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プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』

ヒーローが切り拓く運命
2025年6月28日
「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」を前にして、行弘賢はマジックにおいて成し遂げることのできることの大半をすでに達成していた。グランプリではトロフィーを天高く掲げたこともある。プロツアーでは何度もトップ8入賞を果たした。世界中を旅しながらマジックを楽しむ道程で、行弘は自身が世界のトッププレイヤーたちと肩を並べる存在であることを証明し続けてきた。2012年、「プロツアー『アヴァシンの帰還』」で初となるトップ8入賞を果たすと、「2020ミシックインビテーショナル」まで幾度となくサンデーの場に登場してみせたのだ。
しかしながら、行弘賢の輝かしい経歴にも未だ空欄となっている箇所があった—— 「プロツアー王者」の称号だ。プロツアー・トロフィー獲得を懸けた戦いの場である「プロツアー・サンデー」へと駒を進めるためには、まず険しい道のりを勝ち進みトップ8に入賞する必要がある。2025年2つ目のプロツアーが開催される「MagicCon: Las Vegas」、巨大な会場へと足を運ぶ行弘の目標は単純明快だった。そう、トップ8へと返り咲くことだ。

歴戦のプレイヤーである行弘だが、最後にトップ8入賞者として姿を見せた2020年からのこの5年間、彼が再びサンデーのスポットライトに当たる瞬間に至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。実際、2025年のプロツアーは2020年のそれとは大きく異なり、2015年のプロツアーともかけ離れている。調整チームの食を支える有志のシェフを確保することの重要性以外の、ほとんどすべてが変化している。データの量やそのアクセスタイミング、そしてプロツアーに参加するプレイヤーのスキルレベルは、かつてないほど高くなっている。
このような変化がある中、ここ数年の行弘にとって重要だったのは、何度も戦いの場へと挑むための“愛”だ。そして彼は、心の奥に灯る炎の再点火に成功する。「プロツアー参加のために努力をする中で、マジックへのモチベーションがどんどん高くなっていきました。」当時を振り返る賢はこう語る。「マジックは魅力的なゲームで、モチベーションが高まるにつれてもっとプレイをするようになり、素晴らしいコミュニティにも出会うことができました。」
プロツアーへの出場権を手にした後、行弘は「森山ジャパン/Moriyama Japan」に加わった。競技シーンでトップクラスの腕前を誇る日本人プレイヤーが複数名所属し、プロツアーでも安定した成績を残してきたことで知られるチームだ。行弘はすぐさま彼らとの調整に取り掛かる。MTGアリーナやMagic Onlineで幾度となく対戦を重ねる彼の弛まぬ研鑽の道は、その後歴史の一部へと続くこととなる。行弘は、森山ジャパンの輝かしい戦績の最新欄に「優勝」という最高の結果を加えただけでなく、マジックの歴史に自身の名を刻むこととなった。
行弘のシーズン目標であったプロツアートップ8入賞?クリア。2度目のプロツアー決勝進出?クリア。プロツアーのトロフィーを手に入れ、長年の夢を実現?これもクリア。
此度のプロツアーは、心の奥に火を灯した、《心火の英雄》のごときヒーローにとって完璧なものだった。
「プロツアーで優勝するという長年の目標を達成できて、最高に嬉しいです。これまで応援してくれたすべての人々に感謝したいです」歴史的勝利のあとにこう振り返る行弘は、「FINAL FANTASY V」のTシャツを着て、プロツアーのトロフィーを握りしめし、大きすぎる(もしくはこれが原寸大?)バスターソードを装備してポーズを取っていた。

その瞬間は、それを見守る者たちにとってははっきりと記憶に残るものであったが、行弘にとってはぼんやりと、霞んで見えた。巨大な「果敢」持ちクリーチャーをコントロールするイアン・ロブ/Ian Robbに対して、残りライフ7で迎え撃つ。行弘は手札に残る最後の1枚、《自爆》を握りしめ、可能な限り待ち続けた。ロブが《手練》を唱え、新たなカードを手札に入れるのを待ちながら、行弘は何度チャンスが巡って来ても、渡される優先件を素早くパスし続けた――最後の1回を除いて。ロブが手札から最後の1枚唱えたその瞬間を行弘は捉えた。《自爆》を《心火の英雄》を対象に唱える。それはロブに残されたライフ、2点を削るのに十分なダメージであった。この瞬間、行弘はついにマジックのカードを初めて手に取った17年前から夢見ていた、プロツアー王者となったのだ。
「勝った直後のことはあまり覚えていません」と行弘は語る。「優勝したその日はチームメイトたちとステーキハウスで祝いました。それ以来、たくさんの友人からお祝いのメッセージをいただきました。」
今回トロフィーを手にしたことで、すでに目を見張るものであった行弘の戦績は更なる輝きを放つ。8度目のトップフィニッシュで、自身初となるタイトルを手に入れた行弘は、トップフィニッシュ回数におけるランキングで、ベン・スターク/Ben Stark、ダーウィン・キャスル/Dawin Kastle、ウィリアム・ジェンセン/William Jensen、リード・デューク/Reid Dukeと並ぶ11位タイへと順位を押し上げた。この中で3人が現在もプロツアーで競っている(スターク、デューク、行弘)ことを考えると、ジョシュ・アター・レイトン/Josh Utter-Leytonが待つトップ10(9度のトップフィニッシュ)へは、すぐにその仲間入りを果たすことになるかもしれない。
行弘はまた、無冠のままトップ15に名を連ねる数少ないプレイヤーの1人でもあった。更なる戦果の獲得に燃える彼は、ここ1年間のスタンダードの環境を定義するデッキに目を向けた。イゼット果敢や版図大主も過去数ヶ月で良い結果を出していたが、行弘の手は赤単アグロを相棒に選んだのだ。《エルドレインの森》の発売以来、《巨怪の怒り》がブロックを「悪夢」へと変貌させた赤単アグロは、大型トーナメントの決勝戦で常連となっていた。
そして、まさに2週間前のアメリカ地域チャンピオンシップと同様に、赤単アグロが頂点へと登り詰めた。
16 《山》 4 《岩面村》 2 《魂石の聖域》 -土地(22)- 3 《魔道士封じのトカゲ》 4 《多様な鼠》 4 《熾火心の挑戦者》 4 《心火の英雄》 4 《雇われ爪》 4 《双つ口の嵐孵り》 1 《光砕く者、テルサ》 4 《叫ぶ宿敵》 -クリーチャー(28)- |
4 《噴出の稲妻》 4 《巨怪の怒り》 1 《自爆》 1 《稲妻の一撃》 -呪文(10)- |
2 《魂標ランタン》 2 《メテオストライク》 3 《塔の点火》 2 《石術の連射》 1 《魔道士封じのトカゲ》 2 《真紅の鼓動の事件》 3 《陽背骨のオオヤマネコ》 -サイドボード(15)- |
「最初はイゼットをプレイするつもりだったんです」と行弘は言う。「イゼットが最も強力なデッキだと思っていましたし、『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の発売からプロツアーまでにはあまり時間がありませんでしたから。」
「日本を出発する前日、チームメイトである松浦拓海くんの赤単アグロと対戦したんですよ。その結果が0-5だったので、イゼットに対して有利な赤単アグロを選ぶことにしました。」
最強のデッキを選ばないという決断は非常にリスクの高いものであったが、プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』は、そのデッキ選択を巡る駆け引きが非常に魅力的だった。誰もがイゼット果敢が最も強力なデッキだとわかっていたものの、非常に多くの強豪プレイヤーたちが「それに打ち勝つことができる」と決断したのだ。そして、赤単アグロはその「最強のデッキ」に見事に打ち勝った。行弘は自身の選択を正解に導いたのだ。《ドレイクの孵卵者》ではなく《心火の英雄》を選んだことが、彼の人生を大きく変えた。
夢のような瞬間が現実となった今も、行弘の夢は終わらない。シカゴでのプロツアー『霊気走破』で素晴らしい成績を収めたことでラスベガスへの道が開かれ、その道は次回以降のプロツアー、更には「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」へと続いている。
「次の目標は、人々の記憶に残るプレイヤーになることです」と、行弘は語る。「プロツアーで競い続け、偉大な先人たちと並ぶことができるような存在になりたいです。そして、17年間競技に関わってきた者として、競技シーンの発展に貢献できたら嬉しいですね。」
無事帰国しました!家にトロフィーがあるのがいまだに現実感無いですが、生涯自慢できる大切な宝として飾りたいと思います。クラウドもかっこよすぎて最高です! pic.twitter.com/dQ1ZsPPfc0
— 行弘 賢/YUKUHIRO KEN (@death_snow) June 24, 2025
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