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プロツアー『指輪物語』

観戦記事

プロツアー・指輪物語 トップ8ハイライト

Corbin Hosler

2023年7月30日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 250名以上のプレイヤーがプロツアー・指輪物語に出場するためにバルセロナに集結し、2日間16回戦を終えた。そして、バルセロナでトロフィーを争うのは、残りわずか8人のプレイヤーとなった。

 トップ8で目を引いたのは、異なる舞台でのキャリアを持つマジックプロ2人だった。サイモン・ニールセン/Simon Nielsenはこのトーナメントを支配し、12-0のスタートを切って直近4回で3度目のトップフィニッシュを達成した。他方は、唯一無二のプレイヤー、カイ・ブッディ/Kai Buddeだ。プロツアー最多タイトル保持者であり、群を抜いたベテランであるブッディは2019年以来のプロツアートップ8に戻ってきたが、これは2010年より後では2度目の進出となる。

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 トップ8の全メンバーはこのようになった。

  • サイモン・ニールセン(緑単トロン)
  • ジェイク・ビアズリー/Jake Beardsley(ラクドス想起)
  • クリスティアン・カルカノ/Christian Calcano(緑単トロン)
  • ハビエル・ドミンゲス(緑単トロン)
  • マルコ・デル・ピーヴォ/Marco Del Pivo(カスケード・クラッシュ)
  • ステファノ・ヴィンチ/Stefano Vinci(カスケード・クラッシュ)
  • カイ・ブッディ(カスケード・クラッシュ)
  • ドミニク・ハーヴィー/Dominic Harvey(アミュレット・タイタン)

 もちろん、開幕を飾ったのはレジェンド、カイ・ブッディその人だ。「ジャーマン・ジャガーノート」はカルカノと相対し、「続唱」カードと《衝撃の足音》でカルカノの「トロン」と《一つの指輪》の構築を迎え撃った。忠実に、カルカノは序盤に待機された《衝撃の足音》を打ち消すために《虚空の杯》をX=0でセットし主導権を握った。ブッディはデッキ名の由来となったカードを封じ込められ、《隔離するタイタン》が着地するや否や1ゲーム目を畳んだ。次の戦いはカルカノが3ターン目に「トロン」を完成させ、《一つの指輪》を解決し、そこから4ターン目の《絶え間ない飢餓、ウラモグ》に繋がった。これは《神秘の論争》にあったものの、唱えた時の誘発は完了していた。《解放された者、カーン》がそのあとに続くと、電光石火のゲームはカルカノが殿堂顕彰者に対して2勝0敗という形で終わりを迎えた。

 サイドボード後に移った時、ブッディは助けを必要としていた。彼はデッキ名の由来となったカードを未だ解決しておらず、その流れは《衝撃の足音》が3ターン目に《歪める嘆き》される目に合った時も続いていた。しかし、ブッディが「サイ」にこそ巡り合えなかったものの、打ち消し呪文を見つけ出していた。実際にデッキの全4枚の《否定の力》だ。そして、「トロン」相手に耐えるために全てを使い切った。だが、このフォーマットで「トロン」相手に粘り切れるものなどおらず、最終的にはカルカノの脅威はブッディの手に負えないことが証明された。

 カルカノが最初の準決勝進出枠を手にし、その後すぐにもうひとり「緑単トロン」を手にするプレイヤーが加わった。サイモン・ニールセンは、チーム「Handshake」の圧倒的な「トロン」デッキを手にトーナメントの途中では12勝0敗を記録しスイスラウンドでは圧倒的だった。これによりトップ8のうち上位4位に入り、準々決勝では先手番の権利を得た。

 一方的な勝利は続き、「緑単トロン」がこの週末、圧倒的なデッキであった理由を示した。ニールセンはこの週末で2番目に活躍したデッキである「カスケード・クラッシュ」で苦戦を強いられるステファノ・ヴィンチ相手に1ゲームしか落とさなかった。《衝撃の足音》は《大いなる創造者、カーン》が持つ豊富なオプションに太刀打ちができず、ニールセンが《石の脳》や《虚空の杯》といったサイドボードのオプションに簡単にアクセスできるため、続唱を手にするプレイヤーにとっては困難な状況だった。結果は、こちらも「トロン」の勝利であり、今回は3勝1敗とデンマーク人にとって余裕があった。

 ブラケットの反対側では、イタリアのマルコ・デル・ピーヴォの肩に続唱デッキの生き残りがかかっていた。彼が対戦したジェイク・ビアズリーは、このトーナメントで最多勢力となったデッキをトップ8入賞に導いたただひとりの「ラクドス想起」プレイヤーだ。《悲嘆》、《激情》、そして《フェイン・デス》の組み合わせは《一つの指輪》に対して積極的な対抗策をもたらしたが、このデッキは週末を通して厳しいマッチアップに直面していた。

 ビアズリーの準々決勝はそうではなかった。彼はデル・ピーヴォ相手に一気にリードを広げ、後ろを振り返ることはなかった。プロツアー初参加の彼はモダンのラクドスの典型である攪乱に攻撃性を合わせるスタイルを極めており、それがデル・ピーヴォ相手に3勝1敗での決定的な勝利をもたらした。

 3試合。3人の「カスケード・クラッシュ」プレイヤーが敗退。

 残るは1試合。「緑単トロン」を手にする元世界チャンピオンが、唯一の《原始のタイタン》擁するプレイヤーと相対する。ドミンゲスは数ヵ月間スポットライトの外で過ごし、トップ8へと帰還した。このトーナメントを席巻したのと「緑単トロン」デッキを持って。

 しかし、「トロン」はドミニク・ハーヴィーが全精力をつぎ込む「アミュレット・タイタン」に非常に弱いことで有名であり、ハーヴィーは準々決勝でその所以を見せつけた。彼のデッキはトロンと同じく《血染めの月》のようなヘイトカードの多くに弱く、つまりドミンゲス自身のサイドボードの選択肢は限られていた。

 迅速な準々決勝が終わり、残るは4名のプレイヤーとプロツアー・指輪物語の決勝戦進出者を決定する2試合となった。

 最初は、ハーヴィーとビアズリーの「トロン」でないデッキ同士の対戦だ。ハーヴィーのデッキは「トロン」に対して強いように、同程度にビアズリーが持ち込んだ妨害手段だらけの「ラクドス想起」には弱いのだ。ゲームが進行するにつれて、ハーヴィーは飛び交う《悲嘆》と《思考囲い》に対して《原始のタイタン》を解決することすら一苦労だった。実際、《ダウスィーの虚空歩き》のせいで、《原始のタイタン》で攻撃する時間が長かったのはハーヴィーの方だった。

 プロツアー初参戦の選手に決勝戦の相手は誰になるのだろう?ブラケットの反対側から上がってくるプロツアーの常連であるカルカノかニールセンのどちらかだ。両者ともに「トロン」でトーナメントを優位に進めてきた。とはいえ、最後の「トロン」ミラーマッチは異なる構築での激突となった。

 古典的な「トロン」対「トロン」の対戦だった。全力の一撃、幽閉したカード、そして大量のマナを交換し合った。試合の流れは、止まったかと思えば一気にどちらかに一方的に傾く状態を行ったり来たりすることになった。最後には、プロツアー決勝進出者を決めるのは5ゲーム目へなだれこんだ。

 そして、決着。カルカノが最後の全身全霊の一撃を叩き込み、お互いのこれまでの人生で最大の試合で友を打ち倒した。お互いにとって気持ちのいい出来事であり、心のこもった握手をもってニールセンはカルカノに投了し、プロツアー・指輪物語の決勝戦での幸運を祈ったのだった。

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