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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2014
第5回戦:市川ユウキ(日本) vs. Raphael Levy(フランス)
Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki
2014年12月2日
プロツアー優勝者。マジック・プロツアー殿堂顕彰者。ワールド・マジック・カップ優勝チームのキャプテン。ラファエル・レヴィ/Raphael Levyのキャリアは3つの異なる時期に分かれ、およそ世界中すべての大陸にその名を残している。彼の功績をひとつにまとめて要約するなら、「あまりに無謀な挑戦」ということになるだろう。詳しくは彼の『世界選手権2014』出場選手プロフィール(リンク先は英語)にて語られている。
世界選手権はレヴィのように才能溢れるプレイヤーたちでいっぱいだが、それでも全員が舞台に輝く役者とはならないのだ。
一方の市川 ユウキは日本のマジック配信界の顔とも言える人物だ。2014年度を通して目覚ましい活躍を見せた彼は世界ランキング入りを果たし、現在は25位にいる。また彼は、わずか5回のプロツアー参加のうち2度のトップ8入賞を記録している。戦歴はレヴィに遠く及ばないものの、市川の才能と技術は、かつての先駆者たちを踏み越える覚悟を持ったニュー・フェイスが多数存在することを明らかにしているのだ。彼についても、こちらのプレイヤー・プロフィールにてより詳しく知ることができる。
世界選手権とは、新旧問わず最も偉大なプレイヤーを決める場所に他ならない。
それぞれのデッキ
レヴィは、他の参加者たちの多くと同様に、コンボ・デッキを持ち込んだ。他の者たちと異なるのは、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の誘発型能力を強打へと変える「《風景の変容》」を選択したことだろう。これは、歴代最大規模のモダン・トーナメントとなったグランプリ・リッチモンド2014にて13ラウンドにわたり無敗という驚異的な成績を叩きだしたデッキであり、グランプリ・ミネアポリス2014にてパク・ジュンヨン/Park Jun Youngに勝利をもたらしたデッキであり、しばらく前から一大勢力を築いているデッキだ。
一方の市川が選択したのは、一風変わった「ティムール・デルバー」だ。これは同じ日本人参加者の渡辺 雄也と山本 賢太郎も使用している。
「山本さんと渡辺君とプレイテストを行いました。僕たち3人はまったく同じデッキを使っています」と、市川は語る。「現在のモダン環境においては、このティムール・デルバーが最強だと考えました。私たちはこのデッキを掘り下げていき、それぞれのバージョンを作り上げたのです。一番の理由は長いゲームでもそうでなくとも使える《宝船の巡航》ですかね。それに《タルモゴイフ》も極めて強力です」
そんな市川は、今大会どんなデッキを目にすることになると想定していたのだろうか? 「《風景の変容》に、青赤デルバー、《修復の天使》入りの『出産の殻』、黒緑「The Rock」、《欠片の双子》。以前からあるものが多く、改めてデッキリストを確認することになるようなものは少ないと考えました。まだ《ジェスカイの隆盛》とは当たっていませんが、これを持ち込むプレイヤーもいると思います」
では、日本選手団はこのデッキをどのように作り上げたのか? 「3日か4日くらい一緒に考えたあと、それぞれ『Magic Online』でプレイしました。それから、それぞれの結果を持ち寄って検討を重ねました。通常、このタイプのデッキには《若き紅蓮術士》が採用されていますが、私たちはそれを抜きたいと考えました。このデッキではうまく機能しないと思ったんです」
市川はこのティムール・デルバーについて、ベースとなっている別のデッキから着想を得たという。「レガシーの『カナディアン・スレッショルド』が大好きで」と、市川が打ち明けた。「そこで、モダンでも同じアイデアが使えないかと持ち込んでみました。ついさっき山本さんに負けましたが、かなり良い調子です」
ゲーム展開
市川は序盤を《ギタクシア派の調査》や《思考掃き》、《血清の幻視》などのキャントリップ呪文で墓地を肥やすのに費やし、その後4/5に成長した《タルモゴイフ》を戦場に送り出した。レヴィは土地をタップ状態で置いてからの《桜族の長老》。これは市川の《呪文嵌め》に飛び込む結果となる。「探査」を最大まで活用して《宝船の巡航》を放つと、市川は2枚目の《タルモゴイフ》を盤面に追加する。
レヴィは市川が唱えた《血清の幻視》を通すかしばらく考えた後、通すことにした。続けて《謎めいた命令》でタルモゴイフたちをタップさせるが、市川は《僧院の速槍》と《秘密を掘り下げる者》を盤面に追加する。レヴィは《電解》で《秘密を掘り下げる者》を焼いたものの、市川の盤面にはまだ多くの脅威が残っていた。
レヴィは《瞬唱の魔道士》を滑り込ませ、これでラスト・ターンだとばかりに攻撃へ向かってきた市川の軍勢のブロックに向かわせた。しかし《呪文嵌め》とインスタントの雨がレヴィを襲い、15点あった彼のライフは一気に取り去られたのだった。
2ゲーム目も1ゲーム目と同じ立ち上がりだった。市川が序盤に《ギタクシア派の調査》を使い、レヴィは土地をタップ・インする。そして手札を整えた市川は脅威の展開を始めた。まずは《僧院の速槍》。これは《稲妻》で除去。続けて《タルモゴイフ》。市川はレヴィの《撤廃》を《剥奪》した。3体目、《秘密を掘り下げる者》。これは《紅蓮地獄》で対処し、続けて《タルモゴイフ》にも《稲妻》を差し向けこれを除去した。
市川の墓地を見ると、《宝船の巡航》の機が熟していた。しかしレヴィは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を含めた6枚の土地を揃えている。市川は2枚目の《タルモゴイフ》を持っていたが、レヴィはそのターンの終わりに《電解》を市川に浴びせた。市川のライフは残り8点となり、レヴィは計算を始める。X=2の《仕組まれた爆薬》が《タルモゴイフ》への解答となったが、次の攻撃時に《時を越えた探索》が打ち消されると、使わざるを得なくなった。
市川の手札が3枚まで減ったところで、レヴィは引き金を引いた。2枚目の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を置き、《風景の変容》。一瞬の間が空く。
「オーケー」市川が声をあげ第3ゲームへ向けてカードを片付けると、レヴィは安堵のため息を吐いた。
最終ゲーム、レヴィは《明日への探索》で序盤から動き出す。市川はここまでの2ゲームと同じプランを続け、《ギタクシア派の調査》などで手札から墓地を肥やしにかかる。今度は《僧院の速槍》が早い段階で現れ、市川は大量のキャントリップで墓地を肥やしつつレヴィのライフを11まで落とし、減った手札を《宝船の巡航》で取り戻した。
《宝船の巡航》が通ると、レヴィは軽く頭を振った。彼の手札には5枚の土地。ここまででプレイできたカードも5枚しかなかった。
市川はそのことを知らないが、しかし彼は自身の計算を始めた。レヴィのライフが8点のところで《タルモゴイフ》が攻勢に加わり、致命打になり得る攻撃を仕掛ける。レヴィの手札にある土地でないカードは前のターンに引き込んだばかりの《瞬唱の魔道士》のみだったが、「フラッシュバック」した《電解》が《秘密を掘り下げる者》を取り去った。
市川は登場したブロッカーに《稲妻》を当て、レヴィの側に残ったアンタップ状態の《霧深い雨林》を恐れず進んだ。《宝船の巡航》で《ギタクシア派の調査》を引きこむと、レヴィにとっては明白だった事実が公開された。もはや《タルモゴイフ》と《僧院の速槍》を止めるすべは残っていなかった。
レヴィは手札を広げる。戦いは終わり、ここでまたひとつ、新星が最大級の巨星を落としたのだった。
市川 2-1 レヴィ
4 《霧深い雨林》 4 《沸騰する小湖》 3 《島》 2 《蒸気孔》 2 《樹木茂る山麓》 1 《繁殖池》 1 《山》 1 《踏み鳴らされる地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《僧院の速槍》 4 《タルモゴイフ》 1 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(13)- |
4 《稲妻》 4 《血清の幻視》 3 《ギタクシア派の調査》 3 《呪文嵌め》 3 《思考掃き》 2 《二股の稲妻》 2 《呪文貫き》 2 《蒸気の絡みつき》 2 《差し戻し》 4 《宝船の巡航》 -呪文(29)- |
1 《払拭》 1 《マグマのしぶき》 2 《古えの遺恨》 2 《剥奪》 1 《破壊的な享楽》 1 《漁る軟泥》 2 《溶鉄の雨》 2 《不忠の糸》 1 《イゼットの静電術師》 1 《凶暴な拳刃》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -サイドボード(15)- |
4 《霧深い雨林》 4 《蒸気孔》 4 《踏み鳴らされる地》 3 《繁殖池》 3 《島》 2 《森》 2 《山》 2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 1 《溢れかえる果樹園》 -土地(25)- 4 《桜族の長老》 2 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(6)- |
4 《稲妻》 4 《差し戻し》 2 《紅蓮地獄》 1 《イゼットの魔除け》 1 《撤廃》 4 《明日への探索》 2 《電解》 4 《謎めいた命令》 4 《風景の変容》 3 《時を越えた探索》 -呪文(29)- |
1 《すべてを護るもの、母聖樹》 1 《仕組まれた爆薬》 4 《タルモゴイフ》 1 《古えの遺恨》 1 《自然に帰れ》 1 《否認》 1 《呪文滑り》 2 《クローサの掌握》 1 《神々の憤怒》 1 《対抗変転》 1 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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