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マジックフェスト・名古屋2019

観戦記事

準々決勝ダイジェスト:食欲の秋・オーコのグランプリ

Moriyasu Genki

 2019年11月3日。『ラヴニカの献身』から『エルドレインの王権』までのスタンダード・フォーマットで開催されたグランプリ・名古屋2019は参加者1700人を超え、盛況のうちにスイスラウンド全15回戦を終えた。

 先日の改定で「ゴロス」デッキで採用されていた《死者の原野》が禁止となってからは、日本国内での大きいスタンダード大会は初めての舞台であった。

 キーパーツを失くした「ゴロス」デッキは勢いをなくし、最前線の舞台から退いた。代わりに、それまで「ゴロス」デッキと二強であり続けた「食物」デッキが、全盛の勢いで勝ち進んできた。

 グランプリ・名古屋2019、トップ8の内訳は「バント・食物」1人、「シミック・食物」2人、「スゥルタイ・食物」4人、「アゾリウス・コントロール」1人。「食欲の秋」という言葉遊びが相応しい結果となった。

 トップ8メンバーは宇都宮 巧、熊谷 陸、三原 槙仁など競技シーン「常連」の顔ぶれに加え、ホリウチ マコト、村上 颯太、斉藤 徹、そして中国からフー・ユエ/He, Yueとヂィ・イーミン/Zhi, Yiminだ。

 「青白コントロール」を駆りスイスラウンドを14勝1敗の1位で勝ち抜いたヂィと、村上がビデオ・フィーチャーされる。残る3卓をダイジェストの形でお届けする。

宇都宮 巧(スゥルタイ・食物) vs. 三原 槙仁(スゥルタイ・食物)

宇都宮 巧 vs. 三原 槙仁

 一番最初にマッチを終えたのは宇都宮と三原の「スゥルタイ・食物」対決だ。食物デッキのなかでも群を抜く、環境使用率最多のデッキのミラーマッチだ。

 ミラーマッチで重要な《害悪な掌握》はお互いに4枚。どこにどう当てるかが焦点だ。

ゲーム1

 先手の宇都宮が1ターン目《むかしむかし》から《ハイドロイド混成体》を引き込みつつ、3ターン目《王冠泥棒、オーコ》で先手のプレッシャーをかけていく。後手ながら《むかしむかし》から《金のガチョウ》スタートを切れた三原も、2ターン目《楽園のドルイド》から3ターン目《世界を揺るがす者、ニッサ》と驚異的な回りをしてみせた。

 一瞬でゲームを終わらせる爆発力だが、宇都宮は《意地悪な狼》で地上を守りつつ順調にマナを伸ばし、対《世界を揺るがす者、ニッサ》最終兵器である《戦争の犠牲》をプレイする。

 《世界を揺るがす者、ニッサ》、《ハイドロイド混成体》と土地をまとめて薙ぎ払った宇都宮だが、すでに《世界を揺るがす者、ニッサ》からの《ハイドロイド混成体》X=6を決めている三原は後続を絶やさない。《意地悪な狼》から《ゴルガリの女王、ヴラスカ》と続けて盤面を取り返すと、2体目の《世界を揺るがす者、ニッサ》で攻勢を盤石なものにして1本目を取った。

三原 槙仁
ゲーム2

 続くゲーム2も三原が《金のガチョウ》、《楽園のドルイド》、《意地悪な狼》、《世界を揺るがす者、ニッサ》と一息に連打する。宇都宮も《意地悪な狼》こそ《害悪な掌握》で止めるが、土地が止まって手札にだぶついている《ハイドロイド混成体》を有効活用できない。

 宇都宮がこれをX=2でかろうじてプレイしたときには、すでに三原は《世界を揺るがす者、ニッサ》によって10点に届くダメージソースを用意しており、最序盤の勢いでそのまま押し込んだ。

宇都宮 巧

 序盤の勢いを凌いで長期戦にもつれこんだゲーム1、序盤の勢いを活かしきって素早くゲームを終えたゲーム2。どちらも食物デッキ同士で頻繁に見かける展開だ。ここまで高低差の激しいゲームスピードを柔軟にコントロールしてきた宇都宮だったが、三原が一歩、コントロール力対決を先んじた形でマッチを終えた。

宇都宮 0-2 三原

 

ホリウチ マコト(バント・食物) vs. 熊谷 陸(シミック・食物)

 「スゥルタイ・食物」ミラーマッチであった宇都宮対三原の横では、使用者率最多の「スゥルタイ・食物」に対し、別の色構成でアプローチをかけた両者の対決が開かれていた。

ホリウチ マコト vs. 熊谷 陸

 グランプリ東京・2016優勝のプロプレイヤー・熊谷 陸と、ホリウチ マコトだ。ホリウチも関東を中心に熱心に競技シーンに参加するプレイヤーであり、大舞台に対する緊張の様子などはなさそうだ。

ゲーム1

 「バント・食物」特有のカード、《時を解す者、テフェリー》を早々にプレイしたホリウチが主導権を握ってのスタートとなった。熊谷は《むかしむかし》から《意地悪な狼》を引き込んでいるが、土地が3枚で止まってしまって手札の《世界を揺るがす者、ニッサ》が動きだすのが遅くなった。

 その隙に《王冠泥棒、オーコ》、《ハイドロイド混成体》X=4と攻め手を止めなかったホリウチが、《時を解す者、テフェリー》を守りきってのゲーム1先取とした。

ホリウチ マコト
ゲーム2

 続くゲーム2では逆にホリウチの土地が止まってしまい、《金のガチョウ》から《王冠泥棒、オーコ》と続け、[+2]能力と[+1]能力を交互に使って大鹿軍団を築いた熊谷が取り返す。

ゲーム3

 ゲーム3にしてお互い初めてのマリガンを宣言し、多少スローゲームになることが予想されての始まりとなった。

 再びホリウチは《時を解す者、テフェリー》を着地させ、熊谷の呪文のプレイ・タイミングをコントロールして自らの得意とする展開に持ち込む。熊谷は《時を解す者、テフェリー》に極力影響しない《王冠泥棒、オーコ》から展開を始め、続くターンのメイン・フェイズで《霊気の疾風》をホリウチの《王冠泥棒、オーコ》に向かわせる。しかしこれに《夏の帳》が合わせられ、《王冠泥棒、オーコ》は守られる。

 ただホリウチは後続を示せず、熊谷の《王冠泥棒、オーコ》が作った大鹿に《霊気の疾風》を当ててターンを稼ぐが、具体的な次手を何も引けずにいた。忠誠度3の《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力で使い捨ててドローに変え、《王冠泥棒、オーコ》のにらみ合いの状況を打破するカードを引きたいが……解決に届かない。熊谷が《ハイドロイド混成体》X=4からの翌ターン《ハイドロイド混成体》X=6と続けると、明白なリソース差に諦めをつけたホリウチが手を差し出した。

熊谷 陸

 キーカードとなる《時を解す者、テフェリー》こそ引けたホリウチであったが、「食物」ミラーマッチではそこからさらに有効牌を探し出さないといけない。そのタイムラグに対して、ストレートに有効牌を示し続けられた「シミック・食物」の熊谷が展開で勝った。

ホリウチ 1-2 熊谷

 

斉藤 徹(シミック・食物) vs. フー・ユエ/He, Yue(スゥルタイ・食物)

 準々決勝3卓は全員が「食物」デッキながら、いずれも対決する色の組み合わせは異なる形となった。

斉藤 徹 vs. フー・ユエ

 《厚かましい借り手》や《総動員地区》などを採用し、「テンポ」を重視する「シミック・食物」の斉藤。対してフーは《害悪な掌握》を筆頭に「確実に相手の展開を止める」ことに重きを置いた「スゥルタイ・食物」。

 もともと「スゥルタイ・食物」がミラーマッチに強くするために《害悪な掌握》を積んでいることから「スゥルタイ・食物」有利なようにも思われがちだが、「シミック・食物」がテンポを保ってゲームを取ることも少なくない。

ゲーム1

 実際、ゲーム1から斉藤が《厚かましい借り手》の出来事(《些細な盗み》)と《霊気の疾風》によってフーの展開を何度も止めるシーンがあった。序盤に互いに動きは少なく、早々に《ハイドロイド混成体》X=5に到達したフーだったが、これを《霊気の疾風》した斉藤も返しのターンで《ハイドロイド混成体》X=5で返して差をつけさせない。

 《世界を揺るがす者、ニッサ》につなげたフーに対し、斉藤は2枚目の《霊気の疾風》でフーの巻き返しをことごとく止める。斉藤の2体目の《ハイドロイド混成体》がX=6に届いたところで、フーは自らが持つ《虐殺少女》では連鎖の結果が「6」まで届かず《ハイドロイド混成体》を落とせない。これに殴りきられる形となった。

ゲーム2

 続くゲーム2は、斉藤が《金のガチョウ》スタートをするものの土地を2枚で止めたところでフーが《金のガチョウ》《王冠泥棒、オーコ》、《意地悪な狼》、さらに《ハイドロイド混成体》X=2とタップアウトの展開を続けて、電車道のごとく一筋で押し切った。

フー・ユエ
ゲーム3

 取って取られての3本目。お互い「1ターン目《金のガチョウ》スタート」を切る。

 このロケット・スタートに対して次手を示したのはフーだ。2枚目の《金のガチョウ》、そして《王冠泥棒、オーコ》をプレイ。これを《霊気の疾風》で弾いた斉藤は《意地悪な狼》でフーの《金のガチョウ》を落とす。

 フーも《ハイドロイド混成体》X=2を経てから《意地悪な狼》の格闘能力で斉藤の《金のガチョウ》を落として盤面を押し返したいが、ここに斉藤が再び合わせて動き出す。

斉藤 徹

 斉藤は《些細な盗み》でフーの《意地悪な狼》を手札に戻し格闘能力を無効化すると、そのままダメージレースで押し切る算段をつけた。《王冠泥棒、オーコ》の[+1]能力で自らの《金のガチョウ》を大鹿に変化させてクロックを増やし、続くターンも食物・トークンを大鹿にさせてアタッカーを増やしていく。

 フーは序盤に2回ほど土地を置けず、そのマナ差も響いてダブル・アクションをなかなか取れないでいた。徐々に劣勢に押し込まれ、2/2の《ハイドロイド混成体》でこの大鹿の群れをチャンプ・ブロックせざるを得ない。「フーの更地 対 斉藤の大鹿の群れ」という盤面で迎えたドロー・ステップで引いたカードを見て、フーは静かに首を振った。

 斉藤は《厚かましい借り手》(《些細な盗み》)で生み出した「フーのテンポ・ロス」をしっかりとチャンスに変えた。《ハイドロイド混成体》バウンスなど決してハンド・リソース的には「得」を取れないタイミングも多く、盤面を作るタイミングとそれを御するタイミングの両方を見計らっての勝利だ。

斉藤 2-1 フー

 

準々決勝結果

 4人いた「スゥルタイ・食物」を使うトップ8プレイヤーからは三原 槙仁が、「シミック・食物」のトップ8プレイヤーは熊谷 陸、斉藤 徹の2人ともが準決勝に勝ち進んだ。ビデオ・フィーチャーからは「アゾリウス・コントロール」のヂィが勝っている。

 最多であった「スゥルタイ・食物」は一気に数を減らし、準々決勝から一気に分布を変えた準決勝の行方は、そして続く決勝の結末は……果たして、どうなるか。食欲の秋のグランプリ・名古屋2019も、いよいよ晩秋の頃を迎えようとしていた。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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