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EVENT COVERAGE
マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2014
第7回戦:市川 ユウキ(日本) vs. Josh Utter-Leyton(アメリカ)
Blake Rasmussen / Tr. Tetsuya Yabuki
2014年12月3日
本日の最後を飾るのに相応しい戦いだ。世界選手権初出場の市川 ユウキが、今の形式になってからの3回にすべて出場しているジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonと対決する。3回すべてに出場というのは、わずか3人しかいない。
かたや現在世界ランキング25位の市川。人気配信者であり、昨シーズンで最も熱いプレイヤーのひとりだ。プロツアー・デビューはプロツアー『ドラゴンの迷路』と最近のことだが、今年はプロツアー・トップ8連続入賞にグランプリ・トップ8入賞と、大躍進を遂げた1年だった。プロツアーでの活躍を鑑みると、現在のランキングは過小評価だと感じずにはいられない。彼は凄まじいまでの速さで昇ってきたプレイヤーのひとりと評価されているのだ(詳細なプロフィールはこちら)。
かたや「安定感」のお手本、世界ランキング20位のアター=レイトン。この前年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーは、今大会で現在の世界選手権に3回目の出場となる。生涯獲得プロ・ポイントは285点を数え(しかもそれは増え続けている)、近年では殿堂顕彰に最も近い男として話題にあがる。彼は常に大会の中心にいて、常に安定した成績を残し、そして常に好調を維持しているのだ。(詳細なプロフィールはこちら:英語)。
ここで戦う新星と旗手は、双方共にここまで4勝2敗。今大会の折り返し地点を迎えるときに、少しでも上位の席を奪いたいところだ。
それぞれのデッキ
他の選手と同様に、市川とアター=レイトンもまた『タルキール覇王譚』前には存在しなかったデッキを使用している。アター=レイトンは、登場するなり猛威を振るっている《ジェスカイの隆盛》を用いたコンボにその身を託した。しかし広く知られているものと違い、彼は緑のマナ・クリーチャーと《きらめく願い》を採用せず、《命運縫い》の採用に踏み切った――この大発見により彼のデッキは緑を省くことに成功し、その結果無理なくコントロール系のカードを採用することができ、その脆さを少し改善することができたのだ。
一方の市川のデッキは、同様に《宝船の巡航》を採用していること以外はアター=レイトンと共通するところがほとんどない。素早くビート・ダウンを進め、効率的に火力で焼き払い、そして必要とあれば効果的に呪文を打ち消すそのデッキには、しかしコンボは搭載されていない。彼の戦略では、ただ1枚のカードが原動力になるのではない。柔軟でありながらも強烈で、どのマナ域でも恐ろしいほどに効率的なデッキなのだ。
アター=レイトンがこの日の最終ラウンドを勝って抜けるには、彼のデッキ内すべての起爆剤とコントロール力が存分に発揮される必要があるだろう。
ゲーム展開
市川が理想的なスタートを切り、《秘密を掘り下げる者》が《昆虫の逸脱者》に変身するとそこへすぐに《タルモゴイフ》が続いた。アター=レイトンは素早くコンボを成立させるか、あるいはただちにその場をコントロールするカードを機能させる必要に迫られる。
アター=レイトンは前者を選んだようだ。彼はクロックを刻む3/2飛行を《イゼットの魔除け》で除去するより、手札の入れ換えを選んだ。手札を整えることには成功したが、それは《タルモゴイフ》を成長させる。
それは市川にとって望ましく、彼は2枚目の《タルモゴイフ》を盤面に追加する。アター=レイトンから抵抗はなく、第1ゲームは4ターンで決着した。
今度は軽く息をつく暇を得たアター=レイトンは、キャントリップ呪文を放ち手札と墓地の状態を作り上げていく。そして続くカードは、《ジェスカイの隆盛》。これを放っておけば、相当な脅威になるだろう。
だが市川はそれを運命に任せるようなことをしない。《漁る軟泥》がクロックと同時に、この盤面からアター=レイトンのコンボを決めるのに必須となる《命運縫い》への干渉手段となった。市川はできるだけマナを残しておくため、《秘密を掘り下げる者》をプレイするのも抑えた。
だがしかし、《ジェスカイの隆盛》はただのコンボ・パーツではない。デッキを掘り進めることもできるのだ。アター=レイトンはそれを実行し《稲妻》を引き込むと、にらみを利かせていた《漁る軟泥》の圧力から逃れた。
ウーズなのに「にらみを利かせた」? それは少し違うか。
とにかく、アター=レイトンはその場を強くコントロールすることを目指した。一方の市川は、《秘密を掘り下げる者》を繰り出しターンを渡す。
《命運縫い》の用意が整うと、アター=レイトンはコンボ始動の準備をする。《ギタクシア派の調査》が市川の手札にある防衛手段が《剥奪》のみであることを暴き、アター=レイトンは楽に準備を進められた。2枚目の《命運縫い》を引き込むと、それを「蘇生」し、このデッキが成すべきことを始めた。カードが次々と流れ、《ジェスカイの隆盛》は3体の青いゾンビが市川を喰い尽くすまで強化を続けたのだった。
最終ゲーム、市川は再び《秘密を掘り下げる者》から《タルモゴイフ》という流れを見せる。しかし今度は《秘密を掘り下げる者》が変身に失敗した。2回目のチャンスにも裏返らない。
ああ、ここからでも君たちの悲鳴が聞こえてくるようだ。
クロックの点で遅れをとった市川は、アター=レイトンに1ゲーム目と比べて多くの動きを許してしまった――《ジェスカイの隆盛》を解決することも。
今度は市川に銃口が向けられる番だ。アター=レイトンは、《ジェスカイの隆盛》が戦場に出れば瞬く間にコンボが始動することを見せてきた。にわかに緊迫感が立ち昇る。市川は《瞬唱の魔道士》を《待ち伏せのバイパー》モードで(すなわち攻撃するためだけに)繰り出した。これでアター=レイトンのライフは残り4点になる。彼は今すぐにでもコンボを始めることを迫られた......さもなくば敗北だ。
総攻撃の先駆けは、《宝船の巡航》だった。実はアター=レイトンはかなり苦しい状況にあった。青マナ源に乏しい上に、始動の鍵となる《命運縫い》がないのだ。彼はこの《宝船の巡航》で《命運縫い》を引き込まなければならない。さもなくば、「蘇生」のために墓地へ落とすことができないのだ。《宝船の巡航》は(墓地を)奪うものだが、同時にもたらすものでもある。
そうこのとき、《宝船の巡航》はもたらすものだった。
《命運縫い》を引き込んだアター=レイトンは、彼のデッキが成すべきことを解き放つ。
コンボの成立を悟ると、市川は紙を1枚取り出し、素早く何かを書きつけた。それは「やれるもんならやってみろ」を意味する世界共通のサインだ。
「F6」
こうしてすべての優先権をパスすることにした市川は、あとはアター=レイトンの動きをただ見守った。ときおりテーブルを軽く叩く音が《ジェスカイの隆盛》の能力が誘発したことを示し、ついにアター=レイトンは呪文でいっぱいの手札をテーブルに置き、失敗はあり得ないことを提示した。
市川は笑顔で頷き、勝利まであと一歩だったことを確認した。しかしその命運は、最後の最後で縫い留められたのだ。
市川 1-2 アター=レイトン
4 《霧深い雨林》 4 《沸騰する小湖》 3 《島》 2 《蒸気孔》 2 《樹木茂る山麓》 1 《繁殖池》 1 《山》 1 《踏み鳴らされる地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《僧院の速槍》 4 《タルモゴイフ》 1 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(13)- |
4 《稲妻》 4 《血清の幻視》 3 《ギタクシア派の調査》 3 《呪文嵌め》 3 《思考掃き》 2 《二股の稲妻》 2 《呪文貫き》 2 《蒸気の絡みつき》 2 《差し戻し》 4 《宝船の巡航》 -呪文(29)- |
1 《払拭》 1 《マグマのしぶき》 2 《古えの遺恨》 2 《剥奪》 1 《破壊的な享楽》 1 《漁る軟泥》 2 《溶鉄の雨》 2 《不忠の糸》 1 《イゼットの静電術師》 1 《凶暴な拳刃》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -サイドボード(15)- |
4 《フェアリーの集会場》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 2 《島》 2 《蒸気孔》 1 《乾燥台地》 1 《神聖なる泉》 1 《山》 1 《平地》 1 《聖なる鋳造所》 1 《金属海の沿岸》 -土地(22)- 4 《命運縫い》 -クリーチャー(4)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《血清の幻視》 4 《思考掃き》 3 《稲妻》 3 《流刑への道》 4 《イゼットの魔除け》 3 《差し戻し》 4 《ジェスカイの隆盛》 4 《時を越えた探索》 1 《宝船の巡航》 -呪文(34)- |
3 《摩耗 // 損耗》 1 《否定の契約》 2 《白鳥の歌》 1 《剥奪》 2 《機を見た援軍》 3 《けちな贈り物》 1 《堀葬の儀式》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 1 《エメリアの盾、イオナ》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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