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プロツアー『ドミナリア』

観戦記事

決勝:Wyatt Darby(アメリカ) vs. Gonçalo Pinto(ポルトガル)

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2018年6月3日

 

 ゴンサロ・ピント/Gonçalo Pintoは最後まで残ったポルトガル選手だ。彼自身が同郷のマルシオ・カルヴァリョ/Márcio Carvalhoを2回(トーナメントの最序盤と、そして先ほどの準決勝で)下し、ポルトガルにプロツアーのトロフィーをもたらす夢はピントの手に託された。彼がプロツアーにデビューして13年経つが、グランプリやプロツアーのトップ8に進出するのはこれが初めてのことになる。

 今や、対戦相手と同じく、栄光まであと1勝のところまでたどり着いた。

 一方、ワイアット・ダービー/Wyatt Darbyにとっての初のプロツアーはたった数か月前、ナッシュビルで開催されたプロツアー『アモンケット』だった。キャリアの短さにもかかわらず、ダービーはピントと同様に決勝への道を歩んできた。準決勝で同じアメリカ人の殿堂顕彰者、オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldを下したダービーは、自国開催のプロツアーを勝ち抜くために残されたハードルはあと1つとなった。

 しかし、プロツアー『ドミナリア』の覇者を名乗れるのは、どちらか1人だけなのだ。

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美しいプロツアーのトロフィーは、次にワイアット・ダービーとゴンサロ・ピントのどちらの名が刻まれるのかを見守っている。
それぞれのデッキ

 「赤黒アグロ」と「赤単アグロ」は兄弟のようなデッキである。《ボーマットの急使》、《損魂魔道士》、《ゴブリンの鎖回し》、《屑鉄場のたかり屋》、《再燃するフェニックス》、《栄光をもたらすもの》、そして《熱烈の神ハゾレト》といった中核のクリーチャーは共通であり、また《削剥》もお互いに共通している。何より、お互いのゲームプランは同じく単純だ。ひたすらに致命的な量のダメージを対戦相手に可能な限り早く叩き込み、そして可能なら《ボーマットの急使》で手札を補充するのだ。

 両者の違いは、戦略の焦点と速度にある。「赤単アグロ」も《屑鉄場のたかり屋》のために黒マナを利用できるようになっているが、まず《地揺すりのケンラ》や《稲妻の一撃》を利用することになる。ダービーはこれに加えて勝利を確実にするための《火による戦い》を採用している。このデッキはよりダメージを与えることに注力しており、それが速度を増すことにつながっている。

 一方、ピントの「赤黒アグロ」の方は、ダービーのデッキよりも黒いカードを採用している。《無許可の分解》や《木端+微塵》、そして《大災厄》はより長期戦に強く、また対処しにくい脅威への回答となるのだ。例えば《大災厄》で《再燃するフェニックス》を追放したり、《栄光をもたらすもの》を《木端》で対処したあとに《微塵》で大きなライフを失わせたりする動きは、「赤単アグロ」では実現できないものだろう。

 もちろん、「赤単アグロ」は速度と一貫性により重きを置いているため、赤黒の得意とする土俵に立つ必要はないかもしれない。何にせよ、これらの戦略が、この両者が週末に素晴らしい成功を収め決勝に至る原動力になったのだ。

第1ゲーム

 ダービーは《損魂魔道士》から入ったが、一方ピントは1ターン、土地が1枚で止まってしまった。次の土地はピントに《キランの真意号》を与えたが、すでにダービーはピントのライフを13まで削っていた。

 《地揺すりのケンラ》から《ゴブリンの鎖回し》の動きだ。

 次のターン、3枚目の土地を置けなかったピントはターンを返し、ダービーはさらに攻撃を続けた。《削剥》で鎖回しを除去するも、ピントのライフは残り10だ。ブロックに回せるはずだった《損魂魔道士》もダービーの《稲妻の一撃》で除去され、次の攻撃と《ショック》でライフは5となった。そして、ダービーの《再燃するフェニックス》が第1ゲームに幕を引いた。

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ワイアット・ダービーは最後の戦いに臨んでいる。
第2ゲーム

 ピントは続くゲームでマリガンを選択したが、先ほどよりは早い立ち上がりで《損魂魔道士》から《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》と続けた。しかし対するダービーの《損魂魔道士》と《削剥》はこれを迅速に処理し、ピントは続く3マナのクリーチャーをプレイできなかった。

 ダービーの《ゴブリンの鎖回し》が3ターン目に着地したが、これは《木端》ですぐに対処された。しかしすでに大勢はダービーに傾いていた。《地揺すりのケンラ》と《稲妻の一撃》がピントのライフを12まで削り、しかもブロッカーはすでに残っていなかった。そして、ついに《熱烈の神ハゾレト》が手札0枚になるとともに現れ、ライフは4まで追い込まれ、そしてあっという間に敗北まで押し切られたのだった。

 速度と一貫性は「赤単アグロ」の最も輝く点である。ダービーはあっという間にピントを2-0でリードしたが、サイドボードはこの状況を変えられるのだろうか?

第3ゲーム

 サイドボードでデッキの戦術を切り替えたあと、ピントは《屑鉄場のたかり屋》で口火を切るも、ダービーは《稲妻の一撃》でこれに応じる。ピントは追撃に《ゴブリンの鎖回し》を出すが、ダービーは《削剥》で応える。ダービーの最初のクリーチャーは《損魂魔道士》だったが、《ピア・ナラー》と戻ってきた《屑鉄場のたかり屋》で、ついにピントは攻撃態勢に入った。

 ピントはさらなる脅威として《キランの真意号》を繰り出したが、こちらはちょうど(《損魂魔道士》と合わされた)《稲妻の一撃》で力ないサイズにされてしまった。しかしダービーは依然として守勢に立たされている。

 ピントは《ゴブリンの鎖回し》がダービーの《地揺すりのケンラ》を除去し、ダービーのライフを12まで削る。ダービーは鎖回しを除去して返しのターンに《再燃するフェニックス》を出したが、これはピントの《削剥》と《ショック》で対処され、攻撃によりダービーのライフは5まで落ち込んだ。

 2枚目のフェニックスは、ピントからの次のターンの圧力に耐えるには足りなかった。

第4ゲーム

 《損魂魔道士》同士がにらみ合う状況から第4ゲームが始まったが、ダービーの《地揺すりのケンラ》が先に攻撃を仕掛けた。ピントの軍勢には《屑鉄場のたかり屋》が加わったが、ダービーは《霊気圏の収集艇》のおかげで攻勢を維持することができた。

 ピントのライフはすでに14だった。《ゴブリンの鎖回し》で地上は抑えたが、ダービーは《再燃するフェニックス》を《霊気圏の収集艇》に搭乗させてライフ10まで追い込む。一方、ピントもまた鎖回し、たかり屋、そして魔道士で攻撃しダービーのライフを9まで押し込んだ。

 《地揺すりのケンラ》が、ピントの唯一残ったブロッカーであるもう1枚の《損魂魔道士》をブロック不能にすると、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》が現れ収集艇に搭乗する。しかしピントはここに《削剥》を合わせ、このターンはフェニックスからの4点のみで踏みとどまる。ピントは返しのターンにアンタップすると、《削剥》と《ショック》で道を開き、残る9点のダメージを与えて第4ゲームにも勝利した。

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ゴンサロ・ピントは数ある除去の1枚で第4ゲームの勝利を確実にした。
第5ゲーム

 ピントは2ゲームを迅速に取り戻し、ついに舞台は大会の最終ゲームに持ち込まれた。当然ながらダービーはこの第5ゲームで先手を選んだが、不運にもマリガンを強いられた。しかし、その差はすぐに問題ではなくなった。

 ピントの1手目の《損魂魔道士》は《稲妻の一撃》で排除され、そしてダービーは《ゴブリンの鎖回し》で地上を制圧する。ピントは《霊気圏の収集艇》と乗り手の《屑鉄場のたかり屋》で鎖回しを牽制していたため、ダービーはさらに《再燃するフェニックス》を追加した。

 ピントは次のターンの攻撃でライフを22まで増やし、「時間」を手に入れた。そしてさらに《ピア・ナラー》が追加される。フェニックスは空中から4点を刻むが、《霊気圏の収集艇》はピントの優位を確かなものにしていた。

 ピントのライフは21、対するダービーのライフは13、そしてピントは戦況をしっかり握っていた。

 対するダービーにできることは《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を出してターンを終えることだけだった。次のターンで、ピントは自分の《再燃するフェニックス》で攻撃しダービーのフェニックスと相打ちをとり、そしてその後のメイン・フェイズで《ゴブリンの鎖回し》によってエレメンタルをも除去し、ダービーのフェニックスが戻ってこないようにした。

 ピントのエレメンタルも同様に《チャンドラの敗北》によって処分され、そしてダービーは返しのターンで《熱烈の神ハゾレト》を引き入れて攻撃する。

 次のターンの攻撃で残りライフ4点となったダービーは、ピントの分厚い地上の軍勢、2枚の《戦場のたかり屋》、《ゴブリンの鎖回し》、そして《ピア・ナラー》を乗り越えて速やかに16点を削り切る必要に迫られた。

 しかし、ハゾレトは再度単独で攻撃し、ピントはブロックしなかったためライフは11となった。この次のターンのやり取りが、この最後のゲームの行く末を決定づけた。

 ピントは《霊気圏の収集艇》と飛行機械で、試合を決定付ける可能性のある攻撃を行う。ダービーは《削剥》で収集艇を破壊し、ここでピントのマナは《ピア・ナラー》の能力を2回起動できるだけであり、与えられるダメージは4点ではなく3点になってしまった。ダービーはこの一撃を受け、ライフ1点まで追い込まれた。

 しかし、ライフ1はライフ0ではない。

 ダービーは返しのターンのカードを引き、ライブラリーの上から《栄光をもたらすもの》が現れた。ダービーはこれを唱え、《栄光をもたらすもの》の「督励」能力でピントのブロッカーを排除して、最後の一撃への攻撃へと入った。

 ダメージを防ぐ方法はなかったが、ダービーはピントに打ち勝つ最後のチャンスであったターンに、ダメージレースを巻き返す唯一のカードを引き当てて勝利を掴んだ。ピントは手を差し出して、火によって鍛えられた新しいプロツアーの覇者を讃えた。

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ワイアット・ダービー(写真右)はゴンサロ・ピント(同左)を破り、ついに栄冠を手にした。

 ワイアット・ダービーがゴンサロ・ピントを3勝2敗で下し、プロツアー『ドミナリア』の覇者となった。

(Tr. Keiichi Kawazoe)

Wyatt Darby - 「赤単アグロ」
プロツアー『ドミナリア』 優勝 / スタンダード (2018年6月1~3日)[MO]
24 《
-土地(24)-

4 《損魂魔道士
3 《ボーマットの急使
4 《地揺すりのケンラ
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《アン一門の壊し屋
4 《熱烈の神ハゾレト
3 《再燃するフェニックス
-クリーチャー(26)-
3 《ショック
4 《削剥
3 《稲妻の一撃
-呪文(10)-
3 《栄光をもたらすもの
3 《チャンドラの敗北
1 《宝物の地図
3 《火による戦い
2 《霊気圏の収集艇
3 《反逆の先導者、チャンドラ
-サイドボード(15)-
Gonçalo Pinto - 「赤黒アグロ」
プロツアー『ドミナリア』 準優勝 / スタンダード (2018年6月1~3日)[MO]
13 《
4 《泥濘の峡谷
4 《竜髑髏の山頂
2 《霊気拠点
1 《産業の塔
-土地(24)-

4 《ボーマットの急使
3 《損魂魔道士
4 《屑鉄場のたかり屋
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《ピア・ナラー
4 《再燃するフェニックス
1 《栄光をもたらすもの
-クリーチャー(24)-
1 《ショック
3 《削剥
3 《無許可の分解
1 《木端+微塵
2 《キランの真意号
2 《反逆の先導者、チャンドラ
-呪文(12)-
2 《栄光をもたらすもの
2 《包囲攻撃の司令官
2 《チャンドラの敗北
2 《強迫
1 《削剥
2 《大災厄
1 《木端+微塵
1 《霊気圏の収集艇
1 《炎鎖のアングラス
1 《
-サイドボード(15)-
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