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プレイヤーズコンベンション愛知2023
デッキテク:薄井 春樹の「アブザン探検コンボ」 〜鍵を握るのは50点砲!?〜
『イクサラン:失われし洞窟』リリース以降、パイオニア環境に鳴り物入りで登場した「発見コンボ」。特に《地質鑑定士》を用いた形のリストはわずか3ターンキルが可能という驚異的なキル速度が魅力で、今大会のメタゲームブレイクダウンでも使用率2位につけていた。
しかし、実は『イクサラン:失われし洞窟』で追加された3ターンキルコンボは「発見コンボ」だけではない。最速でわずか3ターン目に無限ループを発生させ、パワー20の吸血鬼で更地となった盤面を疾駆するそのデッキの名前は「アブザン探検コンボ」だ。
そのキーパーツが《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》と《野茂み歩き》。
この2枚が戦場にあるとき、「探検」かライフ回復のいずれかが誘発することで《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》か《野茂み歩き》のいずれかの能力が誘発し、片方がもう片方の能力を誘発させる。すると再びライフが回復し、「探検」が行われ、ライフが回復し、「探検」が行われ、ライフが回復し、「探検」が行われ、ライフが回復し、「探検」が行われ……この工程を繰り返すことで《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》のパワーがどんどんと大きくなり、やがてはパワーが20になって全てのクリーチャーを吹き飛ばし、無人の荒野となった戦場で《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》が攻撃を行うことでゲームセットとなる。
必要枚数わずか2枚、合計4マナ(別途ライフ回復か探検を誘発させるカードが必要なので実際には2.5枚と累計5マナ程度必要だが)のコンボパーツで成立する、こちらもこちらで「発見コンボ」に引けを取らないとんでもないコンボだ。フォーマットこそ異なっているが、これには《欠片の双子》も草葉の陰で泣いていることだろう……。
さて、チャンピオンズカップファイナル初日の第5回戦が終了した時点で全勝者のリストを眺めていると、そんな「アブザン探検コンボ」を用いて見事に全勝を果たしているプレイヤーがいた。それが薄井 春樹である。
果たしてこの「アブザン・探検コンボ」は"本物"なのか? さっそく薄井に話を聞いた。
「アブザン探検コンボ」とは?
──「さっそくですが、今回ご使用されているアブザン探検コンボとはどのようなデッキなのかお話を伺いたいです」
薄井「これは『イクサラン:失われし洞窟』で登場した《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》によって成立したコンボデッキで、ご存知の通り《野茂み歩き》と一緒に盤面に揃うことで無限ループを発生させます。その過程で60点近くライフを回復しつつ、パワーが20になった《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》で攻撃して勝利することを目指します」
──「まだ誕生してから日が浅いデッキですが、どのようにリストを構築されたのでしょうか?」
薄井「『イクサラン:失われし洞窟』のカードリストが公開されて、探検コンボが話題になった時点で試してみようと考えていました。そこで、まず最初にMTGアリーナのエクスプローラー(※)で大まかにデッキの原型を完成させました。だいたいのリストが完成したら今度はMagic Onlineでパイオニアのイベントに参加しながら微調整して構築しましたね」
(※エクスプローラー:MTGアリーナで実装されているカードのうち、パイオニアフォーマットで使用可能なカードを使用できるプチ・パイオニア的なフォーマット)
──「このデッキの強みはなんでしょうか?」
薄井「やはりコンボの爆発力ですね。最速3ターンで決まる無限コンボはそれだけでそのデッキを選択するに足る理由になります。今は減ってしまいましたが、パイオニアで長らく一線級だった緑単信心などもコンボの成立速度を強みにしたデッキでしたよね。このデッキは緑単信心よりもドローの要求値がそこまで高くなく、コンボの安定感が高いのも魅力です」
──「なるほど。しかしアブザン探検コンボは発見コンボと比べるとまだまだ研究が進んでいないというか、人によってリストに差が多いデッキでもありますよね。特に薄井さんのデッキには多くのシークレットテクが見られます」
薄井「おっしゃるとおり、今はまだ定番リストと呼べるものが完成していないデッキタイプなので、シークレットテクと呼べるほどのものかは分かりませんが……(笑)たしかに他の人はあまり採用していないカードも多いかもしれません」
一際目を引く《霊気貯蔵器》
──「特に薄井さんのリストで目を引くのがこのメインデッキに1枚だけ採用された《霊気貯蔵器》……個人的には大好きなカードではあるんですけど、オシャレ枠ですかね?」
薄井「いえ、ガチです。このデッキ、平均的な回り方をするとコンボが成立しなくても1ゲームで80点くらいライフ回復するんですよ。今日は最大で110点くらい回復したかな? ただ、《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》+《野茂み歩き》はしょせんクリーチャーコンボなので妨害されることも多くて、回復はするけどフィニッシュできない展開も多いです。そんなときでも『探検』だけは何度も誘発するので、全力で《霊気貯蔵器》を探して50点砲を目指すことも少なくないです」
──「おもしろいですね。実際に決まることは多かったですか?」
薄井「正直《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》のコンボより《霊気貯蔵器》で勝ったゲームの方が多いです。『探検』で《霊気貯蔵器》がめくれたのを見て対戦相手が投了することもありますね。個人的には絶対必須のカードだと思ってます。『探検』で探すこともできますしね」
──「たしかに発見コンボ対策でどのデッキもクリーチャーに触れるカードを採用していますし、《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》で勝ちにいけないときのサブプランとして《霊気貯蔵器》を使用するアプローチはよさそうですね。また、他のアブザン探検コンボでは《魂浸し、ダイナ》が採用されている形が一般的だと思います。これが不採用になっているのはなぜでしょうか?」
薄井「《魂浸し、ダイナ》も結局《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》だけではフィニッシャー不足だから採用されているカードなんですけど、単体で弱いんですよね。僕はその枠を《霊気貯蔵器》に差し替えて、余った枠を《大洞窟のコウモリ》や《月の踊り手、トレラッサーラ》など《集合した中隊》でめくれてもギリギリ許容できる枠に差し替えています。このあたりも別に強いカードではないのですが、《大洞窟のコウモリ》はコンボ前の前方確認や除去の的として活躍してくれることがありました」
──「ありがとうございます。他には《立身 // 出世》も珍しいですね。これは採用理由も比較的分かりやすいですが……」
薄井「デッキ内のクリーチャーがほとんど全て2マナ以下のクリーチャーなので基本的には《立身》のモードで使用しますが、一応《金のガチョウ》か《マナの合流点》から赤マナも出るので『余波』まで使って《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》で奇襲することもできます」
各デッキとのマッチアップ
──「しかし、カード2枚(厳密にはクリーチャーが戦場に出たときライフを回復するギミックも必要なので3枚)を盤面にそろえてやっと3ターンキルというのはやや悠長な気もしますね」
薄井「ええと……2マナ以下のカードが2枚揃えば成立する、最速3ターン目に決まる無限コンボってマジックの歴史上悠長とは言わない気がするんですけど……まぁ、おっしゃりたいことは分かります。今は最速3ターン目に決まる1枚コンボの発見コンボ(《地質鑑定士》型)もありますからね。たしかに彼らと比べると速度勝負になる上、コンボ成立の安定感の面でメインデッキではやや不利と言わざるを得ません」
──「失礼しました。たしかに発見コンボが特殊なだけでアブザン探検コンボも十分ヤバいコンボでしたね……」
薄井「しかし、サイドボード後には《ドラニスの判事》や《弁論の幻霊》も入りますし、《失せろ》のような除去を構えるだけでコンボに対策できて、こちら側もコンボで圧をかけられるので五分か微有利くらいの相性に改善されると思います。相手のコンボは有限ダメージなので、相手のコンボ成立前にこちらが十分にライフを回復していればコンボ成立後もライフが残っていることもありますし」
──「他には、たとえばラクドス・ミッドレンジなどとの相性はいかがですか?」
薄井「個人的には悪くはないと思ってます。ラクドス側は非常にフェアなデッキなので、ラクドス側のプレイするカードがあまり脅威にならないんですよね。たとえば普通のデッキであれば《黙示録、シェオルドレッド》が数ターン生き残っていたらほとんどゲームにならなくなっちゃうと思うんですけど、こちらはそれ以上の速度でライフを回復しますし、除去で妨害されながらでもゆったりゲームしているうちに最終的に《霊気貯蔵器》が間に合う展開になりやすいです」
──「ボロス召集などはいかがです?」
薄井「五分くらいあるとは思っていますが、先手後手の差が出やすいマッチアップなのと、結局はボロス側の回り方次第でどっちにも転ぶ感じですね。ボロス側も同じように思っているのではないでしょうか」
──「アゾリウス・コントロールなどとの相性はいかがでしょうか?」
薄井「これは明確に不利です。除去も打ち消しもキツいので……サイドボード後もほとんど相性は改善されません。ロータス型相手でも不利です」
──「ありがとうございました。このあともがんばってください!」
「発見コンボ」の影に隠れがちだが、今回ご紹介した「アブザン探検コンボ」もまた環境最速の3ターンキルを実現できるデッキであることに違いはない。
しかも、こちらのデッキは「発見コンボ」と比べると良くも悪くもまだまだ発展途上のデッキであるため、今回デッキテクインタビューを行った薄井のように《霊気貯蔵器》のようなシークレットテクが隠されている可能性がある。実際、筆者も話を聞くまでは半信半疑だったが、薄井の話を聞けば聞くほど《霊気貯蔵器》ほどこのデッキにフィットしたフィニッシャーはないのではないかと思わされた。おもしろカードを構築に加えて一線級の舞台で活躍させる、そのカード選択の慧眼は見事と言う他ない。
きっとこの薄井のデッキでさえ未だこのデッキの最終形ではないのだろう。ぜひみなさんも「アブザン探検コンボ」でパイオニアのメタゲームを探検してみてはいかがだろうか?
4 《寺院の庭》 4 《剃刀境の茂み》 3 《陽光昇りの小道》 3 《マナの合流点》 3 《花盛りの湿地》 2 《草むした墓》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《皇国の地、永岩城》 -土地(22)- 4 《月皇の古参兵》 4 《野茂み歩き》 4 《裕福な亭主》 4 《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》 4 《金のガチョウ》 3 《陥没穴の偵察》 2 《救出専門家》 1 《大洞窟のコウモリ》 1 《月の踊り手、トレラッサーラ》 -クリーチャー(27)- |
1 《霊気貯蔵器》 2 《立身 // 出世》 4 《集合した中隊》 4 《召喚の調べ》 -呪文(11)- |
3 《失せろ》 3 《形成師の聖域》 3 《悔恨する僧侶》 2 《大洞窟のコウモリ》 1 《機能不全ダニ》 1 《ドラニスの判事》 1 《救出専門家》 1 《弁論の幻霊》 -サイドボード(15)- |
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