利を手繰り寄せるための道筋を見つけた。盤面をブロッカーで満たし、土地を引き、そして手札の《希望の標、チャンドラ》をプレイすることだ。
まさにその通り。一度の攻撃でリアンハルトを射程圏に収めると、《希望の標、チャンドラ》が盤面を襲い、全てを終わらせた。あっという間に、世界王者がさらに新たなタイトルを加え、この短期間で誰もが考えうる最高のキャリアに近づく寸前だった。
しかし、物事はそんなに簡単に進まない。リアンハルトは続くゲームにおいて《絶望招来》で完璧にストイアが序盤に作り上げた盤面(《鏡割りの寓話》を含む)を一掃し、ゲームを支配する突破口を開いたのだ。《ギックスの残虐》が続けてクリーチャーをリアニメイトすると、ストイアは追いつくにはあまりにも遅すぎることを悟り、数ターン後に投了したのだった。
リアンハルトは流れに乗ったが、彼らの撃ち合いはそこまでだった。
今度はストイアが序盤に完璧な動きをする番だった。1ターン目にリアンハルトを《強迫》し《絶望招来》を狙い撃ちしたうえに、リアンハルトの《税血の収穫者》に対して最高の2マナ圏である《勢団の銀行破り》を手にしていたのだ。これは太刀打ちできないスタートの類であったが、「リアニメイト」デッキは除去呪文と《燃え立つ空、軋賜》という独自の流れに乗って動き、スムーズに軌道を描いたことを意味した。
除去呪文と《燃え立つ空、軋賜》が大暴れしたことにより、お互いがお互いの盤面を処理しあった。そして、状況が落ち着くと、ストイアの手札には1枚のカードが残された。
《絶望招来》
発売以降、ラクドス系デッキの屋台骨であり、チーム「Handshake」が支配したもうひとつのプロツアーの出発点となったカードだ。そして今、ネイサン・ストイアがプロツアーを勝ち取るカードになった。
ストイアは過去9ヵ月間で3回のプレミア・イベントでプレイした。世界選手権、プロツアー・ファイレクシアと機械兵団の進軍だ。これらのイベントでの彼の成績だって?優勝。トップ8。そして、今また優勝だ。
ネイサン・ストイアは世界最高のマジックプレイヤーであり、さらにプロツアー・機械兵団の進軍の王者なのだ!
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