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プレイヤーズコンベンション横浜2024

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第7回戦:行弘 賢(東京) vs. 横川 裕太(東京) ~「続唱」合戦の行方~

Hiroshi Okubo

 チャンピオンズカップファイナルは初日8回戦が競われるが、8回戦の前に一度足切りが行われる。7回戦終了時点で5勝2敗以上の成績を収め、かつ上位64名に入っていなければ初日最終戦へと駒を進めることができないのだ。

 そんな第7回戦でフィーチャーマッチテーブルへと通された行弘 賢横川 裕太の2名は、現在4勝2敗。すなわち、この対戦で勝利を収めることが8回戦進出への最低限の条件となる。

行弘「《忍耐》入りすぎでしょ」

 もちろん2人はこの対戦の重みを理解しているし、だからこそ互いのデッキリストを入念にチェックする。行弘のデッキは「リビングエンド」。モダンフォーマットの定番デッキの一つで、サイクリングを持ったクリーチャーを墓地に蓄え、その名を冠する《死せる生》によって一気にリアニメイトするコンボデッキだ。デッキの性質上、対戦相手がサイドボードにどれだけ墓地対策カードを採用しているのか、どういったタイプの墓地対策カードを採っているのか確認するのは必然と言えよう。

 横川のデッキには行弘の言った《忍耐》の他、墓地対策カードとして《虚空の力線》が採用されており、他にも《アーテイの嘲笑》といった「続唱」系デッキ全般に刺さるサイドカードが採用されている。

 そんな横川のデッキは「ドメイン・カスケード」。行弘のデッキと同様《暴力的な突発》や《断片無き工作員》で「続唱」するところまでは同じだが、唱える呪文は《衝撃の足音》。下準備なしに8点クロックを盤面に投入できるお手軽コンボであり、コンボパーツ以外のスロットを妨害や除去に変えられる点が強力なデッキだ。また、対戦相手を妨害して時間を稼ぎながら「待機」で《衝撃の足音》を唱えるプランもある。

 横川のリストは『カルロフ邸殺人事件』の新カード《ギルドパクトの力線》を採用したものとなっており、《ドラコの末裔》を2ターン目に唱えたり、強力な万能除去カードである《力線の束縛》を採用することができる。テーブルトップに先駆けて、Magic Online上では早くも結果を残しているリストだ。

 互いに「続唱」を叩きつけ合う両者のデッキ。果たして勝つのはサイクリングを多用することから安定的に「続唱」へたどり着ける行弘の「リビングエンド」か、あるいは数多の妨害呪文を擁し対戦相手をスローダウンさせながら戦う横川の「ドメイン・カスケード」か? 絶対に負けられないバブルマッチの舞台で、古今「続唱」デッキ対決の火蓋が切って落とされる。


行弘 賢(東京) vs. 横川 裕太(東京)
 

ゲーム1

行弘「《ギルドパクトの力線》は?」

横川「ないです」

 対戦前にデッキリストをチェックしている行弘は、ゲーム開始前にまず横川の《ギルドパクトの力線》の有無を確認する。《死せる生》さえ通ってしまえば盤面を一掃できる行弘のデッキにとって《ギルドパクトの力線》と《ドラコの末裔》のコンボは(他のデッキと比べれば相対的に)対処に困るほどのものではないが、それでもゲームスピードに大きく差がないデッキ同士の対決である以上、対戦相手が優位にゲームを進められる要素が一つでも減るのは僥倖と言えよう。

 先攻の行弘が土地を置くのみでターンを終えるのに対し、横川は第1ターンに《衝撃の足音》を待機する。そんな横川のターン終了時に行弘はフェッチランドを起動して《迷路庭園》をセット。諜報によって《緻密》を墓地に落としつつ、続くターンにサイクリングを進めて墓地を肥やす。

 互いに序盤をセットランド・ゴーの応酬で終えつつ、《衝撃の足音》のカウンターを減らす横川に対してサイクリングで墓地を肥やす行弘。静かな序盤戦を終えて、第4ターンの行弘のターン終了時、横川が《暴力的な突発》で動き出す!これによって《衝撃の足音》が唱えられ、盤面にサイ・トークンが並ぶ。

 ならばと行弘も横川の《衝撃の足音》の解決後にフルタップの隙を突いて《暴力的な突発》をプレイ。その「続唱」によって《死せる生》を唱えるが、これには横川がピッチコストを支払って唱えた《否定の力》が刺さり、返す横川が強烈な8点クロックを浴びせる。

 しかし、行弘も負けじと二の矢を放つ。猛打を浴びた返しに《断片無き工作員》の「続唱」から《死せる生》をプレイ!無事にこれが解決されると、盤面には一気に《緻密》や《秘法の管理者》、《通りの悪霊》他合計で6体のクリーチャーが並び、反対に横川のサイ・トークンは《死せる生》によって一掃される。

 静かに進行した序盤戦はわずか1ターンの間に総力戦へと移行した。行弘のターンが終わると、続く横川のターンには「待機」明けの《衝撃の足音》を解決。さらにメインフェイズに4マナで《ドラコの末裔》をプレイする。

 しかし、《ドラコの末裔》が猛威を振るうのは《ギルドパクトの力線》あってこそ。行弘のクリーチャー6体の軍団に対して、ただの4/4飛行に過ぎない《ドラコの末裔》とサイ。トークン2体はほとんどバニラクリーチャーと変わらず、しかも手札はない。すなわち、盤面の行弘優位は揺るぎない。

 行弘はコンバットフェイズに悩みつつ、沼渡りでブロックされない《通りの悪霊》のみをレッドゾーンに送り込む。行弘も行弘で、盤面こそ圧倒しているが残りライフはわずか5点。対して横川のライフは14点とライフレースで不利なため、慎重を期す構えだ。

 あとは行弘のクロックを眺めることしかできないかに思われた横川だったが、トップデッキは絶好のドローといえる《ギルドパクトの力線》!

横川「《天上都市、大田原》だけは……!」

 戦況を逆転させる《ギルドパクトの力線》──に対する解答。行弘の手札に《天上都市、大田原》がないことを祈りつつ《ギルドパクトの力線》を唱える横川だったが、スタックで行弘の手札から解き放たれたのは無情な《天上都市、大田原》。これによって横川の《ドラコの末裔》を手札に戻し、戦場には哀愁すら漂うサイのみが残される。続く行弘のターン──

行弘「あ、引いちゃった」

 ライブラリートップからめくって見せたのは《暴力的な突発》。これによって行弘の戦線がパワー+1の修正を受け、一気に横川のライフを削り取った。

行弘 1-0 横川

ゲーム2

 華麗に先勝をもぎ取った行弘だったが、彼にとって鬼門となるのは第2ゲーム以降だ。ここからは横川がサイドインしてくるであろう《忍耐》と《虚空の力線》の2種類の墓地対策をかいくぐらなければならない。

横川「マリガンです」

 本来であれば嬉しいであろうマリガン宣言も、サイドカードを探していると分かっていればため息の種だ。《ギルドパクトの力線》と《虚空の力線》は置かれなかったものの、おそらく横川は別の何らかの対策カードを握っていることだろう。

 第1ゲームと同様に互いに土地を並べていくだけの静かな立ち上がりだったが、先に動き出したのは先攻の横川。行弘の第3ターン終了時に《暴力的な突発》をプレイし、《衝撃の足音》を「続唱」すると、行弘も横川のフルタップの隙を突いて《暴力的な突発》で応じる。

 この《死せる生》に《否定の力》で応じた横川は、サイ・トークンに攻撃の号令を掛けて行弘に猛打を加える。

 返す行弘も負けじと《断片無き工作員》をプレイ。ここまで第1ゲームと同様の展開だが、これによってめくれた《死せる生》に対し、横川は今度はしっかりと《アーテイの嘲笑》で応じ、依然サイの脅威が盤面を支配する。

 行弘は横川のサイ・トークンの猛攻を《断片無き工作員》でブロックし、そのクロックをわずかに減らすが、残りライフは3点ともはや後がない。万事休すかと思われた最後のターン、行弘はフェッチランドを起動して《轟音の滝》をセット。諜報によってライブラリートップにあった《気前のよいエント》を墓地に置きつつ、2枚目の《断片無き工作員》で《死せる生》を唱える。

 横川の対策カードを突破するにはどうすればいいか──行弘がたどり着いた答えは圧倒的物量で妨害を超えることだった。よもやゲーム開始からわずか5ターンの間に3度も《死せる生》を唱えられてしまうのは思いもよらなかったであろう横川は苦い顔を浮かべながらその解決を許す。

 一気に《気前のよいエント》2体と《断片無き工作員》2体を並べることに成功した行弘。天秤は一挙に行弘に傾き、《気前のよいエント》のクロックが横川のライフを減らし始める。

 返す横川は《ドラコの末裔》をプレイするが、やはり第1ゲームと同様盤面に《ギルドパクトの力線》はなく、5/7到達の《気前のよいエント》が並んだ盤面では回避能力すら役に立たないちょっとマナレシオがいいだけの並のクリーチャーだ。痺れる横川に対して行弘は攻撃の手を緩めることなく、横川の残りライフを踏まえて《ドラコの末裔》によるチャンプブロックを強要するフルアタックを仕掛ける。

 この攻撃に対し、横川は縋るようにブロッカーとして《緻密》をプレイする。これが通れば行弘の《気前のよいエント》1体をブロックし、返しのアタックで行弘のライフを削り切ることができる……!

 のだが、もちろん行弘も残りライフ3の状況で無策のフルアタックを強行はしない。分かってましたよ、と言わんばかりに行弘の手札からプレイされた《緻密》が横川の《緻密》をどける。「続唱」合戦と《緻密》合戦の両方に勝利した行弘が見事にマッチをもぎ取って第8ラウンド進出に望みを繋いだ。

行弘 2-0 横川

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