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マジックフェスト・横浜2019

観戦記事

準決勝:小林 崇人(東京) vs. 磯ケ谷 怜雄(神奈川) ~鉄人と秀才~

Hiroshi Okubo

「復帰してこんなに早く権利が取れるとは」

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 試合前、「kbr」こと小林 祟人は筆者にこう語ってくれた。彼が最後にマジックの表舞台に立ったというプロツアー『テーロス』は今から5年半前。それからしばらくマジックは半引退状態で一線を退いていたそうだ。

 昨年12月に仕事の都合で東京に来て、マジックにも復帰。当時晴れる屋で開催された第12期モダン神挑戦者決定戦で友人から借りたという「鱗親和」を用いて破竹の勢いで白星を重ね、準優勝に輝いた。Magic Onlineで名を馳せた鉄人・小林 祟人は今なお技術が衰えていないということを、結果を持ってコミュニティに知らしめたのだ。

 無論、復帰したてで参加した大会でたまたま勝っただけ、ということはあるかもしれない。何より彼自身ももしかするとそう思っていたかも知れない。今回のプレイオフ進出は望外の結果だったのだろう。だが、小林を知る人間たちの中にその結果を信じがたいと語る者はいない。

 そんな小林に挑むのは、グランプリ出場経験も今回で3度目という弱冠20歳の若手プレイヤー・磯ケ谷 怜雄だ。

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 初めて参加したグランプリ・静岡2018で2日目に進出し、昨月のグランプリ・京都2019では賞金獲得ならびにタイブレークでプロツアー権利獲得まであと少しという3敗ラインに入賞。そして今回、見事にトップ4へと駒を進めることとなった。グランプリ・京都2017で岡井 俊樹が当時21歳で初日全勝を果たしたことで「久しぶりに若手が勝っている!」と騒然としていたが、磯ケ谷はさらにそれより下の世代だ。

 秀才。そんな言葉が相応しい磯ケ谷だが、その実力は確かな試行回数に裏付けられているようだ。なにしろ、彼はMagic Onlineで開催されているリーグ戦の5-0を達成した際にもらえるトロフィーを20個以上所持している(スタンダード)。

 これがどういうことなのか端的に説明するならば、いささか乱暴な表現ではあるが通算100-0以上の成績を収めていると言える、ということになる。ちなみにカバレージブース内にいた殿堂プレイヤーの津村 健志にこの話をしたら称えるを通り越してドン引きしていた。

 無論今回のフォーマットはモダンであり、スタンダードでの戦績はこのマッチの趨勢を占うのに適切ではないかも知れない。とはいえ、磯ケ谷もまたグランプリのトップ4に進出するだけの実力者であり、そのための努力を積み重ねてきていることも事実だ。

 2人のMagic Onlineフリークが、グランプリの場で相見える。

 方や復帰した鉄人、方や若き秀才。どちらが勝ってもおかしくないこの戦いを制すのは――!?

 
小林 崇人 vs. 磯ケ谷 怜雄
ゲーム1

 先攻の小林が《ペンデルヘイヴン》と《硬化した鱗》、《溶接の壺》を展開する好スタートを切り、磯ケ谷の《コジレックの審問》に《活性機構》を奪われながらもX=1の《歩行バリスタ》をプレイする。

 磯ケ谷はこれによって手札にある《闇の腹心》を封じ込められてしまい、第2ターンをロスすることとなる。その間にも小林は《古きものの活性》で《電結の働き手》を見つけ、戦場に投入する。

 
磯ケ谷 怜雄

 後手後手に回ってしまった磯ケ谷は《ヴェールのリリアナ》の[-2]能力で小林のクリーチャーを減らしにかかるが、これは《電結の働き手》を生け贄に捧げ、《歩行バリスタ》で《ヴェールのリリアナ》を撃ち落とす。

 小林の猛攻は止まらず、引き込んだ2枚目の《活性機構》で盤面を完全に掌握しにかかる。磯ケ谷は「鱗親和」の強さを知識としては知っていたものの、実際に体験するのは初めてだったようで、この《活性機構》によって見る見るうちに小林の戦線が強化されていくのを見守ることしかできずにいた。

 やがて《歩行バリスタ》によるダメージの蓄積と《活性機構》のトリッキーな挙動に翻弄され、磯ケ谷は第1ゲームの勝利を小林に明け渡すこととなった。

小林 1-0 磯ケ谷

ゲーム2

 今度は先攻を得た磯ケ谷。《致命的な一押し》と《タルモゴイフ》が控えているものの、黒マナしか出ない手札を悩みつつキープ。《》を置くのみでターンを終える。

 しかし、このたった1ターン目の挙動でも小林は瞬時に磯ケ谷のキープした手札の内約にアタリをつけた。1ターン目に黒マナソースを設置しながら手札破壊から動いてこないというのは、磯ケ谷のデッキが「黒緑ミッドレンジ」であることを知っている小林にはどうにもきな臭く見える。つまり除去キープしたと考えるのが自然で、クリーチャーを出してもすぐに除去されてしまうのが関の山だろう、と。

 
小林 崇人

 となれば、無理に攻め急ぐ必要はない。まずは《古きものの活性》で《電結の荒廃者》を手札に加え、《ゲスの玉座》をプレイ。続いて《活性機構》を並べて不気味に沈黙を続ける磯ケ谷の様子を観察する。

 やがて緑マナ源にたどり着いた磯ケ谷は、手札に控えていた《タルモゴイフ》を解き放つ。色マナに不安を抱えつつも、除去で当分の攻撃を凌ぐことができるからキープ。磯ケ谷のゼロターン目の判断はそんなところだろうか。ストーリーが徐々に小林の中で実態を伴っていく。

 ならば様子見、とばかりに小林は《電結の働き手》をプレイする。《活性機構》も健在の今、これを生かしておく手は磯ケ谷にはない。すぐさま《致命的な一押し》が《電結の働き手》を襲った。

 やはり。磯ケ谷は除去を複数枚手札に抱えているようだった。ならばとばかりに小林は《溶接の壺》と《電結の荒廃者》をプレイし、《墨蛾の生息地》で攻撃を仕掛ける。磯ケ谷に毒カウンターが1つ与えられ、そしてそれは《活性機構》と《ゲスの玉座》によってじわじわと化膿していくかのように数を増やしていく。

 磯ケ谷は2枚の《致命的な一押し》を使いながらやっとのことで《電結の荒廃者》を除去するが、すでにゲームは完全に小林のペースだった。《活性機構》によって生み出される霊気装置・トークンは「増殖」に次ぐ「増殖」で磯ケ谷の《タルモゴイフ》のサイズを上回り、盤面が膠着している間にも小林は磯ケ谷の毒カウンターを少しずつ増やしていく。

 万事休す。磯ケ谷の体には致命的な毒が回り、その攻撃が小林に届くことはなかった。

小林 2-0 磯ケ谷

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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