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神河チャンピオンシップ

観戦記事

神河チャンピオンシップ トップ8ラウンド ハイライト

Corbin Hosler

2022年3月13日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 「神河チャンピオンシップ」の開幕時、舞台の上に立っていたのは、新フォーマット「アルケミー」で誰よりも早く優位に立つべく準備を整えて臨んだ229名だった。そして迎えた日曜の朝。「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」への参加権利が懸かった試合に挑むチャンスを保持しているのは、わずか8名のみだ(そのうち6名が異なるデッキを使用している)。

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 この決勝ラウンドは、メタゲームの覇者を決めるためだけのものではない。8名のうち6名は、ここで「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」への席を確保できるのだ。そして無論、「神河チャンピオンシップ」優勝の賞金とトロフィーも懸かっていることは言うまでもない。したがってこの最終日は、前半に世界選手権への参加権利を懸けた試合が行われ、その後今大会の王者決定戦へ向かっていくことになる。

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勝者側ブラケット

 開幕の一番に姿を現したのは、2日間を通して12勝無敗という圧倒的な活躍を見せ、自身初のトップ8入賞を果たしたアメリカのジム・デイヴィス/Jim Davisだ。卓越したプレイとメタゲームへの造詣を見せつけた彼は、この決勝ラウンドの舞台で「倒すべきプレイヤー」として君臨していた。

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ジム・デイヴィス(写真1)、イーライ・カシス/Eli Kassis(写真2)

 

 その難題に最初に挑戦したのは、デイヴィスと同じく強力なアルケミーのデッキを組み上げてきたイーライ・カシス/Eli Kassisだった。「グリクシス・ミッドレンジ」を駆るデイヴィスに対し、カシスは「オルゾフ・ダンジョン」でフォーゴトン・レルムのダンジョンを探索する。

 両者のデッキはともに、アルケミーならではの新規カードや再調整カードを駆使している。このフォーマットのプロ・デビューを際立たせるマッチアップだ。

 デイヴィスが駆け抜けた12回戦はまさに伝説に残るものであったが、カシスとの3ゲームにわたる接戦のすえにその走りはついに止められることになった。《強迫》が1ターン遅れたデイヴィスを尻目に、《勝利した冒険者》2体はカシスに2度目のトップ8で初めてとなる勝利をもたらしたのだった。

 

 これに続くは、ここ数年で最高の物語を紡いでくれた2人の試合だ。「デジタル世代のプレイヤー」と呼べる若き2人が、それぞれ初となるトップ8の舞台で相まみえることになったのだ。アメリカのジョニー・グットマン/Jonny Guttmanは、ここ数シーズンにわたりスタンダードのベスト・デッキの数々を縁の下で支えてきた。テーブルトップでのイベント参加経験はわずか13回という彼だが、オンラインでの活躍ぶりで名を上げている。

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ジョニー・グットマン(写真1)、宮野 雄大(写真2)

 

 対峙するは、日本の岩手県から戦いの舞台に上がっている宮野 雄大だ。グットマンのトップ8入りがオンラインで有名なプレイヤーたちとの協働を積み上げてきた結果なのに対し、宮野のそれは夢の続きと言えよう。彼は1月の予選ウィークエンドに緊張しながら参加し、まさか自分がこんなに早くチャンピオンシップへの参加権利を得るとは思っていなかった。ましてや、トップ8に進出し、さらに歩みを進めるチャンスを得ることになるとは。

 宮野の「エスパー・クレリック」は、独自の攻め手を持つアルケミーらしいデッキの1つだ。《正義の戦乙女》の能力を有効にするためにライフを得る手段を詰め込んでいる宮野のデッキに対し、ガットマンは初日に圧巻のパフォーマンスを見せた「白単アグロ」で戦いに臨む。

 試合は最後の最後までもつれ込んだ。両者はゲームを取り合い、決定打を交わした。そして、宮野の奇跡の走りは止まらなかった。チャンピオンシップへの出場すらこんなに早く実現できると思っていなかった男が、世界選手権という最高の舞台に立つことになったのだ。

 

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ヂィ・イーミン/Zhi, Yimin(写真1)、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Depraz(写真2)

 

 反対側のブラケットでは、ヂィ・イーミン/Zhi, Yiminとジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Deprazが世界選手権の席を懸けた戦いに挑んでいた。これまで3度準優勝の悔しさを味わい、数か月前にも「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の決勝で高橋 優太に敗れたばかりのドゥプラにとって、この試合は特に重要な一戦だった。

 しかし彼の想いは成就しなかった。極めて複雑な盤面を解き明かすことに成功し、決着の第3ゲームを勝ち取ったのは、イーミンだった。

 

 準々決勝、残るは1試合。ハイレベルな舞台を勢いよく登り自身初のトップ8入賞を果たした若きザック・ダン/Zach Dunnと、自身2度目のトップ8入賞となるライバルズ・リーグ選手のブレント・ヴォス/Brent Vosの対戦だ。

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ザック・ダン(写真1)、ブレント・ヴォス(写真2)

 

 ダンはここ数年のデジタル・イベントでマジックの競技者として頭角を現している。その準備の入念さは、想定されるメタゲームにしっかり合わせてきた彼の「マルドゥ・ミッドレンジ」デッキに表れている。

 このデッキ選択は完璧に機能した。ダンは素早く2連勝をもぎとり世界選手権の席を確保すると、このゲームの上達に懸けるエネルギーを言葉にしたのだった。

(編訳注:当該Twitterアカウントが削除済みであるため、ツイートは表示できません。)

 だがダンはまだ満足していなかった。まだ、彼の歩みは終わっていなかった。続くラウンドでイーミンと対峙した彼は、強烈なストレスがかかるゲームを耐え抜いた。

 

 続く宮野とカシスの試合は宮野があっさり2連勝を果たしたため、この劇的な幕切れが一層際立つ。こうして、勝者側ブラケット決勝の舞台にはダンと宮野が立つことになった。ここで勝った方は「神河チャンピオンシップ」王者決定戦へ進出し、夢の実現にぐっと近づく。

 夢への扉を開いたのは、ダンの方だった。除去呪文を豊富に備える彼のデッキは、宮野のデッキの鍵となるクレリックを制御しつつライフを十分保つための助けになった。2ゲームとも彼の計画通りに進んだ。ダンは序盤にいくらかダメージを受けたものの、盤面を築き上げてからは宮野が繰り出す脅威を抑えていったのだ。

 

 こうして宮野は敗者側ブラケットから這い上がるチャンスに懸けることになり、ダンは王者決定戦の席に着いた。その座は彼のマジック人生最大の成果だったが、彼が「宿題」から解放されるにはまだ足りないようだ。

 

敗者側ブラケット

 世界選手権の席6つのうち4つが埋まり、残る2席を懸けた決戦が始まる。まずは多くのファンを持つ2人――ジム・デイヴィスとジョニー・グットマンによる戦いだ。両者とも目覚ましい活躍でトップ8まで上がったが、世界選手権への招待券を手にするのはここで勝った方だけだ。

 「グリクシス・ミッドレンジ」と「白単アグロ」の決戦は第3ゲームまでもつれ込み、いずれもスリリングなゲームの末に劇的なトップデッキが起きた。それは最後の最後で勝者を世界選手権へ送り、破竹の勢いのデイヴィスを舞台から下ろしたのだった。

 

4位になれたなんて、まだ現実とは思えない。延々とテストに付き合ってくれたチームのみんな、応援してくれたみんなありがとう。世界選手権でプレイできるなんてスゴすぎるよ :D

 「神河チャンピオンシップ」のトップ8に入賞したプレイヤーたちはみな、世界選手権予選ポイントのポイントレースでも優位に立っている。だがヴォスとドゥプラによる今大会最後の1席をめぐる戦いの緊張が緩むことは一切なかった。ドゥプラの「ジェスカイ日向」はこの週末を通して対戦相手を驚かせてきた。ヴォスの「オルゾフ・ダンジョン」に特別相性が良いわけではないものの、《マグマ・オパス》のような切り札は備えている。

 試合はかなりの長期戦となり、両者は互いにゲームもリソースも交換しながら制限時間も最後まで使い切る3ゲームを戦った。薄暮の中でひと際輝いたのは、ドゥプラの《セレスタス》だった。それはゆっくりと時間をかけてドゥプラにアドバンテージをもたらし、最後は《マグマ・オパス》がゲームを完全に掌握した。

 

 前回決勝で敗れたあの場所へ。準優勝の悔しさを晴らすべく、ドゥプラが世界選手権の舞台に戻ってくる。

 こうして、世界選手権への参加権利を獲得した6人のプレイヤーが決定したのだった。

さらに6人が#MTGWorldsへ

宮野 雄大(@Z7OhfpEQuTFJxNu)選手、ザック・ダン(@Z23mtg)選手、ヂィ・イーミン(@James_ZhiMTG)選手、イーライ・カシス(@Eli_Kassis)選手、ジョニー・グットマン(@ginky_mtg)選手、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ(@JEDepraz)選手、本当におめでとうございます! 世界選手権でお会いしましょう!

 世界選手権の席をめぐる戦いが幕を閉じた今、残るはザック・ダンが待つ王者決定戦の舞台に上がる者を決める戦いだ。ここからは一度の負けも許されない。念願の世界選手権への参加権利を得たフランスのスーパースター、ドゥプラだが、カシスを相手に2連敗を喫し、今大会はここで敗退となった。一方もう1つの試合では、グットマンが難解な戦闘をうまく乗り切り、3ゲームの死闘を制した。

 

 続けてグットマンはカシスと対峙する。この多彩な決勝ラウンドの中で、1試合ごとに異なるデッキと対戦するのは両者ともこれで4度目。つまりすべて違うデッキとのマッチアップだった。試合はグットマンの「白単アグロ」が、カシスのバリューを重視する「オルゾフ・ダンジョン」に体勢を整える暇を与えず引き離せるか、という展開。「白単」がアグレッシブな戦略であることは間違いないが、しかし《稲妻》のような最後の一発がないため、ひとたび盤面が不利になると勝利を掴むのは極めて難しくなった。

 数多くの戦闘とダンジョン探索が行われた一進一退の3ゲーム。最後はカシスがここぞというタイミングで《食肉鉤虐殺事件》の能力を誘発させ、敗者側ブラケット決勝へと進出したのだった。

 

 再び大きなものが懸かったアルケミーのドラマが生まれた。2ゲームを1つずつ取り合った宮野とカシスの両者は、すべてを決する第3ゲームへ。土地を引きすぎた宮野に対して効果的なタイミングで《冥途灯りの行進》が刺さり、カシスが敗者側ブラケット決勝を制した。

 

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 こうして、最後の舞台は整った。「神河チャンピオンシップ」の王者は果たして、イーライ・カシスとザック・ダンのどちらか。あとは王者決定戦で雌雄を決するのみだ。

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