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戦略記事

クイックインタビュー:モダンフォーマットの犯人を追う!環境を定義する1枚は?

Hiroshi Okubo

 いよいよ開幕した「チャンピオンズカップファイナル シーズン2サイクル2」。『カルロフ邸殺人事件』発売直後のタイミングで開催された本イベントはモダン・フォーマットで争われる。

 約20年分の広大なカードプールを擁するこのフォーマットは、今なお環境が完全に解き明かされることなく多様性に満ちている。そんなモダンの中で、あえて環境を定義する1枚をピックアップするとしたら……?

 今回のインタビューでは4名の探偵──もといプロプレイヤーたちに、モダン・フォーマットの謎を解き明かしてもらおう。誰よりも競技マジックに深く関わってきたプレイヤーたちは、果たしてこの混迷極めるモダン環境の中でどのカードに白羽の矢を立てるのだろうか? その慧眼が見据える先をお伝えしていこう。
 

元MPL所属プレイヤー - 佐藤 レイ→《ギルドパクトの力線

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佐藤期待を込めて《ギルドパクトの力線》かな。俺は今日『ドメイン・ズー』を使ってるんだけど、《ギルドパクトの力線》が加入したことで1ターン目にアクションが取りやすくなったんだよね」

──「というと?」

佐藤「これまで《ドラコの末裔》をプレイするには1ターン目にタップイン土地である《サヴァイのトライオーム》を出す必要があったんだけど、《ギルドパクトの力線》があれば1ターン目にアンタップイン土地を置いて《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《野生のナカティル》をプレイしながら2ターン目に《ドラコの末裔》をプレイできるんだよ」

佐藤「海外では『カスケード・クラッシュ』に《ギルドパクトの力線》を入れたリストも勝っているみたいだし、《ギルドパクトの力線》はモダンに一石を投じる存在になるんじゃないかな」
 

イニストラード・チャンピオンシップ優勝 - 市川 ユウキ→《悲嘆

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市川悲嘆》!!(即答)」

市川「まぁ、普通に書いてあることが強いよね(笑) それにモダンはカード1枚通したら勝てる、みたいなデッキが多いから、手札破壊がシンプルに強い。それから『想起』というメカニズムが他のカードとシナジーを形成しやすいこともあるね」

市川「俺も今日は『エスパー・《御霊の復讐》』を使っているけど、《儚い存在》や《精霊界との接触》で《悲嘆》をブリンクすることも多かったよ。ラクドスが《まだ死んでいない》と《悲嘆》を組み合わせてるみたいに、『想起』サイクルのクリーチャーは他のカードとコンボしやすいところもポイントだね」
 

日本選手権2021 FINAL トップ4 - 井川 良彦→《暴力的な突発

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井川「どのピッチスペル(手札を捨てたり追放することでマナ・コストを支払わずに唱えられる呪文の俗称)にしようか迷うなぁ。《悲嘆》は言われちゃったし、《否定の力》は……普通すぎておもしろくないよね」

──「被りなどはあまり気にしなくてもよいですが、井川さんはピッチスペルを高く評価しているんですね」

井川モダンはピッチスペルを投げ合う環境っていう大前提があるからピッチスペルはどれも強いけど、その上であえて他のカードを選ぶとしたら《暴力的な突発》かな? というより、そもそも『続唱』というメカニズムが強すぎるんだよね」

井川「モダンでは他にも『続唱』を持ったカードとして《断片無き工作員》も使われてるけど、インスタントである《暴力的な突発》は『続唱』カードの中でも頭一つ抜けて強いよ。相手ターンに《暴力的な突発》を唱えて『続唱』すると《否定の力》を躱すこともできるしね。《暴力的な突発》がある限り『続唱』系のデッキはずっと環境に残り続けるだろうね」
 

プレイヤーズツアー名古屋2020 優勝 - 原根 健太→(環境を定義する1枚は)ない

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原根「ない……というか、1枚を決めるのは無理だね。3~4枚選ぶとか、トップ3を決めろって言うならできなくはないと思うけど」

原根「そもそもモダンは多角的すぎるんだよ。メタゲーム上位のデッキを見ても、それぞれキーカードが違ってるくらい。逆に環境を定義する1枚があるくらいの方が、そのカードを使いこなすか対策するかって方針が立てられるから個人的には攻略しやすいんだけどね。《スランの医師、ヨーグモス》デッキみたいに盤面をガチガチにかためてくるデッキもあれば、序盤まったく動かないけど《衝撃の足音》で一気に10点クロック叩きつけてくるデッキもあるし、デッキごとにゲームレンジもバラバラでこれ!って言える1枚はないかな」


 さて、本記事では4名のプレイヤーに話を聞いたが、いずれのプレイヤーからもそれぞれ異なるカード名が挙がった。モダン環境のフーダニット(Who done it?)、容疑のかかったカードの名前はそれぞれ以下のとおりだ。

 これが仮にスタンダードであれば特異点と呼べるカードはもう少し絞ることができそうだが、このように四者四様の答えが出るというのもまたモダンの多様性を象徴しているだろう。ここに挙がったカードはいずれも環境トップのデッキで使用されており、原根の答えにあるように象徴的な1枚を絞るというのも難しそうだ。逆に言えば、どのカードに注目し、どのデッキを選択したとしても一定の強さは担保されているということでもある。

 モダンという名の迷宮は、今後も複雑さを増していくことだろう。《ギルドパクトの力線》という新たなカードの登場もあって、今大会の結果と今後の動向からも目が離せなくなりそうだ。

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