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インタビュー

ジャパンスタンダードカップ:『サンダー・ジャンクションの無法者』優勝者 矢嶋 竜明選手インタビュー

瀬尾 亜沙子 / 大久保 寛(撮影者:堀川優一)

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 本名の「矢嶋 竜明(やじま たつあき)」に見覚えがなくとも、「ryuumei」の名前なら知っている、という人は多いのではないだろうか?その名はMagic Onlineでよく知られている。トッププレイヤーが「ryuumeiくんのデッキを参考にして……」などと話すのを聞いた機会も、一度や二度ではない。

 矢嶋選手は、普段ほぼオンラインのみで活動しているという。プロツアー出場経験もあり、テーブルトップの大会に出ていないわけではないのだが、表舞台に現れて顔と名前が一致したのは今回が初と言ってもいいだろう。

 これを機に、マジックとのかかわり方などをいろいろと伺わせてもらった。

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シアトルで始めたマジック

矢嶋「マジックを始めたのは『テーロス』からで、2013年の秋です。大学生のときシアトルに1年間留学する機会があって、せっかくシアトルに行ったんだからマジックをやろうと思って、地元のショップでフライデー・ナイト・マジックとかに出てました。アメリカだと小学生くらいの子もいたりして、『お前英語ヘタだな』とか言われながら一緒にドラフトやってました(笑)。Magic Online(MO)もそのころ同時に始めました。わりと初期から、マジックには競技的に取り組んでいましたね。就活で少し空いたりはしましたけど、基本的にはそれからずっとマジックをやり続けています」

 仕事の関係で去年引っ越したため今は札幌在住だが、地元は神奈川。留学を終えて帰国してからも、ずっと神奈川にいたという。

矢嶋「といっても、ショップに通うとかではなくて、基本的にはオンラインに引きこもっていて、たまにPTQ(プロツアー予選)に出たりするくらいです。『タルキール龍紀伝』のPTQで運よく優勝できて、初めてのプロツアーは2016年の春、1日目は4-4で2日目は4-3くらいでしたね。その次は2017年のプロツアー『イクサラン』に出たんですが、それ以降は全然プロツアーの権利が取れない時期が続いて今に至ります」

 Magic Onlineの住人と言ってもいい矢嶋選手に、オンラインの良さを聞いてみた。

矢嶋「第一に、カードの入手が楽。MOって勝つとどんどん資産が増えていくし、リアルイベントに比べて参加費も安いんですよね。基本的に勝率の高いデッキで出るようにしているので、勝って参加費が3倍くらいになって戻ってきたりするのにハマっちゃいました」

 矢嶋選手はデッキ構築も調整も、オンラインで1人で行なう。

矢嶋「ただ自分のデッキを友達に勧めて、回してもらった感想を聞くことはあります。友達と一緒にわいわいやることもありますよ。今はマジックを離れてますが、浦瀬(亮佑)君とは同い年で、マジックを始めた時期もちょうど同じくらいで、けっこう一緒にマジックをやっていた時期があります。最近だと、去年秋に開催されたMTGアリーナの『ジャパンオープン2023』で、一緒に青単ジンを持ち込みました」

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今大会について

 今回使用した赤単デッキは、1か月ほど前からずっと使ってきたものだ。

矢嶋「1か月前に僕が組んだデッキを、加茂(里樹)さんがプロツアー『サンダー・ジャンクション』で使用されて、けっこう好成績だったんですよね。デッキリストをシェアしたとかでは全然ないです、本人と話したこともないので(笑)。加茂さんが私のMOのリストを見て使ったと聞いています。ただ、私が最初まったく取っていなかった《レジスタンスの火、コス》を、加茂さんがプロツアーではサイドに3枚入れていて、『あっ、いいじゃん!』と(笑)。私も今回、サイドに3枚入れたらめちゃくちゃ強くて、さすがだなと思いました」

矢嶋「プロツアー後ってみんなのデッキも強くなるし、赤単でこのまま行けるのかな? と疑問に思っていたんですが、毎週末MOでの大会結果を見たり自分でも出場したりしながら、『なんだかまだ勝てるな』、翌週も同じリストで出て『まだ勝てるな』みたいな感じでした。先週もStandard Challengeで準優勝したので、『勝てるならこれでいいか』ということで持ってきました」

矢嶋「メタゲーム的にもまあまあの立ち位置ですね。最近のスタンダードで個人的に一番大きい変化だと思うのは、版図が減って青白(アゾリウス)コントロールに入れ替わったことです。赤単的には版図のほうがずっときついんで、青白コンは楽というほどではないですが、だいぶやりやすくなりました」

 メタゲームに合わせてリストを変えるということはなかったものの、サイドプランだけはいろいろと考えていた。

矢嶋「青白コンとエスパー(ミッドレンジ)は、《ティシャーナの潮縛り》をメインサイド合わせて3・4枚取るようになってきたので、こちらの《ウラブラスクの溶鉱炉》が止まってしまう。今まで青白コンやエスパー相手に《火遊び》とかは残してなかったんですが、《ティシャーナの潮縛り》が4枚来るなら《火遊び》も絶対残したほうがいいな、といったことは考えました」

矢嶋「昨日は青白コンに3回当たりましたが、プラン通りに勝ててよかったです。あとの相手はエスパー、ゴルガリ(ミッドレンジ)、赤単、グルール・アグロ、青黒(ディミーア)コントロールで、赤単に1敗したのが一番印象に残っていますね。相手のサイドに《地質鑑定士》が4枚取られていて、私はその枠が《レジスタンスの火、コス》と《勝負服纏い、チャンドラ》なんですけど、ミラーだったら圧倒的に《地質鑑定士》のほうが殴れるしテンポもいいので……。メインは取ったものの、サイド後ぐちゃぐちゃにされました(笑)。いいリストだなと思いました」

 今回の勝因を挙げるならやはり、矢嶋選手が赤単を使い込んでいることだろう。マジックを始めたのも赤単からで、最初の4年くらいは赤単しか使っていなかったほどだ。

矢嶋「なんで赤単がこの1か月こんなに勝ててるか、いまいちよくわかってないですけど、このデッキをコピーしている人も勝ったり勝たなかったりなので、たぶん俺がうまいんだろうなと(笑)。やってることはクリーチャー出して除去して殴ってるだけなんだけど、長いことやってるうちにそこが最適化されてるんでしょうかね? わかんないですけど」

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 ジャパンスタンダードカップは変則的なスケジュールで、土曜日に準々決勝までを終えた後、日曜日の昼から準決勝・決勝を行なった。ひと晩と半日ほど空いたわけだが、何をして過ごしていたのだろうか?

矢嶋「昨日の夜は、先に友達が焼き肉屋に行ってたので、そこに1時間遅れて駆けつけて、肉食って寝て今朝起きて……あ、準々決勝のアーカイブは見ましたね。そもそもブラケットも知らなかったので(笑)、対戦相手のデッキの動きとかは一応見て来ました。決勝はあまり有利じゃなさそうだったので多少緊張しましたけど、それ以外は『まあ勝っても賞金しか変わらないし』と、気楽な気持ちで対戦できました。賞金の使い道ですか? ずっとオンラインでやっているからリアルカードを全然持ってないんですよね。次のチャンピオンズカップファイナルが静岡でパイオニアなので、デッキを調達しないと。旅費もかかりますし、基本マジックに使うことになります」

 今後、オンラインでは相変わらずMTGアリーナとMOの予選に出続けるが、今回優勝したことにより次回のチャンピオンズカップファイナルの権利を得たので、そこでプロツアーを目指すという。オンラインを飛び出してリアルでの大きな目標が1つ生まれ、次へとつながっていく。

 次回のチャンピオンズカップファイナルでも、矢嶋選手とそのデッキが注目を大いに集めることは間違いない。

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MVPカードは《ウラブラスクの溶鉱炉》。
「強すぎるし、いつ引いてもいいし、割られないし。殴られないプレインズウォーカーみたいなものですね」

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