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第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

戦略記事

「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten

2025年12月5日

 

 デッキとデータが揃い、「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」がいよいよ明日開幕する! 12月5日から7日まで、ワシントン州ベルビューで、世界トップクラスのマジックプレイヤー126名が、総額100万ドルの賞金、未来の『マジック』カードに姿を刻む権利、そしてこの一年で最高峰である世界王者のタイトルを懸けて激戦を繰り広げる。

 「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」は、2024~2025マジック・プレミア・プレイ・シーズンの頂点を決定する大会だ。出場者の多くは、「プロツアー『霊気走破』」、「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」、「プロツアー『久遠の終端』」での輝かしい戦績により、参加権利を獲得した。そしてそこに加わるのは、地域チャンピオンシップの優勝者やアリーナ・チャンピオンシップ、マジックオンライン「チャンピオンショーケース」、そして去年の世界選手権の成績上位者だ。この豪華な顔ぶれから、ハイレベルなゲーム展開と緻密に調整されたデッキをお目にかかれること間違いない。

 金曜日と土曜日の午前中に『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』ブースタードラフトを行い、午後はスタンダード構築戦を4ラウンド行う。日曜日のトップ8も、スタンダードで対戦が行われます。第31回世界選手権の模様は、twitch.tv/magicおよびyoutube.com/@Play_MTGにて随時お届けする。金曜日と土曜日の放送は太平洋標準時11時(日本時間28時)から、日曜日は太平洋標準時10時(日本時間27時)から開始される。詳細については観戦ガイドを見てくれ。(訳注:日本ではマジック日本語公式YouTubeチャンネルにて配信されます。放送情報はこちらから)

 

スタンダード・メタゲームブレイクダウン

 スタンダードは『マジック』のローテーションするカードプールから60枚以上のデッキを作成して戦うフォーマットだ。現在は『エルドレインの森』以降のスタンダード対応セットが使用可能となっている。ここ数週間で《迷える黒魔道士、ビビ》、《プロフトの映像記憶》、《叫ぶ宿敵》の禁止がメタゲーム一変させ、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』により加わった百枚以上のカードが新しいアーキタイプを成立させた。フォーマットに多数の新しいツールが加わったことで、第31回世界選手権のメタゲームは以下となった。

 
アーキタイプ名 使用者数 使用率
1.イゼット講義 23 18.3%
2.ティムール・カワウソ 20 15.9%
3.バント気の技 16 12.7%
4.イゼット・ルーティング 14 11.1%
5.ジェスカイ・コントロール 10 7.9%
6.イゼット果敢 9 7.1%
7.シミック・ウロボロイド 7 5.6%
8.スゥルタイ・リアニメイト 6 4.8%
9.ゴルガリ・ウロボロイド 5 4.0%
10.ジェスカイ・アーティファクト 4 3.2%
11.ディミーア・バウンス 3 2.4%
12.赤単アグロ 3 2.4%
13.ディミーア・ミッドレンジ 2 1.6%
14.シミック・カワウソ 1 0.8%
15.ゴルガリ・ドラゴン 1 0.8%
16.オルゾフ・デーモン 1 0.8%
17.ボロス応召 1 0.8%
 

 メタゲームは様々なアーキタイプが存在しており、そこには幾つもの発見がある。最も印象的なのは、ディミーア・ミッドレンジがほぼ存在していないことだ。禁止制限を無傷で切り抜けたアーキタイプの中で最も有力なデッキだったが、このイベントより前にフォーマットから姿を消していた。参加者はその代わりに、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』によって強力にアップデートを受けた戦略の探求に時間を費やしていただろう。

 フォーマットが更新された初週のオンラインやテーブルトップ・イベントと比較すると、イゼット講義、ティムール・カワウソ、バント気の技の急激な台頭が目立つ。この3つのデッキは《積み重ねられた叡智》、《アナグマモグラの仔》、《不動の守護者、アッパ》などといった新しいカードに大きく依存している。特にイゼット講義は『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のカードに完全に依存しており、そしてこのデッキは予想外にも今週末の最も多いデッキの立場に立った。伝統的な赤単アグロは、ミッドレンジデッキとコンボデッキがフィールドの大半を占めているため、勢いづくかは怪しいところだ。しかしながら、ゲームが高速で終わる可能性は今も存在している。

 メインデッキでの使用枚数が多いカードは《嵐追いの才能》、《ブーメランの基礎》、《塔の点火》だ。これらの1マナの定番カードは、今日のスタンダードにおいてマナ効率がいかに重要かを示している。これらのカードはティムール・カワウソ、イゼット・ルーティング、イゼット果敢ではデッキに必要不可欠なカードであり、殆どのイゼット講義にも採用されている。イゼットデッキは《迷える黒魔道士、ビビ》、《プロフトの映像記憶》を失って優位な立場ではなくなりつつあるが、効率的な呪文達は残ったままだ。

スタンダード・アーキタイプの概要

 スタンダードの全デッキリストは、12月5日(金)午後2時(日本時間31時)頃に「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」イベントページで公開される。それまでの間に、すべてのアーキタイプの簡単な概要を紹介していく。

イゼット講義(23人)

 イゼット講義は、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』によって成立した、スタンダードに新登場したデッキだ。講義カードが豊富に積まれており、簡単に3枚を墓地に置くことができる。これにより《爆裂の技》は高火力に、《積み重ねられた叡智》は手札にカードを3枚加えることができる。《ばあば》が戦場に出た後は、これらの呪文はたった1マナに変わり、驚くほど効率的なエンジンとなる。これらをベースに様々な形を構築することができ、《美術家の才能》や《忍耐の記念碑》を組み込むこともできる。このデッキの核となるカードは、ただの講義の域を超えていると言える。

ティムール・カワウソ(20人)

 ティムール・カワウソは強力な無限ループが特徴だ。《渓間の洪水呼び》をコントロールしている状況で、《永劫の活力》と《アナグマモグラの仔》によってカワウソとネズミを合計3体以上タップできるならば、《嵐追いの才能》を《ブーメランの基礎》でバウンスし、再びプレイしてレベル2までレベルアップさせ、《ブーメランの基礎》を再度プレイすることができる。この6マナのループ中に《渓間の洪水呼び》によってクリーチャーは2回アンタップされ、強化されていくため、一度ループがスタートすればゲームに勝利することができる。

バント気の技(16人)

 バント気の技はその名の通り、テンポのために対戦相手のパーマネントを除去したり、自身のクリーチャーをリセットしたりしてアドバンテージを生み出すメカニズムを使用している。《不動の守護者、アッパ》や素早き救済者、アン/Aang, Swift Savior(TLA)》は、新セットの中でも最も効率的な気の技を持つクリーチャーです。《灰毛の天才、オーロック博士》によって、この2枚はお互いに気の技をかけ、無限にトークンを作成することができる。

イゼット・ルーティング(14人)

 イゼットという組み合わせは、クリーチャー基盤が異なる複数のデッキを作り出すことができている。イゼット・ルーティングは、ルーターと呼ばれるドロー&ディスカード効果を最大限に活用することで、新しく登場した《トラアザラシ》を強力に機能させる。ルーターは《精神の決闘者》を強化し、《逸失への恐怖》の昂揚を達成に押し進め、デッキの各要素をシナジーで繋ぎ合わせる。

ジェスカイ・コントロール(10人)

 ジェスカイ・コントロールは伝統的なコントロール戦略のデッキであり、《喝破》で呪文を打ち消したり、《稲妻のらせん》で除去したり、《審判の日》で一層したり、《食糧補充》でカードを補充したりして、ゲームのペースをコントロールする。多くのリストでは《道の体現者、シィコ》を強力なフィニッシャーとして採用しているが、個々のカード選択はデッキによって様々だ。

イゼット果敢(9人)

 イゼット果敢は講義やルーターの代わりに《嵐追いの才能》、《轟く機知、ラル》や《「占星術師」の天球儀》などでトークンを生成し、そしてトークンをインスタントやソーサリーを連打して強化することに重点を置いている。また、すべてのリストで《水飛沫の門》が採用されており、《量子の謎かけ屋》を即座に定着させたり、《稲妻罠の教練者》で少しずつカード・アドバンテージを獲得したりする。

シミック・ウロボロイド(7人)

 《ラノワールのエルフ》、《遺伝子送粉機》、《アナグマモグラの仔》によって加速し、戦場に軽いクリーチャーを展開した後、《ウロボロイド》によってそれらを強化する。また、《亭主の才能》によって天文学的なパワーに達することもある。もし複数の《天才遺伝学者、ジャッカル》によって《ウロボロイド》をコピーしたならば、戦場の状態を正確に示すには、膨大な数のサイコロが必要となるだろう。

スゥルタイ・リアニメイト(6人)

 スゥルタイ・リアニメイトは墓地を利用するコンボデッキで、《スーペリア・スパイダーマン》を探しつつ墓地を肥やしていく。《スーペリア・スパイダーマン》は唱えられた後、《最後の贈り物の運び手》のコピーとして戦場に着地し、《死せる生》のような破壊的な効果をもたらす。

ゴルガリ・ウロボロイド(5人)

 ゴルガリ・ウロボロイドはシミック版と重要となる緑の多くのカードが共通しているが、除去呪文、《陽気な哀歌》、《ベイルマークの大主》といった黒のカードが追加されており、《ウロボロイド》をより安定して探すことができる。《自然の律動》は、汎用的なクリーチャーやゲームを決着付けるクリーチャーを探し出すのに役立つだろう。

ジェスカイ・アーティファクト(4人)

 ジェスカイ・アーティファクトは《ピナクルの星檻》や《別行動》によってゲームを序盤からコントロールし、《身代わり合成機》で巨大な構築物を展開して戦場を制圧する。《団結の最前線》と《再利用隔室》で《身代わり合成機》を安定して探し出すことができ、また能力を誘発させる。そして《火のクリスタル》で速攻を与える。これらのアーティファクト・シナジーで対戦相手を圧倒する。

ディミーア・バウンス(3人)

 ディミーア・バウンスは《孤立への恐怖》と《ブーメランの基礎》を利用して、《逃げ場なし》や《不気味なガラクタ》といった除去パーマネントを再利用する。粘り強いミッドレンジ戦略を取り、使いまわしによるアドバンテージで対戦相手を圧倒することを狙う。

赤単アグロ(3人)

 赤単アグロは速攻クリーチャーと火力呪文を駆使して対戦相手のライフを速やかに0にし、迅速な勝利を狙うデッキだ。どのリストも《残響の力線》を採用していない。アグロ戦略はいつでも存在する戦略であり、今の時代でも危険な輝きを放っている。

ディミーア・ミッドレンジ(2人)

 ディミーア・ミッドレンジは、除去、手札破壊、打ち消し呪文を巧みに組み合わせて対戦相手を妨害し、軽量で回避能力を持つクリーチャーでプレッシャーをかけていく。《永劫の好奇心》が盤面に出れば、これらのクリーチャーで手札を補充することもでき、《悪夢滅ぼし、魁渡》は更なるカード・アドバンテージをもたらす。

シミック・カワウソ(1人)

 シミック・カワウソはティムール・カワウソに似ているが、より安定したマナベースを実現するために赤を取り除いている。赤のカードの代わりに《水飛沫の門》と《量子の謎かけ屋》のシナジーが採用されている。

ゴルガリ・ドラゴン(1人)

 ゴルガリ・ドラゴンは、ドラゴンの大量採用で恩恵を受ける《苛性の吐息》と《ゴミあさりの執政》を活用する。また、このデッキリストでは《氷耕しの探検家》で《寓話の小道》を再利用したり、《幻獣との交わり》を墓地から唱えたりすることで自身のデッキを切削する、自己切削の戦略も組み込まれている。

オルゾフ・デーモン(1人)

 オルゾフ・デーモンは、《デモンズウォール》から《不浄な別室 // 祭儀室》へとマナ・カーブをつなげ、このエンチャントを強力なライフ・ドレイン呪文へと変貌させるミッドレンジ・デッキだ。白をタッチしたことで《放棄された気の寺》が利用可能になり、《デモンズウォール》に+1/+1カウンターを置いて攻撃できるようにしたりや、《分派の説教者》のトークンがダメージ・レースに勝利するのを手助けすることができる。

ボロス応召(1人)

 ボロス応召の戦法は《闘技場の花形》と《勝利の楽士》です。どちらも攻撃するたびに、一時的な1/1戦士トークンを生成する。これらの応召の誘発は、《火のベンダーの位に至る》に探索カウンターを置き、《見捨てられた人形、アラベラ》で大量ドレインを可能にし、《世慣れた見張り、デルニー》によって誘発は2倍になる。

『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』で最もプレイされたカード

 『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』はスタンダードに大きな影響を与えた。既存のアーキタイプを強化し、そして新しい強力なデッキの軸となるカードが参入した。以下の表は、提出された126枚のデッキリストに記載されていた、スタンダードに新たに追加されたカードをすべて集計したものになる。

カード名 合計枚数 メインデッキ サイドボード
ブーメランの基礎 253 253 0
アナグマモグラの仔 183 183 0
アイローの表演 97 62 35
積み重ねられた叡智 92 92 0
爆裂の技 91 91 0
火の技の修行 90 90 0
ばあば 90 90 0
愛着を捨てる 78 75 3
素早き救済者、アン 68 68 0
不動の守護者、アッパ 67 67 0
岐路に立つアン 58 58 0
トラアザラシ 43 43 0
飲めば潤う! 42 38 4
クルクの伝説 38 24 14
キヨシ島の大ウナギ 29 1 28
気のベンダーの位に至る 26 26 0
アグナ・ケラ 22 22 0
アバターの怒り 19 0 19
アンの氷山 19 9 10
黒い太陽の日 15 0 15
自由の代価 11 0 11
バーシンセー 7 2 5
月殺し、ジャオ 6 6 0
顔泥棒、コー 5 5 0
一繋がりの根 4 4 0
ロクの伝説 4 3 1
火のベンダーの位に至る 4 4 0
カメアヒル 3 0 3
放棄された気の寺 3 3 0
勇敢なブーメラン使い、サカ 2 2 0
タコの型 2 0 2
ズーコの決心 1 1 0
 
 

 合計枚数だけを見れば、《ブーメランの基礎》ほど大きな足跡を残したカードは他にない。このカードの魅力は、その柔軟性にある。対戦相手のパーマネントをバウンスしてテンポ・アドバンテージを取ったり、自分の《嵐追いの才能》をバウンスしてさらなるアドバンテージを獲得することができる。全リストのうち52.4%のデッキがこの青い呪文を登録しており、ティムール・カワウソ20デッキ、イゼット講義19デッキ、イゼット・ルーティング14デッキ、イゼット果敢9デッキ、ディミーア・バウンス3デッキ、シミック・カワウソ1デッキに採用されている。

 《アナグマモグラの仔》も負けず劣らず、全体の38.1%ものデッキで強力なランプ戦略の加速役として登録されている。《永劫の活力》で爆発的なターンを生み出し、《ウロボロイド》に2体のクリーチャーを提供し、《ラノワールのエルフ》と《遺伝子送粉機》の生み出すマナを2倍にする。合計で183枚が登録されており、ティムール・カワウソ20デッキ、バント気の技16デッキ、シミック・ウロボロイド7デッキ、ゴルガリ・ウロボロイド5デッキに採用されている。

 

 『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』によって供給された膨大な枚数の講義カードによって、完全に新しいアーキタイプが登場した。このデッキは第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権で最も多く登録されたデッキだ。《積み重ねられた叡智》と《爆裂の技》といった主要なカードに加え、《ばあば》が戦略を強力に後押ししている。これらをサポートするため、《アイローの表演》、《火の技の修行》、《愛着を捨てる》といった講義カードがデッキへ自然に投入されている。

回転

 

 16人のプレイヤーがバント気の技を持ち込み、この新メカニズムを華麗な無限コンボへと昇華させた。戦場に《灰毛の天才、オーロック博士》がいれば、気の技されたカードを追放領域から0コストで唱えることができる。そのため、《不動の守護者、アッパ》と《素早き救済者、アン》(または《気のベンダーの位に至る》)の組み合わせは互いに気の技を繰り返し、無限に同盟者トークンを生み出すことができる。コンボを安定して達成するために、デッキの中核として《岐路に立つアン》が採用されている。また《木苺の使い魔》に気の技することで、強力な《初めてのお使い》をたった2マナで唱えることも可能だ!

今週末のデッキの活躍をご覧あれ

 『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』は、スタンダードに革新の波を巻き起こした。まるで全く新しいフォーマットのように感じられるこのトーナメント「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」でこれらのスタンダード・デッキが活躍する姿を見るのは、きっとエキサイティングな体験となること間違いない。

 どのカードや戦略が頂点に上り詰め、どの選手が競技マジックの歴史に名を刻むのか、見届けたい方は、是非ライブ配信を見逃さないでくれ。ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezは、史上初の3度の世界王者になれるのか? 放送は12月5日(金)からtwitch.tv/magicまたはPlay MTG YouTubeチャンネルでスタートする!(訳注:日本ではマジック日本語公式YouTubeチャンネルにて配信されます。放送情報はこちらから)

 
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