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プロツアー『ドミナリア』
準々決勝:Ernest Lim(シンガポール) vs. Gonçalo Pinto(ポルトガル)
2018年6月3日
《ゴブリンの鎖回し》の世界。私たちはみなこの世界に住んでいる。
ただひとり、アーネスト・リム/Ernest Limを除いて。
シンガポールのリムは、《ゴブリンの鎖回し》の対抗勢力でただひとり、自身初のプロツアー・トップ8の舞台に立った。他の7人がさまざまな《ゴブリンの鎖回し》デッキを手にする中、彼のデッキは《山》を1枚も採用していない。彼の手には、コントロール・プレイヤーの希望たるエスパー・コントロールが握られているのだ。
この週末を迎えるにあたっては、(勝ち手段の選択には幅があるものの)《ドミナリアの英雄、テフェリー》を4枚投入した「白青」が最高のコントロール・デッキと見られていた。しかしリムは大方の流れに反し、「青黒コントロール」に《ドミナリアの英雄、テフェリー》をタッチした形を選んだ。《奔流の機械巨人》と《スカラベの神》の絆はまだ失われていなかったのだ。
リムは最後の戦いに臨む。彼はこれから3回戦にわたって襲い来る《ゴブリンの鎖回し》や《屑鉄場のたかり屋》、《キランの真意号》を次々と打ち破らなければならない。最初の相手はゴンサロ・ピント/Gonçalo Pintoだ。彼の「赤黒」は、7枚もの1マナ域と《ピア・ナラー》、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を採用したアグレッシブな構成だが、サイド後は「スカラベの神」サイズの頑丈なブーツを履いたリムをもってしても、足元を揺るがされるに違いない――《強迫》や《炎鎖のアングラス》、《大災厄》、《包囲攻撃の司令官》が加わることで、ピントは「素早く20点を削る」だけでなくより多角的な攻めを実現するのだ。
あらゆる方向から繰り出される脅威にすべて応じるのは難しいだろう。
ゲーム1
ピントはいたずらに時間を使わなかった。1ターン目に攻撃の手順を省略して《ボーマットの急使》をタップ状態で送り出す。ピントが目指すものと、彼の姿勢を示す一手だった。
これに対し、リムは体勢を整えるのに苦戦した。《霊気拠点》以外に黒マナ源がない手札をキープした彼だが、早速そのマナを使って《ボーマットの急使》へ《喪心》を撃ち込む。《廃墟の地》でマナ基盤を整えようと考えていたリムだが、ピントは《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を唱え、リムに難しい判断を迫った。
《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を前に苦しむリム。マナ基盤を整えるための時間が必要だが、手札に除去は《喪心》しかなかった。伝説の海賊には効かないため、彼はここで《中略》を切らざるを得なくなり、マナ・トラブルを解消できなかった。リムの土地は《島》1枚とエネルギーを使い果たした《霊気拠点》、そして《廃墟の地》で止まった。
とはいえピントの方もしばらく土地が2枚で止まり、すべてがスムーズにとはいかなかった。
さらなる《ボーマットの急使》2体が戦場を駆け、土地が止まり動けない両者を後目にカードという宝を集めて回った。停滞の中で積み重なる1点のダメージ。リムが5マナを揃えてようやく動けるようになった頃には、彼の残りライフは10点まで落ち込んでいた。
リムは《スカラベの神》を繰り出した。威風堂々たるその姿はしかし、《無許可の分解》の的になった。これによるダメージと《ボーマットの急使》によるさらなる攻撃で残り5点と追い詰められたリムは、必死の思いで回答を探す。しかし《天才の片鱗》でも何も手に入らず、リムは溢れた手札を捨てることになった。光明は見えない。
ピントがリムのわずかな残りライフを削り切るのに、時間はかからなかった。
ゲーム2
第2ゲームも再び、1ターン目に《ボーマットの急使》が攻撃した状態で繰り出された。2ターン目に2体目を唱えたピントだが、リムは《中略》で応じ、さらに1体目にも《致命的な一押し》を撃ち込んだ。今度はリムもきちんとゲームを進められているようだ。
両者とも土地を適切に引き込み、カードはプレイヤーたちに応えた。《キランの真意号》や《ゴブリンの鎖回し》は対戦相手にプレッシャーをかけ、《ドミナリアの英雄、テフェリー》は英雄にふさわしい動きを見せ、《奔流の機械巨人》は機械巨人としての使命を全うした。
見た目にはリムが優勢だったが、実はその奥には明確なドローの質の差があった。リムは多くの脅威を取り逃し、多くの攻撃に対抗するすべなくダメージを受けた。《キランの真意号》や《再燃するフェニックス》の攻撃に対し、リムにはそれを止める手立てがなかった。確かにテフェリーはドミナリアの英雄だが、この試合においてはピントが繰り出すさまざまなクリーチャーによる素早い攻撃を、わずかに遅らせるくらいしかできなかった。
その上、ピントの方にも英雄が駆けつけた――《反逆の先導者、チャンドラ》だ。燃えたぎるプレインズウォーカーが生み出すマナを用いて、ピントは手負いの《奔流の機械巨人》を《木端》に砕き、盤面を空にしてプレッシャーをかけ続けた。リムの手札にもいくつかの回答はあったが、ピントの盤面には強烈なカードが満ちていた。
それでもリムは、ライフが減り続ける中で戦いを諦めなかった。《奔流の機械巨人》が空白の盤面を埋め、《反逆の先導者、チャンドラ》に重い一撃が入った――しかし同時に、リムの懐はがら空きのままだった。
重い一撃を受けながらも、《反逆の先導者、チャンドラ》はなんとか生き残っていた。そして彼女は物語と同様に《キランの真意号》へ乗り込み、最後の攻撃に加わった。《ヴラスカの侮辱》を放ったリムだが、生き残ることは叶わなかった。《無許可の分解》が《奔流の機械巨人》へ撃ち込まれ、残ったライフを削り切られたのだ。
ゲーム3
リムにとって嬉しいことに、今度は開幕から《ボーマットの急使》は現れなかった。このゲームは、サイドボードが勝負を分けたと断言できるだろう。それが表れたのは、ピントが《強迫》を放った瞬間だった。
この《強迫》はリムを動かし、彼は《屑鉄場のたかり屋》へ《ヴラスカの侮辱》を撃ち込んだ。しかし《強迫》によって《ドミナリアの英雄、テフェリー》を抜かれ、続けて繰り出された2枚目の《屑鉄場のたかり屋》が大きな存在感を放つことになった。確かに嫌な展開だが、5ターン目を迎えたリムは代わりに《スカラベの神》を着地させるしかない。しかし《無許可の分解》が一時的とはいえ《スカラベの神》を退場させ、《反逆の先導者、チャンドラ》がプレッシャーをかけていく。
リムの試みすべてを、ピントが一歩上回った。ピントが繰り出す脅威すべてにリムが適切な回答を持っているとは、到底思えなかった。リムは手札のカードが変わるのを祈るように、ハンド・シャッフルを繰り返した――余分な土地やこの状況では役に立たない《中略》ではなく、除去呪文か《奔流の機械巨人》といった救世主が必要だった。
《残骸の漂着》でピントの攻撃をなんとかかわし、《奔流の機械巨人》からの《ヴラスカの侮辱》で《反逆の先導者、チャンドラ》も除去。しかしそれも延命にすぎなかった。彼の残りライフは5点。《奔流の機械巨人》のパワーは5。みんな大好き怒れるミノタウルスの父《炎鎖のアングラス》の《反逆の行動》能力がリムのライフを吹き飛ばし、ピントを準決勝へ送り出したのだった。
ゴンサロ・ピントがアーネスト・リムを3連勝で下し、準決勝へ。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
1 《平地》 4 《島》 4 《沼》 1 《氷河の城砦》 1 《孤立した礼拝堂》 4 《異臭の池》 4 《水没した地下墓地》 4 《霊気拠点》 1 《廃墟の地》 2 《進化する未開地》 -土地(26)- 3 《スカラベの神》 3 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー(6)- |
4 《致命的な一押し》 3 《喪心》 2 《検閲》 1 《アルゲールの断血》 4 《不許可》 4 《天才の片鱗》 4 《ヴラスカの侮辱》 1 《暗記 // 記憶》 3 《中略》 2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 -呪文(28)- |
4 《光袖会の収集者》 3 《強迫》 4 《否認》 1 《喪心》 1 《本質の散乱》 1 《俗物の放棄》 1 《残骸の漂着》 -サイドボード(15)- |
13 《山》 4 《泥濘の峡谷》 4 《竜髑髏の山頂》 2 《霊気拠点》 1 《産業の塔》 -土地(24)- 4 《ボーマットの急使》 3 《損魂魔道士》 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《ゴブリンの鎖回し》 2 《ピア・ナラー》 4 《再燃するフェニックス》 1 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー(24)- |
1 《ショック》 3 《削剥》 3 《無許可の分解》 1 《木端 // 微塵》 2 《キランの真意号》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(12)- |
2 《栄光をもたらすもの》 2 《包囲攻撃の司令官》 2 《チャンドラの敗北》 2 《強迫》 1 《削剥》 2 《大災厄》 1 《木端 // 微塵》 1 《霊気圏の収集艇》 1 《炎鎖のアングラス》 1 《沼》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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