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日本選手権2022 -Tabletop Returns-
第11回戦:八十岡 翔太 vs. 山口 弘太郎 ~風変わりなエスパー・ミッドレンジ~
2日目開幕3-0という成績が、これほど意外性のないプレイヤーも他にいないだろう。
八十岡 翔太。つい先週ニューカペナ・チャンピオンシップでトップ8に入賞して3日間合わせて計17マッチをこなしたばかりだというのに、今週も先週同様自作の《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》入り「ジャンド・ミッドレンジ」を微調整したものを持ち込んでいるというのだから、やはりこの男、マジックが好きすぎる。
一方、対する山口 弘太郎は環境トップの「エスパー・ミッドレンジ」に独自の調整を加えたデッキを使用しているようだ。
八十岡 翔太 vs. 山口 弘太郎(※写真の撮影時のみマスクを外しています) |
64人のスイスドローで全6回戦のため、4-0となればトップ8進出はほぼ確定となる。実質トップ8進出をかけた大一番、はたして勝つのはどちらか。
ゲーム1
2ターン目まではお互いセットランドのみで、先手の八十岡が3ターン目に唱えた《鏡割りの寓話》が山口の《かき消し》に捕まる立ち上がり。
返す山口はそのまま《婚礼の発表》で先んじるが、八十岡も《バグベアの居住地》をタップインで処理しつつ2枚目の《鏡割りの寓話》で応える。
「スノーボール・エフェクト」≒継続的効果のある3マナパーマネントの応酬……現在のスタンダードを象徴するような構図だ。
だが返すターン、山口は4枚目の土地が置けない。やむなく《光輝王の野心家》を召喚し、人間・トークンを強化して2点アタックでターンを終える。
一方、この隙に八十岡は《鏡割りの寓話》のⅡ章で手札を整えると、まずは《強迫》で山口の手札内容を確かめにいく。
だがそこで公開されたのは、実に意外なラインナップだった。
《冥府の掌握》《放浪皇》まではいい。だが残る3枚は……《幽体の敵対者》に《風変わりなペット》2枚!?
八十岡「なるほど……面白いね」
通常の「エスパー・ミッドレンジ」らしからぬカード採用に、さしもの八十岡も思わず感嘆のコメントを漏らす。
ひとまず《冥府の掌握》を抜き、《エシカの戦車》を出してターンを終えるが、返す山口は3マナを立ててターンエンド。《婚礼の発表》が変身し、堅い布陣で《エシカの戦車》を迎え撃つ構え。
八十岡「3/3と3/3か……デカい」
八十岡 翔太 |
この局面で八十岡は《エシカの戦車》で攻撃しつつゴブリン・トークンをコピー。これは3/3のダブルブロックで落ちるが、第2メイン・フェイズに《作業場の戦長》を送りだす。
一方、山口はまずは八十岡の終了フェイズに予定調和の《風変わりなペット》を唱える。《光輝王の野心家》で置かれたカウンターに加えて《婚礼の発表》があるため、いきなりブロック不可の5点クロックを形成すると、なおも返すターンに《消失の詩句》で《キキジキの鏡像》を対処しつつ、ようやくたどり着いた4枚目の土地である《目玉の暴君の住処》をタップインしてターンエンド。
八十岡は《祝祭の出迎え》を出してから総攻撃、9点が通って山口を残り9点まで追い詰める。さらに《闇市場の巨頭》《しつこい負け犬》と展開、アタッカーを補充しながら18点までライフを回復する。
際どいダメージレースだが、八十岡の場にはミシュラ土地(※《ミシュラの工廠》に由来する、クリーチャー化する土地の俗称)である《バグベアの居住地》も控えている。「ミシュラがある環境では勝率は1~2割上がると思う」とは八十岡がいつも言っていることだ。
それでも山口は5マナ目となる土地を引き込むと、魚・トークン2体によるブロック不可の5点で八十岡のライフを13点まで詰める。
八十岡「手札は?」
山口「3枚です」
序盤の《強迫》により、山口の手札は《放浪皇》《幽体の敵対者》《風変わりなペット》という、3種のインスタント行動の全部構えであることが透けている。
八十岡にとっては、どの行動にも裏目はある。だが確実なのは、このまま待っていてもブロックできないクロックが増加してじりじりと死ぬだけということだ。
八十岡は意を決して《バグベアの居住地》を起動し、フルアタックを敢行する。
パワーが5、3、3、3、2、2、2、1という8体のクリーチャーによる総攻撃。残りライフ9点で山口のブロッカーは現状2体、少なくとも《放浪皇》では解決しない。
だが、山口はしっかりと正着を見出した。ブロック前に《風変わりなペット》と《幽体の敵対者》を両方唱え、5体のブロッカーでライフをギリギリまで削りつつも自分のクリーチャーが戦闘で最大限残るようブロックすると、ライフ1点を残しつつ反撃に十分なクロックが生還する。
そして返すターンに山口が《目玉の暴君の住処》を起動すると、ノーガードだった八十岡の13点のライフは一瞬にして削りきられてしまったのだった。
八十岡 0-1 山口
既存の「エスパー・ミッドレンジ」は《消失の詩句》と《冥府の掌握》が合計5~7枚程度採用されており、「捌き」の要素が色濃い。だが、山口の「エスパー・ミッドレンジ」はそれらが減った代わりに「瞬速」のアクションが多く採用され、ほぼ「エスパー・クロックパーミッション」と言っていい構成なのだ。
ただの「エスパー・ミッドレンジ」ならば八十岡の相手ではない。だがニューカペナ・チャンピオンシップの結果を受け、この1週間で「エスパー・ミッドレンジ」も進化していた。
ゲーム2
山口がマリガン。お互い3ターン目まで土地を置くのみという珍しくゆっくりとした展開で、ファーストアクションは八十岡の4ターン目の《鏡割りの寓話》となる。これは《かき消し》されるが、対する山口も再び土地3枚でストップ。
だが、5ターン目を迎えた八十岡も土地5枚オープンでエンド。一方、山口はエンド前に《風変わりなペット》を唱えると、引き込んだ4枚目の土地を置いてターンを返す。このエンド前に八十岡は《土建組一家の魔除け》、「ライブラリーの一番上にあるカード3枚を追放する」モード……だが、追放されプレイしてもよいとされたのは、あろうことか土地3枚!
八十岡「……やべーな(苦笑)」
自分のターンに入ってひとまず《強迫》を打ち込む八十岡だったが、これに対応して《放浪皇》が着地する。公開されたのは《策謀の予見者、ラフィーン》3枚に《風変わりなペット》という手札で、選択肢なく《風変わりなペット》を落とし、《作業場の戦長》を出すものの、この時点ですでに山口のビッグムーブが確定している。
すなわち、山口はエンド前に《放浪皇》の[-1]能力で侍・トークンを生成すると、メイン・フェイズに入って《策謀の予見者、ラフィーン》を着地させ、[+1]能力でトークンを強化しつつの3体アタックによって「謀議3」が誘発。魚・トークンが不要な《策謀の予見者、ラフィーン》2枚と引き換えに強化され、一挙7点ダメージで八十岡のライフを14点まで落とす!
返す八十岡も《祝祭の出迎え》を出しつつ《作業場の戦長》の攻撃で3/3の侍・トークンと相打ちさせながらも《放浪皇》の忠誠度を2削るのだが、第2メインに《バグベアの居住地》をタップインしただけでターンを終えるアクション量の少なさに比して八十岡の土地はすでに7枚並んでおり、マナフラッドが透けてしまっている。
山口 弘太郎 |
他方、なおも山口は《放浪皇》で魚・トークンを着実に強化。攻撃宣言時の《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》で《策謀の予見者、ラフィーン》は処理されるものの、5点アタックからさらに第2メインに《婚礼の発表》を着地させる。
八十岡の側に視点を移すと、頼みの綱の《エシカの戦車》も《軽蔑的な一撃》されてしまい、どうにか《放浪皇》だけは戦闘で落とすものの、手札はもはや尽きているといった状況。
それでも山口は手を緩めず、《婚礼の発表》の2枚目を設置。ここで八十岡も《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》を引き込み、《バグベアの居住地》の攻撃時のゴブリン・トークンを猫・トークンに変換する動きと合わせて《祝祭の出迎え》の能力を複数回誘発させながらパワー4、3、3、2の4体で攻撃するビッグムーブを見せる。
山口も魚・トークンで《バグベアの居住地》を相打ちに取り、人間・トークン2体で3/3の《祝祭の出迎え》をブロックして適切な対処……と思いきや、ここで八十岡が怪訝な表情。
八十岡「……(人間・トークンを指差して)1/1だよ?」
山口「……あ、そうだ!」
山口、緊張からかここで《婚礼の発表》が変身していると勘違いするミス! 一方的にリソースを損する戦闘結果に加え、5点が通って山口のライフは残り9点。
だが2枚設置された《婚礼の発表》によるリソース差は大きく、多少のミスでは山口の優勢は崩れない。八十岡は続くターンにも《バグベアの居住地》を起動して攻撃に向かわせようとするのだが、待ってましたとばかりに《幽体の敵対者》によってフェイズ・アウトさせられてしまう。
それでも総攻撃で山口のライフを残り6点まで追い詰める……の、だが。
返す山口のターンが致死量ダメージのアタックをレッドゾーンに送り込むと、八十岡がアンタップしている土地と1枚だけ残った手札に手をかけ……?
八十岡「……負けました」
八十岡 0-2 山口
八十岡「どっかで宝物・トークン出せてたらなー。毎回1マナ足りなくて2アクションが取れなかった。ていうか2ゲーム目《土建組一家の魔除け》使えなさすぎるだろ! フラッドしてるから打ったのに、せめて《強迫》でもめくれてくれれば……」
MTGアリーナとテーブルトップとの一番の違い。それは八十岡にとっては、リアルだと肝心な場面で「土地岡さん」が出てしまうというジンクスにあるのかもしれない。
八十岡「《豪火を放て》も引かなかったし。1ゲーム目の4枚目の土地をアンタップインで置けてれば《鏡割りの寓話》じゃなくて《エシカの戦車》だったから違っただろうけど、4マナ目アンタップインの確率そんなに高くないからまあしょうがないな」
一方、山口のデッキのオリジナルな調整についても尋ねてみる。
山口「この程度をオリジナルと呼んでいいものか……ヤソさんのニューカペナ・チャンピオンシップ2日前の放送を見て考えました」
八十岡「《風変わりなペット》が入っててカウンター(打ち消し)が構えやすくなってるよね。普通のエスパーは《放浪皇》のターンくらいにしか構えられないから。良いデッキだね。同型相手はちょっと弱いかもだけど、ティムールとかイゼットとかにはすごく強そう」
八十岡を感心させるほどのデッキを駆る山口は、この勝利によりトップ8進出をほぼ確実なものとしたのだった。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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