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EVENT COVERAGE
プロツアー『破滅の刻』
準々決勝:Yam, Wing Chun(香港) vs. 藏田 真太郎(日本)
By 矢吹 哲也
昨日の予選ラウンド最終戦にて、会場全体が震えるほどの大歓声が挙がった。何事かとフィーチャーマッチエリアの方へ向かうと、幾重にも囲まれた観衆の中で、喜びの涙を流す男がいた。
「ウィンチャン! ウィンチャン!」
その場にいる全員が、彼の名を呼びその勝利を称える。
香港のヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chunが、自身初のプロツアー・トップ8入賞を決めた瞬間だった。
トップ8入賞の喜びを表現するヤン・ウィンチャン(写真中央右) |
今大会の活躍で来期のゴールド・レベルを確定させたヤンは、さらなる栄光――プロツアー優勝を求めて今この場にいる。長年の夢であるマジック最高峰のトロフィーと、仲間たちと競い合う世界選手権への参加権利。どちらも手に入れるチャンスが、ついにやってきた。
一方、藏田 真太郎の胸の内にあるのは、「ただ楽しむこと」だった。
それは彼がマジックを初めてから一貫して持ち続けた姿勢であり、「みんなで楽しく遊ぶこと」こそ彼の哲学だった。
彼自身が周りの人々を愛するゆえに、彼を慕うものは多い。
今大会が初のプロツアー出場でありこれまでの実績はまだ乏しいものの、彼の勇姿を見ようと集まるギャラリーの数は、トップ・プレイヤーにだって負けていない。
「注目されることが好き」だと語っていた藏田は今、どのような思いでこの舞台に座るのだろうか。
握手が交わされ、戦いが始まる。最高の相手と、最高の戦いを。
ヤン・ウィンチャン(ラムナプ・レッド) vs. 藏田 真太郎(黒赤アグロ)
ヤンが「キープ」を発声すると、藏田は「マリガン」。冷静にライブラリーを再シャッフルし、続く6枚に親指を立てる。占術で見たカードをライブラリーの一番下へ送ると、藏田とヤンが紡ぐ物語の第一幕が始まった。
先手のヤンが1ターン目に何も繰り出さなかったのを見て、藏田は《ショック》を警戒し1ターン目《ボーマットの急使》を避けた。ヤンは続くターン《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を展開し、藏田は《地揺すりのケンラ》でファースト・ダメージを与える。
ヤンは《アン一門の壊し屋》を繰り出すと、一挙6点の反撃。このままではダメージ・レースにならないが、藏田は《地揺すりのケンラ》で反撃すると《木端》で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を除去し、続けて《ショック》も放ってヤンの盤面を一掃した。
藏田のマリガンにより手札1枚分のアドバンテージを得ているヤンは、こちらも《地揺すりのケンラ》を展開して反撃。藏田のライフは残り12点になる。
ターンを迎えた藏田は《ボーマットの急使》を盤面に追加して攻撃を続けた。ヤンは《ショック》を《地揺すりのケンラ》へ撃ち込みこれを除去したが、藏田はその後《アムムトの永遠衆》を戦線に加え、ヤンの軍勢に睨みを利かせる。
しかしヤンは迎えたターンに《熱烈の神ハゾレト》を走らせ、藏田のライフを危険域に落とし込んだ。ヤンのライフはまだ15点も残っているが、このまま守勢に回っても藏田に勝機はない。彼は《アムムトの永遠衆》で反撃に出る。
だがヤンは《焼夷流》で藏田が持つ唯一のブロッカーを排除すると、《熱烈の神ハゾレト》と《ラムナプの遺跡》でゲームを先取したのだった。
メインデッキで続けて行われる第2ゲーム、今度はヤンがマリガンを選択。彼は引き直した6枚にも不服そうな息を漏らし、頭を振って悩んだすえにキープを宣言。占術で見たカードもライブラリーの一番下へ送った。
しかし動き出しはヤンから。1ターン目に《ファルケンラスの過食者》を繰り出すと、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を繰り出した藏田に対し《ボーマットの急使》で戦線を広げる。
藏田は《地揺すりのケンラ》を追加し、攻撃を始めた。そこへ《ショック》が撃ち込まれたものの、3点のダメージがヤンのライフに傷をつける。
ヤンは返しのターン、《アン一門の壊し屋》を盤面に加え6点の反撃。手痛いダメージに藏田も戦線を横に広げ、迎え撃つ形を作る。だがヤンは《焼夷流》を《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》へ放ち、全軍で攻撃。《アン一門の壊し屋》の「督励」によりブロッカーを封じられ、藏田はここでも4点のダメージを受けて残りライフはひと桁に。
2枚目の《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を加えた藏田だが、ヤンの攻撃はそれを上回った。《地揺すりのケンラ》を加えて再びブロックを封じると、3点のダメージを追加。これで残り6点。
藏田は《焼夷流》で《アン一門の壊し屋》を除去し、次の攻撃に備える。しかしヤンはここで4枚目の土地を引きこみ、《熱烈の神ハゾレト》を走らせた。藏田は《ファルケンラスの過食者》をチャンプ・ブロックに差し出した。
藏田は《アムムトの永遠衆》を着地させたものの、《熱烈の神ハゾレト》を止める手段はない。1度でも攻撃を通せば敗北の状況で、彼は自軍の命をハゾレトへ捧げていく。
ヤンは《ボーマットの急使》の能力を起動し、手札を補充した。そして《アン一門の壊し屋》を繰り出すと、死期を悟った藏田はカードを片付けた。
藏田のサイドボーディング・プランは、1マナ域のクリーチャーを減らして除去やミッドレンジ帯のカードを増やすというもの。赤アグロ系に対して速度をずらし、除去で序盤を凌いだのちに大型クリーチャーやプレインズウォーカーで盤面を制圧するという展開を目指すこととなる。
第3ゲーム、ヤンは《ボーマットの急使》で先手を取ると、《地揺すりのケンラ》で反撃した藏田に対しそれを立たせてターンを返した。
攻める側を譲られた藏田だが、こちらも土地を置いて動かず。するとそのターンの終了時にヤンは藏田の《地揺すりのケンラ》に《ショック》を当てた。
だがヤンのクロックもいまだに《ボーマットの急使》のみであり、見た目のプレッシャーは少ない。藏田は《反逆の先導者、チャンドラ》を繰り出し、ヤンにプレッシャーをかけ始めた。ヤンは《熱烈の神ハゾレト》を盤面に追加し、ターンを返す。手札はまだ4枚残っているが、《熱烈の神ハゾレト》が攻撃に出ることができれば、盤面の脅威のレベルは逆転する。
藏田は対赤単の最終兵器《集団的蛮行》を放ち、《ボーマットの急使》の除去とヤンの手札から《集団的抵抗》を抜き去ることに成功した。さらに《反逆の先導者、チャンドラ》からマナを生み出すと、《栄光をもたらすもの》を戦場へ送り出す!
ヤンは自身の《熱烈の神ハゾレト》へ《マグマのしぶき》を放ち手札を減らし、攻撃で《反逆の先導者、チャンドラ》を退場させた。しかし藏田は迎えたターンに満を持して《熱烈の神ハゾレト》を繰り出し、一挙9点のダメージを与える!
残りライフ3点となり敗北を悟ったヤンは、引き込んだ《焼夷流》を自身へ放ち、笑顔を見せたのだった。
第4ゲーム、ヤンが《ファルケンラスの過食者》を繰り出すと藏田は土地を立たせて構え、続けてヤンが繰り出した《地揺すりのケンラ》を《ショック》で退けた。
迎えた2ターン目に藏田は《集団的蛮行》を放ち、ヤンの盤面と手札の脅威を同時に対処する。ヤンは《アン一門の壊し屋》を展開し、反撃。藏田は《木端》でそれを除去すると、続けて《ファルケンラスの過食者》を展開し、ヤンの《ボーマットの急使》を相討ちに取った。
ヤンは残る2枚の手札をすべて展開。《ファルケンラスの過食者》と《損魂魔道士》が、藏田へプレッシャーをかける。藏田は《エルドラージの寸借者》の攻撃で《損魂魔道士》を相討ちに取ると、《アムムトの永遠衆》で盤面を制圧する!
序盤の除去から手札を確認した上での大型クリーチャーによる盤面制圧。まさに藏田の思い描いていた通りの理想的な展開だ。
だがしかし、今日のヤンは神の寵愛を受けていた。
ライブラリー・トップから引き込んだのは、《熱烈の神ハゾレト》!
ギャラリーから歓声が沸き上がり、藏田も驚きの声をあげる。
そして次のターン、《集団的抵抗》をも引き込む豪腕を見せると、藏田は天を仰ぎ右手を差し出したのだった。
ヤン 3-1 藏田
「いやあ、シビれるまくられ方でしたね。(ゲーム4は)絶対に勝ったと思った」と試合を振り返る藏田。敗北に悔しい思いはあっても、彼の表情は晴れやかだ。
「この3日間、心ゆくまで楽しめました。結果としては今の僕にとってこれ以上を望むべきでもないですし、本当に満足しています」
試合を終えた両者のもとに「プロツアーの歴史家」ブライアン・デヴィッド=マーシャル/Brian David-Marshallも訪れ、藏田に「プロツアー初出場なんだって?」と声をかけた。藏田が頷くとデヴィッド=マーシャルは大きくのけぞり、目を白黒させる。
「また、プロツアーで」と再会を約束し、両者による戦いは幕を閉じたのだった。
ヤン・ウィンチャンが藏田 真太郎を3勝1敗で下し、準決勝へ!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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