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マジック25周年記念プロツアー
スタンダード・デッキテク:貯蔵器ストーム
2018年8月4日
スタンダード・フォーマット最大の特徴は、「変化」だ。新たなセットが登場すると新たなデッキが生まれ、活躍するデッキも大きく更新される。そして1年に1度ローテーションが起こると、すべてが一新される。過去のカードも面白いのだが、通常、再びその力を証明する機会は訪れにくいものだ。過去のカードに関わる変化は小さく、緩やかで、デッキに1枚か2枚加わる程度だろう。あるいはデッキそのものが環境の外へ追いやられることになる可能性もある。
そこで「青単『霊気貯蔵器』コンボ」の登場だ。《逆説的な結果》を燃料にして動くこのデッキは、「スタンダード版ストーム」としても知られている。
今大会では、スタンダードでは実に珍しい、一風変わった青単のコンボ・デッキを多くのチームが持ち込んだ。簡潔に言うと、このデッキの目標は《霊気貯蔵器》を戦場に出してから1ターンに大量の呪文を唱え、放つのに50点ものライフを必要とする巨大稲妻で一撃のもとにゲームを決めることだ。またそれとは別に、飛行機械・トークンを広く展開するという、まったく異なる戦い方もできる。それを可能にするのが《練達飛行機械職人、サイ》の存在だ。生み出されたトークンはブロックで時間を稼ぐこともでき、攻撃で決着をつけることもできるのだ。
この2方面からの同時攻撃が、防御を完璧に打ち崩す。回避能力を持つ飛行機械の群れが襲いかかる(しかもそれを生み出すのは現環境の主要な除去がほとんど効かない1/4のクリーチャーだ)と同時に、デッキを引き切らんばかりの勢いでカードを集めコンボによる勝利も狙ってくる相手に、一体どのようなサイドボーディングを行えば良いというのだろう?
その答えは、まだ見つかっていないようだ。
「このデッキはとても速くて、序盤から力強い動きを見せてくれます。それと同時に、ゲーム後半も粘り強く戦えるんです。だからこのデッキを選択しました」と語るのは、チーム「Massdrop West」のベン・ワイツ/Ben Weitzだ。「調整中にパウロ(・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa)も使っていましたが、彼に何度もやられましたよ」
「コンボ」の内容を詳しく見てみよう。このデッキでは最初の数ターンを準備に費やし、《改革派の地図》や《予言のプリズム》、《金属紡績工の組細工》といったカードを展開していく。その後は序盤に置いたアーティファクトをすべてマナ源に変える《鼓舞する彫像》の設置を目指し、《ウルザの後継、カーン》や《暗記 // 記憶》、《バラルの巧技》などにつなげていく。《バラルの巧技》は対戦相手のクリーチャーをバウンスして時間を稼ぐのに使うほか、自身のアーティファクトを戻して再利用できるようにして、同時にコストを踏み倒して展開を進める(大抵は《霊気貯蔵器》を出す)のに使う。
《霊気貯蔵器》の設置に成功したら、このデッキの最強呪文たる《逆説的な結果》を放つ。これで、軽いコストで(あるいはコストをかけずに)再展開できるアーティファクトをすべて手札に戻し、大量のカードを引き込めるのだ。そして再び呪文を連打し《霊気貯蔵器》でライフを増やし続け、50点を支払えるだけのライフを得たら対戦相手に撃ち込んで決まりだ。
しかしこのデッキの攻め手はそれだけではない。このデッキがメタ外からプロツアーの舞台へと躍進を果たす原動力となったものがある。
「《練達飛行機械職人、サイ》は完全におかしいですよ」とワイツは言う。「文句なしに強いこのカードこそ、このデッキの立役者です。《練達飛行機械職人、サイ》を用いるデッキはいろいろと試しましたが、これが一番ですね。今大会でこのデッキを使おうと決意できたのは、《練達飛行機械職人、サイ》のおかげなんです」
この『基本セット2019』の傑物は、多くの役割をこなす。3マナでタフネス4を持つこのカードは、数多く飛び交う《致命的な一押し》を含めて現環境の軽量除去のほとんどが効かず、序盤はブロッカーとして頼りになる。そして戦場で生き残って再びターンを迎えれば、《練達飛行機械職人、サイ》は確固たるアドバンテージをもたらしてくれる。飛行機械を生み出し盤面を膠着させてコンボに必要な時間を稼ぎ、あるいはクリーチャーの群れでそのまま殴り切ることも可能だ。飛行機械たちが環境にはびこる《ゴブリンの鎖回し》に弱いのは確かだが、このデッキ自体が今大会で最も多くの使用者を集める「赤黒アグロ」に対して全体的に有利である点は特筆すべきだろう。
この週末は「ターボ・フォグ」も成功を収めており、今後は《ゴブリンの鎖回し》による環境支配に一石が投じられるかもしれない。スタンダードのプレイヤーたちは、これから吹き荒れることが予想される嵐に、備える必要があるだろう。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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