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プレイヤーズコンベンション愛知2024
決勝:平山 怜(東京) vs. 原根 健太(東京) ~物語の人~
手垢のついた表現ではあるが、チャンピオンカップファイナルのプレイオフを見ていると常々「人の数だけ物語がある」という言葉を思い出す。
プロツアーの権利を獲得できれば十分という者もいれば、さらに上位のトーナメントである世界選手権の出場権利を欲する者、逆に国外の大会参加にはさして興味がないために権利の獲得にはまったくこだわらない者、権利よりも優勝というタイトルにこだわる者、あるいはトップ8入賞の時点で望外の結果とばかりに満足している者など、人によってプレイオフへのモチベーションもまちまちだ。
どのプレイヤーが偉いとか正しいとかそういった話ではなく、単にそれぞれのマジックとの付き合い方があり、求めるものがあるということだ。たとえ同じ大会に出ていても、参加者は銘銘に異なる体験をしてきた異なる人間なのだから、当たり前ではあるが。
この日チャンピオンズカップファイナルの決勝戦で相対した平山 怜と原根 健太の2人もまた、それぞれの思いを胸に最後の一戦へと臨む。
平山 怜
平山といえば、このチャンピオンズカップファイナルという新たなトーナメントの枠組みが始動した記念すべき第1回目の大会であるチャンピオンズカップファイナル サイクル1の優勝者だ。つまり、この常滑の地で決勝のフィーチャーマッチテーブルに着くのもこれが2回目である。この日に向けて、先日のプロツアー『サンダー・ジャンクション』で優勝を果たした井川 良彦や、八十岡 翔太、高橋 優太、熊谷 陸など錚々たるメンバーに混じってチームでの調整を行ってきたと語る。
使用デッキは今大会の本命の一つであるアゾリウス・コントロール。平山自身はアゾリウス・コントロールを「(普段は)絶対に使わない」と断言しつつ、《三歩先》という強烈な確定打ち消し呪文が加わったことで強烈な強さを手に入れたこのアゾリウス・コントロールの強さを認め、八十岡らの助言を受けつつデッキを調整して持ち込んだ。
原根 健太
相対する原根もまた、この常滑の地でプレイヤーズツアー・名古屋2020でトロフィーを掴んだ実績を持つ。精力的に配信活動なども行っており、言わずとしれた有名プレイヤーの一人だ。制度変更によりプロツアー出場までの道のりがより険しくなった現在でもコンスタントにプロツアーへ出場しており、それだけでも原根のプレイヤーとしての実力は裏付けられていると言える。
だが、原根本人は現在の自分の出している結果に納得行っていないようだった。
PT-ONE 権利なし
— kenta harane/J-SPEED (@jspd_) April 28, 2024
PT-MOM 10-6
PT-LOTR 9-4-2
PT-MKM 9-7
PT-OTJ 9-7
パッとしない。こなしてるだけ感が否めない。絶対的な練習量不足も感じる。次のPTも発売から1週間後の開催。
今の制度はいつシーンから弾き出されてもおかしくない。
出れてる内にもう1度くらい全力で挑んでみたい気もする。
いずれのプロツアーの戦績もしっかりと2日目に進出しており勝ち越しに終わっているが(それも十分凄いことではあるが)、トップ8入賞などの目立った結果は残せていない。精算マッチ・ポイントの累積によって次回プロツアーの権利も持っているのだが、他ならぬ原根自身がこの成績に「パッとしない。こなしてるだけ感が否めない。」という言葉を残している。誰よりも真摯に競技に向き合ってきた原根にとって、己を再起させるための起爆剤は己の残した結果のみなのだろう。
そんな原根がこのチャンピオンズカップファイナルの決勝まで駒を進めたのは、宿命めいたものを感じる。この大会に持ち込んだのはプロツアー『サンダー・ジャンクション』でも用いたエスパー・ミッドレンジ。プロツアーで用いたときからさらに洗練されたリストで己の存在証明に挑む。
平山と原根。ハードなトーナメントを切り抜けてきた2人は互いに見知った仲だったこともあって対戦前には頬を緩める幕もあったが、決して勝負は譲らない。デッキリストを交換し、互いのリストへの所感を交換したあと、デッキをシャッフルし固く握手を交わす。
平山 怜(東京) vs. 原根 健太(東京)
競技プレイヤーたちの物語。それを最高の結末で終えるために、2人は決勝へと臨む。彼らを突き動かすのは、眼前に輝く優勝の栄光のみ。
ゲーム1
淡々とタップイン土地を処理する第1ターンを終え、第2ターンのドローを確認した平山の顔がひきつる。引いたのは本来メインデッキには入っていないはずの《未認可霊柩車》……!?
なんとここでサイドボードの戻し忘れが発覚。これには原根も「決勝でこんなの(戻し忘れ)見たことない(笑)」と爆笑。平山もやらかした、と頭を抱え、ジャッジたちが慌ただしく協議する。写真ではヘッドジャッジが裁定を確認しているのが見て取れるだろう。
結果としてゲームロスなどの重いペナルティはなく、平山に「警告」が与えられた上で戻し忘れたカード(《未認可霊柩車》)と本来メインデッキに入っているはずだったカード(《一時的封鎖》)の場所を入れ替えてゲームを続行することになる。ただし、この処理の際に原根には《一時的封鎖》が手札にあることは伝える必要があったため、原根は「じゃあメモっとこ」とライフメモに大きく「フウサ」と書き込み周囲の笑いを誘った。
これが勝負の綾となるか──トラブルの処理を終え、再び時は平山の第2ターンに戻る。《推理》でカードを引き、返す原根は《敬虔な新米、デニック》をプレイし、続くターンに《策謀の予見者、ラフィーン》。
だがこれは平山が《三歩先》で打ち消し、続くターンに手掛かり・トークンを生け贄に捧げてドローを得る。原根のデッキには《フェアリーの黒幕》があるため、これをプレイされないタイミングを見計らってしっかりと手札を整えていく。
原根は《大洞窟のコウモリ》で平山の《記憶の氾濫》2枚、《ティシャーナの潮縛り》、《失せろ》、《完成化した精神、ジェイス》、そして《一時的封鎖》という手札を見て、《一時的封鎖》を追放することを選択する。盤面のクリーチャーを一掃されてしまう強烈な除去は手札に残しておくわけにはいかない。原根はさらに《フェアリーの黒幕》を盤面に追加して平山に迫る。
返す平山が原根のフルタップの隙に《記憶の氾濫》で手札を得ると、原根もまた平山の土地がタップされている間に《策謀の予見者、ラフィーン》をおかわり。さらに《大洞窟のコウモリ》と《敬虔な新米、デニック》、《フェアリーの黒幕》をレッドゾーンに送り込むと、謀議によって手札を整えつつクロックを補強する。
7点の猛打を浴びた平山。ここで引きたいのは《太陽降下》だが、ドローは奮わず。そもそも原根の土地は2枚アンタップ状態で《喝破》を構えている恐れがあるので、引いたとしても安易にプレイはできない状況だったが、今はまだ原根の攻撃を甘んじて受けるしか手はないようだ。
ドローゴーした平山に対し、原根は少考しつつ攻撃を行う。平山の手札には《失せろ》と《ティシャーナの潮縛り》があることが分かっているので、原根もこのターンにゲームセットといかないことは理解している。《策謀の予見者、ラフィーン》の謀議の誘発は《ティシャーナの潮縛り》が打ち消し、全ての能力を失った《策謀の予見者、ラフィーン》は《ティシャーナの潮縛り》によってブロックされる。
さらに平山は《失せろ》で《大洞窟のコウモリ》を除去しにかかる。これが通ったことで《一時的封鎖》が平山の手札に戻り、次のターンには原根の《敬虔な新米、デニック》と《敬虔な新米、デニック》を追放できるようになった。平山の残りライフは3。危険域に達しながらも、文字通り首の皮一枚をつなげた形だ。
ならばと原根は《失せろ》によって得た地図・トークンを使って第2メインステップに探検。《一時的封鎖》後も盤面に残ることが分かっている《策謀の予見者、ラフィーン》のサイズを上げ、次ターン以降も攻撃を継続する構えを見せる。
続く平山は手札に戻ってきた《一時的封鎖》で原根の《敬虔な新米、デニック》と《フェアリーの黒幕》を除去。さらにターン終了時に原根がプレイした《放浪皇》は《三歩先》で打ち消し、少しずつ敗北を遠ざけてゆく。
ならばと原根は《不穏な投錨地》を起動し、《策謀の予見者、ラフィーン》とともに攻撃。《策謀の予見者、ラフィーン》は《ティシャーナの潮縛り》によってチャンプブロックされてしまうが、飛行クロックが通ったことで平山の残りライフを1まで減らすことに成功する。いよいよ後がない平山に、原根はさらに探検でライブラリートップを検め、次ターンのドローを《忠義の徳目》に固定する。
予断を許さない状況の続く平山だが、引き込んだ《放浪皇》で原根の《策謀の予見者、ラフィーン》を追放し2点のライフを得たことで少しばかりの猶予を得た。先ほどの原根の探検は《策謀の予見者、ラフィーン》のサイズを上げていたため、《不穏な投錨地》による攻撃では平山のライフを削り切ることができない。
ギリギリの綱渡りを渡りきられてしまった原根は《忠義の徳目》を出来事としてプレイ、さらに《婚礼の発表》を並べて更地になってしまった盤面にトークンを生成していく。
返す平山はドローゴー。再びターンが回ってきた原根は3枚目となる《策謀の予見者、ラフィーン》をプレイするも、これは《三歩先》で打ち消される。ならばと原根は騎士・トークンで攻撃を仕掛けるが、平山は2枚目の《放浪皇》! +1能力で平山は自身の侍・トークンのサイズを上げ、騎士・トークンをブロック。原根の騎士・トークンはあえなく討ち取られてしまう。
ライフ3で強烈に粘る平山。返すターンには《放浪皇》で2体目のブロッカーを用意し、原根が痺れていると《記憶の氾濫》。さらに手札を得て、巻き返しを図る。原根のクリーチャーは1/1の人間・トークンが2体のみ、《不穏な投錨地》は2枚置いているが平山の戦場にもしっかりと《廃墟の地》があり、残り3点があまりにも遠い状況だ。
平山はマナに余裕のある間にこの原根の《不穏な投錨地》を破壊。原根はライブラリーを探すが、そこに基本土地はない──原根のデッキの基本土地は《平地》と《島》が1枚ずつあるのみで、しかもこの内《島》はすでにプレイしており、《平地》は序盤の《策謀の予見者、ラフィーン》の謀議で捨ててしまっている。
平山「白をこの世から消すことができる……?」
《廃墟の地》が実質《不毛の大地》と化したことに気づいた平山。原根の土地をよく見て、白マナの供給源が2枚の《不穏な投錨地》と1枚の《秘密の中庭》しかないことを受け、3枚目の《廃墟の地》をプレイしてこれらを連続起動。もちろん先ほどと同様に原根は土地を探すことができず、平山の目論見通り原根は白マナを縛られてしまう。
平山が《放浪皇》でブロッカーを増やす横に《完成化した精神、ジェイス》までをもプレイされ、自身は白マナが使えなくなって完全に身動きが取れなくなってしまった原根。ダメ元で《大洞窟のコウモリ》をプレイするが、平山の7枚の手札が原根の勝ち筋を完全に潰しきれるものであることを認めると、決勝のマッチの先勝を平山へと譲ることとなった。
平山 1-0 原根
ゲーム2
先攻の原根が2ターン目に《忠義の徳目》を出来事として唱え、続くターンに《策謀の予見者、ラフィーン》を騎士・トークンの横に添えてクロックを刻み始める。
だが、この謀議で原根が《島》を捨てたことを平山は見逃さない。返す平山は3ターン目のメインフェイズにじっくりと時間を使って《廃墟の地》を置くと、原根の《闇滑りの岸》を破壊する。これで原根の土地は《秘密の中庭》と《皇国の地、永岩城》、《平地》の3枚になり、青マナ基盤がなくなってしまう。
だが、今度ばかりは原根も第1ゲームと同じ轍は踏まない。まずは騎士・トークンと《策謀の予見者、ラフィーン》で攻撃を行い、謀議で再び手札を整えると《難破船の湿地》をセット。しっかりと青マナも用意する原根に、思わず平山も「あったか……」と漏らす。
続いて原根は《大洞窟のコウモリ》をプレイし、平山の手札から《一時的封鎖》を追放。これで平山の手札には《記憶の氾濫》2枚と土地が残されるのみで、盤面に触ることができるカードはなくなってしまう。
手札に除去がないことを知られてしまった平山は返すターンに《記憶の氾濫》をプレイし、原根のクロックに対処する手段を探る。フルタップでターン終了を宣言すると、原根はここにさらに《フェアリーの黒幕》をプレイし、着実にクリーチャーを並べ、続くターンに一斉攻撃。謀議は4、大量のカードをドローし、ディスカードを悩む原根に対して平山は何かをぶつぶつと呟く。
原根「ん?」
何かルールミスでもあったかと原根が平山に確認すると、平山は「いや、土地土地土地(を引け)……って祈ってました」と笑う。
原根「あ~……くだらねえ(笑)」
平山「ひどい!」
国内最高峰の舞台で、ひりつくような攻防を繰り広げる最中にも2人はあくまでフランクに対戦を続ける。腕を競い合うライバルである以前に、同じ東京の競技プレイヤーとして共通の友人も多く、時には調整や練習をともにする仲間だ。1ゲーム目で平山がサイドボードの戻し忘れをやらかしたことも場の緊張感を和らげ、対戦テーブルの空気はさながらカードショップで行われるフリープレイのような朗らかさだった。
しかし、勝負の内容はシビアだ。原根は平山の祈りを打ち砕くように謀議4で呪文を3枚捨て、クロックを9点まで膨らませる。これにより平山のライフは一気に6まで減ってしまい、残りのターンはあと1ターンのみとなる。
平山は5枚の土地をアンタップすると、《失せろ》で原根の《大洞窟のコウモリ》を除去。これによって手札に戻った《一時的封鎖》を唱えるが、謀議によって大量のルーティングを行っていた原根の手札の質は平山の目論見を悠に打ち砕く。
原根が唱えたるは《喝破》。平山の《一時的封鎖》を打ち消し、原根がゲームカウントを取り戻した。
平山 1-1 原根
ゲーム3
原根が第2ターンに《大洞窟のコウモリ》から仕掛ける。このマッチで何度も平山の手札から脅威を取り除いてきたカードだが、明かされた平山の手札にあったのは《邪悪を打ち砕く》と《冥途灯りの行進》と4枚の土地。
原根「難しいな……」
性質のまったく異なる除去2枚。《冥途灯りの行進》はマナこそかかるが特に条件のない万能除去であり、《邪悪を打ち砕く》は《策謀の予見者、ラフィーン》や《婚礼の発表》など原根のデッキのキーカードに対して効果的な除去だ。原根はじっくりと考え、《邪悪を打ち砕く》を追放することを選ぶ。
ならばと平山は返すターンに《冥途灯りの行進》で原根の《大洞窟のコウモリ》を除去。無論平山のプレイは原根にとっても想定の範囲内であり、次に原根がプレイした《腐食の荒馬》は無事に戦場へと降り立つ。
《腐食の荒馬》が攻撃し始めてしまえば原根にアドバンテージをもたらし、平山はじわじわと劣勢に追いやられることになる。そうはさせまいと、平山も《一時的封鎖》で《腐食の荒馬》を追放する。
だが、原根は《婚礼の発表》をプレイして平山の手札の《邪悪を打ち砕く》を引き出す。攻める原根に守る平山といった構図だが、次々に対処必須のカードを繰り出す原根を前に平山は楽ができるターンがなく、除去を"使わされている"格好だ。さらに原根は《未認可霊柩車》をプレイしつつ《フェアリーの黒幕》を追加しつつプレイして平山を徐々に土俵際へ追い詰めていく。
原根が《策謀の予見者、ラフィーン》をプレイして《フェアリーの黒幕》で攻撃を仕掛けると、平山は《放浪皇》で《フェアリーの黒幕》を除去。謀議を不発とさせ、反撃の糸口を探る。そんな平山に対して原根は2枚目の《腐食の荒馬》をプレイし、さらに続くターンに《大洞窟のコウモリ》!
絶え間なく続く原根の攻撃に備えるべく手札を手繰っていた平山は、この《大洞窟のコウモリ》の登場によりゲームプランの変更を余儀なくされる。まずは《放浪皇》をプレイ。さらに《策謀の予見者、ラフィーン》に《失せろ》をプレイする──というより、プレイ"させられる"。
原根は完全にテーブルを支配していた。その手札には《喝破》があり、平山の《失せろ》を打ち消すこともできたのだが、《策謀の予見者、ラフィーン》を守るよりも以降の平山のビッグアクション、特に《太陽降下》などに備えた方がよいと判断し、これを通すことを選ぶ。その後《大洞窟のコウモリ》が着地して平山の最後の手札である《喝破》を追放すると、《太陽降下》がないことが分かった原根は2枚目の《策謀の予見者、ラフィーン》。これには平山の表情が歪む。
原根は地図・トークンを生け贄に捧げて《大洞窟のコウモリ》で探検。ライブラリートップにあった《喝破》をそのままにして、続いて《大洞窟のコウモリ》で攻撃を仕掛ける。もちろん《策謀の予見者、ラフィーン》の謀議が誘発し、ライブラリートップにあった《喝破》をそのまま墓地に置いて《大洞窟のコウモリ》は3/3までサイズアップする。平山はこれを2枚の《不穏な投錨地》でブロックするが、原根はこのうち1枚を《保安官を撃て》で除去し、一方的に打ち取ると、第2メインでも探検を行い今度は土地を手札に加える。
平山はターンが返ってくると《放浪皇》の-2能力で《大洞窟のコウモリ》を除去してターンを終える。
だが、原根は攻撃の手を緩めない。《腐食の荒馬》で《未認可霊柩車》に搭乗し、7/7の《未認可霊柩車》と《策謀の予見者、ラフィーン》が攻撃。平山のライフを13まで削り、《放浪皇》が墓地へと落ちる。
序盤から一対一交換を強制され続け、摩耗していた平山は待望のドロー呪文である《推理》を引く。さっそくこれをプレイするのだが、原根はスタックで《フェアリーの黒幕》をプレイ。
「何でも持っているな」とばかりに平山も苦々しい笑みを浮かべつつ、構わず手がかりを使ってさらにドローを進め、引き込んだ《失せろ》で《策謀の予見者、ラフィーン》を除去。少しずつ原根の戦力を削ぐ平山だったが、原根は平山のターン終了時に《ティシャーナの潮縛り》を(ただの3/2瞬速として)プレイし、クリーチャーを並べていく。
ターンを受けた原根は現在の優位を譲るまいと探検を行う。これによりライブラリートップに《忠義の徳目》を見出すと、《ティシャーナの潮縛り》で《腐食の荒馬》に騎乗。そして《フェアリーの黒幕》で《未認可霊柩車》に搭乗し、7/7の《未認可霊柩車》と騎乗された《腐食の荒馬》が平山に迫る。
まずは《腐食の荒馬》の誘発型能力が平山のライフを5点奪い、残りライフが8となってしまった平山は《腐食の荒馬》と《未認可霊柩車》をそれぞれ侍・トークンでブロックする。
さらに原根は第2メインステップに《忠義の徳目》をプレイ。盤面のクリーチャーがアンタップ&+1/+1カウンターが乗り、いよいよ平山は後がなくなってしまう。
縋るようにドローを確認し、ターンを終了する平山。原根は《大洞窟のコウモリ》でそんな平山の手札を覗き見、そこに《喝破》2枚のみが残されていることを確認すると一斉攻撃の号令をかける。平山はやむなしに《不穏な投錨地》でチャンプブロックをし、1ターンのみ生きながらえる。
最後の平山のターン。7枚の土地を擁する平山は、もはやこの盤面を打開するには《廃墟の地》で原根の《不穏な投錨地》を破壊し、残されたマナで《太陽降下》を撃つしかない(その場合でも《未認可霊柩車》が残されるので返すターンに原根がパワー2以上あるクリーチャーを引かないことが条件となる)。だが──トップデッキは微笑まなかった。手掛かり・トークンで最後のドローだけ確認し、平山が原根に右手を差し出した。
平山 1-2 原根
かくして平山と原根の長い戦いが終わった。除去や打ち消しの嵐を跳ね除けて絶え間ない攻撃を続け、アゾリウス・コントロール駆る平山に楽をさせなかった原根が、その帰結として勝利をもぎ取ったのだ。
試合内容はまさしく国内最高峰の戦いにふさわしいハイレベルな駆け引きの連続だったが、原根と平山の2人は終始本当に楽しそうにプレイしていた姿が印象的だった。気の抜けるようなサイドボードの戻し忘れというミスも、この日の思い出としてこの先語り草になっていくことだろう。
マジックに限った話ではないが、全ての人には銘々の物語がある。そしてそれを紡ぐのは、他ならぬその物語の主人公である己自身だ。
競技である以上、勝利することは重要な課題であり、同時に己の存在証明の一つだ。店舗予選にエリア予選、プレミアム予選、そしてチャンピオンズカップファイナル。その先にあるプロツアーや世界選手権。その一戦一戦の全てが、それぞれのプレイヤーの物語としてマジックの歴史に連綿と組み込まれていく。
いつでも高いモチベーションを保ち、その上で勝利し続けることができたならそれは間違いなく理想的なのだろう。しかし、過去にも未来にも生きることができない我々には将来の結果はわからないし、時にはパッとしない日も、こなすだけのようになってしまう日もあるかもしれない。ただ目の前の勝負に後悔のないよう取り組み、楽しむことしかできないのだ。そうして歩みを続けたその先に未来があり、足跡は物語として記憶に残る。
一つ未来の出来事として分かっていることは、今日の勝利で原根は次のプロツアー権利と世界選手権の出場権利も獲得しているということだ。もちろん原根の対戦相手だった平山も同様に。何らかのやむにやまれぬ事情でもない限り、きっと彼らはプロツアーや世界選手権でもプレイすることだろう。
つまり、原根たちの物語はまだこれからも続いてゆく。
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