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プロツアー『機械兵団の進軍』

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「プロツアー・機械兵団の進軍」トップ8ハイライト

Corbin Hosler

2023年5月7日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 「プロツアー・機械兵団の進軍では250名を超えるプレイヤーがミネアポリスに集い、ドラフトとスタンダード混合の16回戦を戦った。そして最後の決勝の舞台には、今大会で躍進を果たしたケイン・リアンハルト/Cain Rianhardと、今世界で最も熱いマジック・プレイヤーにして現世界王者、ネイサン・ストイア/Nathan Steuerが立つことになった。

ケイン・リアンハルト

ネイサン・ストイア

 

 ここ数年、ハイレベルなマジックの舞台におけるチーム「Handshake」の活躍はめざましく、ここミネアポリスでも勢いそのままにトップ8の半分を占め、スーパーチームぶりを見せつけた。そして2023年を通してあらゆる場所に姿を見せた「ラクドス・ミッドレンジ」を手にした4人は、それぞれのブラケットで難敵に挑むことになった。

 最終日に進出した8名は以下の通りだ。

  • ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez(ラクドス・ミッドレンジ)
  • カール・サラップ/Karl Sarap(ラクドス・ミッドレンジ)
  • サイモン・ニールセン/Simon Nielsen(ラクドス・ミッドレンジ)
  • チェン・イーウェン/Yiwen Chen(アゾリウス兵士)
  • ネイサン・ストイア(ラクドス・ミッドレンジ)
  • デイヴィッド・オルセン/David Olsen(5色ランプ)
  • オータム・バーチェット/Autumn Burchett(オルゾフ・ミッドレンジ)
  • ケイン・リアンハルト(ラクドス・リアニメイト)

 それでは、リアンハルトとストイアが決勝で相まみえるまでの戦いを振り返ろう。

準々決勝

 チーム「Handshake」は、「ラクドス・ミッドレンジ」で優勝から4位までを独占しようとしている。果たしてこのスーパーチームは、トップ8の舞台でも挑戦者たちを退けたのだろうか?

 開幕の一番に姿を現したのは、トップ8にいる世界王者2人のうちの1人、ハビエル・ドミンゲスだった。「世界選手権2018」王者は、「5色ランプ」を操るカナダのデイヴィッド・オルセンとの試合に臨む。オルセンとカナダのプレイヤーによるチームは、《偉大なる統一者、アトラクサ》4枚投入でこのデッキを洗練させ、成功に導いた。チーム「Handshake」のラクドスとの相性は良好だと語るオルセンは、前夜の準備について、これまでの練習を信じてしっかり睡眠を取ることを大事にした。

ハビエル・ドミンゲス

デイヴィッド・オルセン

 

 3勝1敗でドミンゲスを下したことからも、「相性は良好」という言葉に嘘はないようだ。ラクドスに対するオルセンの戦略は、この週末を通して一貫していた。《骨化》やトライオームのおかげで唱えやすい《力線の束縛》などの除去で序盤から交換を取り、《装飾庭園を踏み歩くもの》や《群れの渡り》の2つ目の能力、それから新カード《ゼンディカーへの侵攻》でマナを加速していくというものだ。

 

 そしてそれらすべてが、オルセンの擁する最大戦力たる《偉大なる統一者、アトラクサ》や《原初の征服者、エターリ》につながっていく。また序盤の動きとして《勢団の銀行破り》も採用することで、黒のデッキを支える《絶望招来》に対して特に強力な耐性が備わっていた。生き残るために必要なものと均衡を破る強力なフィニッシュ手段を持つ「5色ランプ」は、これまでこの環境を圧倒してきたデッキを圧倒することができた。

 ドミンゲスは《税血の収穫者》から《鏡割りの寓話》、《黙示録、シェオルドレッド》というお決まりの動きで序盤から攻めたてた。チーム「Handshake」は、その動きがランプ・デッキに対する最善手だと決断したのだ。だがドミンゲスがそのプランを遂行できたのは、1ゲームだけだった。他のゲームではオルセンのライフを継続的に削ることはできたものの、すぐに足を止められてしまったのだ。第4ゲームはまさにその展開になり、残った《勢団の銀行破り》はついに搭乗員を失い、オルセンの仕事が完了するのを見届けるのみだった。

 こうして準々決勝が1つ幕を降ろし、チーム「Handshake」のメンバーが1人敗退した。チームメイトによる優勝から4位までの独占という夢物語は叶わなかった。だが2年ぶりのトップ8入賞を果たしたドミンゲスは落胆していない様子だ。

トップ8で敗退。取り立てて良いプレイをしたわけじゃないけれど、最後は引きで負けた感じかな。まあ、次! トップ8に入れたのはすごく嬉しい。みんな応援ありがとう、とても力になったよ!

 続く試合では、もう1人の、そして現在の世界王者が舞台に上がった。ネイサン・ストイアに対するは、今回のトップ8で間違いなく最も刺激的なデッキである「アゾリウス兵士」を手にしたチェン・イーウェンだ。チェンのデッキは《黙示録、シェオルドレッド》も《鏡割りの寓話》も《偉大なる統一者、アトラクサ》も使わず成功を収めた数少ないものの1つであり、《雄々しい古参兵》や《天空射の士官》、《先兵の飛行士、ハービン》をはじめとする兵士たちのシナジーを重視した形になっている。

チェン・イーウェン

ネイサン・ストイア

 

 とはいえチェンのトップ8入賞までの道のりは、5勝1敗という『機械兵団の進軍』ドラフトの成績に支えられた部分があり、予選ラウンドでは「ラクドス・ミッドレンジ」との試合を3マッチ中2マッチ落としていた。それでもこの準々決勝ではチェンが機先を制し、マナ不足に苦しむストイアを圧倒した。その快勝ぶりは、早くもチーム「Handshake」が2人目の敗退者を出すことになると予感させるほどだった。

 だが対面にいるのは、世界選手権「プロツアー・ファイレクシア」に続き3大会連続でトップ8入賞という偉業を達成した、現世界王者のネイサン・ストイアである。彼は酷い敗戦にも怯まずすぐにゲームを取り返すと、最後は《強迫》から《税血の収穫者》、《切り崩し》2発、そして《絶望招来》という完璧な動きで最終ゲームも勝ち取った。兵士のシナジー・デッキはラクドスの純粋なデッキパワーに耐えられず、ストイアはオルセンが待つ準決勝の舞台へ駒を進めたのだった。

 ブラケットの反対側では、どちらの試合も第5ゲームにもつれ込む緊迫した展開になった。チーム「Handshake」の主力メンバーであるカール・サラップはチーム謹製のラクドス・デッキをうまく乗りこなしたものの、ケイン・リアンハルトの「ラクドス・リアニメイト」を前に苦戦を強いられた。一方、4人目のチームメンバーであるサイモン・ニールセンは、オータム・バーチェットが操る「オルゾフ・ミッドレンジ」という油断ならない難敵を迎えた。

オータム・バーチェット

サイモン・ニールセン

 

 準々決勝第3試合は、バーチェットとニールセンの戦いだ。白単コントロールに微調整を加えて対応範囲を広げたバーチェットのデッキは、この週末を通して試合を優位に運ぶ助けになった。一方のニールセンが操るは、現行スタンダードにおけるベスト・デッキ「ラクドス・ミッドレンジ」の最高の形であることは疑いないだろう。

 試合は両者とも今大会のために培ってきた技術を惜しみなく繰り出し、天秤が大きく動く一進一退の展開になった。ニールセンのデッキは直線的な戦略に対してめっぽう強いが、バーチェットは《セラの模範》を筆頭に、すべてのクリーチャーからバリューを引き出した。ゲーム後半の《セラの模範》は脅威とエンジンが一体となった1枚であり、《多元宇宙の突破》までの空白を埋める橋になっていた。

 最終ゲームは、まさにその強力なバリューがすべてだった。《野心的な農場労働者》2枚が《歴戦の聖戦士》に変身すると、バーチェットはニールセンが放つ除去を耐え抜き、準決勝進出を決めたのだった。

 残るは、バーチェットの準決勝での相手を決める戦いだ。ラクドスを手にしたサラップとの戦いに勝利し準決勝の舞台に上がったのは、ケイン・リアンハルトだった。このリアニメイト・デッキで、リアンハルトは地域チャンピオンシップも制していた。ミッドレンジ・デッキより大きく立ち回るという選択は、この環境の最適解の1つだったのだ。

ケイン・リアンハルト

カール・サラップ

 

 だがこの試合はそう簡単にはいかなかった。第4ゲームまで互いに取り合った両者は最終決戦に挑み、そしてリアンハルトが「試作」で唱えた《ファイレクシアの肉体喰らい》で勝負を決めたのだった。

準決勝

 こうして、チーム「Handshake」はただ1人ストイアを残すのみとなった。彼らが夢見た優勝から4位まで独占とはならなかったものの、この最高のチームは今大会も圧倒的な活躍を見せてくれた。さあ後は、オルセンvs.ストイアとバーチェットvs.リアンハルトの準決勝を見届け、決勝の舞台を整えるのみだ。

 準決勝も歴史に残るものになり、バーチェットとリアンハルトの決戦は第5ゲームまで続いた。両者とも攻撃を交わし、除去を撃ち合い、プレインズウォーカーを出し合い、その他試合のあらゆる場面で一進一退の攻防が繰り広げられた。

 とりわけ最終ゲームは接戦で、あらゆるリソースを使い果たした両者のうちクリーチャーを残した方の勝ちという様相だった。そしてそれは、《ギックスの命令》を擁するリアニメイト・デッキの望むところだった。《ギックスの命令》はリアンハルトが待ち望んだ最後の一撃となり、こうして「2019ミシックチャンピオンシップⅠ(クリーブランド)」王者バーチェットの信じられないほど劇的なトップ8再入賞の物語は、幕を閉じることになったのだった。

 決勝の席が1つ減り、残るは1つ。リアンハルトとタイトルを競うのは、ストイアかオルセンのどちらかだ。どちらが勝つかわからなかったもう1つの準決勝と異なり、こちらはストイアが世界王者たるゆえんを再び見せつける特別授業のようだった。彼が展開した《鏡割りの寓話》2枚はどちらも戦場に残り、オルセンが最後の力を振り絞って繰り出した《原初の征服者、エターリ》も、流れを変えるには至らなかった。こうして、「プロツアー・機械兵団の進軍」の優勝トロフィーを懸けた決勝戦は、ケイン・リアンハルトとネイサン・ストイアによって行われることになったのだった。


 

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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